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RADIANT FORCE
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(1)
「……ねえ海翔?」
「どうしたの?」
京都のお土産屋さんで優奈が聞いてきた。
修学旅行で関西方面に来ている。
僕は優奈と一緒にお土産屋さんでプラスチックの模造刀を持っていた。
「本気でそれ買うの?」
「そうだよ?」
何かおかしいことなのだろうか?
新選組の羽織を買った時も同じ事を聞いていた。
すると優奈は少し考えて言った。
「羽織は袋に入れてあるからいいけど、京都の町中をそれ持って歩き回るの?」
それは優奈が一緒にいるという事も考えているのか?
優奈や愛菜達だっている。
どういう風にみられるか少しでも考えてくれた?
「……やっぱり恥ずかしい?」
「正直に言うね。田舎者丸出しな感じがいや」
模造刀が物騒だからとかいう理由じゃない。
だって優奈達は相変わらず物騒な装備をしているから。
ただ模造刀は目立つ。
グラサンかけた背の高いお兄さんじゃあるまいし、ただ目立つだけ。
それは珍しさじゃない。
「模造刀なんか持ち歩いていかにも修学旅行生だよね」
そんな風に見られたくない。
にいにが言ってた。
「彼女に恥をかかせるような事はしたらダメ」
その何倍も苦労して結莉はにいにが恥ずかしくないようにお洒落している。
茉莉は天音がかなり苦労しているみたいだけど。
「お前はどこに行くつもりだ!?近所の銭湯に行くわけじゃないだろ!?」
朔とデートするんだったら天音が服を選んでやるからそれにしとけ。
茉莉も自分のセンスが悪いのは薄々気づいたらしい。
だけど朔とデートじゃなかったらどんな服着てても問題ないだろ。
そう言って制服のスカートの下にジャージを着て登校している。
「部活生はやっていて帰宅部はダメってどういう理屈だ!ふざけた事言うとぶっ殺すぞ!」
それだけじゃない。
「ば、馬鹿!そんなもん何処で買って来たんだ!?」
ある朝茉莉がダイニングに現れると大地も驚いていた。
ジャージはダメだと判断した。
寒いからタイツくらいはいいだろう。
色も黒だから問題ない。
問題は別にあった。
「お前はなんでわざわざ網タイツなんて物を選ぶんだ!」
「私だって馬鹿じゃないからネットで調べた」
そしたら女子高生が網タイツを穿いている動画があったからこれなら朔も喜ぶだろうと買ったらしい。
すると大地が茉莉に言ってた。
「そういう男がいる事は知ってる。でも朔がそれを気に入るかは確認したの?」
「いきなり見せた方が驚くと思ったから教えてない」
「率直に言わせてもらうね。その格好は皆が驚くだろう。でもきっと朔は喜ばない」
その姿は単に茉莉の品格を下げているだけだ。
大人でも網タイツなんて選択はまずしない。
その姿を見て男なら誰もが思う事は一つだけ。
「この子は男に飢えてるのだろうか?」
そんな風に誤解されたら朔だっていい気はしないし、茉莉だってそんな風に見られたら嫌だろ?
大地がそう言うと茉莉は素直に着替えた。
「お前でもそういう風に思う事あるんだな」
「さすがに高校生の時は必死になったよ。天音に恥かかせたくないから」
にいにも同じような事を言ってた。
彼女というのは彼氏の何倍も見た目に気を使う。
下品じゃないか?
子供っぽくないか?
浮いてないか?
