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only my railgun
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(1)
「空や、本当にそれで大丈夫なのかい?」
僕は空に聞いてみた。
翼達も気になるらしい。
結のエイリアスという存在がSHを徹底的にガードしている。
だから心配することは無いと思っていた。
だけど彼らはそのエイリアスの防御を突破する方法を見つけ始めた。
これ以上結達だけに任せるわけにはいかない。
前の様にさっさと力づくで潰した方がいいんじゃないだろうか?
天音や水奈も同じ考えだった。
「そんなに地獄で親に会いたいなら遠慮することないだろ」
天音がそう言っていた。
それでも空は手を出さないと決めていた。
「なんだよ!お前がビビったとか言ったら私がお前を殺すぞ」
絶対に無理だと思うけど天音が空に怒鳴っていた。
翼はその理由がビビったからじゃないと知っているようだった。
「空、ちゃんと説明しないと皆納得しないよ」
自分の子供達が危険な目にあってるんだ。
放っておけるわけがないと翼が言っていた。
「理由は簡単だよ。仮に力づくでリベリオンを潰したとしてその後どうするの?」
肝心の十郎がすぐに逃げ出す。
それを繰り返すだけだと空が言った。
「じゃあ、仮に結が暴れても……」
水奈が言うと天音が気づいたようだ。
「空は結が何を企んでいるのか知ってるのか?」
「まあね」
「なんだよそれ!」
水奈が空に詰め寄る。
「今まで通り雑魚の相手をしてもらちが明かない。だから中枢から破壊する気だ」
多分直接十郎に接触する気でいる。
空はそう言った。
その手段については今は言えない。
リベリオンの耳に届いたら水の泡だ。
しかしそこまで空が言うと皆気づいてしまう。
結の母親の美希が空に聞いていた。
「それは結にとって危険なのでは?」
「だから結が自分でやると決めたんだろ」
結達は花火で遊んでいる。
なずなと花に任せていたら問題ないだろう。
父さん達は「もういい加減勘弁しておくれ。のんびり家で過ごしたい」と楽しているみたいだ。
「俺もさすがにそれはちょっと賛同できない。親が何もしないで子供に全部任せるのか?」
学も反対みたいだった。
「十郎の居場所さえわかれば直接ぶっ殺しにいけばいいんだろ?だったら私の得意分野だ」
天音は石原家の力を使うつもりだろう。
そして祈も同じだった。
「私も天音と協力して十郎ってやつをあぶりだす。後は娘がやるだろうし」
「そう、結局矢面に立つのは子供だ。だったら最初から任せてもいいだろう」
「ふざけんな!子供を矢面に立たせて私達は大人しくしてろって言うのか!?」
天音の怒りももっともだ。
いくら何でもそれは酷い。
だけど空はゆっくりと酒を飲んでいた。
「天音、一つ聞くけどどうやってあぶりだすの?」
県内を爆撃してあぶりだす?
