姉妹チート

和希

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夜空に咲く

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(1)

「ごめん」
「しょうがないよ、初めてなんだから」

 莉子はそう言って笑っていた。
 別府の花火大会が終わって帰りの車の中だった。
 地元の花火は皆でいくから別府の花火くらい2人で行かないか?と莉子を誘った。
 
「いいよ」

 莉子は即答していた。
 で、別府の花火大会を見に行った。
 行きは問題なかった。
 空達から「車で行くなら早めにいかないとスーパーの駐車場まで埋め尽くされてしまうから」と聞いていた。
 だから昼くらいに別府に着いて色々見ていた。
 どうして電車にしなかった?
 スーパーや買い物に便利な場所を探していたら、実家の近所が手っ取り早いからそうした。
 すると駅から遠くなる。
 どうせ車で移動しないと行くことが出来ないところばかりだから気にしてなかった。
 問題は帰りだ。
 空達は電車で行っていたから知らなかったのだろう。
 花火が終わると同じ時間に一度に国道に流れ込む。
 当然渋滞になる。
 本来は利用したらいけないスーパーの駐車場から国道に無理やり入ってくる車を見れば文句も言いたくなる。
 だけど空が言っていた。

「冬眞がイライラしだしたらきっと莉子はすぐに気づく」

 そんな時彼女はどうしたらいいか分からなくなって車内に最悪の空気が漂う。
 それは莉子も翼からアドバイスを受けていたらしい。

「えっと……あ、これ聞こうよ」

 そう言って自分のスマホを使って曲を流す。
 フレーズとF・SEASON。
 優しい歌はやはりフレーズの方が一枚上手だ。
 喉の不調を理由に歌い方や曲調を上手く変えていた。
 
「今度夏フェスで出るって言ってたよ」

 8月に遊園地のスタジアムを使って夏フェスをするらしい。
 空達も楽しみにしていた。
 海岸沿いまで車が進むとそれまでの渋滞が嘘のようになくなってしまう。
 抑止力にと設置されたオービスも中にフィルムが入ってない事が発覚すると全く意味が無い
 事故がよく起きるからと道路にバンクを付けたらますますスピードが出せるようになり危険な区間だった。
 
「ここは最低速度が60km/h」

 それが地元住民の暗黙の了解。
 地元の運転者はマナーが悪いとは言われない。
 運転が下手くそだと言われている。
 理由は簡単だ。
 車線変更する直前にならないとウィンカーを出さない。
 交差点を曲がる直前にウィンカーを出す。
 理由は交通法規を守ってウィンカーを出すと途端に「前には入れさせない」と無茶な加速をする。
 曲がる直前に出さないと女性運転手を狙って尾行する馬鹿がいる。
 地元の運転手が都会で運転すると苦労する一つだ。
 突然現れるインターなどに対応できない。
 2車線あった道路が1車線に減少するときにちゃんと注意の看板があるのにぎりぎりまで追い越し車線を走って無理やり入る。
 ちゃんと守ってた人が速度を落とさないと事故になる。
 瑛大さんとかはカーブの多い峠道でレースを初めて奥さんによく怒られていたらしい。
 父さんは運転が凄く上手い。
 そんな峠道に不向きな車でもしっかり改造した車を置き去りにするほどの速度で駆け抜ける。
 愛莉が乗っていても同じらしい。
 そういうスリルには女性の方が強いらしい。
 しかしたった一度だけ父さんの助手席に座った天音は暴走するのをやめたそうだ。
 理由は簡単。 
 父さんの隣に乗れるのは愛莉だけという意味をしっかり味わったらしい。
 水奈に言ったそうだ

