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cross road
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(1)
「結頑張ってたね」
母さんがそう言って頭を撫でてくれた。
そんなに頑張っては無いんだけど。
「絶対に本気で走ったらダメ」
桜子にそう注意されていた。
衝撃波とやらで観客等が大惨事になる。
適度な速度で1位を取る。
全力よりも面倒な作業だ。
……やっぱり頑張ったのかな?
とりあえずお弁当を食べよう。
隣で食べている茉奈も徒競走は1位だった。
茉奈も結莉や茉莉ほどじゃないけど他の人に比べたら十分早い。
海翔も同じだった。
そして大地やパパやじいじは飲んでなかったけど誠や瑛大は飲んでいた。
遊や天達も同じだ。
そして変わらないのは茉莉達が競技の時間になっても現れなかった。
桜子が探し回っている。
「今年は大丈夫だ」
絶対に見つからないという意味だろう。
天音が自信を持っていた。
そして見つける事が出来ずに桜子がやってきた。
「天音!今度は何を茉莉達に吹き込んだの!?」
「この糞暑い中熱中症にならないようにいい場所教えただけだよ」
「そうそう。あそこなら日も当たらないしな」
天音と水奈は得意気に言う。
そして神奈が叱っていた。
「お前達は娘に何を吹き込んでるんだ!」
「別にいいじゃん。茉莉達が競技に参加してもしらけるだろ?」
同い年の子供では絶対に太刀打ちできないのだから。
しかしお昼のお弁当を忘れるくらい休める場所か。
一体どこだろう?
すると母さんが父さんを睨んでいた。
「旦那様……白状してください!」
「え?」
父さんが驚いている。
どうやら父さんは茉莉達の潜伏場所が分かっているそうだ。
それはじいじも同じだった。
「冬夜さんもです!知ってるなら教えてください」
愛莉もじいじが気づいた事に気づいたらしい。
「いや、冬吾が言ってたことを思い出して」
じいじがそう言って説明した。
まだ冬吾が小学生の頃の話らしい。
誠司が冬吾に教えたそうだ。
「冬吾、学校で我慢できなくなったら体育館の倉庫がいいらしいぜ」
「何を我慢するの?」
「お前だって瞳子を抱きたいとか思ったことないか?」
「それ別に学校じゃなくてよくないか?」
それに愛莉から「そういうのは中学生になってからになさい!」と注意をされていたらしい。
何のことかさっぱり分からないけど。
「俺達これから中学生になるだろ?」
もっと盛りがつくって誠が誠司にアドバイスしたらしい。
マットがベッド代わりになるからいいらしい。
「でもあそこ汗臭くないか?」
「青春の匂いって言うんだってさ」
「誠司は冬吾にまで馬鹿な事吹き込まなくていい!」
そう冴から注意されていたそうだ。
瞳子も「冬吾君がその気になったら受け入れるけどせめて家にして欲しい」とお願いしたらしい。
それを聞いた桜子は早速体育館に向かった。
「お前……誠司に何を吹き込んだ!?」
今度は神奈が怒り出す。
「まさかあなた達……」
愛莉は違う心配をしたらしい。
「さっきパパが言っただろ?あんな汗臭い所で求めてくるなんてふざけた真似したらマットで圧死させてやる」
「私の彼氏は学だぞ!?そんな事するわけないだろ!」
天音と水奈は否定していた。
しかし確かに父さんと母さんは一緒に寝ている。
愛莉とじいじも一緒に寝ている。
だけど俺と茉奈にはまだ早いと母さんが言っていた。
何があるんだろう?
食事を終えてお茶を飲みながら考えていた。
ぽかっ
茉奈に小突かれた。
「結。そろそろ時間だよ」
茉奈がそう言うと俺達は応援席に戻った。
(2)
「茉奈は結の考えている事が分かるみたいだな」
天音が言っていた。
「でもなんでパパはあんなにあっさりチクったんだ?」
天音が僕に聞いてくる。
そんなに大した理由じゃないんだけど。
「トーヤ。お前何を企んでる?」
カンナも聞いてきた。
「カンナは僕に感謝して欲しいくらいなんだけど」
「どういうことだ?」
「そういう事か……」
翼は気づいたみたいだ。
カンナに説明した。
「あのまま機嫌の悪い桜子がいたら。神奈さん達がまずいことになるでしょ?」
だからさっさと遠ざけるために教えた。
例年のごとくカンナや誠は昼間から小学校のグラウンドを宴会場にしているから。
「天音!あんたも父兄参加の競技あるの分かってるの!?」
「どうせ翼と空が出れば私達の学年は大丈夫だろ!?」
足りなきゃ美希と善明達もいる。
どうしても出ろって言うなら大地がいるから問題ない。
翼は呆れていた。
水奈は遊達と相談していた。
「粋が飲んでないから大丈夫だろ?」
来年小学校に子供が入学したら誰かが出ないといけない。
出るとしたら酒を飲めない。
だから誰が出るという相談だった。
さすがに神奈は水奈を叱ることが出来なかった。
「だからあれほど忠告したのに」
愛莉が言う。
「ところで粋はなんで飲まないんだ?」
遊が聞いていた。
粋は花の顔を見て答えた。
「俺は仕事で普段いないからさ、頑張ってる子供の姿くらいちゃんと見ておきたいから」
飲むなら花と家で飲めばいい。
粋はそう答えた。
花も嬉しそうにしている。
「いい父親だな」
カンナが言っていた。
「で、次は俺が聞きたいんだが水奈は子供たちが頑張ってるのに昼間から酔っぱらっているのか?」
学が水奈を睨んでいる。
「学。こういう時じゃないと母親だって色々溜まってるのよ」
亜依さんがそう言って息子を宥めていた。
「まあ、心配することねーよ。走るのはどうせ天音達が走った方が早いんだ。酔っていても綱にしがみつくくらいは出来る」
カンナが説明する。
それでいいのか?
