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第1章
18.聖剣
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ため息をついたローゼは聖剣を持って祭壇から降り、荷物のところへと行った。
ひとつ頭を振ると、足を伸ばして座る。
(よし、整理しよう)
1.この聖剣は、魔物を殺せる
2.この聖剣は、主を失って暴走した他の聖剣を壊せる
3.この聖剣は、人を傷つけられない。殺すこともできない
4.この聖剣は、主――今回はローゼだ――と魂で結びついている
(よしよし)
5.神曰く、この聖剣は今までと違う新しい試みによりつくられた
6.神曰く、なぜか人を殺した
7.神曰く、なぜかローゼ以外の魂には反応せず400年も経ったらしい
8.神曰く、色々調べたけどなんかよく分かんないから人に返しちゃえってことになった。なんかそんな感じだった。
(……あああああ……)
ローゼは頭を抱えた。
つまりローゼは貧乏くじを引いたということなのだろうか。
(聞きたいこともあんまり聞けなかったし……)
概要だけ話してお茶をにごし、後はそっちでよろしくと言いたげにさっさと帰ってしまった……ようにしか思えない。
仕方がないので剣に向き直る。
たどたどしいが、喋る以上はなんらかの答えはもらえるはずだろう。
「ねぇ、えーと、剣?」
【けん ひと はなす】
どことなく嬉しそうだ。
そしてやはり、気を失っている間に聞いた男性の声と同じだった。
「うん。あたしはローゼ。ローゼ・ファラー。よろしく」
【よろしく】
先に確認しておかないと怖いので、まずは気になっていることを聞いてみよう、とローゼは思った。
「人を傷つけたり出来るの?」
【けん ひと きずつけない】
剣の答えにローゼは首をひねる。
(どういうこと?)
「でも以前、人を殺したんじゃないの?」
【けん ひと ころさない】
「神様が殺したって言ってたけど?」
【ころさない ひと ころさない】
うーん、とローゼはうなる。
「じゃあ、何を殺したの?」
剣は一拍置いて答えた。
【まもの】
(魔物?)
人を殺したんじゃなかったのだろうか?
「魔物なの? 人じゃなくて?」
【けん ひと ころさない】
「絶対?」
【ひと ころさない】
言い張っている以上、とりあえずは信じてみようとローゼは思った。
「じゃあ、質問変えるね。レオンって知ってる?」
【れおん】
「そう。レオン」
【れおん】
「……知らない?」
【しってる】
「そっか。やっぱりレオンがあたしの前の主なの?」
【けん】
「え?」
【れおん】
「うん、だから……」
【けん れおん】
「んん?」
剣は一体何が言いたいのだろうと、ローゼは首をひねる。
【けん れおん】
「うん」
【けん れおん】
ひたすら言い張る聖剣に対し、ふと思い当たったローゼは聞いてみる。
「……あなた、レオンなの?」
【れおん】
「あたしの前に、聖剣の主だったっていうレオン?」
【れおん】
ローゼは腕組みをして剣を眺めた。
「レオンなら、人間だったのよね。なんで剣がレオンなの?」
【しらない】
「レオンの時も、剣はその、やっぱり話したの?」
【はなさない】
「じゃあ今、あたしと話してるのは、剣じゃなくてレオン?」
【れおん】
「いつからレオンは剣なの?」
【め さめる】
「……気が付いたら剣だったってことね」
しばらく考え込み、それから少し迷いながら剣に尋ねてみた。
「もしかして、夢を使ってあたしにレオン自身のことを見せてた?」
剣からの返事はだいぶ遅かった。
【むかし おもう】
「昔、思う……?」
【たび おもう】
「……昔旅した時のことを思い出すことがある。ってこと?」
【ゆめ とどく】
「別に見せる意図はなくて、ただ旅のことを思い出してただけなんだけど、あたしにも届いちゃって、それを夢に見たってことでいいのかな」
【たましい つながる】
「……そっか。なんか魂が結び付けられてるって神様が言ってたっけね」
(この剣が本当に以前の主、レオンなんだとしたら……)
「ねえ、レオン。嫌なら答えなくてもいいんだけど」
そこまで口には出すが、先を言って良いものかためらう。
黙って剣を見つめ、しばらくそのままでから再び口を開いた。
「レオンの最期って、どうなったの?」
先ほどよりもずっと長い沈黙が降りる。
沈黙の後、剣はぽつりと言った。
【おもう】
抑揚のない、たどたどしい喋り方なのは変わらないが、なんだか悲しそうだ、とローゼは思った。
それ以降は話しかけても返事が無かったので、ローゼは話しかけるのを諦め、まずは食事をすることにした。
保存用の味気ない食事を食べながら、この後どうしようかを考える。
セラータも気になるし外へ出ても良いのだが、おそらくもう夜になるだろう。
どうせ移動も出来ないし、せっかく屋根があるのだからここで寝てしまっても良いのではないだろうか。
暑くも寒くも無いし、うってつけかもしれない。
そう決めるとローゼは、食事後に荷物の中からさっさと簡易寝具を取り出す。
敷きながら周りを見渡せば、いつまで経っても来た時同様に明るいままだ。
(暗くなれば眠りやすいのになー)
まあそれは贅沢というものだろう。
他にすることもないし今日はもう眠ってしまうことに決め、寝具の中に潜り込む。
その分、明日は早めに出かけよう。セラータはどうしたかな。などと思いつつ、横に置いた剣に声をかけてみた。
「レオン、おやすみ」