「死ぬほど怖いからやめとけ」

 空も同じような芸当をするらしい。
 遊達をたった一度の試走で暴走をやめさせるほどのテクを持っているんだそうだ。
 しない理由はそんな状況で翼と楽しいドライブを楽しめるはずがない。
 だからしない。
 もともと空の車も父さんが学生時代に買った車以上に向いてない。
 だから俺も車をいじってはいるけど限界を試すなんてことはしていない。
 どんなにテクを磨いたところで意味が無い。
 俺達の世代には崇博と歩美がいる。
 F1でプロのドライバーと対等に渡り合ってる崇博たちに勝てるわけがない。
 その崇博も「セーフティゾーンの無い峠なんかで無茶はしねーよ」と笑っていた。
 そんな事をしたら、自分の免許もだけどスタッフに迷惑をかける。
 ドライバーは崇博と歩美の二人しかいない。
 一人欠けただけで恵美さん達が甚大な被害を受ける。
 しかし瑛大さん達はやめなかったらしい。
 子供達を乗せる必要があったからワゴン車に変えていたのを「老後の楽しみ」と称してまた二人乗りのスポーツカーを買ったらしい。

「お前はガソリン車が規制されるかもって言われてるのに何を考えているんだ!?」

 亜依さんがそう言って夫婦喧嘩をしたらしい。

「馬鹿は死ぬしかない」

 千帆達も呆れている。
 もちろん肉親が亡くなるのはつらいことだと分かっているから千帆達も亜依さんと一緒に瑛大さんを説得してるようだ。

「お前らの真似を子供たちがするようになったらどう責任をとるんだ!?」

 神奈さんが激怒していた。
 水奈は子供が喜ぶからと平気で飛ばしているらしいけど。
 だけど優奈達のテンションが上がって「パパも飛ばしてよ」と学に言ってバレてこっぴどく叱られるらしい。
 そんな風に下手くそな運転手と事故を起こすために作ったような交差点。
 もちろんすぐに事故が起きる。

「地元の運転手のマナーの悪さは国内でもトップクラスです」

 免許の更新の時に必ず言われると空から聞いた。
 天音と水奈は講習中爆睡して新しい免許を配られる時に名前を叫ばれるまで起きなかったそうだ。

「自分が誰を乗せて運転しているかを考えて判断しなさい」

 飛ばしたらダメとは言わずにその一言だけを子供に言う父さん。
 その意味は片桐家の男なら皆理解できると信じている。
 天音ですら無茶しなくなったのだから。
 SHで無茶をするのは天と水奈くらいらしい。

「天はいい加減立場を弁えなさいといつも言ってるでしょ!」

 繭が何度言っても治らないらしいと天音達に相談してた。
 祈も後悔してるらしい。
 どれだけ俺が改造しても善明と祈の持っている外車には敵わない。
 そんな化け物みたいな車を走らせる場所がない。
 あったとしても燃費が悪すぎてたどり着くまでに何度も給油する羽目になる。
 結果ガレージに置きっぱなし。
 使わなくても整備費がサラリーマンの年収以上にかかる。
 かといって簡単に中古に売り飛ばせる代物じゃない。
 多分人生で一番後悔するとしたらこの車を買ったことだと善明が言っていた。
 そんな話をしながら夕食は外食ですませて家に帰る。
 風呂に入ってテレビを見ていた。
 25時なんて時間を誰が決めたんだと思うけどそのくらいになる頃に莉子と寝る事にした。

「ねえ?結局秋久と陽葵達が狙われただけだよね?」

 夜の営みは楽しい事ばかりじゃない。
 莉子は俺に抱き着きながらそんな相談をしていた。
 リベリオンの話題だ。
 父さん達の情報ではもっと派手にやってくるかと思ったけど特にない。
 弱い場所を狙ってきたのは間違いない。
 小学生組も結莉達じゃなくて心音を狙ってくるくらいの徹底ぶり。
 ただ秋久が目立ってないから侮っていたのだろう。
 だとすると大学生。
 どっちもうかつに手を出せば最悪の結末しか待っていない。
 空からも特に指示はない。
 相手が手を出したら遠慮することはないから徹底的にやれと言われていた。
 空と父さんの狙いは簡単だ。
 相手を見極めてる。
 少なくとも心音の存在を知っているくらいはSHを調べている。
 しかし反対にSHは相手の規模や拠点をまだ調べている最中だ。
 調べようと思ったらすぐに茜達が調べるだろう。
 やっかいなのはリベリオンが何かをしていることを知らないふりをしなければならない事。
 父さん達はすでに奴らの戦略を把握している。
 今しかけてきているのはただの陽動だ。
 その間に本命を準備している。
 それをぶつけてくる時期も大体把握している。
 それならその時にカウンターを仕掛けてやればいい。