「ところで一つ気になったことがあるんだけど」
天音が美希に聞いていた。
「どうしたの?」
「お前結にはまだ教えてないのか?」
「そりゃまだ2年生だよ。早すぎでしょ」
茉奈だってまだ成長してないのに無茶させられない。
だけど水奈はそうは思ってなかった。
「茉奈がこの前悩んでいたんだ」
天音が茉奈の悩みを語る。
茉莉や菫はキスまではした。
その先はまずいと分かってるからしないし、彼氏も望んでこない。
結莉や茉奈はまだだ。
どうしてだろう?
そんな相談を茉奈が水奈に相談したらしい。
そして水奈はすぐに答えた。
「いいか!?片桐家の男はそういうのに鈍いんだ!」
だから待っていたら結婚式の誓いのキスがファーストキスなんてふざけた事になりかねない。
だから水奈から押し倒す勢いでいけ!
「天音は自分の娘に何を言ってるの!」
愛莉が怒り出す。
「だって空だってそうだったじゃねーか!?パパだって愛莉から無理やりしたんだろ?」
まあ、無理やりだったなぁ。
「そう言えば望もそうだったわね」
「善君もそうだった」
二人は笑っていた。
そして当たり前の様に桐谷君が疑問を言った。
「あのさ、高校の時クラスで一番美人だったの恵美さんだろ?」
スタイルも申し分なかった。
晶さんも大学でクイーンと称されるほどだ。
そんな2人と付き合っていてどうして欲情しなかったのかが不思議だった。
「まあ、僕は晶ちゃんと寝る前に家をプレゼントされましたからね」
酒井君が言っている。
ある意味凄いな。
「それは桐谷君と違って僕も気が弱かったから」
石原君がそう言って笑った。
大地君の前ではあの話をしたくなかったんだろうな。
「お前らが渡辺班の男が舐められる原因だぞ!この先孫も同じ事になるぞ!」
誠が立つ。
お前はあとどれだけ経てば学習するんだ。
「じゃあ、お前が今手本を見せてみろ?誠」
「瑛大もいいよ?今ちょうど機嫌がいいから」
カンナと亜依さんが言うと2人は笑っていた。
「愛莉ちゃんはどうだったの?」
恵美さんが愛莉に聞いていた。
「キスは私からだった。神奈に取られるのが怖かったから」
「その後は?」
晶さんが聞くと愛莉はくすっと笑っていた。
「二人で試行錯誤してたよ」
あんまり思い出したくない話だな。
初めてを済ませた後もゲームだの車だので相手にしてくれなくて不満だったらしい。
その分愛莉が酔った時は大変だったけどな。
「愛莉。その話じっくり聞きたい。今夜どう?」
翼が興味を示したみたいだ。
「そうね。どうせ空も同じだろうから娘に話すくらいいいかも」
「亜依……今夜空いてるか?」
「大丈夫。私も同じ気分だから」
「亜依ちゃん。私たちも混ぜてもらっていいかしら?」
恵美さん達が仲間入りしたようだ。
(3)
「沖田、これが今のメンバーか?」
「ええ、言われた通り全員に招集をかけました」
俺達は今大在のふ頭にいる。
俺が神谷さんに相談して神谷さんが集めるように言ったから。
相談の内容はメンバーから不満が出た。
「今のSHとやり合えなんて無理だ!」
そんな不満。
手を出したらろくな結末を迎えない。
同世代だろうが年上だろうが関係ない。
等しく処刑される。
こっちの手を読まれている。
奥の手を出したらSHはさらに奥の手を出してくる。
勝ち目のない戦いを強いられていたらさすがに抜けようとするやつも出てくる。
神谷さんの言っている時期が来る前に解体しかねない事態。
だから神谷さんに相談した。
「あんた誰だ?」
反対派の一人が神谷さんに尋ねていた。
「リベリオンのとりまとめ役だよ」
「じゃあ、はっきり言わせてくれ。こんな無駄死にもうたくさんだ」
まあ、普通はそう言うだろうな。
神谷さんはそいつの前でスマホを触りだした。
俺のスマホにメッセージが届く。
「奴らは食いついたか?」
「……今日は着てないみたいだ」
下手にファミレスなどに集まると盗聴くらいされて当たり前だと思った方が良い。
だから外で集まった。
暗くなるにつれて反対派が神谷さんに次々と意見を言う。
「……分かった」
神谷さんはそう言って全員に言った。
「反対派と交戦派に左右で分かれてくれないか?」
神谷さんはそう言って二手に分かれさせる。
圧倒的に交戦派が少ない。
それでも気にも止めてないようだった。
反対派の連中に神谷さんが声をかける。
「悪かった。お前たちの役割は終わりだ」
神谷さんがそう言うと反対派は帰ろうとした。
しかし神谷さんは「勝手に動くな」と言う。
戸惑う反対派をよそに交戦派に神谷さんの部下が何かを渡している。
「本気ですか?」
交戦派がそう言うとにやりと笑った。
「腐った蜜柑を放っておくと後々困るからな」
平気で寝返ったりする。
だから始末しろ。
「安心しろ。入手先は隠してある。それにはちゃんとサプレッサーがついてある」
神谷さんが言うと反対派がどよめく。
「お前たちは戦う意思を見せた。ならその力を与える。次はその力を行使する覚悟だ」