天音ならやりかねないね。
「江口家と志水家の力を使えばそんな真似しなくても」
「それがだめだから子供に任せてるんだ」
「どういう意味だ?」
光太も気になったみたいだ。
僕と大地はなんとなく気づいたけどね。
悩んでいる妻の美希に説明した。
「江口家と志水家の力は良くも悪くも巨大すぎるのが問題なんだ」
「どうしてですか?」
「そんな二つの力をマークしてないはずがない」
動けば必ず気づかれる。
後は同じ事の繰り返しだ。
FGとは違う。
あいつらは世界中で動いてる組織だ。
その中心が日本の地元にいるっていうのは都合がよすぎる。
それを下手に刺激して逃がしたら元も子もない。
そんな人間を周りに被害を出すことなく抹殺するなんて絶対に無理だ。
いまさら気にするような事でもない気がするんだけどね。
「じゃあなぜ結ならいいんだ?」
「結じゃないと無理だから」
空の父さんも認めていたらしい。
片桐家の最強の切り札がの結だ。
結はあまりしゃべらないから気づかないけど間違いなくもう標的を決めている。
それでも止めを刺そうとしないのは何らかの意図があるから。
「それも空は知ってるのか?」
「さっきも言ったはずだけど?」
空の意図が分からない光太達。
翼が代弁してくれた。
「穴倉って知ってる?」
「将棋の囲いの事?」
美希が言うと翼が頷いた。
「あれさ、囲いを破るのにムキになってるとその隙に王様逃げちゃうでしょ?」
それが今までのSH……
真っ向勝負で力づくで潰してもその間に王様は高跳びする。
だからその前に王様の逃げ道を抑える必要がある。
「まさか全部の交通系統を封鎖するつもり?」
「それだったら僕達でも出来るだろ?」
問題はその封鎖の動きがでたら気づかれてその前に逃げられる危険性。
……でもまてよ。
「空や、一つ気になったことがあるんだけど」
「どうしたの?善明」
「その理論だと結のリベリオン狩りはまずいんじゃないかい?」
全部叩き潰すのはまずいんだろ?
空も同じ事を考えていた。
問題はその先にあった。
「善明の言う通りだよ。だけど結はしっかり企んでる」
そこから先は結だけが知っている情報だから分からない。
だけど明らかに何かを狙っている。
その証拠に茜や純也に流している彼らの根城の中に十郎は無い。
十郎にはまだ手を出すな。
暗にそう言ってるようだと空は言う。
「父さんも言っていたんだ。切り札は先に見せたらダメ。まずは相手に切り札を出させろ」
「……つまり十郎はまだ奥の手を持っている?」
冬吾が聞くと空は頷いた。
その証拠にいくら雑魚を叩いても彼らは動かない。
まだ何か余裕があるという事だ。
そしてその正体を結は知っている。
「そこまで結は知っていてどうして動かないんだ?」
水奈が空に聞いていた。
「簡単だよ。多分結の目的は……」
「なんだよ?」
「十郎に負けを認めさせる事」
徹底的に屈辱を味合わせる事。
そうしないとまた復讐なんてしょうもない事企むから。
それを続けていくのも面倒だ。
その証拠に誠司郎を襲った連中をまだ放っている。
何かを企んでいるのだろう。
「水奈もパオラも心配しなくていい。父さんから聞いているから」
結は毎日ちゃんと茉奈の安否を確認しているらしい。
エイリアスもつけている。
同じミスをするな。
水奈の言葉をしっかり胸に刻んでいるそうだ。
「結局結は何を企んでるんだよ?」
光太は空に聞いていた。
空は表情一つ変えずに答えた。
「将棋で例えたから分かりづらかったかな?」
逃げ道を全部つぶすなんて芸当ならそれこそ純也や天音の出番だけどそうじゃない。
そんなめんどくさい真似をするよりもっと効果的な方法がある。
「なんだよそれ?」
天音が聞いていた。
翼は気づいたみたいだ。
「……将棋で言うなら王様が自分の手下の駒に逃げ道を塞がれて動けない状態」
僕もその一言で気づいた。
大地も気づいたみたいだ。
「つまり内部から破壊するのですか?しかしそれだと内部に到達する前に逃げ出してしまう」
「だからその前に逃げれない状態に追い込む。そうだよね?空」
「翼のいう事は半分あってるけどそれだとやっぱり先に逃げ道用意するよ」
「じゃあ、どうするんだよ?」
天音が聞くと空は茜を見た。
「茜は誠さんが師だったんだろ?」
「どっちの意味で?男を喜ばせるテクも教えてもらったけど」
「あの馬鹿……」
ため息を漏らす水奈を笑いながら空は言った。
「そっちじゃない。ネット関係」
「それがどう関係あるの?」
茜には分からないらしい。
だけど空は父親からある程度の策を教えられたそうだ。
「茜はセキュリティの硬いサーバーに力づくで入るの?」
「あっ!?そういう事?」
茜には十分すぎるヒントだったようだ。
理解した茜を見て空は頷いた。
結の作戦は単純だけど危険すぎる作戦。
硬い防壁を力づくで突破している隙に逃げられる。
なら内部に直接侵入すればいい。
どうやって?
