姉妹チート

和希

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カルマ

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(1)

「楽しい年越しだったみたいだね」

 気づいたらカミルとカミラがいた。
 まだ生きていたんだな。
 で、殺されに来たのか?
 私と茉莉が二人を睨みつける。
 するとカミルが笑った。

「そんな顔しないでよ。新年早々物騒な話をしたくない」
「どういう意味?」

 陽葵が聞いた。

「幼稚園終わったら公園で話がしたい。いい話がある」

 いい話?

「……、分かった。聞くだけは聞いてあげる」

 乗るかどうかは聞いてから判断する。
 陽葵が言うと2人は去って行った。
 それを見て私が言う。

「無視してよかったんじゃない?」
「あの二人なんか焦ってるみたいだったから」
「どうしたの?」

 陽葵と結莉も気になったらしくて事情を聞きに来た。
 2人に事情を説明した。
 あの2人の話だからきっとリベリオンの内部の話だから、天音達に情報を流せるかもしれない。
 陽葵はそう判断した。

「私達も聞いておいた方がいいかも」
「俺も付き合おうか?」

 結達にも届いたらしい。

「結が出るまでもないと思う」

 即戦闘ってわけでもなさそうだし。
 あんまり大勢で行くのもださいから4人で行くと陽葵が言った。
 
(2)

 幼稚園が終わると私達はカミルとカミラ達と公園に居た。
 いつでもいいように心構えだけはしておいた。

「随分と警戒してるんだね。冬休みの間に平和ボケしたかと思ったんだけど?」
「やっぱり喧嘩売るつもりなんじゃないか?私はお腹が空いてるんだ。殺されたいならさっさと来い」
「そう言う話じゃないよ、単なる取引だ」
「取引?」

 陽葵が聞いていた。

「分かった、乗るかは話を聞いてからにする」
「それでいいよ。君たちはSHだろ?」

 SHの情報はある程度は知ってる。
 二人の子供を海外に逃亡させるくらい簡単だろ?
 まあ、毎年のように無理やり逃亡させてる集団だからな。

「海外旅行がしたいわけ?」
「そ、その代わり君たちには2度と会うことはない」
「私達にメリットがあるのはそれだけ?」

 2度と会いたくないならこの場で処分するだけの話だ。
 それに今まで姿を隠していたのにどうして今更現れた?
 するとカミルが話した。
 カミル達は去年の年末にエリツィンの恋人のメンバーを殺害した。
 それでエリツィンの恋人に追われる羽目になった。
 自業自得じゃないか。
 で、追い詰められた二人は国外に逃げるしかないと考えたらしい。
 なるほど、幼稚園に来なかったのは逃げ回っていたんだな。

「本当に二度と現れないと約束するのね?」

 陽葵は取引するつもりなのだろうか?
 まあ、殺されかけてるやつを見捨てるのも後味悪いしいいか。

「ああ、約束するよ。それとこれ……」

 そう言うと持っていたカバンを机の上に置いた。
 中身を見るように言うと私が中身を見る。
 中には大量の札束があった。

「それだけあれば手間賃にはなるだろ?」

 そう言ってカミルが笑う。
 それを聞いて陽葵の表情が変わった。
 私もそれを見てバッグを閉めると突き返す。

「足りなかった?」

 カミルが聞く。

「犬は餌で飼える、人も金で買える。だけどSHを飼う事は誰にも出来ない」

 陽葵がそう言った。

「何を言ってるのか理解できない。この世の中で金で買えないものなんてあるわけない」

 カミルが言うと私がカミルを睨みつけてにやりと笑った。

「お前は生きる上で大切なものは金だと勘違いしていたのか?」
「菫こそまさか神様なんて冗談言わないよね?」
「ああ、違うよ」
「じゃあ、なんなの?」

 カミルが聞いてくると私が答えた。

「力だよ。神よりよほど役に立つ」
「……これ以上は時間なの無駄ね。帰ろう?菫」

 陽葵がそう言うと私も陽葵と一緒に教室を出る。

「これじゃ足りないならもっと払うから!」

 カミルが言うと陽葵が足を止めて振り返って2人を睨みつける。

「そんなに助かりたいならそこでお金様に頼みなさい!」

 そう言って私達は立ち去った。
 陽葵と話ながら帰る。
 陽葵は助ける手段を天音と相談しようと思っていたらしい。
 だけど私と同じだ。
 あの取引材料が陽葵を怒らせた。
 勝手に死ね。
 人には金より大切なものがたくさんあることはパパ達が教えてくれた。 
 でも、ママは言った。
 血よりも濃くて、お金では絶対に買えないもの。
 それが絆。
 それを踏みにじるような真似は絶対に許さない。
 ……とは、いうもののこのまま本当に死なれたら気分が悪い。
 午後は陽葵と相談していた。
 それは夕食の時にパパが見抜いていた。

「今日何かあったのかい?」

 パパは何でもすぐに見抜いてしまう。
 隠す必要もないのでカミル達の事を話した。

「まあ、菫の言う通り自業自得ね」

 翼はそう言った。
 だけど翼は笑う。

「でも助けてあげたいと思ったのでしょ?」

 翼の言うとおりだった。
 だけど敵を助ける理由があるのだろうか?
 すると秋久が言った。

「空が言ってた」
「え?」

 ママが聞き返すと秋久は一言言った。

「人を助けるのに理由がいるかい?」

 ぽかっ

 ママが秋久を小突いていた。

「そんなところは真似しちゃダメでしょ」
「まあ、でも秋久の言う通りなんでないのかい?」

 菫と陽葵にはそれを教えてくれる親がいた。
 だけどカミル達はそれを教えてくれる人がいなかったんだ。
 誰もカミル達に優しくしてやらなかった。
 だからこうなった。
 放っておくのもいいけど、あの子たちにたった一度でもいいからチャンスを与えてあげたらどうだい?
 その方が私達もすっきりするだろ?
 パパの言うとおりにした。
 次の日学校で相談に乗ってやろうと思った。
 天音達に手配も頼んでおいた。
 しかし翌日からカミル達は来なかった。
 