神谷さんが言うと反対派を睨みつける。
「すまんがお前らはこいつらの餌だ」
やり方が分からないなら俺が教えてやる。
そう言って反対派に向かって銃を向けると躊躇うことなく発砲した。
その後俺の顔を見るから俺も行動に出る。
無数の刃物を発生させて何人かを切り刻む。
「覚悟がない腑抜けも同じ結末を迎えるぞ?」
神谷さんが言うと次々と銃を撃ちだす交戦派。
「ま、待て!俺達も戦うから助けてくれ!」
反対派がそう訴えると神谷さんがにやりと笑う。
「そうやってすぐ自分の意見を変える奴を誰が信じると思うんだ?」
どうせまたすぐに裏切る。
言ったはずだ。
腐った蜜柑は周りに影響が出る。
だから処分する。
神谷さんはそう言ってそいつの眉間を撃ちぬいた。
それを見た反対派は逃げ出す。
簡単に逃がすほど甘い神谷さんじゃない。
ちゃんと出口をゴッティの兵隊が塞いでいた。
「あいつらもよく使うそうだな。奥の手は先に見せるな」
そうして反対派を皆殺しにすると、俺はこの後の事を聞いていた。
「今生き残ってるやつはゴッティに訓練させる」
「分かった」
「沖田は引き続きまた頭数を揃えろ」
当分はそれの繰り返しだ。
逃げ出す腰抜けに用はない。
少なくともSH相手に役に立つわけがない。
「この死体はどうする?」
「ちゃんと考えるよ。お前は先に帰れ」
神谷さんが言うと俺は家に帰る。
暴力団の抗争で死亡。
翌日のニュースにはそう大々的に書かれていた。
もちろんリベリオンの名前は明かされなかった。
(4)
「向こうがやる気ならこの際まとめてぶっ殺してやる!大地プレデター準備しろ!」
「僕も天音に賛成です。今までみたいに待っているだけだと危険すぎる」
天音と大地がそう主張する。
僕達はホテルの会議室を借りていた。
理由は数日前に大在のふ頭で起きた事件。
マスコミは「暴力団の抗争」と書かれてあった。
リベリオンだとは書かれていない。
だが、茜が入手したリベリオンのログを覗くとやはりあの日集まっていたのはリベリオンの交戦派と反対派。
反対派を始末したみたいだ。
しかしそれも憶測でしかない。
茜が念の為もう一度確認しようと中を覗こうとしたら菫が警告した。
「茜、気を付けて!つけられてる!」
茜は自分の足跡を消すのに必死で中を見るまでは至らなかった。
つまりはそんなスキルの持ち主が相手に現れたという事。
これまでみたいに情報が簡単に手に入れられそうにない。
それはそのうちそうなるだろうと予想していたからいい。
僕達だけが常に優位に立てる。
そんなわけがない。
だから今日集まって今後の対策を考えた。
天音や美希はやる気でいる。
だが、遊達でさえ慎重にならざるを得ない状況。
これまでとは違う。
一度始めたらどちらかが全滅するまで続く。
絶対に被害を出さない方法が導き出されない。
勝てない勝負はしたらダメだ。
父さんがそう言っていた。
しかし父さん達も多分経験したことがないだろう。
事件を見てはっきりした。
彼らは僕達に向けて何のためらいもなく銃を撃つだろう。
僕の子供たちはいい。
しかし遊達の子供はそうはいかない。
「空、黙ってないでなんか言え!」
「天音、空の思考を邪魔しないで!」
翼が天音に注意してる。
「旦那様、皆の心配をしているなら大丈夫。全員に護衛くらいつけるから」
「姉さんの言う通りです空。そのくらいはするよ。それに相手がその気と分かっているなら僕達も遠慮はいらないんじゃないかな」
「大地の父さんが言ってたそうなんだけど……」
完全な計画が分からない限り100%防げるとは言えないのが暗殺。
「奴らの拠点は割り出してるんだ。片っ端から爆撃すれば済む話だろ」
天音が言う。
例えそれで済んだとしてもやつらはまだ全部を手段を使うわけじゃない。
友恵が援軍を要請してる。
そうなったら最悪の状況だってありうる。
先手を取るにしても相手の規模くらいは把握しておかないと中途半端に攻撃して思いもよらない反撃を食らう。
「考えるだけ無駄だろ!?やらないとやられるだけだぞ!」
天音が言う。
そう、ただやられるだけ。
それを防ぐ方法を考えないとダメだ。
しかし暗殺なんて真似をされたらどうしようもない。
情報を掴もうにも茜や菫でさえ手こずる相手。
「空、黙ってないで何か言え!」
「五月蠅い!黙ってろ!」
イライラしてつい怒鳴ってしまった。
「今日はとりあえず解散しない。空がこんなんじゃいい考えが纏まらない」
「翼。相手は考えている間も準備しているんだ」
「天音はよくわかってるじゃない。空が対策練っている間も相手は準備している。だからどうするべきか今悩んでる」
少し僕を一人にしてやって欲しい。
翼がそう言うと皆は家に帰る
とりあえずは善明と美希が警備を手配することでみんなを納得させた。
家に帰るとシャワーを浴びる。
その間もずっと考えていた。
どうしても有効な手段が浮かばない。
どうすればいいんだ?
