姉妹チート

和希

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rise

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(1)

 人はどうして春になると桜を肴に飲むのだろう?
 別に桜など気にも止めずに騒いでるのが天や光太だけど。
 相変わらず不可解な歌を歌っていた。
 でも今の俺は少し変わった。
 それが大人になったという事だろうか?
 大小は気にならないけど茉奈はどんな風なんだろう。
 そんな事を考えてしまう。
 悩んで母さんに相談したことがあった。
 いけない事だから怒られると思ったけどそうじゃなかった。

「だって気になるのは茉奈だけなんでしょ?」
「うん」
「だったら心配しなくてもいい」

 いつか茉奈を独り占めに出来る時が来るから。
 それもいずれ説明してくれると言っていた。
 だからその時を待っていた。
 何も気になるのは茉奈の胸だけじゃない。
 茉奈自体が気になるんだ。
 暇になるといつも茉奈の事を考えてしまう。
 
「桜綺麗だね」

 茉奈が話しかけてくると、俺は普通に返したつもりだった。

「茉奈も綺麗だよ」

 僕がそう言うと騒いでた天達も僕を見ていた。
 一番驚いていたのは天音だった。

「おい、お前なんか変な物食ったのか!?」

 普通にお弁当食べただけなんだけど。
 母さんは笑顔で俺を見ていた。
 天音は次に父さんを疑っていた。

「お前が冬夜に吹き込んだのか?」
「小学生のセリフじゃないだろ」

 父さんはそう答えた。
 当然カミルや比呂に教わったわけじゃない。
 普通にそう思ったから言っただけだと天音に説明した。

「結。そういう事は二人っきりの時に言わないとバカップルと思われちゃうよ」

 茉奈は別に怒ってはいない。
 むしろ嬉しそうにしていた。

「お前らは既にバカップルだろうが」

 茉莉がそう言っていた。

「朔に褒めてもらえないからって僻むな茉莉」

 結莉はそう言って芳樹にくっついている。
 
「結莉てめぇ、喧嘩売ってるのか!?」
「買いたいなら売ってあげてもいいよ。ゴリラ女」
「上等だ結莉!桜の木の下に埋めてやる!」

 本当に茉莉は喧嘩が好きだな。
 そう言って僕た立ち上がると悔しそうに座っていた。

「空!お前何を結に教えたんだ!?」
「別に何も教えてないよ。そういうのはよくわからないから美希に任せてる」
「最近茉奈の事ばかり考えて眠れないんだってさ」

 天音が聞くと父さんと母さんが話していた。

「ちょっとまて!片桐家の男子で色気に目覚めるなんていくら何でも反則だろ!?」

 水奈が言っていた。
 
「水奈はまだいいじゃないか!海翔を見ろ!」

 祈がそう言うと皆が海翔を見た。
 海翔は優奈に俺と同じように優奈を褒めていた。
 
 ぽかっ

 海翔は失敗したようだ。

「嬉しいんだけど、これ適当に選んできたから」

 でもそんな風に見てくれるならこれから少し服装に気を配るねと優奈が言っていた。
 そうなると納得いかないのが茉莉だった。

「ふざけんな朔!てめぇいいかげんにしねーとぶっ殺すぞ!」
「天音落ち着け。朔はまだ子供だ。そういうのを恥ずかしくて言えないのが普通なんだ」

 祈が天音を宥めてる。
 とはいえ、この状況がまずい事くらい僕でも分かる。
 晶に知れたら大惨事になる。
 僕は茉莉の事も気が付いていたから、結莉に聞いたら「来るときに天音と相談してた」と言った。
 後はその事に朔が気づくか?
 祈が気づいたみたいで朔に耳打ちしてた。

「きょ、今日はお洒落してきたんだね。茉莉も似合ってると思うよ」

 いつもはショートパンツなのにミニスカートを穿いていた。

「これ、下着見えるんじゃないか?」
「ばーか、茉莉の下着見て喜ぶ馬鹿がいたらすでにそいつの人生終わってるから止めを刺してやれ」

 そんな相談を天音としていたそうだ。

「こんなに暗いのになんで今頃言うんだ?」
「か、母さんが言ってたろ?やっぱり照れ臭いんだ」
「彼女を褒めるくらいでそんなに躊躇うな。お前にそんな風に褒めてもらえる私の気持ちを少しは考えろ」

