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FREEDOM
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(1)
また今年も始まった。
よりにもよって美希と天音と水奈の子供か……。
多分結達の方が楽だろうから先に済ませよう。
あの子も問題が無いわけじゃないんだけど……。
美希達は片桐先輩の家に住んでいるらしい。
ため息を吐きながら呼び鈴を押す。
「あら、いらっしゃい桜子」
愛莉先輩が出た。
「あれ?美希は?」
「ちょっとお茶の準備とかしてるから」
愛莉先輩は中に入るように言うとリビングに案内される。
美希は結達を呼びに部屋に向かったようだ。
美希と結と比呂、カミルとカミラがソファに座る。
愛莉先輩はダイニングテーブルの椅子に座って私達を見ていた。
美希の母親としての腕前を見たいのだろう。
さっそく家庭訪問を始める事にした。
「まず結君の学校での態度ですが……」
私がそう言うと美希は息をのむ。
さすがに結の学校生活は気になるのが普通だろう。
全く気にも止めないのが天音だけど。
私と翼が話をするのは初めてじゃない。
当然天音と一緒に学校に呼び出す。
しかし天音と翼じゃやっぱり差がある。
「授業中は大人しいです」
「そっか……よかった」
安堵する美希。
「……大人しすぎるんです」
「どういう意味?」
美希が興味を示した。
そう、結は良くも悪くも大人しい。
授業でやる部分を教科書で確認してから寝る。
茉莉や菫も同じだけど茉莉達は豪快にいびきを立てて寝ている。
うるさくて授業にならないので注意すると「なんで私達だけなんだ!?結莉や結達も寝てるじゃねーか!」と抗議する。
あまりこの二人を刺激したくないんだけど仕方なく起こす。
「片桐君、今の説明聞いてた?理解できた分だけでいいから説明してみて」
「えーと……」
結は翼譲りの学力を持っていた。
当たり前の様に説明する。
それだけなら問題ない。
問題はこの後だ。
「それで、ここのところなんだけど……」
そう言って質問攻めが始まる。
私が間違った解釈を説明したわけじゃない。
だけど……。
「なんで虫が友達なの?」
蚊とか潰したくなるけど仲良くしないといけないの?
そんな質問を当然のようにしてくる。
「教師の癖に説明できねーのかよ!」
もちろん結がそんな事言うわけがない。
だけど一番最悪なパターンに入る。
「うるせーぞゴキブリ!結が聞いてるんだから黙って死んどけ!」
結莉が怒り出す。
「結莉!こいつら自殺するほど度胸がないから私が殺してやる」
「茉莉一人じゃ大変だろうから私も手を貸してやる!秋久も朔もぼさっとしてないで手伝え!」
秋久は別に「黒いリストバンドを見つけたら殺せ」という意思はない。
ただ晶先輩から「陽葵と菫にだけ戦わせて男の子のあなたが見てるだけって何を考えてるの!?」と叱られるのを恐れているだけだ。
そうしないと本当に中東にバカンスに連行されるから勘弁しておくれと酒井先輩から聞いている。
朔も同じ理由だ。
「茉莉ちゃんという大事な彼女が戦ってるのに恋人のあなたがぼーっと見てるだけなんて許しません!」
地元で晶先輩に逆らえるのは多分結莉と茉莉くらいだろう。
晶先輩にとって待望の片桐家の血の入った孫なのだから。
愛莉先輩と電話で相談していたことがある。
能力的には多分最強なんだろうけど、やる気のなさも作中で最強レベルだろう。
とにかく茉莉と菫は口実があればいつでもどこでも平気で暴れ出す。
すでに学校で要注意人物になっていた。
黒いリストバンドをしていれば、相手が年上だろうと何だろうと平気で襲い掛かる。
もちろん天音にも指導してくれと頼んだけどそんな無茶な指示を出した張本人が聞くわけがない。
「確かに桜子の言うとおりだな」
「え?注意してもらえるの?」
「ああ、リブロースとかいうふざけた連中の事忘れてた」
「あのね……天音は私の話を聞いてた?」
「だからFGだけじゃなくてリブロースも始末しろって話じゃないのか?」
私は泣きたくなった。
それを聞いていた愛莉先輩の表情が険しくなる。
一方で美希は少し考えていた。
「それで、比呂とカミル達はどうしてるの?」
「結が良い子に思えてきたの」
そんな中でも結は平気で寝る事が出来る。
しかしある時間だけは必ず起きる。
それは給食の時間。
「そんなに暴れてたら給食食べる時間が無くなるよ」
結が動き出したらSHの仲間は全員大人しくなる。
「なんだ逃げるのか?」
そんな馬鹿がいたら結が窓ガラスを突き破って馬鹿を教室の外に吹き飛ばす。
「暴れるなら外でしてよ」
幼稚園の時教わらなかったの?
そんな事が何回かあってからFGの連中も結が動き出したら何もしてこなくなった。
給食の時間が絶対に平和な時間。
比呂とカミル達も傍観してるだけ。
比呂はただ面白がってるだけ。カミル達は同い年が相手じゃ話にならないと判断したんだろう。
仕掛けるのは大体茉莉と菫だけど。
結莉は偶に暴れるだけ。
結と「今日の給食ラーメンだって。楽しみだね」と話をしている。
「でもさ、給食でラーメンって急いで食べないとのびちゃうんじゃないかな」
「そう言われるとそうだね」
当然その日は菫達も必死になって馬鹿な連中を処分する。
ただでさえのびやすいラーメンが配膳に時間がかかったら大惨事になる。
「僕バリカタが好きなのにどうしてくれるの?」
そう言って結が怒り出すともう止められない。
結の暴走を止められるのは美希か茉奈だけらしい。
ぽかっ
「配膳してる時に暴れたらだめだよ」
おかずに埃がはいったりすると茉奈が結に注意するらしい。
だから朔達も学校に来る前に献立表をチェックしてくるそうだ。
冷めたらまずい献立の時とかは朝から給食の時間まで常に注意している。
菫達にも伝えて絶対に暴れないようにしている。
菫達にとっても結の存在は絶対らしい。
そんな片桐家だから晶先輩も欲しがるんだろうけど。
そんな説明を聞いていた愛莉先輩が美希を見る。
翼がどう対処するかお手並み拝見なんだろう。
慎重に育てていかないと大変なことになる。
美希もその事を自覚してるらしい。
少し考えてから結に話した。
「冬夜。どうして授業中に寝るの?」
「その日やる分を理解したらやる事なくて退屈だから」
教科書を見るだけで理解してしまうのは翼や天音と同じらしい。
だからテストの成績もいい。
それが一番の悩みの種なんだ。
「結は最近夜ゲームするから遅くまで起きてるよね?」
「うん。キリが付くまでやってるから。早く寝た方がいいの?」
「そうじゃないの。だって他の子も多分同じだろうから」
地元ではなんでこんな時間にこんなアニメをするんだという時がよくある。
毎クール無茶苦茶な時間に月9を組み込んでくる放送局だ。
だからそれをリアルタイムで見ると当たり前の様に朝起きれない。
美希の狙いはそこだった。
「皆は遅くまで起きてるのにちゃんと授業の時間起きてる。なのにどうして結はそれが出来ないの?」
自分は給食が遅くなると怒り出すのに、授業中自分一人寝てる分は関係ないってのは卑怯じゃないか?