「冬吾の子供……か」
「どんな子供なんだろうね」

 父さんからの能力を受け継いだ冬吾の子供。
 そうなったらもうリベリオンには悪いけど絶対にどうこうできるわけがない。
 現に結ですら大人でも太刀打ちできないんだから。

「でもさ、私もう一つ気になる事があるの」
「なんだよ?」
「私達の子供はどうなるんだろうね?」

 莉子はそう言って笑っていた。

「勘弁してくれ。大学生なのに子供なんて作ったら俺が愛莉に怒られる」

 バイトすらしないで仕送りで生活してるんだぞ。

「分かってる。だから卒業したら早く作ろう?」
「なんでそんなに慌ててるんだ?」
「だって天音や茜の話を聞いていたらそんな気になるよ」

 その天音や茜の娘は愛莉の頭痛の種らしい。

「まさか茜までそうなるとは考えてませんでした」

 そう言って父さんに相談しているらしい。
 そういや、冬華はどうなんだろう?

「冬莉と話をしていたんだけど、冬莉はさすがに今忙しいからベビーシッターを恵美さんが雇ってくれたらしいの」

 その結果1ヶ月で辞表を出したらしい。
 冬莉も地元にいる間は冬華の面倒を見てるけど、冬莉の育児に不安を感じた志希が代わりにやってるらしい。
 
「愛莉には黙っておいて」
 
 そう莉子には言ったらしいけど手遅れだ。
 だって恵美さんから愛莉の耳に入っているそうだ。
 志希の家のやり方があるだろうと愛莉もうかつに手を出せない。
 しかし成長するにつれて志希にも手に負えなくなってきてるらしい。

「冬華、お風呂に入ろうか」
「汚れてないからいいよ」
「ダメだよ、汗かいたかもしれないだろ?」
「パパは私の裸見たいの?冬莉に見せてもらいなよ」
「志希もそういう欲あるの?」
「あのさ……なかったら冬華は誰と作るのさ」
「じゃ、もう一人くらいならいいよ」

 冬華一人に手こずっているのに無茶すぎる。
 結局どうしたらいいかわからず愛莉に相談してるらしい。
 愛莉はもうすでに怒る気力もないそうだ。
 父さんにどうしたらいいか悩んでいた。
 だけど、父さんだって分からない。
 天音ですら風呂に入っていた。
 愛莉は逆に父さんとお風呂に入りたがっていたそうだ。
 しかしどういうわけか茜と冬莉はそうなった。
 しかも発覚したのは中学生になってから。
 さすがに「お風呂に入ろう?」と言える年頃の娘じゃない。

「逆になんで莉子は風呂に入るんだ?」
「決まってるじゃない」

 俺とそういう状況になった時に困るから。

「……じゃあ、今夜は大丈夫?」
「いつでも待ってるって言ったよ?」

 ただまだ期末テストあるから気を付けて。
 そう言うと莉子は俺に抱き着く。
 静かに夜を過ごした。

(2)

「じゃあ、乾杯!」

 私がそう言うと前期の打ち上げが始まった。
 どうせ地元の花火大会の会場までそんなに離れてないし、車で来なきゃいいだろ。
 だから花火大会が終わった後の宴会の席を手配するように冬莉達から頼まれていた。