そんなの簡単だ。
空の考えで言うなら”トロイの木馬”ってやつだろう。
直接中に侵入して十郎をしとめる。
どうやって中に入るか?
すんなり入るやり方が多分結の作戦だろう。
その為の人選をしている最中なんじゃないかと空は言った。
「大丈夫なのか?バレたらやばすぎるだろ」
天音ですら危険だと思う狂気の行動。
だけど空は結だから出来る作戦だと言う。
空や冬吾でも出来るけど空は目立ちすぎてダメだ。
冬吾もサッカー選手という立場上そんな真似できない。
なら結がやるしかない。
母親の美希にしてみれば不安でしかないだろう。
そんな美希を見て空は言う。
「だから言ったろ。結は片桐家最後の切り札」
表向きはSHとリベリオンの抗争にしておけばいい。
結の情報は結が片っ端から抹消しているから問題ない。
後はどうやって結が内部に侵入するか。
今その不安を外に見せたら結が不利になる。
親が子供の足を引っ張るわけにはいかない。
危険だと判断したら空が止める。
でも、もう少し結を信用してあげて欲しいと空は言った。
記憶をも改ざんする結なら確かにその可能性はある。
ただその標的を人選しているんだろう。
ただの下っ端じゃ十郎に届かないから。
「つまりあいつ一人でまとめて始末するつもりなのか?」
天音が聞いてくると僕は頷いた。
多分そのつもりだろう。
そして下手に手を出すと結を危険な目に合せる事になる事も伝えた。
「本当に大丈夫なんだろうな?茉奈はいつも心配してるんだ」
現状でもほとんど結が一人でリベリオンの相手をしている。
いつか事故が起きるんじゃないかと茉奈が心配していると水奈が言う。
「仮に結の力が及ばない相手がいたとして、そんな奴を僕達が相手に出来ると思う?」
「まあ、確かにそうだな」
学は納得したらしい。
結局結に頼るしかないんだ。
その代わり結が協力を求めてきたらその時は力を貸そう。
そう結論を出すと良い時間なので皆テントに戻る。
テントの中に入ると寝ようとすると翼が聞いてきた。
「本当に大丈夫だって思う?」
母親の心境というのを理解しているのだろう。
「僕はもっと違う問題があるけどね」
「なんですかそれ?」
「菫達が子供を作ったらどうなるかが僕は恐ろしいね」
「あの子はあれでもちゃんと女の子なんですよ?」
女の子が2丁拳銃持って暴れてるんだけど、それは大丈夫なのかい?
「そうですね。私も撃ってみたかったかな?」
美希はそう言って笑っていた。
そういう問題なのだろうか?
(2)
「雪、どうしたんだ?」
「ちょっと相談があるんだけど」
私は従兄の結に相談をもちかけていた。
結は茉奈に一言言うと「ちょっと散歩でも行こうか」と言って朝の海岸を歩いていた。
「誠司郎の事か?」
そういう相談は茉奈の方がいいんじゃないのか?と笑っている。
「結じゃないとダメなの。あ、別に浮気を企むとかじゃないよ」
「小学生の雪にそんな感情持ったら俺が茉奈に殺されるよ」
それもそっか。
「自分の能力に自信がないってところか?」
見抜かれていた。
さすがは炎帝といったところか。
私は説明をした。
私の能力なら絶対に大丈夫だと思ってたのに、誠司郎を危険な目に合わせてしまった。
もっと攻撃的な能力が必要なんじゃないだろうか?
やっぱり私はダメな子なんじゃないか。
自分に自信がないと結に話した。
結は歩きながらちゃんと聞いてくれた。
流木にかけると私を隣に座らせてくれた。
「そうだな、とりあえずは雪の油断といったところじゃないか?」
「え?」
溺れたときに私はパニックになって必死に人命救助をしていた。
って、パニック?