説得の仕方が上手いのは愛莉先輩に教わったのだろうか?
「皆に合わせて行動するっていうでしょ?それが学校なの」
例え退屈な授業でも真面目に受けてる子もいるんだからまじめに受けなさい。
大人になったら退屈だからって仕事中に寝るなんてことは絶対に出来ない。
父さんだって夜遅くまで起きてるのにちゃんと仕事してるでしょ?
その代わり他に理不尽な理由で授業を妨害する子がいたら注意してあげなさい。
それをするにはまず結がちゃんと真面目にしてないとダメでしょ。
「……わかった」
結は納得したようだ。
「これでいいかな」
「助かります。で、次なんですけど……」
「まだ何か問題があったの?」
「そうじゃなくて、学校から帰ったらどう過ごしてるのかなって」
さっき聞いた話だとゲームしてるみたいだけど。
「うん、一緒にテレビ見たり部屋で茉奈とゲームしてるみたい」
茉奈とゲーム?
愛莉先輩も表情が険しくなる。
私も嫌な予感がしたのでどんなゲームをしてるのか聞いてみた。
ちなみに結莉と茉莉のやってるゲームは大体お察しの通りだ。
菫達もしてるみたいなのは予想していたけど……まさか優奈と愛菜までやってるなんて初めて聞いた。
それを聞いた愛莉先輩がスマホを触っている。
多分神奈先輩に伝えているのだろう。
しかし結は違うらしい。
「ほら、最近流行ってるスマホのゲームがあるじゃない」
空を旅する奴とかお姫様を育てるやつとかかわいい動物を集めるやつ。
茉莉達と対戦してるのは水奈や天音や陽葵や菫。
カミルやカミラ、紀子や健太は好みではないらしい。
それを聞いていた愛莉先輩が頭を抱えていた。
お察しします。
でも、どうして結はそういうのしないのだろうか?
美希は笑って答えた。
映画館ではにおいまではいかないけど熱さとか冷たさとかを体験できる仕組みになってる劇場もあるらしい。
そのうち家のテレビでもそうなるんじゃないかと噂されている。
それが結の理由らしい。
「カミルが言ってたけどあんなの絶対体験したくないってさ」
それを聞いた結なりに想像してあんまり見たいものじゃないと判断したらしい。
それよりファンタジーの世界でプレイヤーが活躍する奴が好きらしい。
動物のゲームは結莉に合わせているんだそうだ。
「……そこまでリアルにしたいなら適当にゴキブリ狩りした方がいいって」
それって母親としてどうなの?美希。
愛莉先輩はどう思っているのだろうか?
念の為聞いてみた。
「美希の子供だから私達は関与しないって決めてたんだけど、冬夜さんも今のままで良いって言ってました」
あくまでもゲームにそこまでリアルさを求めてるわけじゃない。
それくらいだったらリアルで狩りをするってだけだ。
しかし大前提を忘れてる。
結はそういうのに全く興味を示していない。
それをわざわざ話をして興味を持たせる理由もないだろ。
ゴキブリ狩りをした方がましだというだけでするとは言ってない。
それすら面倒なんだろ。
やろうと思えばいつでもやれるんだから。
それより茉奈や秋久と遊んでた方が楽しいと今は思ってるのだからそれをさせておけばいいだろう。
片桐先輩らしい理由だ。
やる気が無いのにわざわざ興味を持たせるような真似してもしょうがない。
自由にさせてやれ。
多分そう言う事だ。
「結君は将来何になりたいとかあるの?」
夢くらい持っていてもおかしくないだろう。
空は全くなかったって千歳が言ってたけど。
すると結は難しい顔をしていた。
どうしたんだろう?
「僕の夢はかなわないってじいじが言ってた」
「どうして?」
「あ、それは……」
美希が説明した。
冬夜はロボットアニメに出てくるロボットのパイロットになりたいらしい。
だけどそのロボットが完成していないしいつできるかもわからないから無理だよと片桐先輩が説明した。
それで悩んでるらしい。
さてと、私も美希を試してみるかな。
「それで美希はどう思ってるの?」
美希も突然言われて考えていた。
愛莉先輩も娘の教育がどうあるのか試してるようだ。
少し考えて翼は答えた。
「今のままで良いと思う」
だってまだ小学校1年生。
まだこの世の中の事について何も知らない。
テレビを見たりしていればそのうち何かに興味を持つかもしれない。
それを確かめるまでは自由にさせるつもり。
美希はやっぱりある程度は自分で学習しているようだ。
「私もそう思う。学校生活で変な悪影響を受けないようには気を付けて見ておく」
「ありがとう、私も家での生活はチェックしておきます」
まだ外に出て遊ぶ歳じゃないから。
その後比呂やカミル達の話もした。
驚いた。
比呂はバスケが将来したいらしい。
「それならミニバスから始めてみるといいかも」
息子が通ってたミニバスのチームがあるから資料取り寄せておくと美希に伝えた。
「じゃ、次があるからそろそろ行くね」
そう言って立ち上がると玄関に向かう。
「あ、待って桜子」
「どうしたの?」
「家庭訪問の事天音に伝えてる?」
「え?茉莉達には伝えたけど……」
まさか何か問題あるの?
「た、たぶん大丈夫だとは思うけど……」
美希は何か嫌な予感がしたらしい。
その証拠に愛莉先輩が慌ててスマホを操作している。
私は嫌な予感しかしない天音の家に向かった。
(2)
私は天音の家に訪れた。
しかし呼び鈴を鳴らしてもなかなかでない。
家庭訪問の事はちゃんとプリントを配っておいたし茉莉達に伝えるように言っておいた。
まあ、それでも出かけるのが天音なんだろうけどそうじゃないらしい。
家からかすかに音が銃声が聞こえてくる。
今日くらいゲームを止めるとかしないのだろうか?