だから彼女が遠回しにその格好はまずいと言ってきたら素直に従った方が良い。
僕は諦めて模造刀を置いてきた。
「欲しいなら通販で買えばいいんじゃない?」
それに湯布院にだって売ってるだろう。
「あ、この湯飲み可愛くない?」
優奈がそう言って湯飲みを持っていた。
僕が落ち込んでいると誤解したのだろう。
だから僕は優奈に言ってあげた。
「そう言うのなら明日のテーマパークで選べばいいって天音が言ってた」
優奈のお気に入りのキャラクターのマグカップとか売ってるらしいから。
集合時間になると悠翔達と集まった。
琴音が頭を抱えていた。
その理由はすぐにわかった。
快が木刀を買って喜んでいた。
家に持って帰って花に怒られたらしい。
(2)
「あれ?愛菜と智也じゃん」
「琴音と快もどうしたの?」
3日目。
大阪の水族館に来ていた。
優奈と海翔は水族館に入ろうともしなかった。
チケットを買えなかったわけじゃない
「つまらん」
「食べれない」
2人の意見だった。
愛菜もあまり好きじゃないかなと思ったけど、そうでもなかったらしい。
「智也なかなかデート誘ってくれないからこういう時くらい一緒に楽しみたい」
昨日白昼堂々と銃をぶっ放した愛菜の発言だ。
ちなみにさすがに通報された。
しかし愛菜と優奈は最後まで隠しきった。
警察官がボディチェックをしようとすると「触るなこの変態!」と抵抗し、女性警察官を連れてきても銃は見つからない。
当たり前だ。
海翔が隠した。
そして銃が無いと分かると愛菜達が怒り出す。
「貴重な自由時間なのにどうしてくれるんだ!」
そうやって警察に文句を言っている間に時間になって機嫌の悪い優奈と愛菜。
今日も不安だったけど愛菜は機嫌は良さそうだ。
琴音と愛菜が話をしている間に俺も快と話をしていた。
「お前はどうだ?上手くやってる」
「わかんない。快は何かコツを知ってるのか?」
「何今さら付き合いたてみたいな事言ってるんだよ」
快はそう言って笑うと優奈に「一通り見たんだろ?ちょっと智也借りてもいいか?」と聞いていた。
「智也に変な事吹き込むなよ?」
愛菜も琴音と話をしていた。
少し離れたところで言った。
「さっき言ってたことが本当なら、地元に帰ったらとりあえずクリスマスの計画くらい考えておけ」
「皆で遊ぶんじゃないのか?」
「お前と愛菜だけ別でもいいだろ。……断言する。おまえろくにデート誘ってないだろ?」
だったら「クリスマスくらい愛菜と二人っきりで過ごしたい」とか言えば喜ぶよ。と快は言った。
琴音から情報は入ってるらしい。
やっぱりデートに誘ってくれないのが不満みたいだ。
とはいえ、どういう所に行けばいいのか分からない。
「別に映画見てファストフード店でもいいんだよ」
俺達は中学生。
愛菜だってそのくらいわかってる。
今できる事で楽しめればそれでいいんだ。
いずれ高校生や大学生になればやれる事が増える。
そういうのを一緒に楽しめる相手に俺を選んだのだから自信持て。
なるほどな……。
「快はよく琴音とデートするのか?」
「まあな、母親が仲いいのもあるからさ」
「琴音から他に不満聞いてないか?」
「いや、特に?そう言うのを気にするんだったら、俺じゃなくて愛菜に聞いてみたらいいだろ?」
言っとくけど「俺といて楽しい?」なんて聞き方は止めろよ。
逆に愛菜が不安になるだろうし。
「快は慣れてるんだな」
「お前もそうなるはずなんだよ」
それだけ琴音と話をしたり一緒にいるからコツを覚える。
俺が自信無いのはそれだけ経験が足りないから。
ぶっちゃけると愛菜に構ってやれてないから。
そうやってぶつかったりして築いていくのを絆っていうんだ。
「じゃ、そろそろ行こうか」
快が言う。
後は新幹線に乗って地元へ帰るだけ。
隣に座って眠そうにしていた愛菜に声をかけてみた。
「愛菜、ちょっと話をしてもいいかな?」
「智也は彼女と話をするのにいちいちそうやって許可を得るのか?」
愛菜の言う通り変な話だな。
「ご、ごめん」
「いいよ。退屈だからって彼氏の隣で爆睡もどうかなと思ってたから」
入学式の時は爆睡してたけどな。
「で、どうした?」
「あのさ……」
どう聞いたらいいか快に聞いておけばよかった。
上手く聞き出す方法を必死に探していた。
「俺の事どう思ってる?」
「は?」
やっちまったかな?