「私は冷静にだと思ったんだけど」
「本当にそう言えるか?」
私が誠司郎に保険をかけているのは知っている。
銃弾を防げるのに溺れる程水を飲むという事態を否定できないのはおかしいと思わないか?
私はそれをきいてはっとした。
やっぱり私はまだまだなんだ。
そんな私を見て結は話を続ける。
「雪に必要なのは能力じゃない。この世界の理だよ」
それは勉強して身に着けるしかない。
それさえ知っていれば”上書き”と”否定”を使い分けたら最強の能力だ。
「結に言われても皮肉にしか聞こえない」
「そのうち意味が分かるよ」
例えば私達につけているエイリアスの行動制限も雪が気づいていたら解除できた。
その能力の特性が故に私は結以上に冷静でいなければならない。
「しっかりしてないと誠司郎は雪の事を信用している」
そんなに揺らいでいると誠司郎と共倒れだぞ。
「わかった。ありがとう」
「気にするな従妹の可愛い相談だ」
「茉奈とは上手くやっているの?」
「多分な」
「そうじゃなかったら二人きりにさせないよ」
いつの間にか茉奈が来てた。
「朝食出来たのに戻ってこないから様子見に来た」
「別に浮気してたわけじゃないよ」
「聞いてたから知ってるよ。それにそんなロリコンなら水奈にチクってやる」
「それは勘弁してほしいな」
結はそう言って笑っていた。
「じゃ、頑張れよ”氷帝”」
結がそう言って3人でテントに戻る。
「あ、そうだ。雪」
結が声をかけた。
「どうしたの?」
「ひょっとしたら雪の力が必要かもしれない」
「私の?」
「その時が来たら話すよ」
そう言ってご飯を食べだす結。
結ほどの能力者が私の能力が必要だという。
結は何をする気なのだろう?
「空や、本当にそれで大丈夫なのかい?」
僕は空に聞いてみた。
翼達も気になるらしい。
結のエイリアスという存在がSHを徹底的にガードしている。
だから心配することは無いと思っていた。
だけど彼らはそのエイリアスの防御を突破する方法を見つけ始めた。
これ以上結達だけに任せるわけにはいかない。
前の様にさっさと力づくで潰した方がいいんじゃないだろうか?
天音や水奈も同じ考えだった。
「そんなに地獄で親に会いたいなら遠慮することないだろ」
天音がそう言っていた。
それでも空は手を出さないと決めていた。
「なんだよ!お前がビビったとか言ったら私がお前を殺すぞ」
絶対に無理だと思うけど天音が空に怒鳴っていた。
翼はその理由がビビったからじゃないと知っているようだった。
「空、ちゃんと説明しないと皆納得しないよ」
自分の子供達が危険な目にあってるんだ。
放っておけるわけがないと翼が言っていた。
「理由は簡単だよ。仮に力づくでリベリオンを潰したとしてその後どうするの?」
肝心の十郎がすぐに逃げ出す。
それを繰り返すだけだと空が言った。
「じゃあ、仮に結が暴れても……」
水奈が言うと天音が気づいたようだ。
「空は結が何を企んでいるのか知ってるのか?」
「まあね」
「なんだよそれ!」
水奈が空に詰め寄る。
「今まで通り雑魚の相手をしてもらちが明かない。だから中枢から破壊する気だ」
多分直接十郎に接触する気でいる。
空はそう言った。
その手段については今は言えない。
リベリオンの耳に届いたら水の泡だ。
しかしそこまで空が言うと皆気づいてしまう。
結の母親の美希が空に聞いていた。
「それは結にとって危険なのでは?」
「だから結が自分でやると決めたんだろ」
結達は花火で遊んでいる。
なずなと花に任せていたら問題ないだろう。
父さん達は「もういい加減勘弁しておくれ。のんびり家で過ごしたい」と楽しているみたいだ。
「俺もさすがにそれはちょっと賛同できない。親が何もしないで子供に全部任せるのか?」
学も反対みたいだった。
「十郎の居場所さえわかれば直接ぶっ殺しにいけばいいんだろ?だったら私の得意分野だ」
天音は石原家の力を使うつもりだろう。
そして祈も同じだった。
「私も天音と協力して十郎ってやつをあぶりだす。後は娘がやるだろうし」
「そう、結局矢面に立つのは子供だ。だったら最初から任せてもいいだろう」
「ふざけんな!子供を矢面に立たせて私達は大人しくしてろって言うのか!?」
天音の怒りももっともだ。
いくら何でもそれは酷い。
だけど空はゆっくりと酒を飲んでいた。
「天音、一つ聞くけどどうやってあぶりだすの?」
県内を爆撃してあぶりだす?