 要するに茉莉も喜びと恥ずかしさが混在しているらしい。
 彼氏の前でだけ見せる茉莉がいるんだと結莉が教えてくれた。
 事態が落ち着くと再びお弁当を食べる。

「母さんが知ったら喜ぶだろうな」

 水奈が言っていた。
 実際海翔と優奈が付き合い始めたと知った時神奈は喜んだそうだ。
 誠はじいじに文句を言っていた。

「てめぇ、何他人の孫娘に手を出してんだ!」
「茉奈だってもらったみたいだしね。今夜は誠につきあってやるよ」
「んじゃ俺もいっしょでいいよな」

 瑛大がそう言うと愛莉たちが怒り出したらしい。

「いくら何でも早すぎます!それに孫の事でどうして冬夜さん達が飲むんですか!?」
「愛莉の言うとおりだぞ!やっと私達にもトーヤの血を受け取れる孫が出来たんだ!私達も混ぜろ!」

 愛莉と神奈がそう言って6人で飲みにでたらしい。

「空は学と飲みにいったりしないのか?」

 天音が聞くと父さんは笑っていた。

「学が”まだ水奈を野放しにして飲みに行ける状態じゃない”ってさ」

 もう少し優菜たちが大きくなったら4人で飲みに行こうと学と相談していたみたいだ。

(2)

「あ、優奈達もそうか」
「まあな。よろしくな」

 私は小学校に来ていた。
 娘と息子の入学式の為。

「神奈さん達も呼んだ方がいいんじゃないか?」
「それを言ったら亜依さんじゃないのか?」

 学が言うと私が答えた。
 私は桐谷家の嫁なんだからそれが当然だろう。

「母さんは琴音の方があるから」
「そっか」

 あんまり気乗りしないけど母さん達を誘ってみた。

「……まあ、愛莉たちも行くって言ってたしな」

 母さんはあまり乗り気じゃないけど父さんが絶対行くと言い出した。
 その父さんと瑛大さんはお互いの孫娘を見て感想を言っている。

 誰が一番スタイルのいい女性になるか。

 小学校1年生に何を求めてるのやら。
 案の定母さん達に怒られる。
 この日の為に二人に服を買っておいた。
 意外にも優奈はロングスカートを要求した。
 理由を聞いてみた。

「茉莉達の話聞いてたから」

 優奈の歳の下着なんて知れてる。
 そんなに人に見られたくない物だ。
 だから長い方がいいだろう。
 海翔にも好みを聞いたらしい。
 海翔は悩んだそうだ。
 短いと優奈が嫌がる。
 だけど海翔の頭の中では長いスカートは平成を飛び越えて昭和の化石みたいなスケバンをイメージしたらしい。
 海翔じゃなくてもそんな化石が彼女なんて嫌に決まってる。
 そうやって海翔と相談して決めたらしい。
 どうやって話をしたか。
 この世界では小学生でスマホデビューを果たす。
 だから海翔は一人男の子だから茉莉達に聞かれずに優奈と話をしている。
 SHのグループにも入った。
 あまり問題が起きないのが一番だけど、いざという時SHの名前は役に立つ。
 そのお陰で似非SHも出来るという弊害があるけど、それはリベリオンとやらの餌になるだけだ。
 リベリオンが本物のSHに手を出したら容赦なく叩き潰すだけ。

