姉妹チート

和希

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Shout to the trigger

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(1)

「じゃあ、空から何か一言挨拶してやれ」

 光太が言う。
 なんで?と聞き返した。

「お前が王なんだから当たり前だろうが」
「でも、これ大学生の歓迎会だよね?」
「そんな事言ってたら俺たちがここにいる事自体変じゃないか?」

 SHの歓迎会なんだ。
 リーダーの僕がしろという。

「言っとくけど空、10秒以内に済ませろ」
「挨拶が長いと禿げるぞ」
 
 天音と水奈が言う。
 天音は大地が「いつも世話が大変だからたまには羽を伸ばして」と大地が結莉達の面倒を見るらしい。
 水奈は学が「お前一人で世話させるのは怖いから、俺が面倒みるから行ってきてくれ」と言ったらしい。

「まあ、今更だけど、楽しむときは楽しんだらいいよ。乾杯」

 多分10秒以内のはず。
 僕と美希は二人で来ていた。
 子供は母さんが見てくれるというから任せてきた。
 結が家で暴れることはまずない。
 比呂もカミルもカミラも家では大人しい。
 カミルとカミラは温かい家庭というのに憧れていたのだろう。良い子にしている。
 比呂に至っては彼女のカミラと一緒にいるのだから暴れる理由がない。
 ただ比呂の興味はカミラにもあるけどバスケにあるみたいだ。
 Bリーグの試合を見ては父さんに解説してもらっている。
 SHの歓迎会は規模が違う。
 大学生だけじゃ少ないからと社会人も加わる。
 それだと普通の居酒屋だと狭いから善明がホテルのホールを手配していた。
 食べ放題だと天音と正俊が食べまくっている。
 僕と美希は新入生と話をしていた。
 今、地元大学に通うSHのメンバーは少ない。
 それをいいことにSHの偽グループが大量にあるそうだ。
 純也がいる時は片っ端から始末していた。
 だけど純也が抜けた後任せられる人材がいない。
 その対策を勝次に伝えていた。
 
「SHを名乗る馬鹿は始末しろ」

 瞳子達が自らSHを名乗るわけがない。
 勧誘等もしなくていいと伝えている。

「しかし万が一本当に瞳子達に被害があったらどうするんだ?」

 天音が聞いていた。
 
「問題ないよ」

 僕は答えた。
 地元大学に通う学生の情報は喜一に渡している。
 FGもまた分裂を始めていた。
 一向に現れない新しいリーダーに不信感を募らせたメンバーが勝次や喜一に相談に来たそうだ。
 その結果二つに分かれた。
 喜一が管理しているFGにだけそう伝えている。
 分裂前から似非SHにヘイトを貯めていたFGは面白いように次々と馬鹿を始末していく。
 今大学内は大混乱だと瞳子から現状を聞いていた。

「瞳子に何かふざけた真似をしたやつがいたらすぐに私に知らせろ」

 私が直々にぶっ殺してやる。
 天音がそう瞳子に言っていた。

「天音よくそんな暇あるね。結莉達の事はいいの?」
「結莉達だって小学生だぞ?少しくらい家を空けていても平気だよ」

 海翔の世話もしているらしい。
 結莉はともかく茉莉まで料理を覚えようとしていたのは驚いた。
 それも彼氏の朔に何か食べさせてやりたいと思ったんだそうだ。

「茉奈も結に褒められてからかな、キッチンは完全に茉奈が占拠してるそうだよ」

 やる事のない優翔は掃除や洗濯をしているらしい。
 そんな事を水奈が知らせてきた。
 水奈は何をしているのだろう?
 