天音ならやりかねないね。
「江口家と志水家の力を使えばそんな真似しなくても」
「それがだめだから子供に任せてるんだ」
「どういう意味だ?」
光太も気になったみたいだ。
僕と大地はなんとなく気づいたけどね。
悩んでいる妻の美希に説明した。
「江口家と志水家の力は良くも悪くも巨大すぎるのが問題なんだ」
「どうしてですか?」
「そんな二つの力をマークしてないはずがない」
動けば必ず気づかれる。
後は同じ事の繰り返しだ。
FGとは違う。
あいつらは世界中で動いてる組織だ。
その中心が日本の地元にいるっていうのは都合がよすぎる。
それを下手に刺激して逃がしたら元も子もない。
そんな人間を周りに被害を出すことなく抹殺するなんて絶対に無理だ。
いまさら気にするような事でもない気がするんだけどね。
「じゃあなぜ結ならいいんだ?」
「結じゃないと無理だから」
空の父さんも認めていたらしい。
片桐家の最強の切り札がの結だ。
結はあまりしゃべらないから気づかないけど間違いなくもう標的を決めている。
それでも止めを刺そうとしないのは何らかの意図があるから。
「それも空は知ってるのか?」
「さっきも言ったはずだけど?」
空の意図が分からない光太達。
翼が代弁してくれた。
「穴倉って知ってる?」
「将棋の囲いの事?」
美希が言うと翼が頷いた。
「あれさ、囲いを破るのにムキになってるとその隙に王様逃げちゃうでしょ?」
それが今までのSH……
真っ向勝負で力づくで潰してもその間に王様は高跳びする。
だからその前に王様の逃げ道を抑える必要がある。
「まさか全部の交通系統を封鎖するつもり?」
「それだったら僕達でも出来るだろ?」
問題はその封鎖の動きがでたら気づかれてその前に逃げられる危険性。
……でもまてよ。
「空や、一つ気になったことがあるんだけど」
「どうしたの?善明」
「その理論だと結のリベリオン狩りはまずいんじゃないかい?」
全部叩き潰すのはまずいんだろ?