でもそんなことを気にしていたら天音と面談なんて絶対無理だ。
頭を抱えながら何度も呼び鈴を押すとドアがやっと開いた。
「しつけーぞ!新聞なんか今時いらねーって言ってるだろ!?こっちは取り込み中なんだ!お前の死亡事故を新聞のネタにしてやるぞ!」
来客に対しての第一声がこれだ。
「……茉莉。今日先生が行くって言ったよね?」
「あれ?そうだっけ?」
茉莉は謝るという事を知らない。
そして思い出したかのように言う。
「天音は今日お腹痛いからまた今度にしてくれって……」
すぐに嘘と分かった。
「茉莉、どうした?そんなにしつこいなら私が八つ裂きにしてやるぞ」
この娘にしてこの親だ。
天音は私を見ると不思議そうにしていた。
「どうした?桜子。いつもなら呼び出すのに今日は桜子の方が来るなんて……」
嫌な予感程よく当たる。
茉莉はまずいと思ったのかそうっと部屋に戻ろうとするも、天音が腕を捕まえた。
とりあえず確認しよう。
多分無駄だと思うけど。
「天音はプリント見てないの?茉莉達に配っておいたはずだけど」
「ああ、どうせしょうもない事書いてるからって茉莉達が裏に落書したり、鼻かんだりしてる」
ティッシュがあるんだからそれを使えと言ってるんだけどな。
天音は何も知らないようだ。
親に向けて配ったプリントをそんな扱いしていることをなぜ叱らないのかと言いたかったけど、それより重要な事がある。
「……今日も帰る時に天音の家に伺う時間を茉莉に伝えておいたんだけど」
「……そういや、帰ってくるのやけに早かったな」
いい加減気づいたと思いたかった。
しかし相手は天音だ。
そんな甘さは捨ててこないとダメだ。
「なんか用があるのか?」
全然気づく様子が無いようなので私から直接伝えた。
「今日は家庭訪問の日なんだけど」
「へ?」
全然知らなかったのは間違いないらしい。
翼達からは聞いてないのか?
天音が気づいたかのようにスマホを見ると愛莉先輩から連絡があったらしい。
「わりぃわりぃ、全然準備してないわ」
散らかってるけど折角来たんだし上がっていけ。
そう言って私をリビングに案内する。
だけど私は最初に確認しておきたい事があった。
「茉莉と結莉の部屋は見ない方がいいわよ」
恵美先輩ですらそう言っていた。
何があるのか気になったので二人の部屋を見せて欲しいと天音に言った。
「別にいいけど?」
特に何もないぞ?
だけど結莉と茉莉は抗議する。
「今散らかってるからダメ!」
しかしこれだけ物が散乱したリビング以上の惨状なんてないだろう。
その考えがまだ甘かった。
天音に案内してもらうと一目見て絶句した。
家具とかは普通だ。
ただ棚にずらりと並んだ人形の頭だけ。
天井には海賊の旗の様なものが飾られてある。
テレビの上には刃物が飾られてある。
人形の頭だけが女の子っぽい物だった。
恵美先輩が隠したかったのはこれか……。
まだ面談を始めてもいないのにめまいがする。
すると結莉が言った。
「はいこれ飲んで」
水を注いだコップと薬を結莉は用意していた。
「きっと頭が痛くなるだろうと恵美が言ってたから」
頭痛薬を頭痛の原因が用意していた。
「……よく分かりました」
「もう終わりか?」
「そんなわけないでしょ」
本当はもう何件か回らないといけないのに予定を変更するしかなさそうだ。
リビングで私と天音が向かい合うと結莉達はゲームを始める。
さすがの天音もマズいと思ったのかゲームを止めるように注意する。
「宿題ならもうすませたよ?」
結莉が言う。
天音は説得を試みる。
「これから茉莉達の事を話し合うから二人も聞いてないとダメなんだ」
「せんせーの話なんて面倒な事ばかりだから適当に聞き流しておけばいいって言ってたじゃん」
それならゲームしながらでもいいだろ?
「確かにそうだな」
天音は納得した。
それでいいのか?母親。
しかしこんなことで時間を費やしてる暇はない。
天音と話し出そうとすると水奈の声が聞こえてきた。
「あれ?天音どうした?」
「天音は今日桜子の相手してるから無理っぽい」
「なんで桜子来てるんだ?」
「家庭訪問だって言ってる」
「……結莉達も話聞かないとまずいだろ」
「だから聞きながらゲームしてるよ?」
「10分くらいで済むからちゃんと聞いておけ」
ゲームの相手が水奈だと知ったら当然神奈先輩の耳に入ると思ったのだろう。
その後「茉奈!お前家庭訪問の日とか聞いてないか!」と声が聞こえた。
水奈も知らなかったらしい。
流石に何も準備してなくてゲームしてたなんて神奈先輩の耳に入ったらまずいと思ったのだろう。
もう遅いけど。
この2人の話が10分程度で済むと思ってるのがまだすごい。
とりあえず水奈がそういうと2人はゲームを止める。
代わりに天音の隣に座ってスマホをいじりながら聞いてる。
「で、茉莉達の学校での話とかだよな?」
そのくらいは覚えていたらしい。
「まず結莉の話は置いておいて、茉莉についてだけど……」
問題だらけでどれから話せばいいかわからないけど、一つずつ説明する。
教室から消える、授業中暴れ出す、上級生と喧嘩をして病院送りにする、給食のおかずを他の児童から巻き上げる。
暴れる割には体育の授業は「面倒」だとサボる。
まだ6歳なのに「お腹が痛い」と言って保健室に行こうとする。
唯一ましなのは……。
「悪戯はしないみたいだけど」
「じゃ、いいじゃん」
「私の話をちゃんと聞いていた?」
「結莉は暴れないよ?」
結莉が言う通り結莉は「滅多に」暴れない。
芳樹が寝ていて暇な時に暇つぶしに加わるくらいだ。
あまりにも騒ぎになって結が起きると大人しくなる。
その時には何人か保健室に運ばれているけど。
それはまだまし。
一週間に2回以上は救急車がやってくる。
当然相手の親は抗議するけど、片桐家と石原家と酒井家に関しては教頭ですら取り合おうとしない。
うかつに口を出すと自分のクビが飛ぶ。
すると天音は少し考えてから言った。
「茉莉、まずお腹が痛いって言い訳はまだ早いからやめとけ」
本当にそうなった時に信じてもらえなかったらやばいぞ。
その理由はどうなんだ?
「ていうか、本当にお腹痛くなるの?」
「酷いと学校にいけないくらい酷い」
「そっか~」
その時茉莉がにやりと笑うのを見逃さなかった。
茉莉は学校を休む口実に利用するつもりだろう。
そこは家に天音がいるから止める……と信じたい。
「でも成績はどうなんだ?」
「テストを見てないの?」
「二人とも教室にテスト用紙教室のゴミ箱に捨ててくるらしくて見せてくれないんだ」
だからよほど悪いんだろうかと心配はしたらしい。
その前にその行動をどうして注意しないのかと問い詰めたいけど。
「成績はかなり優秀です」
結レベルにいい。
あの子も寝てる割にはしっかり理解している。
たまに物凄い質問をしてくるから迂闊に声をかけたくないのが本音だった。
「じゃ、寝とけばいいのか?」
寝すぎるのはあんまりよくないって天音が言ってたそうだ。
いっそずっと寝ててくれた方がありがたいと思う私は教師としてどうなのだろうか?
「まあ、茉莉なら寝てても授業の内容くらい分かるだろうから、それでいいか?桜子」
それを許すのは母親としてどうなんだ?
「寝るのを妨げる五月蠅い馬鹿は二度と口が聞けないようにしてやればいい」
まてまてまて……。
「天音、母親のあなたが娘に暴力を勧めるのはどうなの?」
二人とも女の子でしょ?
