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花が咲く
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「パパ~お願いがあるんだけど」
そう言ってパパの背後から抱きつく。
すると必ず愛莉が反応する。
「冬莉、いつも言ってるでしょ!冬夜さんから離れなさい!」
愛莉は娘の私にまで嫉妬するほどパパを愛している。
いつもはそれを揶揄って楽しんでるだけなのだが、今日はちょっと違う。
「どうしたんだい?出かける準備しているみたいだけど?」
パパは私の服装を見て言った。
露出の多い服装で誘惑するのもありかと思ったけど、初対面だしあまり変な印象を持たれたくない。
瞳子や翼と相談してこの服装に決めた。
「インター側のコンビニまで送ってくれないかな?」
「冬莉も車持ってるじゃないか?それにいつも家の前まで迎えに来てもらってるじゃないか」
「今日はいつもの3兄弟じゃないから」
クルトこと成原一志と会うのは初めてだ。
これまでチャットで話している感じだと、妙な事を考える人じゃなさそうだけど、いきなり家の住所を教えるのは流石にまずいと思った。
「なるほどね。もう仕度出来てるの?」
「うん」
「じゃあ、行こうか」
そう言ってパパが立ち上がると、愛莉から待ったがかかる。
「冬夜さんいけません!」
娘を車で送迎するのにどんな問題があるのか?
送迎自体には問題ない。
問題はパパの車に乗る事だ。
普通は助手席に座る。
それを愛莉は絶対に許さなかった。
「冬夜さんの助手席は私だけ」
空や翼が産まれた時から、パパと愛莉の結婚前からの絶対的ルール。
「冬莉は娘なんだから別にいいじゃないか」
「冬莉だから問題なんです!」
私の場合助手席だろうが後部座席だろうが関係ない。
必ずパパに甘える。
それを愛莉は許さなかった。
「でもコンビニに冬莉の車を止めっぱなしってのもまずいだろ?」
「私が送ります。それなら問題ないでしょ」
「その必要ないよ」
翼と空が降りて来た。
「私達も子供達どっか遊びに連れて行ってやろうと思ってたから。ついでに冬莉を送るよ」
翼がそう言うと愛莉は納得した。
「じゃ、冬莉行くよ」
私は翼や空と一緒に家を出る。
「遅くならないようにね」
とは、言われる事は無い。
20を過ぎたんだから自分の責任で行動しなさい。
それが愛莉達の考えらしい。
もっともそんな遅くなるまで遊ぼうとは思わなかったけど。
空の車に乗ってコンビニに向かう。
「冬莉もあんまり愛莉を揶揄わない方がいいよ」
翼からそんな注意を受けていた。
コンビニに着くと翼達と別れて成原さんが来るのを待つ。
青い2世代くらい前のスポーツカーがコンビニの駐車場に止まると、私のスマホが鳴る。
「今着いたよ」
どの車なのかはすぐに分かった。
青いスポーツカーの運転席を覗くと、ごく普通の20代の男性が乗っていた。
もちろんグローブをつけて運転しているという事は無い。
「あなたが、成原さん?」
「そうです。片桐冬莉さん?随分綺麗だね」
そう言って笑顔を作る成原さん。
「助手席に座って」
成原さんにそう言われて私は助手席に座る。
「どこでもいいかな?」
「うん」
行先は成原さんに任せると、成原さんは車を走らせる。
地元でドライブで行く先なんて知れてる。
どうせ別府・湯布院方面か、佐賀関・臼杵方面のどちらかだろう。
3馬鹿のパターンで把握していた。
しかし車は全然違う道を行く。
地元大学前を通過し、犬飼方面に向かう。
「どこに行くの?」
「滝」
ちょうどチューリップ祭りをやってるはずだからと、成原さんは言う。
成原さんも昨日散々悩んだらしい。
今日私に初めて会って戸惑ったそうだ。
行き飽きてるんじゃないのか?
私はモテそうだから色んな男性に色々連れて行ってもらってるんじゃないか?
そうでもないんだけどな。
「成原さんはどうなの?」
「実は初めてなんだ」
笑顔がやや硬かった。
多分言ってる事は本当なんだろう。
そんなに緊張されると私も調子が狂う。
何を話したらいいのか分からなくなる。
とりあえずゲームの話がいいのだろうか?
