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不安定な神様
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(1)
「ねえママ」
「どうしたの?」
私が愛莉さんとバレンタインのチョコを作っていると、興味を持ったのか雪が聞いてきた。
これはバレンタインのチョコレートを作ってる事とバレンタインについて簡単に説明した。
すると雪は少し考えて雪が聞いてきた。
「それ、誠司郎とかにあげたら喜ぶかな?」
「きっと喜ぶわよ。やってみる?」
そう言って雪にエプロンをつけてやるとお立ち台に立たせて説明する。
もうチョコレートは溶かしてある。
後は型に流し込むだけ。
小さなハート型のを何個も用意していた。
一緒にラッピングもしてあげる。
出来上がるとやや不安気味の雪だった。
少しでも不安を和らげてやりたい。
「そうだ、パパやじいじの分も用意しようか?」
「どうして?」
「バレンタインって親しい異性になら誰にでもあげるの」
最近じゃ女性同士で上げる友チョコなんてのもある。
だからそんなに特別なものじゃないから固くなる必要がないと雪に説明した。
「じいじ達も喜んでくれるかな?」
「孫娘のチョコだからきっと喜びますよ」
愛莉さんもそう言っていた。
当日の朝、雪は私達が見守る中、冬吾さんと冬夜さんにチョコを渡していた。
「雪が作ったの?」
「うん、ママ達に手伝ってもらったの」
「ありがとう」
そう言って冬吾さんは雪の頭を撫でていた。
冬夜さんは少し難しい顔をしていた。
「嬉しくなかった?」
不安そうに雪が聞くと冬夜さんは笑って言った。
「嬉しいんだけどね。じいじは愛莉以外からもらうと愛莉がすぐ拗ねるんだ」
「あら?冬夜さんは私のせいにするんですか?」
孫娘の初めてくらい大目にみますよと愛莉さんは笑っていた。
「じいじはこれから仕事だから帰ってから食べるね」
そう言って棚にしまって冬夜さんは出勤する。
午後になって多田家に訪れる。
パオラが出迎えてくれた。
「あら、雪。今日はどうしたの?」
パオラが聞くとやはり雪はカチカチに緊張していた。
「あの……これ誠司郎に」
誠司郎は素敵な男の子だから雪のチョコなんていらないかもしれないけど。
そんなことを言いながらパオラに差し出していた。
「そうだよ、誠司郎はモテるの」
「やっぱり……」
「……なんてね」
誠司郎が受け取ったのは優菜や愛奈に茉奈……従姉からとパオラと神奈さんらしい。
「だから心配しないでいいよ。きっと誠司郎も喜ぶから待ってて」
「そ、そんなつもりで用意したんじゃない。ママ、もう帰ろう」
そう言って雪が袖を引っ張るからパオラに挨拶をして私達は帰った。
夕食の時にパオラからお礼の電話をもらったと雪に知らせる。
ほっとしているようだった。
雪が寝たのを確認してリビングに戻ると冬吾さん達が飲んでいた。
「雪から言い出したの?」
冬吾さんが聞いてきたのでチョコを作っていた時の話を説明した。
「なるほどね、いいと思う」
話を聞いていた冬夜さんがそう言っていた。
「順調にいってるんでしょうか?」
「それは分からないよ」
「どうしてですか?」
「愛莉は僕の事忘れてない?」
冬夜さんも小学校の時に愛莉さんと付き合い始めたもののトラブルの絶えない生活を送っていた。
告白してから終わりじゃない。
そこから先が恋愛なんだ。
まだ雪達は始まってすらない。
今はまだ見守るだけ。
結末はきっと雪の名前が示しているのだろう。
(2)
誠司郎という友達を見つけた。
ただの友達なのに誠司郎といると息が出来ないくらい胸が苦しい。
誠司郎の名前を聞くだけで脈拍が上がる。
恥ずかしい。
その場から逃げ出したくなる。
私にとって誠司郎はただの友達じゃない。
異性だからだろうとじいじは言っていた。
バレンタインのチョコを渡してから誠司郎と会ってない。
私の事やっぱり嫌いなのかな?