しかしそんな意見が天音に通用するほど甘くはない。
「女性のプロレスラーや柔道家がいるのに女の子だから暴れるなって方がどう考えてもおかしいだろ」
おかしいのは私の様な気がしてきた。
この子達に普通の説得が通用するわけがない。
ちょっとやり方を変えてみよう。
「結は授業中起きてるって約束してくれたよ」
「え?」
下手に起きていられて無茶な質問をされても困る。
だからってせっかく納得してくれたのに寝てろと言うのも間違っている。
だから結莉から説得した。
「結莉はどうして片桐君の隣の席にしたの?」
「いっしょにいたいから」
「だったら片桐君の相手をしてあげたらいいんじゃないかな?」
結莉と冬夜ならそんなにバカ騒ぎを起こすことはないだろう。
「うぅ……でも茉奈の邪魔にならないかな?」
「結がそんな素振り見せたことある?」
あの歳でそんな器の持ち主なんだ。
そんなことは絶対にありえない。
結莉が悩んでいる。
もう一押しかな?
「結莉。学校で寝ているだけじゃ時間がもったいないでしょ。色んな話をしたり聞いたりするのもありなんじゃない?」
「そうだね……分かった」
何とか一つ問題をクリアした。
しかし次はもっと厄介だ。
「じゃあ、私は暴れていいんだな」
絶対言うと思った。
やっぱり結を利用するしかないだろう。
「茉莉と菫が暴れると当然教室が大騒ぎになるでしょ」
「それがどうかしたのか?」
「その時、茉奈と結の時間を妨害することになるんじゃない?」
そうして怒り出すのは結だよ。
「それはまずいな」
茉莉は悩みだした。
「遊ぶための時間はちゃんとあるはずでしょ?その時まで我慢するのも学校で学ぶことだよ」
「その時間なら何やってもいいのか?」
「まあ、そうね」
じっとさせておいていつか不満が爆発するのは避けたい。
「外でドッジボールとかしてみたらどうかな?」
「スポーツなんて面倒だし汗かくだろ」
喧嘩で流す汗はどう説明するんだ。
茉莉達がドッジボール始めても一方的な私刑にしかならない気がするけど……。
「二人とも成績はいいから大人しくしてるだけでいいの。宿題だってやってきてるし」
そこは天音の小学生時代と変わらない。
「この二人に大人しくしてろってのが無理なんじゃないか桜子」
天音は母親という立場をわかっているのか?
「……ルールを破る事がどういう事かは遠足の時に反省したんじゃないの?」
せめて授業中だけでも大人しくしててほしい。
「まあ、茉莉達もそのくらいは我慢しろ。粋なんかは我慢できない時は教室抜け出してたし、そうすればいいんだよ」
この母親は何を言っているのだろうか?
まあ、今はそれで折れるとしよう。
「授業の間だけ我慢すればいいんだな?」
「約束出来る?」
「菫とか黒い馬鹿が仕掛けてきたらどうするんだよ?」
「酒井さんにもお話に行くから」
「……分かった」
「ありがとう」
通常の3倍くらい時間をかけてこの二人の面談は終わった。
天音の問題は切り札がある。
天音の家を出ると愛莉先輩に電話して内容を伝えた。
愛莉先輩がこっぴどく天音を注意したらしい。
「桜子。茉莉達が何かしたら天音はもちろん私達にも知らせて」
恵美さんと話し合って二人で結莉達の今後を考える事にしたらしい。
やっぱり天音一人だと不安が恵美先輩でもあったようだ。
しかし問題は茉莉と結莉だけじゃない。
私のクラスには私に何か恨みがあるのかと思うくらい問題を詰め込まれていた。
(3)
水奈の家に着くと呼び鈴を鳴らす。
「桜子先生いらっしゃい」
茉奈が玄関に現れた。
「水奈は?」
「ママは今ちょっと取り込み中で……」
「茉奈!あと5分だけ時間を稼げ!」
何をしているんだ?
「とりあえずどうぞ」
茉奈にリビングに案内してもらう。
意外と綺麗に掃除されていた。
優翔はお茶とお菓子の用意をしている。
「どうぞ」
優翔からお茶をもらうとそれを飲む。
2人は正座して待っている。
「じゃ、優菜と愛菜。あとは任せた!」
「逃げるのかこのチキン!」
水奈と菫の声がする。
「今日家庭訪問の日なんだよ。これ以上待たせたら母さんに怒られる」
とても母親とは思えない声が聞こえてくる。
そして部屋から水奈が出てきた。
ジャージにTシャツで髪はぼさぼさ。
「で、なんで急に家庭訪問なんだ?」
当たり前の様に聞いてくる水奈。
「ちゃんとプリントを渡していたけど」
「あ、ああ。あれなら全部あれだ」
そう言ってリビングにおいてあるシュレッダーを指さした。
学校のお知らせをなんだと思っているんだ?
「で、茉奈達にも問題あるのか?」
「いえ、とても大人しくて真面目です」
菫や茉莉達の中で奇跡的にまじめな二人。
それでも唯一問題があったのが茉奈の髪の毛。
ピンクの髪の毛はやはり教師からも指摘があったりするくらいだから、他の児童も冷やかす。
気弱な茉奈は何も言い返せずにただ俯いているだけ。
もちろんそれだけで終わる筈がない。
「そんなに髪の色が珍しいの?じゃ、私達も相手してあげる」
「私もそうだね。で、何がいいたいの?」
陽葵とカミラが茉奈の前に立つ。
それだけで済めばいい。
もちろん茉莉と菫は有無を言わさず暴れ出す。
それで済めばましだ。
「茉奈に文句があるなら俺が聞いてやるよ」
そう言って結が立ち上がるとSHの人間は慌てる。
「学校が壊れると私達も巻き添え喰らうから死ぬならお前らだけにしとけ!」
もちろん茉奈も慌てて結を宥める。
「……茉奈に感謝しろ。寿命が少しだけ伸びたぞ」
茉奈の説得で結は自分の席に戻る。
「やっぱり片桐家は普通じゃねーんだな」
水奈は感心していた。
「水奈は茉奈からそういう相談受けてないの?」
「いやあ、学校から帰って来た時には私ゲームしてるか寝てるからさ」
それでいいのか母親。
すると茉奈が代わりに答えた。
「どんな時でも結が守ってくれるから平気なの」
もじもじしながら言う茉奈。
この子は問題なさそうだ。
と、なると問題は優翔か。
「優翔は何か趣味とかそういうのないのかな?」
ちなみに二人とも成績はいい。
宿題とかもしっかりやって来る。
欠点がないかのように思えたが優翔には若干心配があった。
「茉奈と一緒に夕飯の支度とか掃除洗濯があるから、趣味の時間とかもてなくて」
お風呂の掃除もしないといけない。
ちょっと待て。
「じゃあ、水奈は何をしてるの?」
「優菜と愛菜の世話……かな?」
茉奈が答えた。
2人とも幼稚園児。
そんなに世話を焼くこともないだろう。
そうではなかった。
優菜や愛菜のゲームの対戦相手をやっていた。
「さ、さすがに酒は飲ませてないぞ!」
自分から白状してくれた水奈。
酒を飲みながらゲームをしてるらしい。
「水奈。水奈のせいで優翔は自分の時間が持てないの」
茉奈はいい。
夜とかに結という話し相手がいるから。
だが、当たり前だけど優翔にはその相手すらいない。
そのままでいいと本当に思ってる?