でもゲームオタクと思われるのもいやだな。
でも無言のままってのもまずい。
一つずつ紐解いていこう。
「そんなに緊張しないでいいよ。私まで緊張しちゃうし」
「あ、ごめん。慣れてなくてさ」
「初めてって事は恋人はいなかったの?」
「まあね。どうもそういうのが苦手で。冬莉さんは?」
成原さんに聞かれて言葉に詰まった。
嘘をついてもしょうがないか。
「まあ、この歳だしね。それなりには」
人数は伏せておいた。
「そうだよね……」
気落ちする成原さん。
多分そうなると思ってた。
だからちゃんと次のセリフを準備してた。
「でも、良くてキスまでだったかな。その先はまだ知らない」
「え!?」
成原さんの中では衝撃的だったらしい。
付き合ったら誰でもやると思ったら大間違いだ。
私の場合相手の心を読んでしまうから、そういう気分にされると冷めてしまう。
だからその前に手を引くと説明した。
すると成原さんは笑った。
「片桐さんも純情なんだね」
そんな風に私を評価してくれる人は初めてだった。
そんな成原さんが気になっていた。
「成原さんは今好きな人とかいるんですか?」
「いたとしても上手くいくわけないから諦めてる」
私の周りには自信過剰な男は山ほどいるけど、こうまで自虐的な人は初めてだ。
「どうしてそう思うの?」
「……そもそも付き合うってどうすればいいかわからないんだ」
付き合ったことが無いからどうすれば女性を喜ばせる事が出来るのか分からない。
きっと退屈させてしまう。
そもそも成原さんと付き合ってくれる人なんているわけない。
そんな風に自己評価しているらしい。
「成原さんは思い違いをしていませんか?」
「え?」
「仮に成原さんと付き合っている女性は退屈するのであれば、今の私は何なんですか?」
女性として見てもらえない?
「片桐さんは楽しいの?」
「……私、男の人と滝や花を見るなんて初めてだから。楽しみにしてますよ」
「それならいいんだけど」
少しは安心してもらえただろうか?
滝に着くと、確かにまだチューリップ祭りの最中だった。
せっかくだから写真を撮る。
一通り見ると成原さんに聞いていた。
「この後どうするの?」
「久住に行って帰るつもりだけど?」
やっぱり初めてなんだろうな。
精々夕食を食べて帰るつもりだったのだろう。
久住でフラワーパークを見た後に山の中を抜けて家に帰る。
その頃には成原さんの緊張も解れていたようだ。
成原さんの事を色々聞いていた。
歳は私より少し上。
江口銀行に勤めているらしい。
立派なエリートじゃん。
こんな好物件がどうして彼女いないんだろう。
それは成原さんの趣味と性格にあった。
あまり人前で話すのが得意じゃないらしい。
加えて自虐的な性格。
夕食を済ますと私をコンビニに送る。
待て。
「成原さんは私にここから歩いて帰れと言うの?」
「でも住所知られたくないんだろ?」
「私は今日一日成原さんという男性を見て来た。別に家を知られるくらいどうってことないよ」
ストーカーするなんて馬鹿な真似は絶対しないだろう。
成原さんに家まで送ってもらうと、私は車を降りる。
「今日はありがとう。楽しかったよ」
「私も楽しかった。……で?」
私がそう言うと成原さんは首を傾げていた。
しょうがない人だ。
「次は誘ってくれないの?」
成原さんは理解したらしい。
「考えておくよ」
「普通のデートでもいいんだからね」
「え?」
私は笑って答えた。
「次会う時は冬莉って呼んでね」
「……わかった。また明日」
そう言って成原さんは帰っていった。
家に帰るとパパとお爺さんが飲んでいた。
「あれ?早かったね」
「彼結構真面目っぽいから」
今日は初めてだろうと2度目だろうと朝帰りは多分ないだろう。
私から何か行動しない限り。
パパは私が朝帰りすると思ってお爺さんと酒を飲んでいたらしい。
どうしてそうなるのかはよく分からなかったけど。