シャワーを出てリビングを抜けて部屋に戻ろうとすると父さんに呼び止められた。
「大分煮詰まってるみたいだね」
父さんはそう言ってくすりと笑った。
父さんの状況を伝える。
きっとSHだけでは手に負えない気がしたから。
だけど父さんは一言返す。
「だから何?」
「冬夜さん。もう少し真面目に考えてあげないと可哀そうです」
翼も心配してると母さんが伝える。
だけど父さんはそれでも動じない。
「空、視野が狭くなってる」
やられる前にやるしかない。
だけどどこを叩けばいいのかが分からない。
父さんの言うとおりだった。
て、事は父さんはもうすでに有効な手段を考えている?
「もう少し分かりやすく言おうか?空は自分から選択肢を減らしている」
だから悩むんだ。
僕は既に有効な一撃を持っている。
それは渡辺班には絶対に無理な芸当だ。
僕が”空の王”だという事を示せばいい。
「リベリオンとやらは余裕を持っている。空達がすぐに反撃できないと過信している」
突くならそこだ。
相手の準備が早いのなら時間稼ぎをしてやればいい。
いきなり本隊を叩く必要はない。
こっちの体制が整うまで相手を怯ませることが出来るならそれをまずやればいい。
相手は何でもありになったのなら僕も自分の力を制限する理由なんてないだろう?
「旦那様、大丈夫ですか?」
風呂から出てきた美希が心配そうに言う。
父さんの意図がなんとなく読めて来た。
そんな僕を見て父さんは「策は出来たようだね」と言った。
「ありがとう」
「空、忘れてはいけない。空の判断ミスが悲劇を起こす。だから空が悩むのは分かる」
だけど悩んで視野を狭めたり自分からカードを捨てるのはダメだ。
ありとあらゆる手段を使っていいんだと覚えておきなさい。
父さんの話を聞くと翼と部屋に戻る。
「何かいい案浮かんだ?」
「ああ、糸口は見えた」
そう言いながら茜に連絡する。
「茜は誠さん並みの腕はあるんだよね?」
「私だけじゃなくて菫や真香もいる。何をしたらいいの?」
「どんな手段を使ってもいいから相手のネットワークを一時的にでもいいから使用不能に出来ないか?」
「……やる気になった?」
「ああ、少し難しく考えすぎたようだ」
「王の命令なら任せて。一時的どころか粉々にしてやる」
その後に大地と善明に連絡する。
「悪いけど仕事の合間でもいいから手伝って欲しいんだけど」
「作戦決まったのかい?」
「ああ、遠慮はする必要ないみたいだからね。……狩りの時間を始めよう」
「そういう事なら私達にも言え!誰をぶっ殺せばいいんだ?」
「天音は結莉達の面倒見ないとダメでしょ」
「いや、この際だから茉莉達にも遊ばせてやろう」
「空!?本気なの?」
「……向こうがその気にさせてくれたんだから遠慮する必要ないだろう」
「……で、誰を狙えばいいんだい?」
まさかリベリオン全員なんて事は無いんだろう?
善明が言うと僕は答えた。
「善明の言うとおりだよ。相手の手段を見ればすごく単純な事だった」
「……誰をやるんですか?」
「ホテルカリフォルニア」
リベリオンの現時点の本命。
それを潰せば友恵が戻ってくるまで打つ手が無くなる。
続々と有効な戦闘員を増やそうとしている。
それならその訓練をしている連中を潰してやればいい。
情報だと在日米軍を敵に回しても平気なくらいの力がある。
そんな相手なら大地達も相手に不足はないだろ?
「でもそれだと友恵が戻って来た後またそれを潰すんですか?」
大地が質問していた。
「それを一時的にマヒさせてやるからいい」
一時的なマヒになるか二度と手を出せなくなるかどちらかだろう。
父さんの漫画であった。
例え強力な軍隊を持っていたとしても指示が出なきゃ動かない。
そして指示を出すものはあることを恐れて指示をためらうそうだ。
「まさか空!?」
翼は感づいたようだ。
驚いて僕の顔を見る。
僕も翼の顔を見て頷いた。
だから父さんは平然としていた。
僕だから出来て渡辺班には出来ない事。
モスクワの惨劇は多分お偉いさんも知っているだろう。
その恐怖をもう一度味合わせてやる。
「結にも伝えておいて欲しい」
手を出す馬鹿がいたら警告なんてまだるっこしい真似はしないで地獄を見せてやれと。
「いつから始めますか?」
大地が聞いてきた。
「茜達に頼んで彼らの情報網を混乱させるからその後に始めよう」
「分かりました」
話が済むとベッドに入る。
「疲れだろうから私が癒してあげる」
そう言って美希が抱き着いてくる。
「美希が満足したいだけじゃないの?」
「そういう意地悪を言うのは冬夜さんそっくりだって言ってました」
満足したいから満足させてよ。
美希がそう言うと明かりを消して心を休める事にした。
「結頑張ってたね」
母さんがそう言って頭を撫でてくれた。
そんなに頑張っては無いんだけど。
「絶対に本気で走ったらダメ」
桜子にそう注意されていた。
衝撃波とやらで観客等が大惨事になる。
適度な速度で1位を取る。
全力よりも面倒な作業だ。
……やっぱり頑張ったのかな?