空も同じ事を考えていた。
問題はその先にあった。
「善明の言う通りだよ。だけど結はしっかり企んでる」
そこから先は結だけが知っている情報だから分からない。
だけど明らかに何かを狙っている。
その証拠に茜や純也に流している彼らの根城の中に十郎は無い。
十郎にはまだ手を出すな。
暗にそう言ってるようだと空は言う。
「父さんも言っていたんだ。切り札は先に見せたらダメ。まずは相手に切り札を出させろ」
「……つまり十郎はまだ奥の手を持っている?」
冬吾が聞くと空は頷いた。
その証拠にいくら雑魚を叩いても彼らは動かない。
まだ何か余裕があるという事だ。
そしてその正体を結は知っている。
「そこまで結は知っていてどうして動かないんだ?」
水奈が空に聞いていた。
「簡単だよ。多分結の目的は……」
「なんだよ?」
「十郎に負けを認めさせる事」
徹底的に屈辱を味合わせる事。
そうしないとまた復讐なんてしょうもない事企むから。
それを続けていくのも面倒だ。
その証拠に誠司郎を襲った連中をまだ放っている。
何かを企んでいるのだろう。
「水奈もパオラも心配しなくていい。父さんから聞いているから」
結は毎日ちゃんと茉奈の安否を確認しているらしい。
エイリアスもつけている。
同じミスをするな。
水奈の言葉をしっかり胸に刻んでいるそうだ。
「結局結は何を企んでるんだよ?」
光太は空に聞いていた。
空は表情一つ変えずに答えた。
「将棋で例えたから分かりづらかったかな?」
逃げ道を全部つぶすなんて芸当ならそれこそ純也や天音の出番だけどそうじゃない。
そんなめんどくさい真似をするよりもっと効果的な方法がある。
「なんだよそれ?」
天音が聞いていた。
翼は気づいたみたいだ。
「……将棋で言うなら王様が自分の手下の駒に逃げ道を塞がれて動けない状態」
僕もその一言で気づいた。
大地も気づいたみたいだ。
「つまり内部から破壊するのですか?しかしそれだと内部に到達する前に逃げ出してしまう」
「だからその前に逃げれない状態に追い込む。そうだよね?空」
「翼のいう事は半分あってるけどそれだとやっぱり先に逃げ道用意するよ」
「じゃあ、どうするんだよ?」
天音が聞くと空は茜を見た。
「茜は誠さんが師だったんだろ?」
「どっちの意味で?男を喜ばせるテクも教えてもらったけど」
「あの馬鹿……」
ため息を漏らす水奈を笑いながら空は言った。
「そっちじゃない。ネット関係」
「それがどう関係あるの?」
茜には分からないらしい。
だけど空は父親からある程度の策を教えられたそうだ。
「茜はセキュリティの硬いサーバーに力づくで入るの?」
「あっ!?そういう事?」
茜には十分すぎるヒントだったようだ。
理解した茜を見て空は頷いた。
結の作戦は単純だけど危険すぎる作戦。
硬い防壁を力づくで突破している隙に逃げられる。
なら内部に直接侵入すればいい。
どうやって?
そんなの簡単だ。
空の考えで言うなら”トロイの木馬”ってやつだろう。
直接中に侵入して十郎をしとめる。
どうやって中に入るか?
すんなり入るやり方が多分結の作戦だろう。
その為の人選をしている最中なんじゃないかと空は言った。
「大丈夫なのか?バレたらやばすぎるだろ」
天音ですら危険だと思う狂気の行動。
だけど空は結だから出来る作戦だと言う。
空や冬吾でも出来るけど空は目立ちすぎてダメだ。
冬吾もサッカー選手という立場上そんな真似できない。
なら結がやるしかない。
母親の美希にしてみれば不安でしかないだろう。
そんな美希を見て空は言う。
「だから言ったろ。結は片桐家最後の切り札」
表向きはSHとリベリオンの抗争にしておけばいい。
結の情報は結が片っ端から抹消しているから問題ない。
後はどうやって結が内部に侵入するか。
今その不安を外に見せたら結が不利になる。
親が子供の足を引っ張るわけにはいかない。
危険だと判断したら空が止める。
でも、もう少し結を信用してあげて欲しいと空は言った。
記憶をも改ざんする結なら確かにその可能性はある。
ただその標的を人選しているんだろう。
ただの下っ端じゃ十郎に届かないから。
「つまりあいつ一人でまとめて始末するつもりなのか?」
天音が聞いてくると僕は頷いた。
多分そのつもりだろう。
そして下手に手を出すと結を危険な目に合せる事になる事も伝えた。
「本当に大丈夫なんだろうな?茉奈はいつも心配してるんだ」
現状でもほとんど結が一人でリベリオンの相手をしている。
いつか事故が起きるんじゃないかと茉奈が心配していると水奈が言う。
「仮に結の力が及ばない相手がいたとして、そんな奴を僕達が相手に出来ると思う?」
「まあ、確かにそうだな」
学は納得したらしい。
結局結に頼るしかないんだ。
その代わり結が協力を求めてきたらその時は力を貸そう。
そう結論を出すと良い時間なので皆テントに戻る。
テントの中に入ると寝ようとすると翼が聞いてきた。
「本当に大丈夫だって思う?」
母親の心境というのを理解しているのだろう。
「僕はもっと違う問題があるけどね」
「なんですかそれ?」
「菫達が子供を作ったらどうなるかが僕は恐ろしいね」
「あの子はあれでもちゃんと女の子なんですよ?」
女の子が2丁拳銃持って暴れてるんだけど、それは大丈夫なのかい?