そう言ってパパの背後から抱きつく。
すると必ず愛莉が反応する。
「冬莉、いつも言ってるでしょ!冬夜さんから離れなさい!」
愛莉は娘の私にまで嫉妬するほどパパを愛している。
いつもはそれを揶揄って楽しんでるだけなのだが、今日はちょっと違う。
「どうしたんだい?出かける準備しているみたいだけど?」
パパは私の服装を見て言った。
露出の多い服装で誘惑するのもありかと思ったけど、初対面だしあまり変な印象を持たれたくない。
瞳子や翼と相談してこの服装に決めた。
「インター側のコンビニまで送ってくれないかな?」
「冬莉も車持ってるじゃないか?それにいつも家の前まで迎えに来てもらってるじゃないか」
「今日はいつもの3兄弟じゃないから」
クルトこと成原一志と会うのは初めてだ。
これまでチャットで話している感じだと、妙な事を考える人じゃなさそうだけど、いきなり家の住所を教えるのは流石にまずいと思った。
「なるほどね。もう仕度出来てるの?」
「うん」
「じゃあ、行こうか」
そう言ってパパが立ち上がると、愛莉から待ったがかかる。
「冬夜さんいけません!」
娘を車で送迎するのにどんな問題があるのか?
送迎自体には問題ない。
問題はパパの車に乗る事だ。
普通は助手席に座る。
それを愛莉は絶対に許さなかった。
「冬夜さんの助手席は私だけ」
空や翼が産まれた時から、パパと愛莉の結婚前からの絶対的ルール。
「冬莉は娘なんだから別にいいじゃないか」
「冬莉だから問題なんです!」
私の場合助手席だろうが後部座席だろうが関係ない。
必ずパパに甘える。
それを愛莉は許さなかった。
「でもコンビニに冬莉の車を止めっぱなしってのもまずいだろ?」
「私が送ります。それなら問題ないでしょ」
「その必要ないよ」
翼と空が降りて来た。
「私達も子供達どっか遊びに連れて行ってやろうと思ってたから。ついでに冬莉を送るよ」
翼がそう言うと愛莉は納得した。
「じゃ、冬莉行くよ」
私は翼や空と一緒に家を出る。
「遅くならないようにね」
とは、言われる事は無い。
20を過ぎたんだから自分の責任で行動しなさい。
それが愛莉達の考えらしい。
もっともそんな遅くなるまで遊ぼうとは思わなかったけど。
空の車に乗ってコンビニに向かう。
「冬莉もあんまり愛莉を揶揄わない方がいいよ」
翼からそんな注意を受けていた。
コンビニに着くと翼達と別れて成原さんが来るのを待つ。
青い2世代くらい前のスポーツカーがコンビニの駐車場に止まると、私のスマホが鳴る。
「今着いたよ」
どの車なのかはすぐに分かった。
青いスポーツカーの運転席を覗くと、ごく普通の20代の男性が乗っていた。
もちろんグローブをつけて運転しているという事は無い。
「あなたが、成原さん?」
「そうです。片桐冬莉さん?随分綺麗だね」
そう言って笑顔を作る成原さん。
「助手席に座って」
成原さんにそう言われて私は助手席に座る。
「どこでもいいかな?」
「うん」
行先は成原さんに任せると、成原さんは車を走らせる。
地元でドライブで行く先なんて知れてる。
どうせ別府・湯布院方面か、佐賀関・臼杵方面のどちらかだろう。
3馬鹿のパターンで把握していた。
しかし車は全然違う道を行く。
地元大学前を通過し、犬飼方面に向かう。
「どこに行くの?」
「滝」
ちょうどチューリップ祭りをやってるはずだからと、成原さんは言う。
成原さんも昨日散々悩んだらしい。
今日私に初めて会って戸惑ったそうだ。
行き飽きてるんじゃないのか?
私はモテそうだから色んな男性に色々連れて行ってもらってるんじゃないか?
そうでもないんだけどな。
「成原さんはどうなの?」
「実は初めてなんだ」
笑顔がやや硬かった。
多分言ってる事は本当なんだろう。
そんなに緊張されると私も調子が狂う。
何を話したらいいのか分からなくなる。
とりあえずゲームの話がいいのだろうか?