「今ここでそれを言わせるつもりか?」
愛菜にだって恥ずかしいと思う気持ちがあるらしい。
「いや、今じゃなくてもいいんだけど」
「……つまりそういう相談を快としてたのか?」
「うん」
「本当に男子ってしょうもないな」
そういって俺にデコピンすると耳元で「好きだよ」とささやいてくれた。
「私はちゃんと言った。だから智也も今聞かせてくれよ」
愛菜がそう言うと身を愛菜の方に乗り出して耳元で囁こうとした時だった。
愛菜は俺の顔を掴んでキスをする。
……恥ずかしいんじゃなかったのか?
「彼氏とキスするのが恥ずかしいなら付き合わねーよ」
それに俺とはもっと先も済ませてるだろ?
「快に聞いたんだろ?私が不満を持ってるって」
あいつがばらしたのか?
そうじゃないらしい。
琴音を経由して愛菜の耳には言ったそうだ。
「私も琴音に相談したんだ」
「何を?」
「智也の事」
派手に暴れたけど、それは女子として幻滅したんじゃないのか?
私に告白して後悔してないか。
すると琴音も快と同じ事を言ったらしい。
「もっと2人の時間作りなよ。胸に抱えてる事を私じゃなくて智也に言えばいい」
二人がそんな不安を抱えている間は大丈夫。
それが大丈夫って胸を張って言えるようになったら愛と呼べるらしい。
恋はいつも不安定。
だから二人でいないと寂しいと思ってしまう。
楽しいだけが恋じゃない。
そういうもどかしい気持ちをいかに相手に伝えるかが恋愛なんだって。
「……クリスマスさ。愛菜がよかったら2人で過ごさないか?」
「いいよ。一つ注文つけてもいいか?」
「注文?」
「そ、私が智也の家に泊まりに行く」
「……大丈夫なのか?」
「他の連中は多分朝まで遊んでるんだろ?」
私達も2人で朝を迎えないか?
「琴音の言ってた通りだな」
「何を聞いたの?」
俺が聞くと愛菜は笑って答えた。
「やっぱり彼氏にデートに誘ってもらえることが一番嬉しい」
「今までごめん。気づかなくて」
「それが普通の男子なんだよ」
悠翔は相変わらず誘ってるところを見た事が無い。
私達は彼氏の部屋をつかうから遠慮なくやれと言ったのに「まだ子供だから」と拒否しているそうだ。
それが普通だと思ったのは気のせいだろうか?
「あと2年後の楽しみにしとけよ」
「どういう意味?」
「女子高生が彼女って嬉しいだろ?」
その時は俺は高校生なんだけどそんなに特別な事なんだろうか?
「愛菜は受験大丈夫なのか?」
「私だって自分の名前くらい書ける!」
名前書いとけば合格すると母親の水奈に聞いたらしい。
「それが母親の教育なのか!?大体愛菜の志望校知ってるのか!?」
父親の学と同じ公立校だぞ!と学が叱ったらしい。
「母さんだって受かったんだから大丈夫だ!」
「私だって少しは勉強したぞ!」
優奈と愛菜は結莉や茉莉に「深夜にラーメン食うのも勉強するのも変わらない。好きにしろ」と聞いたらしい。
結莉や茉莉と同じだと思える愛菜が凄いと思った。
「いいか!結莉や茉莉は天音の娘……愛莉の孫なんだ!?」
祖父の性能が凄すぎて忘れているかもしれないが、次元が違うレベルでのチートなんだ。
優奈達が苦手な数式だってややこしい過程をすっ飛ばして答だけひらめくとか言う才能の持ち主と一緒にしたらだめだ。
しかし優奈達はそんな神奈さんの意見に異議を唱えたらしい。
「愛莉がそうだったから結莉達がああなった。ってのは間違ってるよ!」
「なんでだ!?」
「水奈は神奈より大きいじゃない!」
「ば、馬鹿!!」
その日神奈さんは落ち込んで帰ったらしい。
「いくら何でも白紙じゃ合格しないぞ」
学がそう言って二人を説得していた。
優奈と愛菜はどこまでも前向きだ。
「じゃ、なんか書いておけばいいんだね」
そんな返事を平然とする。
それでも学はにやりと笑って返事をした。
「ああ、書けるなら好きに書けばいい」
「まじか!?」
驚いたのは水奈だった。
「学!お前私の時はめちゃ勉強させておいて娘にはそれは甘すぎなんじゃねーのか!?」
「ああ、そうだ。だって水奈は何を書けばいいかすらわかってなかったじゃないか」
宿題だって天音のを丸写しするという行為すらしなかった。
だから問題がどういう意味かを理解していないから何を書けばいいか分からなかった。
それがテストの問題だ。
知識が全くないんじゃテストで回答するって意味だ。
しかし愛菜達にそんな事言っていいのだろうか?