「分かったよ……優翔の相手もすればいいんだな!」
この母親も何を聞いているんだ?
時間をかけ過ぎたようで学が帰ってくる。
「どうして桜子先生がいるんだ?」
学も知らなかったらしい。
茉奈が説明する。
私も今話したことを学に話す。
「分かりました。ちょっと家族で話をしたいので」
「ええ、そうしてください。このままでは優翔が心配で」
「分かってます」
そして今日の家庭訪問は終わった。
天音と水奈は厳重に注意されたらしい。
特に水奈は神奈先輩と学にこっぴどく叱られたそうだ。
「急に来たんだから仕方ないだろ!」
2人とも同じことを言っていた。
また今年も始まった。
よりにもよって美希と天音と水奈の子供か……。
多分結達の方が楽だろうから先に済ませよう。
あの子も問題が無いわけじゃないんだけど……。
美希達は片桐先輩の家に住んでいるらしい。
ため息を吐きながら呼び鈴を押す。
「あら、いらっしゃい桜子」
愛莉先輩が出た。
「あれ?美希は?」
「ちょっとお茶の準備とかしてるから」
愛莉先輩は中に入るように言うとリビングに案内される。
美希は結達を呼びに部屋に向かったようだ。
美希と結と比呂、カミルとカミラがソファに座る。
愛莉先輩はダイニングテーブルの椅子に座って私達を見ていた。
美希の母親としての腕前を見たいのだろう。
さっそく家庭訪問を始める事にした。
「まず結君の学校での態度ですが……」
私がそう言うと美希は息をのむ。
さすがに結の学校生活は気になるのが普通だろう。
全く気にも止めないのが天音だけど。
私と翼が話をするのは初めてじゃない。
当然天音と一緒に学校に呼び出す。
しかし天音と翼じゃやっぱり差がある。
「授業中は大人しいです」
「そっか……よかった」
安堵する美希。
「……大人しすぎるんです」
「どういう意味?」
美希が興味を示した。
そう、結は良くも悪くも大人しい。
授業でやる部分を教科書で確認してから寝る。
茉莉や菫も同じだけど茉莉達は豪快にいびきを立てて寝ている。
うるさくて授業にならないので注意すると「なんで私達だけなんだ!?結莉や結達も寝てるじゃねーか!」と抗議する。
あまりこの二人を刺激したくないんだけど仕方なく起こす。
「片桐君、今の説明聞いてた?理解できた分だけでいいから説明してみて」
「えーと……」
結は翼譲りの学力を持っていた。
当たり前の様に説明する。
それだけなら問題ない。
問題はこの後だ。
「それで、ここのところなんだけど……」
そう言って質問攻めが始まる。
私が間違った解釈を説明したわけじゃない。
だけど……。
「なんで虫が友達なの?」
蚊とか潰したくなるけど仲良くしないといけないの?
そんな質問を当然のようにしてくる。
「教師の癖に説明できねーのかよ!」
もちろん結がそんな事言うわけがない。
だけど一番最悪なパターンに入る。
「うるせーぞゴキブリ!結が聞いてるんだから黙って死んどけ!」
結莉が怒り出す。
「結莉!こいつら自殺するほど度胸がないから私が殺してやる」
「茉莉一人じゃ大変だろうから私も手を貸してやる!秋久も朔もぼさっとしてないで手伝え!」
秋久は別に「黒いリストバンドを見つけたら殺せ」という意思はない。
ただ晶先輩から「陽葵と菫にだけ戦わせて男の子のあなたが見てるだけって何を考えてるの!?」と叱られるのを恐れているだけだ。
そうしないと本当に中東にバカンスに連行されるから勘弁しておくれと酒井先輩から聞いている。
朔も同じ理由だ。
「茉莉ちゃんという大事な彼女が戦ってるのに恋人のあなたがぼーっと見てるだけなんて許しません!」
地元で晶先輩に逆らえるのは多分結莉と茉莉くらいだろう。
晶先輩にとって待望の片桐家の血の入った孫なのだから。
愛莉先輩と電話で相談していたことがある。
能力的には多分最強なんだろうけど、やる気のなさも作中で最強レベルだろう。
とにかく茉莉と菫は口実があればいつでもどこでも平気で暴れ出す。
すでに学校で要注意人物になっていた。
黒いリストバンドをしていれば、相手が年上だろうと何だろうと平気で襲い掛かる。
もちろん天音にも指導してくれと頼んだけどそんな無茶な指示を出した張本人が聞くわけがない。
「確かに桜子の言うとおりだな」
「え?注意してもらえるの?」
「ああ、リブロースとかいうふざけた連中の事忘れてた」
「あのね……天音は私の話を聞いてた?」
「だからFGだけじゃなくてリブロースも始末しろって話じゃないのか?」
私は泣きたくなった。
それを聞いていた愛莉先輩の表情が険しくなる。
一方で美希は少し考えていた。
「それで、比呂とカミル達はどうしてるの?」
「結が良い子に思えてきたの」
そんな中でも結は平気で寝る事が出来る。
しかしある時間だけは必ず起きる。
それは給食の時間。
「そんなに暴れてたら給食食べる時間が無くなるよ」
結が動き出したらSHの仲間は全員大人しくなる。
「なんだ逃げるのか?」
そんな馬鹿がいたら結が窓ガラスを突き破って馬鹿を教室の外に吹き飛ばす。
「暴れるなら外でしてよ」
幼稚園の時教わらなかったの?
そんな事が何回かあってからFGの連中も結が動き出したら何もしてこなくなった。
給食の時間が絶対に平和な時間。
比呂とカミル達も傍観してるだけ。
比呂はただ面白がってるだけ。カミル達は同い年が相手じゃ話にならないと判断したんだろう。
仕掛けるのは大体茉莉と菫だけど。
結莉は偶に暴れるだけ。
結と「今日の給食ラーメンだって。楽しみだね」と話をしている。
「でもさ、給食でラーメンって急いで食べないとのびちゃうんじゃないかな」
「そう言われるとそうだね」
当然その日は菫達も必死になって馬鹿な連中を処分する。
ただでさえのびやすいラーメンが配膳に時間がかかったら大惨事になる。
「僕バリカタが好きなのにどうしてくれるの?」
そう言って結が怒り出すともう止められない。
結の暴走を止められるのは美希か茉奈だけらしい。
ぽかっ
「配膳してる時に暴れたらだめだよ」
おかずに埃がはいったりすると茉奈が結に注意するらしい。
だから朔達も学校に来る前に献立表をチェックしてくるそうだ。
冷めたらまずい献立の時とかは朝から給食の時間まで常に注意している。
菫達にも伝えて絶対に暴れないようにしている。
菫達にとっても結の存在は絶対らしい。
そんな片桐家だから晶先輩も欲しがるんだろうけど。
そんな説明を聞いていた愛莉先輩が美希を見る。
翼がどう対処するかお手並み拝見なんだろう。
慎重に育てていかないと大変なことになる。
美希もその事を自覚してるらしい。
少し考えてから結に話した。
「冬夜。どうして授業中に寝るの?」
「その日やる分を理解したらやる事なくて退屈だから」
教科書を見るだけで理解してしまうのは翼や天音と同じらしい。
だからテストの成績もいい。
それが一番の悩みの種なんだ。
「結は最近夜ゲームするから遅くまで起きてるよね?」
「うん。キリが付くまでやってるから。早く寝た方がいいの?」
「そうじゃないの。だって他の子も多分同じだろうから」
地元ではなんでこんな時間にこんなアニメをするんだという時がよくある。
毎クール無茶苦茶な時間に月9を組み込んでくる放送局だ。
だからそれをリアルタイムで見ると当たり前の様に朝起きれない。
美希の狙いはそこだった。
「皆は遅くまで起きてるのにちゃんと授業の時間起きてる。なのにどうして結はそれが出来ないの?」
自分は給食が遅くなると怒り出すのに、授業中自分一人寝てる分は関係ないってのは卑怯じゃないか?