「まあ、今度農業公園に行くみたいだからその時分けてもらったら?」

 母さんの味よりも美味しいと言う卵焼きが気になると美希に言うと美希がそう言っていた。
 いつもフラワーパークじゃつまらないだろうからと大地が提案したらしい。
 あそこは何もない広い自然の公園だから結達も思いっきり遊べるだろう。
 と、いっても結は多分寝ていたいんだろうけど。

「お前達!SHに入ったら絶対に覚えておくべき歌がある!」
「おう!カラオケあるしちょうどいい!やるぞ!」

 遊と粋が盛り上がっている。
 もちろん天も加わっていた。
 三人とも奥さんは子供の世話があるからと欠席していた。

「あいつらはずっとああなんだろうな……」

 あれで娘に好きだと言ってもらえている遊が不思議でしょうがないと水奈が言う。

「水奈は遊達の心配の前に優奈達を心配した方がいい」

 天音が言っている。
 多分遠足の事件だろう。
 桜子は少しは自分で考えなさいと母さんに言わなかった。
 だけど水奈は違った。
 幼稚園から帰って来た子供が寝てるからと天音と一緒にゲームをしていたと神奈さんに伝えたらしい。
 すると神奈さんも感づく。
 水奈の遊び相手なんてほとんど決まっている。
 遊達は仕事だし、なずな達は真面目に家事をしている。
 母さんに伝えた。
 もちろん桜子は母さんには今回は伝えないと言っていたことも含めて。
 だから母さんと恵美さんが抜き打ちで天音の家に訪れたらしい。
 洗濯物は乾燥機に入れっぱなし。
 掃除はフローリングだけロボットにさせている。
 母さんも恵美さんも合鍵を持っていた。
 大地に作らせた。
 そしてそっとリビングに行くと昼食の残骸やお菓子の袋が散乱している。
 恵美さんは「息抜きをするなとは言わないけど、もう少し家事をしておいた方がいいんじゃないかな?」と柔らかく注意したそうだ。
 だけど母さんは違った。

「天音はいい加減に母親になったのだと自覚しなさい!」

 それで大地の嫁だと大地が紹介できるのか?
 大地が友人を家に招待できると思うの?
 そう注意したそうだけど天音は反抗した。

「大地が帰ってくる時間は決まっている!」

 残業で遅くなることはないけど、早退してくることも絶対ない。
 だから帰る前にパパっと片付けるから大丈夫だと天音は主張する。

「私がこの惨状を見たら怒られるとは考えないのですか!?」
「だったらちゃんと来る前に連絡しろよ」
「しましたよ」
「え?」

 はっとして天音はスマホを見る。 
 
「今から家に伺います」

 母さんもさすがに母さんが行くと天音が知ったら少しは片付けたりすると思ったらしい。
 しかしゲームに夢中で全く気付いてなかった。

「愛莉、私が誰かとベッドの中に居たらどうするつもりだ!?」

 そんな場面を見たいのか!?
 それを聞いた母さんはさらに激怒する。

「自分でさっき言いましたよね?大地は早退はしないと。天音は誰と寝るつもりなの?」

 旦那が働いてる最中によくそんな馬鹿な事思いつきますね!
 そんな話を聞いた翼は思う所があったらしい。

「天音、それ絶対に大地に言ったらだめだよ」
「分かってるよ、言うわけないだろ」
「本当にそう思っていた?」

 それなら母さんにも言わないんじゃないの?
 自分の夫が必死に働いてるときに浮気なんてもってのほかだ。
 多分夫も同じなんじゃないのか?
 自分が働いてるときは嫁の事なんて考えてる暇はない。
 実際に家に帰ったらそれに気づいてない嫁が夫以外の男と寝ているところを見られた奥さんがいるらしい。
 そんな不安を抱えながら仕事に集中できるわけがない。
 天音も母さんから約束を聞いたんでしょ?
 それも同じ事じゃないか?
 大地が天音の事を信じられる根拠を作ってやらなければいけないんじゃないか?
 少なくとも母さんはそれを忠実に守っている。
 冬吾に誘惑されたくらいで落ち込むくらいなんだ。
 そんな欲求があるなら大地に言えばいい。
 仕事で疲れたなんて言い訳は通用しない。
 だって父さんはいつでも母さんを受け入れていた。
 僕も美希が甘えてきたら受け入れている。
 もう結も小学生だから一人で寝ている。
 その前から勝手に一人で寝ていたけど。
 天音は子供の事は一人でやろうとしているんだろうけど、今日だって大地に頼っているじゃないか。
 それを悪いと言ってるわけじゃない。
 大地だって父親らしく役目を全うしてるんだ。
 天音がこうして飲んでいるときに、大地が家に女を呼んだりすると思う?
 そういう信頼って大事だよと翼が天音に言った。