「そうですね。私も撃ってみたかったかな?」
美希はそう言って笑っていた。
そういう問題なのだろうか?
(2)
「雪、どうしたんだ?」
「ちょっと相談があるんだけど」
私は従兄の結に相談をもちかけていた。
結は茉奈に一言言うと「ちょっと散歩でも行こうか」と言って朝の海岸を歩いていた。
「誠司郎の事か?」
そういう相談は茉奈の方がいいんじゃないのか?と笑っている。
「結じゃないとダメなの。あ、別に浮気を企むとかじゃないよ」
「小学生の雪にそんな感情持ったら俺が茉奈に殺されるよ」
それもそっか。
「自分の能力に自信がないってところか?」
見抜かれていた。
さすがは炎帝といったところか。
私は説明をした。
私の能力なら絶対に大丈夫だと思ってたのに、誠司郎を危険な目に合わせてしまった。
もっと攻撃的な能力が必要なんじゃないだろうか?
やっぱり私はダメな子なんじゃないか。
自分に自信がないと結に話した。
結は歩きながらちゃんと聞いてくれた。
流木にかけると私を隣に座らせてくれた。
「そうだな、とりあえずは雪の油断といったところじゃないか?」
「え?」
溺れたときに私はパニックになって必死に人命救助をしていた。
って、パニック?
「私は冷静にだと思ったんだけど」
「本当にそう言えるか?」
私が誠司郎に保険をかけているのは知っている。
銃弾を防げるのに溺れる程水を飲むという事態を否定できないのはおかしいと思わないか?
私はそれをきいてはっとした。
やっぱり私はまだまだなんだ。
そんな私を見て結は話を続ける。
「雪に必要なのは能力じゃない。この世界の理だよ」
それは勉強して身に着けるしかない。
それさえ知っていれば”上書き”と”否定”を使い分けたら最強の能力だ。
「結に言われても皮肉にしか聞こえない」
「そのうち意味が分かるよ」
例えば私達につけているエイリアスの行動制限も雪が気づいていたら解除できた。
その能力の特性が故に私は結以上に冷静でいなければならない。
「しっかりしてないと誠司郎は雪の事を信用している」
そんなに揺らいでいると誠司郎と共倒れだぞ。
「わかった。ありがとう」
「気にするな従妹の可愛い相談だ」
「茉奈とは上手くやっているの?」
「多分な」
「そうじゃなかったら二人きりにさせないよ」
いつの間にか茉奈が来てた。
「朝食出来たのに戻ってこないから様子見に来た」
「別に浮気してたわけじゃないよ」
「聞いてたから知ってるよ。それにそんなロリコンなら水奈にチクってやる」
「それは勘弁してほしいな」
結はそう言って笑っていた。
「じゃ、頑張れよ”氷帝”」
結がそう言って3人でテントに戻る。
「あ、そうだ。雪」
結が声をかけた。
「どうしたの?」
「ひょっとしたら雪の力が必要かもしれない」
「私の?」
「その時が来たら話すよ」
そう言ってご飯を食べだす結。
結ほどの能力者が私の能力が必要だという。
結は何をする気なのだろう?
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