説得の仕方が上手いのは愛莉先輩に教わったのだろうか?
「皆に合わせて行動するっていうでしょ?それが学校なの」
例え退屈な授業でも真面目に受けてる子もいるんだからまじめに受けなさい。
大人になったら退屈だからって仕事中に寝るなんてことは絶対に出来ない。
父さんだって夜遅くまで起きてるのにちゃんと仕事してるでしょ?
その代わり他に理不尽な理由で授業を妨害する子がいたら注意してあげなさい。
それをするにはまず結がちゃんと真面目にしてないとダメでしょ。
「……わかった」
結は納得したようだ。
「これでいいかな」
「助かります。で、次なんですけど……」
「まだ何か問題があったの?」
「そうじゃなくて、学校から帰ったらどう過ごしてるのかなって」
さっき聞いた話だとゲームしてるみたいだけど。
「うん、一緒にテレビ見たり部屋で茉奈とゲームしてるみたい」
茉奈とゲーム?
愛莉先輩も表情が険しくなる。
私も嫌な予感がしたのでどんなゲームをしてるのか聞いてみた。
ちなみに結莉と茉莉のやってるゲームは大体お察しの通りだ。
菫達もしてるみたいなのは予想していたけど……まさか優奈と愛菜までやってるなんて初めて聞いた。
それを聞いた愛莉先輩がスマホを触っている。
多分神奈先輩に伝えているのだろう。
しかし結は違うらしい。
「ほら、最近流行ってるスマホのゲームがあるじゃない」
空を旅する奴とかお姫様を育てるやつとかかわいい動物を集めるやつ。
茉莉達と対戦してるのは水奈や天音や陽葵や菫。
カミルやカミラ、紀子や健太は好みではないらしい。
それを聞いていた愛莉先輩が頭を抱えていた。
お察しします。
でも、どうして結はそういうのしないのだろうか?
美希は笑って答えた。
映画館ではにおいまではいかないけど熱さとか冷たさとかを体験できる仕組みになってる劇場もあるらしい。
そのうち家のテレビでもそうなるんじゃないかと噂されている。
それが結の理由らしい。
「カミルが言ってたけどあんなの絶対体験したくないってさ」
それを聞いた結なりに想像してあんまり見たいものじゃないと判断したらしい。
それよりファンタジーの世界でプレイヤーが活躍する奴が好きらしい。
動物のゲームは結莉に合わせているんだそうだ。
「……そこまでリアルにしたいなら適当にゴキブリ狩りした方がいいって」
それって母親としてどうなの?美希。
愛莉先輩はどう思っているのだろうか?
念の為聞いてみた。
「美希の子供だから私達は関与しないって決めてたんだけど、冬夜さんも今のままで良いって言ってました」
あくまでもゲームにそこまでリアルさを求めてるわけじゃない。
それくらいだったらリアルで狩りをするってだけだ。
しかし大前提を忘れてる。
結はそういうのに全く興味を示していない。
それをわざわざ話をして興味を持たせる理由もないだろ。
ゴキブリ狩りをした方がましだというだけでするとは言ってない。
それすら面倒なんだろ。
やろうと思えばいつでもやれるんだから。
それより茉奈や秋久と遊んでた方が楽しいと今は思ってるのだからそれをさせておけばいいだろう。
片桐先輩らしい理由だ。
やる気が無いのにわざわざ興味を持たせるような真似してもしょうがない。
自由にさせてやれ。
多分そう言う事だ。
「結君は将来何になりたいとかあるの?」
夢くらい持っていてもおかしくないだろう。
空は全くなかったって千歳が言ってたけど。
すると結は難しい顔をしていた。
どうしたんだろう?
「僕の夢はかなわないってじいじが言ってた」
「どうして?」
「あ、それは……」
美希が説明した。
冬夜はロボットアニメに出てくるロボットのパイロットになりたいらしい。
だけどそのロボットが完成していないしいつできるかもわからないから無理だよと片桐先輩が説明した。
それで悩んでるらしい。
さてと、私も美希を試してみるかな。
「それで美希はどう思ってるの?」
美希も突然言われて考えていた。
愛莉先輩も娘の教育がどうあるのか試してるようだ。
少し考えて翼は答えた。
「今のままで良いと思う」
だってまだ小学校1年生。
まだこの世の中の事について何も知らない。
テレビを見たりしていればそのうち何かに興味を持つかもしれない。
それを確かめるまでは自由にさせるつもり。
美希はやっぱりある程度は自分で学習しているようだ。
「私もそう思う。学校生活で変な悪影響を受けないようには気を付けて見ておく」
「ありがとう、私も家での生活はチェックしておきます」
まだ外に出て遊ぶ歳じゃないから。
その後比呂やカミル達の話もした。
驚いた。
比呂はバスケが将来したいらしい。
「それならミニバスから始めてみるといいかも」
息子が通ってたミニバスのチームがあるから資料取り寄せておくと美希に伝えた。
「じゃ、次があるからそろそろ行くね」
そう言って立ち上がると玄関に向かう。
「あ、待って桜子」
「どうしたの?」
「家庭訪問の事天音に伝えてる?」
「え?茉莉達には伝えたけど……」
まさか何か問題あるの?
「た、たぶん大丈夫だとは思うけど……」
美希は何か嫌な予感がしたらしい。
その証拠に愛莉先輩が慌ててスマホを操作している。
私は嫌な予感しかしない天音の家に向かった。
(2)
私は天音の家に訪れた。
しかし呼び鈴を鳴らしてもなかなかでない。
家庭訪問の事はちゃんとプリントを配っておいたし茉莉達に伝えるように言っておいた。
まあ、それでも出かけるのが天音なんだろうけどそうじゃないらしい。
家からかすかに音が銃声が聞こえてくる。
今日くらいゲームを止めるとかしないのだろうか?