「悔しいけど二人はれっきとした夫婦なんだからさ。ちゃんと大地と信頼関係を築かないとダメなんじゃないの?」

 結婚という事実の上に胡坐を組んでいたらいつかきっと崩れる。
 恋人という関係がいとも簡単に崩れてしまうのは天音だって気づいてるでしょ?
 SHの中にいても事件は起きる。
 別れという事は絶対にないと思っていたことが起きてしまった。
 この先大地と離婚という事件が無いなんて誰が保証する?
 いつも二人で確かめ合う事が必要なんじゃないか?

「翼の言う通りかもしれないな……。水奈、悪いけど……」
「途中まで一緒だろ?私も同じ事考えてた」
「そういうつもりで言ったんじゃない」

 疑えとかそういうのじゃない、ちゃんと旦那が安心できる環境を作ってやれって言ってるだけだと翼が言う。
 だけど二人はやはり帰るという。

「私だって馬鹿じゃない。学がそんな事することないと思っている。……だけどいつもあまり構ってもらえてないから週末ぐらいと思ってさ」

 水奈がそう言って笑った。

「精々甘えてきな」

 学を困らせてやれ。
 翼がそう言って笑うと二人は帰って行った。

「二人ともどうしたんだ?」
 
 光太が聞いていた。

「旦那がいなくて寂しいから帰ったよ」

 僕が答えた。

「夫だって一人になりたい時あるんじゃないか?」

 遊が言う。
 僕は翼が言っていたことを自分なりにかいつまんで遊に説明していた。

(2)

「愛莉。父さん達はお出かけ?」

 夕食の時に父さん達がいないから聞いた。
 こんな時間にお出かけなんてどうしたんだろう?

「そうですよ。偶には羽を休めないとね」

 愛莉がそう答えた。
 父さん達は羽を持っているんだろうか?
 だったら車はいらないんじゃないだろうか。

「そうじゃないの。鳥はずっと飛び続けると疲れるから木の枝に止まって休むでしょ?」

 父さん達は仕事や家事をしながら俺達の世話をずっとしてるから偶には二人で楽しむらしい。
 なるほど。
 確かに俺も小学校から帰ってきたら寝てるな。
 母さんは「いい加減お昼寝は卒業した方がいいかもね」と言っていたけど。
 まてよ、となると……。

「父さん達は俺のお世話で疲れてるの?」

 親に苦労をかけてるのだろうか?
 そうではないと愛莉は言う。

「冬夜も大人になって誰かと結婚して子供を授かったらわかります」

 それを苦痛だと感じる人は中にはいるけどほとんどはそうじゃない。
 二人で悩みながら子供の成長を見守るのだと愛莉が説明してくれた。

「子供の世話はとても大変。だけどそれにみあった楽しみがあるの」
「それは何?」
「自分の子供が育っていく様子が嬉しいのですよ」

 なるほど……
 でも茉莉が言ってた。

「天音はいつも水奈とゲームしてるって」
「そ、それは結莉達も自分の部屋で遊んでるから」

 結だって茉奈と電話したりしてるだろ?と比呂が言う。
 その隣に座っていたカミラが比呂の脇をつついてた。
 愛莉は知らなかったらしい。
 比呂は何とか笑顔を保っている。
 そう言えば茉奈達が言ってたな。