数学の問題で〇〇という証明をしなさいというのがあった。
愛菜達は平気で回答していた。
「違うっていう理由を先にお前が説明するのが筋じゃねーのかボケ!」
数学の教師に呼び出されて怒られていた。
それでも私立なら名前書けば受かるというのは確からしい。
でも出来るなら一緒の学校に通いたい。
多分大学だってそうだ。
……一つだけ方法があった。
「なあ、毎日デートとかしても愛菜は平気か?」
「なんだ?その気になってくれたのか?」
「デートって一緒にいたらいいんだよな?」
「2人っきりでって条件足してくれ」
「分かった。いい案がある」
「何を思いついたんだ?」
「愛菜の家で一緒に勉強しないか?」
せめて来年の1年間だけは真面目に勉強しないか?
悠翔じゃだめでも俺なら大丈夫じゃないのか?
俺だって海翔ほどじゃないけどそれなりの成績は維持してるから。
「でもそれ、私が智也の邪魔してるだけにならないか?」
「そう思ってるなら大丈夫なんじゃないか?」
「なんでだ?」
不思議そうに聞いてくる愛菜に答えた。
「そう思ってるなら足を引っ張る真似しないだろ?」
「……それもそうだな。でも約束してくれ」
「どうしたんだ?」
「智也が手伝ってくれるなら私も真面目に勉強する。だから休日くらい遊んで欲しい」
「そうだな。じゃ、帰ったら早速始めようか?」
「クリスマス楽しみにしてるからな」
一緒に下着買いに行くか?
相変わらず無理難題を言う彼女と楽しく会話をしながら旅行は終わった。
「……ねえ海翔?」
「どうしたの?」
京都のお土産屋さんで優奈が聞いてきた。
修学旅行で関西方面に来ている。
僕は優奈と一緒にお土産屋さんでプラスチックの模造刀を持っていた。
「本気でそれ買うの?」
「そうだよ?」
何かおかしいことなのだろうか?
新選組の羽織を買った時も同じ事を聞いていた。
すると優奈は少し考えて言った。
「羽織は袋に入れてあるからいいけど、京都の町中をそれ持って歩き回るの?」
それは優奈が一緒にいるという事も考えているのか?
優奈や愛菜達だっている。
どういう風にみられるか少しでも考えてくれた?
「……やっぱり恥ずかしい?」
「正直に言うね。田舎者丸出しな感じがいや」
模造刀が物騒だからとかいう理由じゃない。
だって優奈達は相変わらず物騒な装備をしているから。
ただ模造刀は目立つ。
グラサンかけた背の高いお兄さんじゃあるまいし、ただ目立つだけ。
それは珍しさじゃない。
「模造刀なんか持ち歩いていかにも修学旅行生だよね」
そんな風に見られたくない。
にいにが言ってた。
「彼女に恥をかかせるような事はしたらダメ」
その何倍も苦労して結莉はにいにが恥ずかしくないようにお洒落している。
茉莉は天音がかなり苦労しているみたいだけど。
「お前はどこに行くつもりだ!?近所の銭湯に行くわけじゃないだろ!?」
朔とデートするんだったら天音が服を選んでやるからそれにしとけ。
茉莉も自分のセンスが悪いのは薄々気づいたらしい。
だけど朔とデートじゃなかったらどんな服着てても問題ないだろ。
そう言って制服のスカートの下にジャージを着て登校している。
「部活生はやっていて帰宅部はダメってどういう理屈だ!ふざけた事言うとぶっ殺すぞ!」
それだけじゃない。
「ば、馬鹿!そんなもん何処で買って来たんだ!?」
ある朝茉莉がダイニングに現れると大地も驚いていた。
ジャージはダメだと判断した。
寒いからタイツくらいはいいだろう。
色も黒だから問題ない。
問題は別にあった。
「お前はなんでわざわざ網タイツなんて物を選ぶんだ!」
「私だって馬鹿じゃないからネットで調べた」
そしたら女子高生が網タイツを穿いている動画があったからこれなら朔も喜ぶだろうと買ったらしい。
すると大地が茉莉に言ってた。
「そういう男がいる事は知ってる。でも朔がそれを気に入るかは確認したの?」
「いきなり見せた方が驚くと思ったから教えてない」
「率直に言わせてもらうね。その格好は皆が驚くだろう。でもきっと朔は喜ばない」
その姿は単に茉莉の品格を下げているだけだ。
大人でも網タイツなんて選択はまずしない。
その姿を見て男なら誰もが思う事は一つだけ。
「この子は男に飢えてるのだろうか?」
そんな風に誤解されたら朔だっていい気はしないし、茉莉だってそんな風に見られたら嫌だろ?