とりあえずお弁当を食べよう。
隣で食べている茉奈も徒競走は1位だった。
茉奈も結莉や茉莉ほどじゃないけど他の人に比べたら十分早い。
海翔も同じだった。
そして大地やパパやじいじは飲んでなかったけど誠や瑛大は飲んでいた。
遊や天達も同じだ。
そして変わらないのは茉莉達が競技の時間になっても現れなかった。
桜子が探し回っている。
「今年は大丈夫だ」
絶対に見つからないという意味だろう。
天音が自信を持っていた。
そして見つける事が出来ずに桜子がやってきた。
「天音!今度は何を茉莉達に吹き込んだの!?」
「この糞暑い中熱中症にならないようにいい場所教えただけだよ」
「そうそう。あそこなら日も当たらないしな」
天音と水奈は得意気に言う。
そして神奈が叱っていた。
「お前達は娘に何を吹き込んでるんだ!」
「別にいいじゃん。茉莉達が競技に参加してもしらけるだろ?」
同い年の子供では絶対に太刀打ちできないのだから。
しかしお昼のお弁当を忘れるくらい休める場所か。
一体どこだろう?
すると母さんが父さんを睨んでいた。
「旦那様……白状してください!」
「え?」
父さんが驚いている。
どうやら父さんは茉莉達の潜伏場所が分かっているそうだ。
それはじいじも同じだった。
「冬夜さんもです!知ってるなら教えてください」
愛莉もじいじが気づいた事に気づいたらしい。
「いや、冬吾が言ってたことを思い出して」
じいじがそう言って説明した。
まだ冬吾が小学生の頃の話らしい。
誠司が冬吾に教えたそうだ。
「冬吾、学校で我慢できなくなったら体育館の倉庫がいいらしいぜ」
「何を我慢するの?」
「お前だって瞳子を抱きたいとか思ったことないか?」
「それ別に学校じゃなくてよくないか?」
それに愛莉から「そういうのは中学生になってからになさい!」と注意をされていたらしい。
何のことかさっぱり分からないけど。
「俺達これから中学生になるだろ?」
もっと盛りがつくって誠が誠司にアドバイスしたらしい。
マットがベッド代わりになるからいいらしい。
「でもあそこ汗臭くないか?」
「青春の匂いって言うんだってさ」
「誠司は冬吾にまで馬鹿な事吹き込まなくていい!」
そう冴から注意されていたそうだ。
瞳子も「冬吾君がその気になったら受け入れるけどせめて家にして欲しい」とお願いしたらしい。
それを聞いた桜子は早速体育館に向かった。
「お前……誠司に何を吹き込んだ!?」
今度は神奈が怒り出す。
「まさかあなた達……」
愛莉は違う心配をしたらしい。
「さっきパパが言っただろ?あんな汗臭い所で求めてくるなんてふざけた真似したらマットで圧死させてやる」
「私の彼氏は学だぞ!?そんな事するわけないだろ!」
天音と水奈は否定していた。
しかし確かに父さんと母さんは一緒に寝ている。
愛莉とじいじも一緒に寝ている。
だけど俺と茉奈にはまだ早いと母さんが言っていた。
何があるんだろう?
食事を終えてお茶を飲みながら考えていた。
ぽかっ
茉奈に小突かれた。
「結。そろそろ時間だよ」
茉奈がそう言うと俺達は応援席に戻った。
(2)
「茉奈は結の考えている事が分かるみたいだな」
天音が言っていた。
「でもなんでパパはあんなにあっさりチクったんだ?」
天音が僕に聞いてくる。
そんなに大した理由じゃないんだけど。
「トーヤ。お前何を企んでる?」
カンナも聞いてきた。
「カンナは僕に感謝して欲しいくらいなんだけど」
「どういうことだ?」
「そういう事か……」
翼は気づいたみたいだ。
カンナに説明した。
「あのまま機嫌の悪い桜子がいたら。神奈さん達がまずいことになるでしょ?」
だからさっさと遠ざけるために教えた。
例年のごとくカンナや誠は昼間から小学校のグラウンドを宴会場にしているから。
「天音!あんたも父兄参加の競技あるの分かってるの!?」
「どうせ翼と空が出れば私達の学年は大丈夫だろ!?」
足りなきゃ美希と善明達もいる。
どうしても出ろって言うなら大地がいるから問題ない。
翼は呆れていた。
水奈は遊達と相談していた。
「粋が飲んでないから大丈夫だろ?」
来年小学校に子供が入学したら誰かが出ないといけない。
出るとしたら酒を飲めない。
だから誰が出るという相談だった。
さすがに神奈は水奈を叱ることが出来なかった。
「だからあれほど忠告したのに」
愛莉が言う。
「ところで粋はなんで飲まないんだ?」
遊が聞いていた。
粋は花の顔を見て答えた。
「俺は仕事で普段いないからさ、頑張ってる子供の姿くらいちゃんと見ておきたいから」
飲むなら花と家で飲めばいい。
粋はそう答えた。
花も嬉しそうにしている。
「いい父親だな」
カンナが言っていた。
「で、次は俺が聞きたいんだが水奈は子供たちが頑張ってるのに昼間から酔っぱらっているのか?」
学が水奈を睨んでいる。
「学。こういう時じゃないと母親だって色々溜まってるのよ」
亜依さんがそう言って息子を宥めていた。
「まあ、心配することねーよ。走るのはどうせ天音達が走った方が早いんだ。酔っていても綱にしがみつくくらいは出来る」
カンナが説明する。
それでいいのか?