「どうして私が?」

 不思議だったので冬莉に聞いてみた。

「だって、冬吾の彼女でしょ?」

 大学生世代のリーダーは冬吾君だ。
 だからその彼女の私が仕切るべきだと冬莉は言った。
 それが理由になるのかは分からないけど言われたから参加者をまとめて手ごろな予算で人数を収容できそうな店を探しておいた。
 その後に冬莉の意地悪が始まる。

「ごめん、パパから大学生時代使っていた焼き鳥屋の事忘れてた」

 全く……

「瞳子、お疲れ様」

 そう言って天音がビールを注いでくれた。
 どうして天音が来ているのか?
 簡単だ。
 SHのグルチャで参加者を募っていた。
 すると天音や水奈や天が名乗り出る。
 
「そういう宴会は大人も混ざるのがSHなんだよ!」

 天音や水奈は子供は大丈夫なのだろうか?

「だから花火の後に来たんだよ」

 天音はそう答えた。
 その頃には結莉達も寝ている。
 家には大地がいるから朝までいける!
 愛莉さんが知ったら大事な気がするんだけど。

「あのな、ただでさえ教育で大変なのに小姑が二人もいたらストレス半端ないんだよ!」
「天音の言う通り。天音はまだましだ。うちは学も五月蠅いんだ!」
「その割には茜達は来てないけど」

 冬莉が天音に聞くと天音は笑った。

「それも私がここに来れる理由なんだ」

 天音が説明する。
 茜の育児は天音と水奈を足して2で割った状態らしい。
 唯一の救いは昴も椿も暴れたりはしないという事。
 昴はいたってまともだ。
 ……多分。
 3歳にしてネットの世界で生活している。
 椿も同じだけど椿は女の子なのに風呂に入るのを嫌がる。
 私にも天音にも理解できない行動をする。
 それで愛莉さんが頭を悩ませているらしい。

「瞳子もあと2年もすれば冬吾と結婚だろ?愛莉のやつが小姑だとうるせーぞ?」

 天音がそう言って笑う。
 もうすでに冬吾君が帰国後の事を考えているらしい。
 冬吾君のお父さんが言ったそうだ。

「これはあくまで予感なんだけど……」

 冬吾君の子供は愛莉がしっかり監視しないとだめかもしれない。
 結莉や茉莉、冬夜以上の孫が現れるかもしれない。
 それは私一人では絶対に制御しきれない。
 片桐家の直系なんだから実家で暮らしてもらってもいいだろ?

「でも新婚の時期くらい2人で生活させてあげても」

 愛莉さんはそう言ったけど冬吾君のお父さんは首を振った。

「天音達ならそれも考えた。でも冬莉達もすぐに子供を作った。瞳子もすぐに作るつもりなんじゃないか?」

 まあ、天音達を見てたらすぐ欲しいという気持ちはあった。
 だけど私も教職に就きたいという希望がある。
 だから悩んでいることを愛莉さんには話していた。
 当然冬吾君のお父さんも知っている。

「瞳子が教職に就くならその間愛莉が面倒見てあげた方がいいだろ?」
「でもどうしてそんなに強要するのですか?」

 愛莉さんは不思議に思ったらしい。
 冬眞達の同棲も認めたのにどうして私達だけなんだろう。

「愛莉も覚悟した方が良いかもしれない。そのくらい嫌な予感がするんだ」
「……それって結莉や茉莉みたいな子って事ですか?」
「それなら愛莉がしっかり躾けたらいい。一歩道を踏み外したら取り返しがつかない予感がする」

 冬吾君のお父さんの息子がサッカーで世界のトップレベルの活躍をしている。
 それをはるかにしのぐ才能を持って生まれてくるかもしれない。

「そりゃ、瞳子も責任重大だな」

 水奈がそう言って笑っていた。

「……お前ももう少し責任感を持ったらどうなんだ?水奈」

 水奈がその声でびくりとして振り返ると学がいた。

「な、なんで学がいるんだよ!」
「俺もSHだってこと忘れてないか?」

 だからグルチャを見てすぐに来たらしい。
 さすがに子供だけ残して家を空けられないけど野放しにしていたら水奈は朝まで帰ってこない。
 だからやむを得ず亜依さんに頼んだらしい。