大地がそう言うと茉莉は素直に着替えた。
「お前でもそういう風に思う事あるんだな」
「さすがに高校生の時は必死になったよ。天音に恥かかせたくないから」
にいにも同じような事を言ってた。
彼女というのは彼氏の何倍も見た目に気を使う。
下品じゃないか?
子供っぽくないか?
浮いてないか?
だから彼女が遠回しにその格好はまずいと言ってきたら素直に従った方が良い。
僕は諦めて模造刀を置いてきた。
「欲しいなら通販で買えばいいんじゃない?」
それに湯布院にだって売ってるだろう。
「あ、この湯飲み可愛くない?」
優奈がそう言って湯飲みを持っていた。
僕が落ち込んでいると誤解したのだろう。
だから僕は優奈に言ってあげた。
「そう言うのなら明日のテーマパークで選べばいいって天音が言ってた」
優奈のお気に入りのキャラクターのマグカップとか売ってるらしいから。
集合時間になると悠翔達と集まった。
琴音が頭を抱えていた。
その理由はすぐにわかった。
快が木刀を買って喜んでいた。
家に持って帰って花に怒られたらしい。
(2)
「あれ?愛菜と智也じゃん」
「琴音と快もどうしたの?」
3日目。
大阪の水族館に来ていた。
優奈と海翔は水族館に入ろうともしなかった。
チケットを買えなかったわけじゃない
「つまらん」
「食べれない」
2人の意見だった。
愛菜もあまり好きじゃないかなと思ったけど、そうでもなかったらしい。
「智也なかなかデート誘ってくれないからこういう時くらい一緒に楽しみたい」
昨日白昼堂々と銃をぶっ放した愛菜の発言だ。
ちなみにさすがに通報された。
しかし愛菜と優奈は最後まで隠しきった。
警察官がボディチェックをしようとすると「触るなこの変態!」と抵抗し、女性警察官を連れてきても銃は見つからない。
当たり前だ。
海翔が隠した。
そして銃が無いと分かると愛菜達が怒り出す。
「貴重な自由時間なのにどうしてくれるんだ!」
そうやって警察に文句を言っている間に時間になって機嫌の悪い優奈と愛菜。
今日も不安だったけど愛菜は機嫌は良さそうだ。
琴音と愛菜が話をしている間に俺も快と話をしていた。
「お前はどうだ?上手くやってる」
「わかんない。快は何かコツを知ってるのか?」
「何今さら付き合いたてみたいな事言ってるんだよ」
快はそう言って笑うと優奈に「一通り見たんだろ?ちょっと智也借りてもいいか?」と聞いていた。
「智也に変な事吹き込むなよ?」
愛菜も琴音と話をしていた。
少し離れたところで言った。
「さっき言ってたことが本当なら、地元に帰ったらとりあえずクリスマスの計画くらい考えておけ」
「皆で遊ぶんじゃないのか?」
「お前と愛菜だけ別でもいいだろ。……断言する。おまえろくにデート誘ってないだろ?」
だったら「クリスマスくらい愛菜と二人っきりで過ごしたい」とか言えば喜ぶよ。と快は言った。
琴音から情報は入ってるらしい。
やっぱりデートに誘ってくれないのが不満みたいだ。
とはいえ、どういう所に行けばいいのか分からない。
「別に映画見てファストフード店でもいいんだよ」
俺達は中学生。
愛菜だってそのくらいわかってる。
今できる事で楽しめればそれでいいんだ。