「もう虫の息なんだろ?さっさと潰そうぜ」

 天音が空に言っていた。
 だけど空は首を縦に振らなかった。
 その理由を翼が言う。

「天音は忘れてる。あいつらの本拠地は日本じゃない」

 恵美さん達が潰してはいるけどやはり何か仕掛けているらしい。
 それに旅券等を偽造して入ってきたらいくら何でも民間の旅客機を撃墜するわけにはいかない。
 少人数を何回にも分けて入れていたら私達では防ぎきれない。
 それにやつらは潜伏先を県外に変えた。
 それだけで私達もわざわざ仕事を休んで潰しに行けるはずがない。
 要するに手を出したくても出せない。
 肝心の神谷もスマホを変えたらしい。
 偽名で作っていてどれが神谷の番号なのか分からない。
 ネット上での出来事は茜が調べつくす。
 もちろん固有の電話番号も突き止めるし、連絡先の番号も手に入れる。
 その先は恵美さん達が調べる。
 いくら偽名を使おうと戸籍があれば割り出すのはたやすいらしい。
 だけどあいつらは元々不法入国した存在だ。
 そんなわけで神谷の手がかりを失った。
 連絡先は分かる。
 だけどグル通などのネット回線を利用した会話でもない限りその中身は分からない。
 あの一軒以降彼らは姿を消した。
 だけど動いた痕跡はある。
 突然学生や若者が消息を絶っている。
 間違いなく神谷たちの仕業だ。
 純也も独自に捜査をしているらしい。
 仕掛けてくる前に潰そうにも相手が分からない。
 多分それを仕組んだのは友恵だと空が言っていた。
 その根拠はあの事件の前から友恵の動きだけは分からなかった。
 ただ、ロンドンで何かをしているというだけ。
 デウスエクスマキナとやらも空が小石を落下させてからビビって何もしてこない。
 にも、関わらず各国から物騒な連中が流れ込んでいる。
 間違いなく友恵の計画だろう。
 空の父さんも言っていたらしい。
 相手の動きもわからずに力づくでねじ伏せようとするほど余裕のある戦力じゃないだろ?
 そんなことをした結果は冬吾の試合を見ていたら分かるだろ?
 冬吾のチームは冬吾さえ前線にいたらいとも簡単を戦況を覆す。
 まさにジョーカー的存在だった。
 誠司も「少しは手加減しろ!」と文句を言うほどだ。
 だから今は動くべきじゃないと空は判断した。

「心配しないで。隠されると意地でも暴きたくなるのが私達の本性なの」

 茜がそう言っていた。
 それは長いスカートにペチコートを着ている女性の下着が気になるようなものだと父さんが言ったらしい。
 それを聞いた母さんが父さんと喧嘩してたけど。

「あの子には母親としての役目をちゃんとして欲しいのだけど」

 愛莉さんがそう言って悩んでいた。
 椿は間違いなく茜の娘だと主張するような成長をしていた。

「砂場で遊んだわけじゃないから汚れてないから平気だよ!」

 そう言って風呂に入るのを拒んでいた。

「そう言われるとそうだよね」

 茜が納得しそうになると壱郎が慌てて椿を風呂に入れようとする。

「じゃあ、パパも一緒に入ろう?」

 茜の前でそういうらしい。
 もちろん壱郎も幼稚園児の裸に興味を持つ変態じゃない。
 しかし茜はやっと状況を気づいた。
 今はそれで入るならいい。
 しかし中学生あたりになってそれをやられたら大事だ。
 愛莉さんにバレたらただじゃ済まない。
 やりたくなかったけど愛莉さんに相談したらしい。

「だからあれほど言ったでしょ!」

 茜の予想通り愛莉さんに怒られたらしい。
 私も他人事じゃない。
 優奈と愛菜は裸で家中を歩き回る。
 学が注意しても無駄だ。

「パパは私の裸に興味ないの?」
「普通の男は彼女くらいしか興味わかないよ」
「じゃあ、パパの彼女になってあげる」
「残念だな。パパには水奈って妻がいるんだ」
「うーん。じゃあ海翔は私に興味を持ってくれるかな?」
「優奈が成長したらきっとそうなるよ」

 その時にそんな話をされて困るのは優奈だぞ?
 現に恋は瑛大さんが色々旦那に言って困ってるらしい。
 それで優奈は納得した。
 だけど愛菜には彼氏がいない。

「じゃあ、私はいいよね!」
「そもそもどうして愛菜は服を着ないんだ?」

 外に出る時は服を着るだろうと学が聞いた。
 
「そりゃ、さすがに裸で外出は無理だよ。変なAVじゃないし」

 そのAVって言葉をどこで入手したのかが気になった。

「家でも同じだろ?パパ達が見てるんだぞ?」
「だからだよ。誠や瑛大がお小遣いくれるから!」

 それを聞いた母さんが激怒する。

「お前はまだやってたのか!?」
「瑛大も同罪だ。お前らいい加減にしろ!」

 私も怒鳴りつけたい気持ちでいっぱいだった。
 怒鳴ったくらいで治る父さんじゃないけど。

「あ、いたいた。片桐先輩」

 父さん達の後輩の中山瞳美先生が来た。
 優奈達の担任らしい。
 千歳がやると思ったけど6年生の……光太達の子供の担任をやっていた。
 中山先生は桜子に相談したらしい。