「待て、亜依さんだけなのか?」

 水奈がうろたえていた。
 そして水奈が考えていた最悪の事態に直面した。

「このバカ娘は……子供ほったらかして何やってんだ!」

 当然神奈さんも知らされたらしい。

「た、たまにくらいいいだろ!」
「水奈はこの前キャンプに行ったばかりだろうが!」

 しかも子供は学に任せっきりで遅くまで天音と騒ぎやがって。

「ま、待ってくれ。天音だって許可もらってるんだからいいだろ!?」
「ええ、知ってます。大地に連絡したら案の定でした」

 愛莉さんも来ていたみたいだ。

「私は大地にちゃんと許可をもらったぞ!大地に任せてるから安心だろ!?」
「大地は仕事をしてるのに子供の面倒まで見させるつもりなのですか?」
「私だって昼間はちゃんと家事をやってる!同じじゃないか?」
「大丈夫です。全部知ってますから。昼間は家事をやってるんですよね?」
「な、ならいいじゃん……」

 天音はそう言っているが何かを隠しているようだ。
 それをしっかり愛莉さんは察していた。

「美希が不思議な事を言っていたんですけど説明してくれないかしら?」
「な、何があったんだ?」

 それは結が夜遅くまでスマホをいじって遊んでいるから美希が注意したらしい。
 すると結が不思議そうに答えた。

「母さんは彼女の相手をしてやりなさいって言ってたよね」
「茉奈も起きてるの?」
「うん、それで俺はそろそろ寝ないと明日起きれないよ?って言ったんだ」

 すると茉奈は答えたらしい。

「ごめん、明日の朝ご飯の支度とかもあるし、宿題もしないといけないから」
「茉奈がしてるの?」

 結莉が聞いたそうだ。

「結莉はしないの?」
「そもそも朝ご飯なんて夕飯の残りでいいじゃん」

 結莉なら宿題なんて7月中に全部終わる。
 天音だって同じような無茶をやったんだから大丈夫だ。
 夏休みだから少々夜更かしくらいいいだろ?
 で、寝ようにも茉莉は菫や優奈達とVCしながら騒いでゲームしてるから寝られないらしい。
 結も茉奈とお話がしたいから付き合っていたのだろう。
 美希は結からスマホを受け取って天音に変わってもらうようにお願いしたらしい。
 さすがに自分の子供が夜更かしして生活リズムを狂わせるのは問題だから注意しようとしたんだろう。
 しかし結莉は断った。

「今手が離せないから明日にしてくれって」

 そんな時間に家事をする主婦なんていない。
 精々テレビを見てるくらいだろうと思っていたそうだ。

「……で、天音は何をしていたの?」

 愛莉さんが天音に尋ねた。

「だから夜なら勝手に寝るだろ?」
「おかしいわね。さっき天音が言ってたことはどう説明するのですか?」

 夜は結莉達は寝てるんじゃなかったのか?

「そういう事なんだけど天音、誰と遊んでいたんだ?」
「い、いや。一人でオフラインで遊んでいたんだ……水奈も忙しいだろうし」

 神奈さんが聞くと天音はそう答えた。
 友達を庇ったのだろう。
 だけど愛莉さん達は天音達の母親だ。
 母親と言うのは凄いらしい。
 子供の考えてることなどすぐに見破れるんだそうだ。