いずれ高校生や大学生になればやれる事が増える。
そういうのを一緒に楽しめる相手に俺を選んだのだから自信持て。
なるほどな……。
「快はよく琴音とデートするのか?」
「まあな、母親が仲いいのもあるからさ」
「琴音から他に不満聞いてないか?」
「いや、特に?そう言うのを気にするんだったら、俺じゃなくて愛菜に聞いてみたらいいだろ?」
言っとくけど「俺といて楽しい?」なんて聞き方は止めろよ。
逆に愛菜が不安になるだろうし。
「快は慣れてるんだな」
「お前もそうなるはずなんだよ」
それだけ琴音と話をしたり一緒にいるからコツを覚える。
俺が自信無いのはそれだけ経験が足りないから。
ぶっちゃけると愛菜に構ってやれてないから。
そうやってぶつかったりして築いていくのを絆っていうんだ。
「じゃ、そろそろ行こうか」
快が言う。
後は新幹線に乗って地元へ帰るだけ。
隣に座って眠そうにしていた愛菜に声をかけてみた。
「愛菜、ちょっと話をしてもいいかな?」
「智也は彼女と話をするのにいちいちそうやって許可を得るのか?」
愛菜の言う通り変な話だな。
「ご、ごめん」
「いいよ。退屈だからって彼氏の隣で爆睡もどうかなと思ってたから」
入学式の時は爆睡してたけどな。
「で、どうした?」
「あのさ……」
どう聞いたらいいか快に聞いておけばよかった。
上手く聞き出す方法を必死に探していた。
「俺の事どう思ってる?」
「は?」
やっちまったかな?
「今ここでそれを言わせるつもりか?」
愛菜にだって恥ずかしいと思う気持ちがあるらしい。
「いや、今じゃなくてもいいんだけど」
「……つまりそういう相談を快としてたのか?」
「うん」
「本当に男子ってしょうもないな」
そういって俺にデコピンすると耳元で「好きだよ」とささやいてくれた。
「私はちゃんと言った。だから智也も今聞かせてくれよ」
愛菜がそう言うと身を愛菜の方に乗り出して耳元で囁こうとした時だった。
愛菜は俺の顔を掴んでキスをする。
……恥ずかしいんじゃなかったのか?
「彼氏とキスするのが恥ずかしいなら付き合わねーよ」
それに俺とはもっと先も済ませてるだろ?
「快に聞いたんだろ?私が不満を持ってるって」
あいつがばらしたのか?
そうじゃないらしい。
琴音を経由して愛菜の耳には言ったそうだ。
「私も琴音に相談したんだ」
「何を?」
「智也の事」
派手に暴れたけど、それは女子として幻滅したんじゃないのか?
私に告白して後悔してないか。
すると琴音も快と同じ事を言ったらしい。
「もっと2人の時間作りなよ。胸に抱えてる事を私じゃなくて智也に言えばいい」
二人がそんな不安を抱えている間は大丈夫。
それが大丈夫って胸を張って言えるようになったら愛と呼べるらしい。
恋はいつも不安定。
だから二人でいないと寂しいと思ってしまう。
楽しいだけが恋じゃない。
そういうもどかしい気持ちをいかに相手に伝えるかが恋愛なんだって。
「……クリスマスさ。愛菜がよかったら2人で過ごさないか?」
「いいよ。一つ注文つけてもいいか?」
「注文?」
「そ、私が智也の家に泊まりに行く」
「……大丈夫なのか?」
「他の連中は多分朝まで遊んでるんだろ?」
私達も2人で朝を迎えないか?