でもそんなことを気にしていたら天音と面談なんて絶対無理だ。
頭を抱えながら何度も呼び鈴を押すとドアがやっと開いた。
「しつけーぞ!新聞なんか今時いらねーって言ってるだろ!?こっちは取り込み中なんだ!お前の死亡事故を新聞のネタにしてやるぞ!」
来客に対しての第一声がこれだ。
「……茉莉。今日先生が行くって言ったよね?」
「あれ?そうだっけ?」
茉莉は謝るという事を知らない。
そして思い出したかのように言う。
「天音は今日お腹痛いからまた今度にしてくれって……」
すぐに嘘と分かった。
「茉莉、どうした?そんなにしつこいなら私が八つ裂きにしてやるぞ」
この娘にしてこの親だ。
天音は私を見ると不思議そうにしていた。
「どうした?桜子。いつもなら呼び出すのに今日は桜子の方が来るなんて……」
嫌な予感程よく当たる。
茉莉はまずいと思ったのかそうっと部屋に戻ろうとするも、天音が腕を捕まえた。
とりあえず確認しよう。
多分無駄だと思うけど。
「天音はプリント見てないの?茉莉達に配っておいたはずだけど」
「ああ、どうせしょうもない事書いてるからって茉莉達が裏に落書したり、鼻かんだりしてる」
ティッシュがあるんだからそれを使えと言ってるんだけどな。
天音は何も知らないようだ。
親に向けて配ったプリントをそんな扱いしていることをなぜ叱らないのかと言いたかったけど、それより重要な事がある。
「……今日も帰る時に天音の家に伺う時間を茉莉に伝えておいたんだけど」
「……そういや、帰ってくるのやけに早かったな」
いい加減気づいたと思いたかった。
しかし相手は天音だ。
そんな甘さは捨ててこないとダメだ。
「なんか用があるのか?」
全然気づく様子が無いようなので私から直接伝えた。
「今日は家庭訪問の日なんだけど」
「へ?」
全然知らなかったのは間違いないらしい。
翼達からは聞いてないのか?
天音が気づいたかのようにスマホを見ると愛莉先輩から連絡があったらしい。
「わりぃわりぃ、全然準備してないわ」
散らかってるけど折角来たんだし上がっていけ。
そう言って私をリビングに案内する。
だけど私は最初に確認しておきたい事があった。
「茉莉と結莉の部屋は見ない方がいいわよ」
恵美先輩ですらそう言っていた。
何があるのか気になったので二人の部屋を見せて欲しいと天音に言った。
「別にいいけど?」
特に何もないぞ?
だけど結莉と茉莉は抗議する。
「今散らかってるからダメ!」
しかしこれだけ物が散乱したリビング以上の惨状なんてないだろう。
その考えがまだ甘かった。
天音に案内してもらうと一目見て絶句した。
家具とかは普通だ。
ただ棚にずらりと並んだ人形の頭だけ。
天井には海賊の旗の様なものが飾られてある。
テレビの上には刃物が飾られてある。
人形の頭だけが女の子っぽい物だった。
恵美先輩が隠したかったのはこれか……。
まだ面談を始めてもいないのにめまいがする。
すると結莉が言った。
「はいこれ飲んで」
水を注いだコップと薬を結莉は用意していた。
「きっと頭が痛くなるだろうと恵美が言ってたから」
頭痛薬を頭痛の原因が用意していた。
「……よく分かりました」
「もう終わりか?」
「そんなわけないでしょ」
本当はもう何件か回らないといけないのに予定を変更するしかなさそうだ。
リビングで私と天音が向かい合うと結莉達はゲームを始める。
さすがの天音もマズいと思ったのかゲームを止めるように注意する。
「宿題ならもうすませたよ?」
結莉が言う。
天音は説得を試みる。
「これから茉莉達の事を話し合うから二人も聞いてないとダメなんだ」
「せんせーの話なんて面倒な事ばかりだから適当に聞き流しておけばいいって言ってたじゃん」
それならゲームしながらでもいいだろ?
「確かにそうだな」
天音は納得した。
それでいいのか?母親。
しかしこんなことで時間を費やしてる暇はない。
天音と話し出そうとすると水奈の声が聞こえてきた。
「あれ?天音どうした?」
「天音は今日桜子の相手してるから無理っぽい」
「なんで桜子来てるんだ?」
「家庭訪問だって言ってる」
「……結莉達も話聞かないとまずいだろ」
「だから聞きながらゲームしてるよ?」
「10分くらいで済むからちゃんと聞いておけ」
ゲームの相手が水奈だと知ったら当然神奈先輩の耳に入ると思ったのだろう。
その後「茉奈!お前家庭訪問の日とか聞いてないか!」と声が聞こえた。
水奈も知らなかったらしい。
流石に何も準備してなくてゲームしてたなんて神奈先輩の耳に入ったらまずいと思ったのだろう。
もう遅いけど。
この2人の話が10分程度で済むと思ってるのがまだすごい。
とりあえず水奈がそういうと2人はゲームを止める。
代わりに天音の隣に座ってスマホをいじりながら聞いてる。
「で、茉莉達の学校での話とかだよな?」
そのくらいは覚えていたらしい。
「まず結莉の話は置いておいて、茉莉についてだけど……」
問題だらけでどれから話せばいいかわからないけど、一つずつ説明する。
教室から消える、授業中暴れ出す、上級生と喧嘩をして病院送りにする、給食のおかずを他の児童から巻き上げる。
暴れる割には体育の授業は「面倒」だとサボる。
まだ6歳なのに「お腹が痛い」と言って保健室に行こうとする。
唯一ましなのは……。
「悪戯はしないみたいだけど」
「じゃ、いいじゃん」
「私の話をちゃんと聞いていた?」
「結莉は暴れないよ?」
結莉が言う通り結莉は「滅多に」暴れない。
芳樹が寝ていて暇な時に暇つぶしに加わるくらいだ。
あまりにも騒ぎになって結が起きると大人しくなる。
その時には何人か保健室に運ばれているけど。
それはまだまし。
一週間に2回以上は救急車がやってくる。
当然相手の親は抗議するけど、片桐家と石原家と酒井家に関しては教頭ですら取り合おうとしない。
うかつに口を出すと自分のクビが飛ぶ。
すると天音は少し考えてから言った。
「茉莉、まずお腹が痛いって言い訳はまだ早いからやめとけ」
本当にそうなった時に信じてもらえなかったらやばいぞ。
その理由はどうなんだ?