これにも返事はない。
(やっぱり悪いこと聞いちゃったかな)
そう思いながらも、ローゼは早々に眠りに落ちた。
ひとつ頭を振ると、足を伸ばして座る。
(よし、整理しよう)
1.この聖剣は、魔物を殺せる
2.この聖剣は、主を失って暴走した他の聖剣を壊せる
3.この聖剣は、人を傷つけられない。殺すこともできない
4.この聖剣は、主――今回はローゼだ――と魂で結びついている
(よしよし)
5.神曰く、この聖剣は今までと違う新しい試みによりつくられた
6.神曰く、なぜか人を殺した
7.神曰く、なぜかローゼ以外の魂には反応せず400年も経ったらしい
8.神曰く、色々調べたけどなんかよく分かんないから人に返しちゃえってことになった。なんかそんな感じだった。
(……あああああ……)
ローゼは頭を抱えた。
つまりローゼは貧乏くじを引いたということなのだろうか。
(聞きたいこともあんまり聞けなかったし……)
概要だけ話してお茶をにごし、後はそっちでよろしくと言いたげにさっさと帰ってしまった……ようにしか思えない。
仕方がないので剣に向き直る。
たどたどしいが、喋る以上はなんらかの答えはもらえるはずだろう。
「ねぇ、えーと、剣?」
【けん ひと はなす】
どことなく嬉しそうだ。
そしてやはり、気を失っている間に聞いた男性の声と同じだった。
「うん。あたしはローゼ。ローゼ・ファラー。よろしく」
【よろしく】
先に確認しておかないと怖いので、まずは気になっていることを聞いてみよう、とローゼは思った。
「人を傷つけたり出来るの?」
【けん ひと きずつけない】
剣の答えにローゼは首をひねる。
(どういうこと?)
「でも以前、人を殺したんじゃないの?」
【けん ひと ころさない】
「神様が殺したって言ってたけど?」
【ころさない ひと ころさない】
うーん、とローゼはうなる。
「じゃあ、何を殺したの?」
剣は一拍置いて答えた。
【まもの】
(魔物?)
人を殺したんじゃなかったのだろうか?
「魔物なの? 人じゃなくて?」
【けん ひと ころさない】
「絶対?」
【ひと ころさない】
言い張っている以上、とりあえずは信じてみようとローゼは思った。
「じゃあ、質問変えるね。レオンって知ってる?」
【れおん】
「そう。レオン」
【れおん】
「……知らない?」
【しってる】
「そっか。やっぱりレオンがあたしの前の主なの?」
【けん】
「え?」
【れおん】
「うん、だから……」
【けん れおん】
「んん?」
剣は一体何が言いたいのだろうと、ローゼは首をひねる。
【けん れおん】
「うん」
【けん れおん】
ひたすら言い張る聖剣に対し、ふと思い当たったローゼは聞いてみる。
「……あなた、レオンなの?」
【れおん】
「あたしの前に、聖剣の主だったっていうレオン?」
【れおん】
ローゼは腕組みをして剣を眺めた。
「レオンなら、人間だったのよね。なんで剣がレオンなの?」
【しらない】
「レオンの時も、剣はその、やっぱり話したの?」
【はなさない】
「じゃあ今、あたしと話してるのは、剣じゃなくてレオン?」
【れおん】
「いつからレオンは剣なの?」
【め さめる】
「……気が付いたら剣だったってことね」
しばらく考え込み、それから少し迷いながら剣に尋ねてみた。
「もしかして、夢を使ってあたしにレオン自身のことを見せてた?」
剣からの返事はだいぶ遅かった。
【むかし おもう】
「昔、思う……?」
【たび おもう】
「……昔旅した時のことを思い出すことがある。ってこと?」
【ゆめ とどく】
「別に見せる意図はなくて、ただ旅のことを思い出してただけなんだけど、あたしにも届いちゃって、それを夢に見たってことでいいのかな」
【たましい つながる】
「……そっか。なんか魂が結び付けられてるって神様が言ってたっけね」
(この剣が本当に以前の主、レオンなんだとしたら……)
「ねえ、レオン。嫌なら答えなくてもいいんだけど」
そこまで口には出すが、先を言って良いものかためらう。
黙って剣を見つめ、しばらくそのままでから再び口を開いた。
「レオンの最期って、どうなったの?」
先ほどよりもずっと長い沈黙が降りる。
沈黙の後、剣はぽつりと言った。
【おもう】
抑揚のない、たどたどしい喋り方なのは変わらないが、なんだか悲しそうだ、とローゼは思った。
それ以降は話しかけても返事が無かったので、ローゼは話しかけるのを諦め、まずは食事をすることにした。
保存用の味気ない食事を食べながら、この後どうしようかを考える。
セラータも気になるし外へ出ても良いのだが、おそらくもう夜になるだろう。
どうせ移動も出来ないし、せっかく屋根があるのだからここで寝てしまっても良いのではないだろうか。
暑くも寒くも無いし、うってつけかもしれない。
そう決めるとローゼは、食事後に荷物の中からさっさと簡易寝具を取り出す。
敷きながら周りを見渡せば、いつまで経っても来た時同様に明るいままだ。
(暗くなれば眠りやすいのになー)
まあそれは贅沢というものだろう。
他にすることもないし今日はもう眠ってしまうことに決め、寝具の中に潜り込む。
その分、明日は早めに出かけよう。セラータはどうしたかな。などと思いつつ、横に置いた剣に声をかけてみた。
「レオン、おやすみ」
これにも返事はない。
(やっぱり悪いこと聞いちゃったかな)
そう思いながらも、ローゼは早々に眠りに落ちた。
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