「ところで一つ気になったことがあるんだけど」
天音が美希に聞いていた。
「どうしたの?」
「お前結にはまだ教えてないのか?」
「そりゃまだ2年生だよ。早すぎでしょ」
茉奈だってまだ成長してないのに無茶させられない。
だけど水奈はそうは思ってなかった。
「茉奈がこの前悩んでいたんだ」
天音が茉奈の悩みを語る。
茉莉や菫はキスまではした。
その先はまずいと分かってるからしないし、彼氏も望んでこない。
結莉や茉奈はまだだ。
どうしてだろう?
そんな相談を茉奈が水奈に相談したらしい。
そして水奈はすぐに答えた。
「いいか!?片桐家の男はそういうのに鈍いんだ!」
だから待っていたら結婚式の誓いのキスがファーストキスなんてふざけた事になりかねない。
だから水奈から押し倒す勢いでいけ!
「天音は自分の娘に何を言ってるの!」
愛莉が怒り出す。
「だって空だってそうだったじゃねーか!?パパだって愛莉から無理やりしたんだろ?」
まあ、無理やりだったなぁ。
「そう言えば望もそうだったわね」
「善君もそうだった」
二人は笑っていた。
そして当たり前の様に桐谷君が疑問を言った。
「あのさ、高校の時クラスで一番美人だったの恵美さんだろ?」
スタイルも申し分なかった。
晶さんも大学でクイーンと称されるほどだ。
そんな2人と付き合っていてどうして欲情しなかったのかが不思議だった。
「まあ、僕は晶ちゃんと寝る前に家をプレゼントされましたからね」
酒井君が言っている。
ある意味凄いな。
「それは桐谷君と違って僕も気が弱かったから」
石原君がそう言って笑った。
大地君の前ではあの話をしたくなかったんだろうな。
「お前らが渡辺班の男が舐められる原因だぞ!この先孫も同じ事になるぞ!」
誠が立つ。
お前はあとどれだけ経てば学習するんだ。
「じゃあ、お前が今手本を見せてみろ?誠」
「瑛大もいいよ?今ちょうど機嫌がいいから」
カンナと亜依さんが言うと2人は笑っていた。
「愛莉ちゃんはどうだったの?」
恵美さんが愛莉に聞いていた。
「キスは私からだった。神奈に取られるのが怖かったから」
「その後は?」
晶さんが聞くと愛莉はくすっと笑っていた。
「二人で試行錯誤してたよ」
あんまり思い出したくない話だな。
初めてを済ませた後もゲームだの車だので相手にしてくれなくて不満だったらしい。
その分愛莉が酔った時は大変だったけどな。
「愛莉。その話じっくり聞きたい。今夜どう?」
翼が興味を示したみたいだ。
「そうね。どうせ空も同じだろうから娘に話すくらいいいかも」
「亜依……今夜空いてるか?」
「大丈夫。私も同じ気分だから」
「亜依ちゃん。私たちも混ぜてもらっていいかしら?」
恵美さん達が仲間入りしたようだ。
(3)
「沖田、これが今のメンバーか?」
「ええ、言われた通り全員に招集をかけました」
俺達は今大在のふ頭にいる。
俺が神谷さんに相談して神谷さんが集めるように言ったから。
相談の内容はメンバーから不満が出た。
「今のSHとやり合えなんて無理だ!」
そんな不満。
手を出したらろくな結末を迎えない。
同世代だろうが年上だろうが関係ない。
等しく処刑される。
こっちの手を読まれている。
奥の手を出したらSHはさらに奥の手を出してくる。
勝ち目のない戦いを強いられていたらさすがに抜けようとするやつも出てくる。
神谷さんの言っている時期が来る前に解体しかねない事態。
だから神谷さんに相談した。
「あんた誰だ?」
反対派の一人が神谷さんに尋ねていた。
「リベリオンのとりまとめ役だよ」
「じゃあ、はっきり言わせてくれ。こんな無駄死にもうたくさんだ」
まあ、普通はそう言うだろうな。
神谷さんはそいつの前でスマホを触りだした。
俺のスマホにメッセージが届く。
「奴らは食いついたか?」
「……今日は着てないみたいだ」
下手にファミレスなどに集まると盗聴くらいされて当たり前だと思った方が良い。
だから外で集まった。
暗くなるにつれて反対派が神谷さんに次々と意見を言う。
「……分かった」
神谷さんはそう言って全員に言った。
「反対派と交戦派に左右で分かれてくれないか?」
神谷さんはそう言って二手に分かれさせる。
圧倒的に交戦派が少ない。
それでも気にも止めてないようだった。
反対派の連中に神谷さんが声をかける。
「悪かった。お前たちの役割は終わりだ」
神谷さんがそう言うと反対派は帰ろうとした。
しかし神谷さんは「勝手に動くな」と言う。
戸惑う反対派をよそに交戦派に神谷さんの部下が何かを渡している。
「本気ですか?」
交戦派がそう言うとにやりと笑った。
「腐った蜜柑を放っておくと後々困るからな」
平気で寝返ったりする。
だから始末しろ。
「安心しろ。入手先は隠してある。それにはちゃんとサプレッサーがついてある」
神谷さんが言うと反対派がどよめく。
「お前たちは戦う意思を見せた。ならその力を与える。次はその力を行使する覚悟だ」