「……水奈。子供に家事を任せて何をしているんだ?」
「きょ、今日は打ち上げあるから前倒しで済ませておいたんだ!」
「……悠翔が全部話したぞ?」

 学が言うと水奈は笑ってごまかしていた。
 水奈はやっぱり天音と遊んでいた。
 そして水奈も優奈達に「小学校に入ったら宿題とかで忙しいから遊べないから今のうちに遊んでおけ」と言ったらしい。
 むろん水奈が宿題を提出した事なんて一度もないことは神奈さんが知っている。
 それで優奈と愛菜も遊んでいた。
 隣の部屋で騒いでいて悠翔は眠れずに困っていた。
 茉奈は洗濯やらすることがたくさんで眠れないらしい。
 別に夏休みだから早起きしなくてもいいけど”学に朝食を作ってやらないといけない”という問題がある。
 そこで悠翔は考えた。
 悠翔は優奈達の部屋に向かった。

「二人ともさ、母さんに似て綺麗だよね」
「悠翔は私達に興味を持ったの?」

 ダメだよ。兄弟でそんな関係にはなれないよ?
 優奈がそう言うけど悠翔は首を振った。

「前にテレビでやってた。睡眠時間をしっかりとらないと肌が荒れるって」

 せっかく綺麗なのにもったいないんじゃないか?
 これは恋愛小説だ。
 なのに恋人が出来なくなるかもしれないよ?
 そう言って優奈達を寝せる事に成功したらしい。
 すると新たな問題が浮上する。

「俺は最初悠翔が”母さんは遅くまで裁縫したりしてるみたいだから”と言う理由で悠翔が朝の支度をしてると思ったんだがどういう事だ?」

 ちなみに優奈達が暴れて破れた部分を繕っていたのは悠翔らしい。
 二人に反論の余地はなかった。

「そう言うわけで、帰るぞ。水奈」
「待てよ!せっかく来たんだから学も騒いでいこうぜ!」
「俺が飲んだら誰が運転するんだ!?」
「代行でもいいだろ!」
「つべこべ言わずに家に帰れ!」
「天音もです!さっさと帰りますよ!」
「天だけずるいぞ!」
「それなら問題ありません」

 繭も駆けつけたみたいだ。

「今日は仕事で飲むって言ってませんでしたか?」
「若い奴らに指導してやるのも大人の仕事だろ?」
「関係ありません。天が仕事の付き合いで飲んで帰って来たなんて母様に知れたら大問題ですよ!」

 子供もまだ幼いのにさっさと帰りますよ!
 そう言って繭は天を引きずって行った。
 神奈さんが帰る間際に私に言う。

「こんな感じでな。育児が始まると遊ぶ暇が普通はないんだ。だから学生の時に精いっぱい遊んでおけ」

 もうすぐ就活や資格の試験も始まるんだろ?
 そう言って神奈さん達も帰って行った。
 2次会は冬莉もあまり繁華街で遊び回るわけにはいかないので帰るらしい。
 私もカラオケの部屋だけ予約して泉に伝えて帰る事にした。
 家に帰るとシャワーを浴びて寝る。
 すると朝になってスマホが鳴っている。
 冬吾君からのビデオ通話だ。
 どうしたんだろう?

「あ、おはよう。瞳子」
「おはよう。どうしたの?」

 冬吾君は私の事をじっと見つめていた。
 そして不思議な事を言っていた。

「うーん。思ったより普通だな」
「何かあったの?」
「誠司が言ってたんだ。寝起きの彼女はたまらないぜって……」

 でも通学前の忙しい時にそんな事に付き合わせる真似は出来ない。
 だから夏休みが始まると聞いていたから試してみたんだそうだ。
 本当にしょうがない彼氏だ。 
 これが世界一のフォワードの私だけが知ってる一面なんだ。
 私は笑って答えた。

「それ、絶対に愛莉さんや翼に言ったらだめだよ?」
「やっぱりいけない事なのかな?」
「そうだね」

 旦那なら仕方ないけど彼氏には絶対に見られたくない時がある。
 寝起きもその一つだと説明した。

「ごめんね。それより休みにしてやなんか疲れてるみたいだけど」
「昨夜飲み会があってさ……」

 そう言って冬吾君と朝のひと時を過ごした。
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