でもゲームオタクと思われるのもいやだな。
でも無言のままってのもまずい。
一つずつ紐解いていこう。
「そんなに緊張しないでいいよ。私まで緊張しちゃうし」
「あ、ごめん。慣れてなくてさ」
「初めてって事は恋人はいなかったの?」
「まあね。どうもそういうのが苦手で。冬莉さんは?」
成原さんに聞かれて言葉に詰まった。
嘘をついてもしょうがないか。
「まあ、この歳だしね。それなりには」
人数は伏せておいた。
「そうだよね……」
気落ちする成原さん。
多分そうなると思ってた。
だからちゃんと次のセリフを準備してた。
「でも、良くてキスまでだったかな。その先はまだ知らない」
「え!?」
成原さんの中では衝撃的だったらしい。
付き合ったら誰でもやると思ったら大間違いだ。
私の場合相手の心を読んでしまうから、そういう気分にされると冷めてしまう。
だからその前に手を引くと説明した。
すると成原さんは笑った。
「片桐さんも純情なんだね」
そんな風に私を評価してくれる人は初めてだった。
そんな成原さんが気になっていた。
「成原さんは今好きな人とかいるんですか?」
「いたとしても上手くいくわけないから諦めてる」
私の周りには自信過剰な男は山ほどいるけど、こうまで自虐的な人は初めてだ。
「どうしてそう思うの?」
「……そもそも付き合うってどうすればいいかわからないんだ」
付き合ったことが無いからどうすれば女性を喜ばせる事が出来るのか分からない。
きっと退屈させてしまう。
そもそも成原さんと付き合ってくれる人なんているわけない。
そんな風に自己評価しているらしい。
「成原さんは思い違いをしていませんか?」
「え?」
「仮に成原さんと付き合っている女性は退屈するのであれば、今の私は何なんですか?」
女性として見てもらえない?
「片桐さんは楽しいの?」
「……私、男の人と滝や花を見るなんて初めてだから。楽しみにしてますよ」
「それならいいんだけど」
少しは安心してもらえただろうか?
滝に着くと、確かにまだチューリップ祭りの最中だった。
せっかくだから写真を撮る。
一通り見ると成原さんに聞いていた。
「この後どうするの?」
「久住に行って帰るつもりだけど?」
やっぱり初めてなんだろうな。
精々夕食を食べて帰るつもりだったのだろう。
久住でフラワーパークを見た後に山の中を抜けて家に帰る。
その頃には成原さんの緊張も解れていたようだ。
成原さんの事を色々聞いていた。
歳は私より少し上。
江口銀行に勤めているらしい。
立派なエリートじゃん。
こんな好物件がどうして彼女いないんだろう。
それは成原さんの趣味と性格にあった。
あまり人前で話すのが得意じゃないらしい。
加えて自虐的な性格。
夕食を済ますと私をコンビニに送る。
待て。
「成原さんは私にここから歩いて帰れと言うの?」
「でも住所知られたくないんだろ?」
「私は今日一日成原さんという男性を見て来た。別に家を知られるくらいどうってことないよ」
ストーカーするなんて馬鹿な真似は絶対しないだろう。
成原さんに家まで送ってもらうと、私は車を降りる。
「今日はありがとう。楽しかったよ」
「私も楽しかった。……で?」
私がそう言うと成原さんは首を傾げていた。
しょうがない人だ。
「次は誘ってくれないの?」
成原さんは理解したらしい。
「考えておくよ」
「普通のデートでもいいんだからね」
「え?」
私は笑って答えた。
「次会う時は冬莉って呼んでね」
「……わかった。また明日」
そう言って成原さんは帰っていった。
家に帰るとパパとお爺さんが飲んでいた。
「あれ?早かったね」
「彼結構真面目っぽいから」
今日は初めてだろうと2度目だろうと朝帰りは多分ないだろう。
私から何か行動しない限り。
パパは私が朝帰りすると思ってお爺さんと酒を飲んでいたらしい。
どうしてそうなるのかはよく分からなかったけど。
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