「ていうか、本当にお腹痛くなるの?」
「酷いと学校にいけないくらい酷い」
「そっか~」
その時茉莉がにやりと笑うのを見逃さなかった。
茉莉は学校を休む口実に利用するつもりだろう。
そこは家に天音がいるから止める……と信じたい。
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「テストを見てないの?」
「二人とも教室にテスト用紙教室のゴミ箱に捨ててくるらしくて見せてくれないんだ」
だからよほど悪いんだろうかと心配はしたらしい。
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結レベルにいい。
あの子も寝てる割にはしっかり理解している。
たまに物凄い質問をしてくるから迂闊に声をかけたくないのが本音だった。
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結莉が悩んでいる。
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「結莉。学校で寝ているだけじゃ時間がもったいないでしょ。色んな話をしたり聞いたりするのもありなんじゃない?」
「そうだね……分かった」
何とか一つ問題をクリアした。
しかし次はもっと厄介だ。
「じゃあ、私は暴れていいんだな」
絶対言うと思った。
やっぱり結を利用するしかないだろう。
「茉莉と菫が暴れると当然教室が大騒ぎになるでしょ」
「それがどうかしたのか?」
「その時、茉奈と結の時間を妨害することになるんじゃない?」
そうして怒り出すのは結だよ。
「それはまずいな」
茉莉は悩みだした。
「遊ぶための時間はちゃんとあるはずでしょ?その時まで我慢するのも学校で学ぶことだよ」
「その時間なら何やってもいいのか?」
「まあ、そうね」
じっとさせておいていつか不満が爆発するのは避けたい。
「外でドッジボールとかしてみたらどうかな?」
「スポーツなんて面倒だし汗かくだろ」
喧嘩で流す汗はどう説明するんだ。
茉莉達がドッジボール始めても一方的な私刑にしかならない気がするけど……。
「二人とも成績はいいから大人しくしてるだけでいいの。宿題だってやってきてるし」
そこは天音の小学生時代と変わらない。
「この二人に大人しくしてろってのが無理なんじゃないか桜子」
天音は母親という立場をわかっているのか?
「……ルールを破る事がどういう事かは遠足の時に反省したんじゃないの?」
せめて授業中だけでも大人しくしててほしい。
「まあ、茉莉達もそのくらいは我慢しろ。粋なんかは我慢できない時は教室抜け出してたし、そうすればいいんだよ」
この母親は何を言っているのだろうか?
まあ、今はそれで折れるとしよう。
「授業の間だけ我慢すればいいんだな?」
「約束出来る?」
「菫とか黒い馬鹿が仕掛けてきたらどうするんだよ?」
「酒井さんにもお話に行くから」
「……分かった」
「ありがとう」
通常の3倍くらい時間をかけてこの二人の面談は終わった。
天音の問題は切り札がある。
天音の家を出ると愛莉先輩に電話して内容を伝えた。
愛莉先輩がこっぴどく天音を注意したらしい。
「桜子。茉莉達が何かしたら天音はもちろん私達にも知らせて」
恵美さんと話し合って二人で結莉達の今後を考える事にしたらしい。
やっぱり天音一人だと不安が恵美先輩でもあったようだ。
しかし問題は茉莉と結莉だけじゃない。
私のクラスには私に何か恨みがあるのかと思うくらい問題を詰め込まれていた。
(3)
水奈の家に着くと呼び鈴を鳴らす。
「桜子先生いらっしゃい」
茉奈が玄関に現れた。
「水奈は?」
「ママは今ちょっと取り込み中で……」
「茉奈!あと5分だけ時間を稼げ!」
何をしているんだ?
「とりあえずどうぞ」
茉奈にリビングに案内してもらう。
意外と綺麗に掃除されていた。
優翔はお茶とお菓子の用意をしている。
「どうぞ」
優翔からお茶をもらうとそれを飲む。
2人は正座して待っている。
「じゃ、優菜と愛菜。あとは任せた!」
「逃げるのかこのチキン!」
水奈と菫の声がする。
「今日家庭訪問の日なんだよ。これ以上待たせたら母さんに怒られる」
とても母親とは思えない声が聞こえてくる。
そして部屋から水奈が出てきた。
ジャージにTシャツで髪はぼさぼさ。
「で、なんで急に家庭訪問なんだ?」
当たり前の様に聞いてくる水奈。
「ちゃんとプリントを渡していたけど」
「あ、ああ。あれなら全部あれだ」
そう言ってリビングにおいてあるシュレッダーを指さした。
学校のお知らせをなんだと思っているんだ?
「で、茉奈達にも問題あるのか?」
「いえ、とても大人しくて真面目です」
菫や茉莉達の中で奇跡的にまじめな二人。
それでも唯一問題があったのが茉奈の髪の毛。
ピンクの髪の毛はやはり教師からも指摘があったりするくらいだから、他の児童も冷やかす。
気弱な茉奈は何も言い返せずにただ俯いているだけ。
もちろんそれだけで終わる筈がない。
「そんなに髪の色が珍しいの?じゃ、私達も相手してあげる」
「私もそうだね。で、何がいいたいの?」
陽葵とカミラが茉奈の前に立つ。
それだけで済めばいい。
もちろん茉莉と菫は有無を言わさず暴れ出す。
それで済めばましだ。
「茉奈に文句があるなら俺が聞いてやるよ」
そう言って結が立ち上がるとSHの人間は慌てる。
「学校が壊れると私達も巻き添え喰らうから死ぬならお前らだけにしとけ!」
もちろん茉奈も慌てて結を宥める。
「……茉奈に感謝しろ。寿命が少しだけ伸びたぞ」
茉奈の説得で結は自分の席に戻る。
「やっぱり片桐家は普通じゃねーんだな」
水奈は感心していた。
「水奈は茉奈からそういう相談受けてないの?」
「いやあ、学校から帰って来た時には私ゲームしてるか寝てるからさ」
それでいいのか母親。
すると茉奈が代わりに答えた。
「どんな時でも結が守ってくれるから平気なの」
もじもじしながら言う茉奈。
この子は問題なさそうだ。
と、なると問題は優翔か。
「優翔は何か趣味とかそういうのないのかな?」
ちなみに二人とも成績はいい。
宿題とかもしっかりやって来る。
欠点がないかのように思えたが優翔には若干心配があった。
「茉奈と一緒に夕飯の支度とか掃除洗濯があるから、趣味の時間とかもてなくて」
お風呂の掃除もしないといけない。
ちょっと待て。
「じゃあ、水奈は何をしてるの?」
「優菜と愛菜の世話……かな?」
茉奈が答えた。
2人とも幼稚園児。
そんなに世話を焼くこともないだろう。
そうではなかった。
優菜や愛菜のゲームの対戦相手をやっていた。
「さ、さすがに酒は飲ませてないぞ!」
自分から白状してくれた水奈。
酒を飲みながらゲームをしてるらしい。
「水奈。水奈のせいで優翔は自分の時間が持てないの」
茉奈はいい。
夜とかに結という話し相手がいるから。
だが、当たり前だけど優翔にはその相手すらいない。
そのままでいいと本当に思ってる?
「分かったよ……優翔の相手もすればいいんだな!」
この母親も何を聞いているんだ?
時間をかけ過ぎたようで学が帰ってくる。
「どうして桜子先生がいるんだ?」
学も知らなかったらしい。
茉奈が説明する。
私も今話したことを学に話す。
「分かりました。ちょっと家族で話をしたいので」
「ええ、そうしてください。このままでは優翔が心配で」
「分かってます」
そして今日の家庭訪問は終わった。
天音と水奈は厳重に注意されたらしい。
特に水奈は神奈先輩と学にこっぴどく叱られたそうだ。
「急に来たんだから仕方ないだろ!」
2人とも同じことを言っていた。
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