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第1話 夢見心地-3
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ジリリリリリリリリ!!!
「うわあ!」
なんだなんだ! 地震か!?
「………………朝か」
落ち着いて今の状況を整理する。どうやら寝ぼけていた俺は、目覚まし時計のアラームを、地震と勘違いしてしまったようだ。
とりあえずうるさいので、急いでアラームを止めた。
「……さっきのは、夢か」
まさか、美幸が夢に出てくるなんて。
美幸とは、高校卒業から連絡をとっていない。あいつは、高校を卒業してから東京の大学に進学した。長年住んでいたこの街をでていったのだ。
新しい住所も知らない。連絡先もわからない。あいつは、俺になにも告げず旅立った。
「俺は、なんて都合のいい夢を……」
美幸は何も悪くない。悪いのは、俺だ。
っと、いつまでも夢の余韻に浸っている暇はない。俺はベッドから身を起こし、朝の支度を始めた。
今日見た夢ではイタリアン料理店に勤めていることになっていたが、実際働いてるのは駅前の商店街にある焼き鳥屋だ。ちなみに、専門学校に通い、調理師の免許を取ったのは本当のこと。
イタリアン料理店に勤めようとしていたのも事実だが、現実は思っていたより厳しかったということだ。
かといって今の勤務先に不満はない。強いて言うなら、お客さんのほとんどが、おっさんだということくらいか。まあ、気楽にやれているからよしとしよう。
一人暮らしを始めて5年目ともなれば、朝の支度を済ませるのも早くなる。
収納する場所がないと困るだろうと考え、2DKの部屋を借りた。実際、2部屋の内ひとつは物置部屋と化していた。
整理整頓しなくてはといつも思っているが、どうしても後回しにしてしまう。どうせ、部屋に呼ぶ人もいないし構いはしないのだけど。
「ふう……」
あらかた準備を終えた俺は、ベランダに出て一服することにした。マッチでラキストに火をつけ、煙を吐き出す。
出勤まであと30分ほどだ。勤務先までは歩いて10分もかからない距離なので、そこまであせる必要はない。
ふと、街の風景を眺めた。すでに街は動き出しており、出勤・通学途中の人々が歩いている。俺は、この光景を見るのがあんまり好きではない。
あー。働きたくないな。
「……ん?」
街を歩く人々の中に、見覚えのある女性を見つけた。最近、視力が落ちてしまったので正確にその人の姿を見ることはできないが、何故かその人が誰なのかわかった。
……いや、そんなわけない。俺はまだ寝ぼけているのだろうか。それとも、今朝の夢がそう思わせるのか。つくづく俺は、ご都合主義な人間なのだと気づかされる。
頭を振り、そのつまらない妄想を払いのけた。もう一度、その女性が歩いていたところへ目を向ける。
「…………いない、か」
その女性は、どこかへ歩き去ってしまったようだ。きっと、俺の勘違いだろう。あいつがこの街にいるはずがない。今頃、東京のどこかで過ごしているはずなのだから。
灰皿代わりにしているジュースの缶でタバコの火を消し、そのまま缶の中へ吸い殻を捨てた。部屋に戻り、上着を羽織って外へ出る準備を整えた。
春の暖かさを感じる季節になったけど、今日は何だが肌寒い。出勤時間までまだ余裕があるが、俺は早めに家を出ることにした。
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ジリリリリリリリリ!!!
「うわあ!」
なんだなんだ! 地震か!?
「………………朝か」
落ち着いて今の状況を整理する。どうやら寝ぼけていた俺は、目覚まし時計のアラームを、地震と勘違いしてしまったようだ。
とりあえずうるさいので、急いでアラームを止めた。
「……さっきのは、夢か」
まさか、美幸が夢に出てくるなんて。
美幸とは、高校卒業から連絡をとっていない。あいつは、高校を卒業してから東京の大学に進学した。長年住んでいたこの街をでていったのだ。
新しい住所も知らない。連絡先もわからない。あいつは、俺になにも告げず旅立った。
「俺は、なんて都合のいい夢を……」
美幸は何も悪くない。悪いのは、俺だ。
っと、いつまでも夢の余韻に浸っている暇はない。俺はベッドから身を起こし、朝の支度を始めた。
今日見た夢ではイタリアン料理店に勤めていることになっていたが、実際働いてるのは駅前の商店街にある焼き鳥屋だ。ちなみに、専門学校に通い、調理師の免許を取ったのは本当のこと。
イタリアン料理店に勤めようとしていたのも事実だが、現実は思っていたより厳しかったということだ。
かといって今の勤務先に不満はない。強いて言うなら、お客さんのほとんどが、おっさんだということくらいか。まあ、気楽にやれているからよしとしよう。
一人暮らしを始めて5年目ともなれば、朝の支度を済ませるのも早くなる。
収納する場所がないと困るだろうと考え、2DKの部屋を借りた。実際、2部屋の内ひとつは物置部屋と化していた。
整理整頓しなくてはといつも思っているが、どうしても後回しにしてしまう。どうせ、部屋に呼ぶ人もいないし構いはしないのだけど。
「ふう……」
あらかた準備を終えた俺は、ベランダに出て一服することにした。マッチでラキストに火をつけ、煙を吐き出す。
出勤まであと30分ほどだ。勤務先までは歩いて10分もかからない距離なので、そこまであせる必要はない。
ふと、街の風景を眺めた。すでに街は動き出しており、出勤・通学途中の人々が歩いている。俺は、この光景を見るのがあんまり好きではない。
あー。働きたくないな。
「……ん?」
街を歩く人々の中に、見覚えのある女性を見つけた。最近、視力が落ちてしまったので正確にその人の姿を見ることはできないが、何故かその人が誰なのかわかった。
……いや、そんなわけない。俺はまだ寝ぼけているのだろうか。それとも、今朝の夢がそう思わせるのか。つくづく俺は、ご都合主義な人間なのだと気づかされる。
頭を振り、そのつまらない妄想を払いのけた。もう一度、その女性が歩いていたところへ目を向ける。
「…………いない、か」
その女性は、どこかへ歩き去ってしまったようだ。きっと、俺の勘違いだろう。あいつがこの街にいるはずがない。今頃、東京のどこかで過ごしているはずなのだから。
灰皿代わりにしているジュースの缶でタバコの火を消し、そのまま缶の中へ吸い殻を捨てた。部屋に戻り、上着を羽織って外へ出る準備を整えた。
春の暖かさを感じる季節になったけど、今日は何だが肌寒い。出勤時間までまだ余裕があるが、俺は早めに家を出ることにした。
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