片桐家の子供は皆すごい能力を持っているらしい。
だけど私はとても平凡な子供。
きっと恋の神様に見捨てられたのだろう。
なのに神様は悪戯好きらしい。
私にそんな感情を抱かせる。
一番大好きな人はパパだと思っていた。
だけどなぜか誠司郎を見るとそう言えなくなっていた。
会えない日が辛い。
訳も分からず泣き出しそうになる。
会えると嬉しい。
でも私と誠司郎の間に私は壁を作っていた。
誠司郎はとても素敵な人。
私なんかじゃきっと相応しくない。
人を好きになるというのは難しい。
辛かったり、泣きたくなったり寂しかったり。
どうしてこんな思いを幼い私がしないといけないのか。
また会ってくれるかな?
一緒に手をつないでくれるかな?
そんな日々を過ごしていた。
ある日家に来客があった。
応対したママが私を呼んでいる。
私が玄関に行くとパオラと誠司郎がいた。
「これ、バレンタインのお返し」
そう言ってにこりと笑う誠司郎の笑顔が私の心に突き刺さる。
中身は歪な形のクッキーだった。
「これ、誠司郎が作ったの?」
「よくわからないけどホワイトデーのお返しは3倍返しっていうらしいんだ」
手作りの価値が分からないから手作りでお返しした。
材料を3倍入れようとしてパオラに怒られたらしい。
「……誠司郎お菓子とか作ったことないでしょ」
「そうなんだよな。台所に立ったこともないし」
「立ち話もなんだから上がっていってよ」
「そうしたいんだけど優奈たちにもお返ししないといけないから」
そっか、優菜たちにも作ったんだ。
当然だよね。
そんな私を見たパオラがママに耳打ちしていた。
ママは私を見て笑う。
誠司郎達が帰った後何を話していたのか聞いてみた。
「誠司郎の手作りは雪にだけ、あとはパオラが作ったそうだよ」
それを聞いた私はすぐに自分の部屋に逃げ込んだ。
きっと顔が真っ赤になっているから。
その晩誠司郎の事を思いながら一つずつクッキーを味わっていた。
「ねえママ」
「どうしたの?」
私が愛莉さんとバレンタインのチョコを作っていると、興味を持ったのか雪が聞いてきた。
これはバレンタインのチョコレートを作ってる事とバレンタインについて簡単に説明した。
すると雪は少し考えて雪が聞いてきた。
「それ、誠司郎とかにあげたら喜ぶかな?」
「きっと喜ぶわよ。やってみる?」
そう言って雪にエプロンをつけてやるとお立ち台に立たせて説明する。
もうチョコレートは溶かしてある。
後は型に流し込むだけ。
小さなハート型のを何個も用意していた。
一緒にラッピングもしてあげる。
出来上がるとやや不安気味の雪だった。
少しでも不安を和らげてやりたい。
「そうだ、パパやじいじの分も用意しようか?」
「どうして?」
「バレンタインって親しい異性になら誰にでもあげるの」
最近じゃ女性同士で上げる友チョコなんてのもある。
だからそんなに特別なものじゃないから固くなる必要がないと雪に説明した。
「じいじ達も喜んでくれるかな?」
「孫娘のチョコだからきっと喜びますよ」
愛莉さんもそう言っていた。
当日の朝、雪は私達が見守る中、冬吾さんと冬夜さんにチョコを渡していた。
「雪が作ったの?」
「うん、ママ達に手伝ってもらったの」
「ありがとう」
そう言って冬吾さんは雪の頭を撫でていた。
冬夜さんは少し難しい顔をしていた。
「嬉しくなかった?」
不安そうに雪が聞くと冬夜さんは笑って言った。
「嬉しいんだけどね。じいじは愛莉以外からもらうと愛莉がすぐ拗ねるんだ」
「あら?冬夜さんは私のせいにするんですか?」
孫娘の初めてくらい大目にみますよと愛莉さんは笑っていた。
「じいじはこれから仕事だから帰ってから食べるね」
そう言って棚にしまって冬夜さんは出勤する。
午後になって多田家に訪れる。
パオラが出迎えてくれた。
「あら、雪。今日はどうしたの?」
パオラが聞くとやはり雪はカチカチに緊張していた。