神谷さんが言うと反対派を睨みつける。
「すまんがお前らはこいつらの餌だ」
やり方が分からないなら俺が教えてやる。
そう言って反対派に向かって銃を向けると躊躇うことなく発砲した。
その後俺の顔を見るから俺も行動に出る。
無数の刃物を発生させて何人かを切り刻む。
「覚悟がない腑抜けも同じ結末を迎えるぞ?」
神谷さんが言うと次々と銃を撃ちだす交戦派。
「ま、待て!俺達も戦うから助けてくれ!」
反対派がそう訴えると神谷さんがにやりと笑う。
「そうやってすぐ自分の意見を変える奴を誰が信じると思うんだ?」
どうせまたすぐに裏切る。
言ったはずだ。
腐った蜜柑は周りに影響が出る。
だから処分する。
神谷さんはそう言ってそいつの眉間を撃ちぬいた。
それを見た反対派は逃げ出す。
簡単に逃がすほど甘い神谷さんじゃない。
ちゃんと出口をゴッティの兵隊が塞いでいた。
「あいつらもよく使うそうだな。奥の手は先に見せるな」
そうして反対派を皆殺しにすると、俺はこの後の事を聞いていた。
「今生き残ってるやつはゴッティに訓練させる」
「分かった」
「沖田は引き続きまた頭数を揃えろ」
当分はそれの繰り返しだ。
逃げ出す腰抜けに用はない。
少なくともSH相手に役に立つわけがない。
「この死体はどうする?」
「ちゃんと考えるよ。お前は先に帰れ」
神谷さんが言うと俺は家に帰る。
暴力団の抗争で死亡。
翌日のニュースにはそう大々的に書かれていた。
もちろんリベリオンの名前は明かされなかった。
(4)
「向こうがやる気ならこの際まとめてぶっ殺してやる!大地プレデター準備しろ!」
「僕も天音に賛成です。今までみたいに待っているだけだと危険すぎる」
天音と大地がそう主張する。
僕達はホテルの会議室を借りていた。
理由は数日前に大在のふ頭で起きた事件。
マスコミは「暴力団の抗争」と書かれてあった。
リベリオンだとは書かれていない。
だが、茜が入手したリベリオンのログを覗くとやはりあの日集まっていたのはリベリオンの交戦派と反対派。
反対派を始末したみたいだ。
しかしそれも憶測でしかない。
茜が念の為もう一度確認しようと中を覗こうとしたら菫が警告した。
「茜、気を付けて!つけられてる!」
茜は自分の足跡を消すのに必死で中を見るまでは至らなかった。
つまりはそんなスキルの持ち主が相手に現れたという事。
これまでみたいに情報が簡単に手に入れられそうにない。
それはそのうちそうなるだろうと予想していたからいい。
僕達だけが常に優位に立てる。
そんなわけがない。
だから今日集まって今後の対策を考えた。
天音や美希はやる気でいる。
だが、遊達でさえ慎重にならざるを得ない状況。
これまでとは違う。
一度始めたらどちらかが全滅するまで続く。
絶対に被害を出さない方法が導き出されない。
勝てない勝負はしたらダメだ。
父さんがそう言っていた。
しかし父さん達も多分経験したことがないだろう。
事件を見てはっきりした。
彼らは僕達に向けて何のためらいもなく銃を撃つだろう。
僕の子供たちはいい。
しかし遊達の子供はそうはいかない。
「空、黙ってないでなんか言え!」
「天音、空の思考を邪魔しないで!」
翼が天音に注意してる。
「旦那様、皆の心配をしているなら大丈夫。全員に護衛くらいつけるから」
「姉さんの言う通りです空。そのくらいはするよ。それに相手がその気と分かっているなら僕達も遠慮はいらないんじゃないかな」
「大地の父さんが言ってたそうなんだけど……」
完全な計画が分からない限り100%防げるとは言えないのが暗殺。
「奴らの拠点は割り出してるんだ。片っ端から爆撃すれば済む話だろ」
天音が言う。
例えそれで済んだとしてもやつらはまだ全部を手段を使うわけじゃない。
友恵が援軍を要請してる。
そうなったら最悪の状況だってありうる。
先手を取るにしても相手の規模くらいは把握しておかないと中途半端に攻撃して思いもよらない反撃を食らう。
「考えるだけ無駄だろ!?やらないとやられるだけだぞ!」
天音が言う。
そう、ただやられるだけ。
それを防ぐ方法を考えないとダメだ。
しかし暗殺なんて真似をされたらどうしようもない。
情報を掴もうにも茜や菫でさえ手こずる相手。
「空、黙ってないで何か言え!」
「五月蠅い!黙ってろ!」
イライラしてつい怒鳴ってしまった。
「今日はとりあえず解散しない。空がこんなんじゃいい考えが纏まらない」
「翼。相手は考えている間も準備しているんだ」
「天音はよくわかってるじゃない。空が対策練っている間も相手は準備している。だからどうするべきか今悩んでる」
少し僕を一人にしてやって欲しい。
翼がそう言うと皆は家に帰る
とりあえずは善明と美希が警備を手配することでみんなを納得させた。
家に帰るとシャワーを浴びる。
その間もずっと考えていた。
どうしても有効な手段が浮かばない。
どうすればいいんだ?