「茉奈は結の家に寄ったりしないの?」
「学校が終わったらまっすぐお家に帰りなさいってママが言ってたから」
「でも菫たちは来るよ?」

 ゲームのテクニックとかを教えてもらってるらしい。

「比呂!知ってる事を全部話しなさい!」
「ま、待って愛莉。カミラ達は結達と一緒に帰って来るじゃないか」

 じいじが言うと愛莉が言った。

「ええ、冬夜さんの言う通りです。だから注意するわけじゃありません。菫たちはどこに寄って何をしているのかを知りたいだけです」

 小学生になったばかりなのにやけに帰りが遅い。
 毎日ゲーセンに寄れるほどのお小遣いを渡してないと翼から相談を受けていたそうだ。
 あまりに遅い時はまた攫われたのかと翼は不安そうにしている。
 スマホで連絡を取っていたらしい。
 それが今どこに行ってたのか判明した。
 次の問題がある。
 天音の家で何をしていたのかだ。
 結莉の話だとゲームしていただけらしいけど。
 でもそれは家でやればいいんじゃないか?
 愛莉はそう考えたらしい。

「翼や愛莉が宿題しろとかゲームばっかりすんなとか五月蠅いだろうから遊んでいけって……」

 比呂が白状すると愛莉が何か言おうとした時じいじが口を挟んだ。

「比呂のその考えは間違ってる」
「うん、ごめんなさい」
「そうじゃなくて。気にならないの?何が間違っているのか」
「菫達が翼に黙って天音の家で遊んでいた事じゃないの?」
「違うよ。これは天音にも言ってたんだけどね」

 じいじが説明する。
 どこで遊んで来ようとかまわない。
 理由はちゃんとやることをやってるから。
 小遣いを使いすぎずにちゃんとやりくりしているみたいだから。
 そんな理由で天音の家に行っていたんだろ?
 だったらそう言えばいい。
 どうして言わなかったの?
 言ったら怒られると思った?
 それはあまりにも親を信用してないんじゃないのか?
 翼達だって寄り道でコンビニに行ったりしてたけど愛莉は怒らなかった。
 それは親が子供に対して無関心だからじゃない。
 やることはやってるし間違いを犯すような子供じゃない。
 休みの日に恋人とデートするのもいいだろう。
 極論天音の様に大学まで考えていないのなら勉強もそこまでする必要ないと二人とも思っているはず。
 そんな翼達の気持ちを知らずにただ「怒られるかもしれない」というのは親を信じていないんじゃないか?
 翼達だって年頃の時に男女二人っきりで寝ていたんだ。
 犯罪を犯さないなら一向にかまわない。
 翼だって菫たちに対して「また誘拐された?」という不安はあっても「またどこかで遊んでる」なんてことは考えてない。
 それは悪いことじゃないから。
 遅くなる理由があるならちゃんと説明してあげなさい。
 まだ菫達だって小学生になったばかりだ。
 帰りが遅くなれば母親なら誰でも不安になる。
 だから理由くらいはせめて報せておきなさい。
 低学年にはまだそんなに許可された行動エリアは広くないはずだ。

「分かった……」
「しかし僕も翼から聞いてなかったんだけど」

 陽葵達はゲームをするようになったの?

「最近天音から誘われてやって見たら意外と面白かったらしいよ」
「僕は過去を思い出すからあんまり好きじゃなかったな」
「なるほど、そういうゲームか。冬吾達が残していったゲーム機があるからあれからまずやって見るといいよ」

 じいじがそう言っていた。

「冬夜さん、あのような残酷なゲームは子供に悪影響を与えるのでは?」

 愛莉がそう言うとじいじは笑った。

「さっきカミルが言ったじゃないか。実体験を思い出すからやりたくないって。菫達なら現実とゲームの区別くらいつくよ」
「私は魔法とか使う奴が好き」

 冬吾がコスプレみたいな頭してるの見て「なんとなくムカついた」からと殴り飛ばしたキャラが主人公のゲームだ。
 
「お爺さんも昔っからゲームが好きでね。そういうゲームはいっぱいあるから」
「少しは孫に勉強することも指導してくださいな」
「しなくてもこの子たちのテスト成績よかったろ?」
「うぅ……」