「いい?これからの6年は文字通り戦場だと思いなさい」

 桜子は一言そう言ったそうだ。
 中山先生に挨拶をさせる。
 中山先生は不思議そうにしていた。

「想像してたより大人しいですね」
「当たり前だ。俺の孫娘なんだからな!」

 父さんが得意気に言うと母さんがどついた。

「お前は黙ってろ!悪い、多分大丈夫だと思うけど何かあったらすぐ私に言ってくれ」

 どうせ水奈は学校に呼び出しても来るはずがないから。
 まあ、そのつもりだったけど。
 すると中山先生はにこりと笑った。

「それは桜子先輩から聞いてます。天音は電話をかけても出ないって」
「ば、馬鹿!今それを言うのはルール違反だ!」

 天音が慌てている。
 何のルールなのかは私も知らない。

「天音……どういうことか後でじっくり聞かせてもらいますね」

 愛莉さんが天音を睨みつける。

「た、たまたま掃除してて聞こえなかっただけだよ」
「でも、桜子先輩言ってましたよ?電話をかけても”この電話にはお繋ぎできません”ってでるって」

 着信拒否をしたらしい。
 
「水奈、お前もだぞ?」

 それを言ったのは母さんじゃない、学だった。
 茉奈や優翔は自分から暴れようとはしない。
 ただ結莉や茉莉に巻き込まれたりする。
 SHでは珍しく大人しい気弱な子だから馬鹿が狙い撃ちする。
 一番危険な地雷を踏みぬいているという事も知らずに。
 そういうわけで叱られるわけじゃないけど、面倒だから着信拒否にした。
 すると優翔が学のスマホの番号を桜子に教えた。
 後は想像通り。
 学は自分の電話番号を中山先生に教えていた

「学。お前妻の前で堂々と不倫か!?」
「保険だよ。お前にかけても出ない時は俺に連絡くれって意味だ。つまり俺に電話がかかってくるという事は……」

 その先を言わなくても分かるな?
 下手に反抗しても母さんも聞いている。
 天音と後で作戦会議をしよう。
 しかし天音も次々と手を塞がれていた。
 それは大地が何も言わずに作り笑いをしていたのを愛莉さんが察したところから始まった。

「瞳美。あなた桜子から聞いてない?」

 愛莉さんが質問していた。
 天音が必死に言うなと合図を送っている。

「……それは大地に聞いた方が良いのでは?」

 すると恵美さんが大地を睨みつける。

「知ってる事を全部話しなさい」

 大地は困惑していた。
 天音が睨んでるんじゃしょうがない。
 すると天音の父さんが言った。

「大地、ミスを冒したね」

 え?
 私も愛莉さん達も天音の父さんを見る。
 天音の父さんは静かに言う。

「この状況で何も言わないっていうのは”何もありません”じゃない。”何も言えません”という事なんだ」
 
 つまり大地は何か言えない事があるという事。

「大地、素直に言いなさい!」

 恵美さんが言う。
 さすがに恵美さんに睨まれたらどうしようもない。
 大地が話した。
 さっき学が私に警告した通りの事があったらしい。
 さっき中山先生が言った通り天音が着信拒否をする。
 だけど全部の電話が天音を呼び出す電話じゃない。
 中には母親に連絡したい事もある。
 だけど天音は電話に出ない。
 だから大地に伝えた。

「それならそう言いなさい」

 恵美さんが大地を叱る。

「天音、僕が何を言いたいかわかるね?」

 天音の父さんが言った。
 そう、結莉が悪さして呼び出すだけが担任の連絡じゃない。
 給食費の袋を持たせたからお金を用意して欲しいとか親と担任の連携は必要になる。
 だから、面倒だからと桜子の番号を着信拒否にしたことがいけない事だと言っていた。

「でも、そんな事なら結莉に言えばいいじゃないか?」
 
 天音の言う事ももっともだ。
 結莉や茉莉に言えばいい。

「それが……」

 大地がまだ何か話してない事があるみたいだ。
 結莉や茉莉は終礼になると全く話を聞いてない。
 そして終わったと思ったら速攻教室を出て行く。
 自分が日直の仕事がある事すら忘れている時がある。
 つまりは子供達に説明をしたところで子供が聞いてないんじゃ意味が無い。
 その証拠に結達はちゃんと美希に話していると愛莉さんが説明していた。

「まあ、後は恵美さんに任せるとしてそろそろ時間なんじゃないのかい?」

 天音の父さんが言うと私達は移動した。

(3)

 まずい。
 母さん達を呼んだのは間違いだったんじゃないか?