シャワーを出てリビングを抜けて部屋に戻ろうとすると父さんに呼び止められた。
「大分煮詰まってるみたいだね」
父さんはそう言ってくすりと笑った。
父さんの状況を伝える。
きっとSHだけでは手に負えない気がしたから。
だけど父さんは一言返す。
「だから何?」
「冬夜さん。もう少し真面目に考えてあげないと可哀そうです」
翼も心配してると母さんが伝える。
だけど父さんはそれでも動じない。
「空、視野が狭くなってる」
やられる前にやるしかない。
だけどどこを叩けばいいのかが分からない。
父さんの言うとおりだった。
て、事は父さんはもうすでに有効な手段を考えている?
「もう少し分かりやすく言おうか?空は自分から選択肢を減らしている」
だから悩むんだ。
僕は既に有効な一撃を持っている。
それは渡辺班には絶対に無理な芸当だ。
僕が”空の王”だという事を示せばいい。
「リベリオンとやらは余裕を持っている。空達がすぐに反撃できないと過信している」
突くならそこだ。
相手の準備が早いのなら時間稼ぎをしてやればいい。
いきなり本隊を叩く必要はない。
こっちの体制が整うまで相手を怯ませることが出来るならそれをまずやればいい。
相手は何でもありになったのなら僕も自分の力を制限する理由なんてないだろう?
「旦那様、大丈夫ですか?」
風呂から出てきた美希が心配そうに言う。
父さんの意図がなんとなく読めて来た。
そんな僕を見て父さんは「策は出来たようだね」と言った。
「ありがとう」
「空、忘れてはいけない。空の判断ミスが悲劇を起こす。だから空が悩むのは分かる」
だけど悩んで視野を狭めたり自分からカードを捨てるのはダメだ。
ありとあらゆる手段を使っていいんだと覚えておきなさい。
父さんの話を聞くと翼と部屋に戻る。
「何かいい案浮かんだ?」
「ああ、糸口は見えた」
そう言いながら茜に連絡する。
「茜は誠さん並みの腕はあるんだよね?」
「私だけじゃなくて菫や真香もいる。何をしたらいいの?」
「どんな手段を使ってもいいから相手のネットワークを一時的にでもいいから使用不能に出来ないか?」
「……やる気になった?」
「ああ、少し難しく考えすぎたようだ」
「王の命令なら任せて。一時的どころか粉々にしてやる」
その後に大地と善明に連絡する。
「悪いけど仕事の合間でもいいから手伝って欲しいんだけど」
「作戦決まったのかい?」
「ああ、遠慮はする必要ないみたいだからね。……狩りの時間を始めよう」
「そういう事なら私達にも言え!誰をぶっ殺せばいいんだ?」
「天音は結莉達の面倒見ないとダメでしょ」
「いや、この際だから茉莉達にも遊ばせてやろう」
「空!?本気なの?」
「……向こうがその気にさせてくれたんだから遠慮する必要ないだろう」
「……で、誰を狙えばいいんだい?」
まさかリベリオン全員なんて事は無いんだろう?
善明が言うと僕は答えた。
「善明の言うとおりだよ。相手の手段を見ればすごく単純な事だった」
「……誰をやるんですか?」
「ホテルカリフォルニア」
リベリオンの現時点の本命。
それを潰せば友恵が戻ってくるまで打つ手が無くなる。
続々と有効な戦闘員を増やそうとしている。
それならその訓練をしている連中を潰してやればいい。
情報だと在日米軍を敵に回しても平気なくらいの力がある。
そんな相手なら大地達も相手に不足はないだろ?
「でもそれだと友恵が戻って来た後またそれを潰すんですか?」
大地が質問していた。
「それを一時的にマヒさせてやるからいい」
一時的なマヒになるか二度と手を出せなくなるかどちらかだろう。
父さんの漫画であった。
例え強力な軍隊を持っていたとしても指示が出なきゃ動かない。
そして指示を出すものはあることを恐れて指示をためらうそうだ。
「まさか空!?」
翼は感づいたようだ。
驚いて僕の顔を見る。
僕も翼の顔を見て頷いた。
だから父さんは平然としていた。
僕だから出来て渡辺班には出来ない事。
モスクワの惨劇は多分お偉いさんも知っているだろう。
その恐怖をもう一度味合わせてやる。
「結にも伝えておいて欲しい」
手を出す馬鹿がいたら警告なんてまだるっこしい真似はしないで地獄を見せてやれと。
「いつから始めますか?」
大地が聞いてきた。
「茜達に頼んで彼らの情報網を混乱させるからその後に始めよう」
「分かりました」
話が済むとベッドに入る。
「疲れだろうから私が癒してあげる」
そう言って美希が抱き着いてくる。
「美希が満足したいだけじゃないの?」
「そういう意地悪を言うのは冬夜さんそっくりだって言ってました」
満足したいから満足させてよ。
美希がそう言うと明かりを消して心を休める事にした。
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