 結莉みたいな唸り声をあげる愛莉。
 
「じゃ、この件はお終い。愛莉は大地に伝えて」
「何をですか?」
「ゲーム機は翼達に用意させるから大丈夫って」

 ゲーム機が無いから天音の家に寄るんだろ?
 ただそれだけの事だとじいじは言う。
 その後俺を見ていた。

「結は学校から帰ったら何してるの?」
「帰ったら寝てる」

 宿題はお風呂入ってからやればいいやと思ったから。

「結は何かやりたい事とかないのかい?」

 もうお昼寝しなくても大丈夫じゃないの?と聞いてきた。

「母さんにも言われたからテレビ見てる」
「愛莉……お願いがあるんだけど」
「ゲーム機を2台用意すればいいんですね」

 愛莉はそう言ってくすっと笑った。
 じいじは僕に言った。

「冬夜、今はまだ学校に行ってるだけだけど、これから先歳を取ると共に少しずつ失うものがあるんだ」

 それは自由。
 そのうち学校が忙しくなって、結莉と過ごしたり、受験勉強したり、就職して仕事が始まったり子供ができたり。
 何かを得る代償に失われていくのが自由。
 何がしたいか分からないと悩むのも構わない。
 だけど分からないから寝てるで時間を潰すのはあまりにももったいないよ。

「じいじも自由な時間がないの?」
「お爺さんはね、少しずつ空に仕事を任せてるから自由な時間が増えていくんだ」

 それでもやはり代償がある。
 それは体に自由が利かなくなったり若かった頃の様にたくさん食べられなくなったり。
 そしてこれから新しいことを始めようとしても出来ない事があるんだ。
 だから年寄りは皆口をそろえて言うんだ。

「若いうちに色々しておけ」

 それは自分がそうだったからそうアドバイスしてるだけ。
 どれだけ色々しても後悔することがいっぱいある。
 そうならないようにと若い子供たちにくどく言う。
 結もスポーツを始めなさいとか習い事を始めなさいとか空は言わないだろう。
 だけど何か興味があることを探してみたらどうだい?

「どうやって探すの?」
「そのために与えた物があるだろ?」

 インターネットで探せばいい。
 小さいながらにして化石が趣味って子もいるんだからなんだっていい。
 冬吾は幼稚園の時からサッカーと決めていた。
 父さんは特に何も興味なくてただじいじの会社を継ぐって決めたそうだ。

「わかった」
「まあ、ゲームに興味なくても構わない」

 その時はカミルが使うだろう。
 その後お風呂で体を洗って湯船の中で考えていた。
 でもやっぱり何も思いつかなかった。
 スポーツは僕がやったら殺人事件になるからダメって言ってたしなぁ。
 面倒だからしたくないけど。
 あまり長く入っていると湯あたりするから頃合いを見て風呂を出て、パジャマを着てリビングに行く。

「今日は随分長湯だったのね?」

 愛莉が言うと考えてたと言った。
 すると愛莉はヒントをくれた。

「それは別に結一人でしなくてもいいんじゃないかしら」

 茉奈と探してもいいんじゃないかと愛莉は言う。
 部屋に戻ると茉奈に相談してみた。
 すると茉奈が提案した。

「結も一緒にしようよ」

 それはスマホで出来るゲーム。
 ただ虫を取ったり魚をつったりして色々な友達を集めるゲーム。
 何の意味があるのか分からないけどやって見た。
 茉奈に教えてもらいながら、気づいたら夢中になっていた。
 母さん達が帰ってきて部屋の照明がついていたので気になって来たみたいだ。

「こんな遅い時間まで珍しいね」

 早く寝なさいとは言わないのが母さんだと言っていた。
 母さんに茉奈とゲームしてたと教えた。

「そう、楽しいの?」
「うん」
「でもね、ゲームは逃げないよ?」

 今日いっぺんにやってしまったら退屈になるんじゃない?
 何もゲームだけに夢中になれってじいじは言ったわけじゃない。
 もっといろいろなものに目を向けてみたら。

「たとえば?」
「そうね、母さん達の部屋にある漫画を読んでみるとか」

 今はまだ茉奈とお出かけなんてできないけどそのうち出来るようになる。
 大人になれば自由は減るけど出来ることは増える。
 制限解除ってやつらしい。
 茉奈に「そろそろ寝る」と言ってベッドに入って寝る。
 きっといつか。
 いつかどこか。
 まだ幼い僕には将来の事なんて宇宙の様に広くて暗い世界だった。
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