「おい、水奈。あれはまずいぞ……」
 
 隣にいた天音が私に忠告する。
 今は入学式。
 そして校長の長い話が待っていた。
 大人になったら分かるのかとおもったけどやっぱり無理だ。
 私が無理だと思うのだから優奈達が耐えられるはずがない。
 そして優奈達は寝ていた。
 仕方ないだろう。
 天音は父兄の席で爆睡しようとしていたのを愛莉さんに注意されていた。
 私は母さんが睨んでいるから無理。
 悠翔と海翔が必死に二人を起こそうとする。
 そして愛菜が豪快にいびきをする。
 さすがに全員がざわつく。
 
「そこの寝ている二人!ちゃんと先生の話を聞きなさい!」

 それだけで済むならいい。
 問題はその後だ。
 茉莉と菫はこの後に問題を起こした。
 いっそ気づかず寝ていて欲しいと思った。
 だが、やっぱり無理だった。
 二人は起きると文句を言う。

「うっせーぞはげ!話が長いから禿げるんだって水奈が言ってたぞ!」
「子供の安眠妨害すると殺すぞ!」

 優奈と愛菜がそう叫ぶ。
 壇上にいる校長の顔が真っ赤になっているのが分かった。

「お前は子供に何を教えたんだ?」

 後ろにいる母さんがすっごい睨んでいることが分かった。
 天音の子供は海翔だから静かに寝ている。
 あの騒ぎの中でもしっかり眠れるらしい。

「大地がどんな状況でも休息が取れる時に取りなさいって教えたからな」

 天音が得意気に語る。

「……で、校長先生がお話してる時がその休息時間って教えたのは誰なの?天音」
「んなもん一々教えなくても分かるだろ?」

 忘れてるのか?
 結莉と茉莉の弟だぞ?
 天音は得意げに語っているが大地はもう笑うしかないという感じだった。
 入学式が終わると色々話を聞いて、それが終わると天音達は結莉達が家にいるからと家に帰った。
 私達も実家によって出前の寿司を食べる。
 母さんが早速聞いてくる。

「で、今後どうするつもりなんだ?」

 多分優奈と愛菜の事だろう。
 正直こんな立場になるとは思ってなかった。
 結莉と茉莉を見て天音も大変だなと思っていたけどまさか自分がその立場になるとは思わなかった。
 学からも同じように言われる。
 どうしたらいいんだ。
 だけど母さんが言った。

「……まあ、頑張れ」

 え?

「優奈達の前でこんな話をしていいかわかんないけど、水奈も同じようなもんだったろ?」
「まあ、そうだけど」
「その結果どうなった?」
「母親になった……つもり」

 あくまでもつもりだ。
 私にその資格があるのだろうか? 
 不安になっていた。
 だけど母さんは話す。

「トーヤが言ってたんだけどな。あまり子供の育児に手を出すべきじゃない。母親として自覚するまで時間がかかるから見守ってやれ」

 天音の父さんは愛莉さんにそう言ったらしい。
 あまり言いすぎると娘が自信を失う。
 そんな状態の母親を見て娘がどう育つか考えた方が良い。
 あまりにも道を外しているのならかじ取りを手伝ってやったらいい。
 そこまでないのなら子供を相手に四苦八苦する娘をかつての自分を重ねて見守ってやれ。

「愛莉はどう思ったかわからねーけど、私は優奈達をそんなに責めるつもりはない」

 ちゃんと私を見て育ってるだろ?
 だから大丈夫だ。
 もっと堂々と子供達を導いてやれ。
 母さんが私に対してやってきたことをやるだけでいいんだ。

「……わかった」
「じゃ、せっかくの寿司だ。食べようか」
「学も飲むだろ?せっかくの祝い事だ」

 父さんが学に酒を勧める。

「ああ、飲む前に一つだけ忠告だ」

 母さんが一言言った。

「優奈と愛菜のあの癖だけは早いうちに対策を打て。片桐家ですら茜や冬莉という問題を抱えていたんだ」

 愛莉さんも手を焼いて今度は茜が娘の椿に手を焼いている。
 小さいうちはいい。
 あれを中学生まで引きずったらこの変態の餌だぞ。

「すいません、俺も言ってはいるんですが……」
「誠!今脱いだらお小遣いくれる?」
「あ、いや……今はいい。また今度にしような」
「いつやるつもりだ?聞かせてくれないか?」

 母さんがそう言うと父さんは笑っていた。
 学も笑うしかないようだ。
 片桐家か……。
 結と茉奈、優奈と海翔の関係が続けば私も天音の親戚か。
 だけど物語はもっと予想もしない事態へ進んでいく。
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