「琴音の言ってた通りだな」
「何を聞いたの?」
俺が聞くと愛菜は笑って答えた。
「やっぱり彼氏にデートに誘ってもらえることが一番嬉しい」
「今までごめん。気づかなくて」
「それが普通の男子なんだよ」
悠翔は相変わらず誘ってるところを見た事が無い。
私達は彼氏の部屋をつかうから遠慮なくやれと言ったのに「まだ子供だから」と拒否しているそうだ。
それが普通だと思ったのは気のせいだろうか?
「あと2年後の楽しみにしとけよ」
「どういう意味?」
「女子高生が彼女って嬉しいだろ?」
その時は俺は高校生なんだけどそんなに特別な事なんだろうか?
「愛菜は受験大丈夫なのか?」
「私だって自分の名前くらい書ける!」
名前書いとけば合格すると母親の水奈に聞いたらしい。
「それが母親の教育なのか!?大体愛菜の志望校知ってるのか!?」
父親の学と同じ公立校だぞ!と学が叱ったらしい。
「母さんだって受かったんだから大丈夫だ!」
「私だって少しは勉強したぞ!」
優奈と愛菜は結莉や茉莉に「深夜にラーメン食うのも勉強するのも変わらない。好きにしろ」と聞いたらしい。
結莉や茉莉と同じだと思える愛菜が凄いと思った。
「いいか!結莉や茉莉は天音の娘……愛莉の孫なんだ!?」
祖父の性能が凄すぎて忘れているかもしれないが、次元が違うレベルでのチートなんだ。
優奈達が苦手な数式だってややこしい過程をすっ飛ばして答だけひらめくとか言う才能の持ち主と一緒にしたらだめだ。
しかし優奈達はそんな神奈さんの意見に異議を唱えたらしい。
「愛莉がそうだったから結莉達がああなった。ってのは間違ってるよ!」
「なんでだ!?」
「水奈は神奈より大きいじゃない!」
「ば、馬鹿!!」
その日神奈さんは落ち込んで帰ったらしい。
「いくら何でも白紙じゃ合格しないぞ」
学がそう言って二人を説得していた。
優奈と愛菜はどこまでも前向きだ。
「じゃ、なんか書いておけばいいんだね」
そんな返事を平然とする。
それでも学はにやりと笑って返事をした。
「ああ、書けるなら好きに書けばいい」
「まじか!?」
驚いたのは水奈だった。
「学!お前私の時はめちゃ勉強させておいて娘にはそれは甘すぎなんじゃねーのか!?」
「ああ、そうだ。だって水奈は何を書けばいいかすらわかってなかったじゃないか」
宿題だって天音のを丸写しするという行為すらしなかった。
だから問題がどういう意味かを理解していないから何を書けばいいか分からなかった。
それがテストの問題だ。
知識が全くないんじゃテストで回答するって意味だ。
しかし愛菜達にそんな事言っていいのだろうか?
数学の問題で〇〇という証明をしなさいというのがあった。
愛菜達は平気で回答していた。
「違うっていう理由を先にお前が説明するのが筋じゃねーのかボケ!」
数学の教師に呼び出されて怒られていた。
それでも私立なら名前書けば受かるというのは確からしい。
でも出来るなら一緒の学校に通いたい。
多分大学だってそうだ。
……一つだけ方法があった。
「なあ、毎日デートとかしても愛菜は平気か?」
「なんだ?その気になってくれたのか?」
「デートって一緒にいたらいいんだよな?」
「2人っきりでって条件足してくれ」
「分かった。いい案がある」
「何を思いついたんだ?」
「愛菜の家で一緒に勉強しないか?」
せめて来年の1年間だけは真面目に勉強しないか?
悠翔じゃだめでも俺なら大丈夫じゃないのか?
俺だって海翔ほどじゃないけどそれなりの成績は維持してるから。
「でもそれ、私が智也の邪魔してるだけにならないか?」
「そう思ってるなら大丈夫なんじゃないか?」
「なんでだ?」
不思議そうに聞いてくる愛菜に答えた。
「そう思ってるなら足を引っ張る真似しないだろ?」
「……それもそうだな。でも約束してくれ」
「どうしたんだ?」
「智也が手伝ってくれるなら私も真面目に勉強する。だから休日くらい遊んで欲しい」
「そうだな。じゃ、帰ったら早速始めようか?」
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