「あの……これ誠司郎に」
誠司郎は素敵な男の子だから雪のチョコなんていらないかもしれないけど。
そんなことを言いながらパオラに差し出していた。
「そうだよ、誠司郎はモテるの」
「やっぱり……」
「……なんてね」
誠司郎が受け取ったのは優菜や愛奈に茉奈……従姉からとパオラと神奈さんらしい。
「だから心配しないでいいよ。きっと誠司郎も喜ぶから待ってて」
「そ、そんなつもりで用意したんじゃない。ママ、もう帰ろう」
そう言って雪が袖を引っ張るからパオラに挨拶をして私達は帰った。
夕食の時にパオラからお礼の電話をもらったと雪に知らせる。
ほっとしているようだった。
雪が寝たのを確認してリビングに戻ると冬吾さん達が飲んでいた。
「雪から言い出したの?」
冬吾さんが聞いてきたのでチョコを作っていた時の話を説明した。
「なるほどね、いいと思う」
話を聞いていた冬夜さんがそう言っていた。
「順調にいってるんでしょうか?」
「それは分からないよ」
「どうしてですか?」
「愛莉は僕の事忘れてない?」
冬夜さんも小学校の時に愛莉さんと付き合い始めたもののトラブルの絶えない生活を送っていた。
告白してから終わりじゃない。
そこから先が恋愛なんだ。
まだ雪達は始まってすらない。
今はまだ見守るだけ。
結末はきっと雪の名前が示しているのだろう。
(2)
誠司郎という友達を見つけた。
ただの友達なのに誠司郎といると息が出来ないくらい胸が苦しい。
誠司郎の名前を聞くだけで脈拍が上がる。
恥ずかしい。
その場から逃げ出したくなる。
私にとって誠司郎はただの友達じゃない。
異性だからだろうとじいじは言っていた。
バレンタインのチョコを渡してから誠司郎と会ってない。
私の事やっぱり嫌いなのかな?
片桐家の子供は皆すごい能力を持っているらしい。
だけど私はとても平凡な子供。
きっと恋の神様に見捨てられたのだろう。
なのに神様は悪戯好きらしい。
私にそんな感情を抱かせる。
一番大好きな人はパパだと思っていた。
だけどなぜか誠司郎を見るとそう言えなくなっていた。
会えない日が辛い。
訳も分からず泣き出しそうになる。
会えると嬉しい。
でも私と誠司郎の間に私は壁を作っていた。
誠司郎はとても素敵な人。
私なんかじゃきっと相応しくない。
人を好きになるというのは難しい。
辛かったり、泣きたくなったり寂しかったり。
どうしてこんな思いを幼い私がしないといけないのか。
また会ってくれるかな?
一緒に手をつないでくれるかな?
そんな日々を過ごしていた。
ある日家に来客があった。
応対したママが私を呼んでいる。
私が玄関に行くとパオラと誠司郎がいた。
「これ、バレンタインのお返し」
そう言ってにこりと笑う誠司郎の笑顔が私の心に突き刺さる。
中身は歪な形のクッキーだった。
「これ、誠司郎が作ったの?」
「よくわからないけどホワイトデーのお返しは3倍返しっていうらしいんだ」
手作りの価値が分からないから手作りでお返しした。
材料を3倍入れようとしてパオラに怒られたらしい。
「……誠司郎お菓子とか作ったことないでしょ」
「そうなんだよな。台所に立ったこともないし」
「立ち話もなんだから上がっていってよ」
「そうしたいんだけど優奈たちにもお返ししないといけないから」
そっか、優菜たちにも作ったんだ。
当然だよね。
そんな私を見たパオラがママに耳打ちしていた。
ママは私を見て笑う。
誠司郎達が帰った後何を話していたのか聞いてみた。
「誠司郎の手作りは雪にだけ、あとはパオラが作ったそうだよ」
それを聞いた私はすぐに自分の部屋に逃げ込んだ。
きっと顔が真っ赤になっているから。
その晩誠司郎の事を思いながら一つずつクッキーを味わっていた。
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