(3)

「地元最大の組織にしてはずいぶんしょぼい終わりだな」

 私はリベリオンの連中に囲まれていた。
 リベリオンの反撃は父さん達の想像を超える物だった。
 うまい具合にSHとつぶし合いに持ち込めたらと思っていたら、SHはわずかひと月足らずでリベリオンの一部を壊滅しようとしていた。
 その憂さ晴らしにFGを潰そうとリベリオンが動いてた。

「そっちの方がよほどダサいと思うんだけど?」

 自分でみじめだと思わないの?
 SHに返り討ちに会った挙句、幼稚園児一人をこんなに大勢で取り囲んで情けない。
 彼らも同じことを思っていたようだ。
 だから彼らの火をつけた。

「……言いたいことはそれだけか?」

 そう言ってリーダー格の男が手であいさつをする。
 雪菜達はSHに守られている。
 でも私は四宮の名前がそれを許さない。

「心配するな、殺しはしねーよ」

 海外では日本人の私くらいの歳の女の子を欲求の対象にする国がある。
 アニメや漫画で解消する日本が健全なくらいに酷いことをする。
 そういう輩の性のはけ口になってもらうと彼らは言った。
 もはやこれまで……
 雪菜の事は心配ない。
 あんなこと言ったけど本当はまだ友達でいたかった。
 友達を傷つけた私に罰が当たったんだ。
 抵抗する気力すらわかない。
 絶望の2文字が私を襲う。

「へえ、お前らロリコンなのか?その年でロリコンて人生終わってるんじゃないのか?」

 男の声が聞こえたので全員が振り返る。
 大柄の男が何人かの仲間を引き連れてやってきていた。
 男はリベリオンの群れをかき分けて私の下に来る。

「君が四宮紀子ちゃん?」
「そうですけど」
「俺の名前は山本勝次っていうんだ」

 知ってるか?
 勝次さんはそう言った。
 父さんが勝次さんからFGのリーダーの座を奪った。
 正確には違うんだけど、原川組が奪い取ったのは間違いない。
 復讐される対象が変わっただけなのだろうか?
 だけど勝次さんは言う。
 
「親にやられたから子供に復讐するなんて情けない男にまで堕ちた覚えはねーよ」

 今いるこいつらのように。

「じゃあ、なんの用なんだ?邪魔するならお前もまとめて始末するぞ」
「お前らに出来るのかよ?」
「舐めるなよ」

 そう言って銃を勝次さんに向ける。
 だけど勝次さmmは動じない。

「いいのか?そんなもんに頼らないと喧嘩もできない奴が手を出していい相手じゃないのにお前らは手を出したのを忘れてないか?」
「どういうことだ?」

 リベリオンのリーダーが聞くと勝次さんは言う。

「それを手にしていいのは撃たれる覚悟が出来てるやつだけだと言ったんだ馬鹿」

 勝次さんがそう言った瞬間リベリオンのメンバーのこめかみを何かが撃ちぬいた。
 勝次さんが誰を連れてきたのか考えたら簡単だったんだ。
 SHのメンバーと雪菜も一緒に来ていた。

「紀子!大丈夫」
「どうして雪菜が?」

 私あんなこと言ったのに。

「それを教えるために勝次を連れてきたんだよ」

 一緒に居た片桐翼が言った。

「な、なんでSHが助けに来るんだ?」
「お前らには関係ないだろ?」

 リベリオンの連中は口々にそう言う。
 しかし翼はまったく気にも留めてない。
 
「勝次、このバカたちに説明してやりなさい」

 翼が勝次さんに言うと勝次さんが言った。
 
「紀子はFGだ。そして俺もFGと完全に縁が切れたわけじゃない。そして今はSHだ」

 関係が全くないわけじゃない。
 だけど、そんな事関係ないと言わんばかりに翼が雪菜の顔を見る。

「……紀子は私の親友。その親友に傷つける奴を絶対に許さない」

 雪菜は私の事を今でも親友だと思ってくれていたみたいだ。
 SHは仲間が傷つけられるのを絶対に許さない。
 例えどんな理由があろうと絶対に許さない。

「空は仕事で忙しいの、天音も子供の面倒で大変」

 だから翼は子供達を連れて勝次さんについてきた。
 仕事を終えたばかりだという桐谷遊や亀梨光太も言う。

「こっちはこの後娘の面倒見てやらないといけないのわざわざ来たんだ。ただで帰すと思うなよ?」
「遊もわかったか。やっぱり娘はいいよな!」
「二人ともあまり甘やかしたらダメだよ」

 翼がそう言って笑う。

「口実なんて本当はどうでもいい。お前らがむかつくから始末する。それで白黒つけようじゃねーか」

 光太が言うと彼らは銃をSHに向ける。
 しかし光太達は意にも介してない。

「お前らさっき勝次が言ったこともう忘れたのか?」

 それを向けることが出来るのは撃たれてもいい覚悟がある奴だけだ。

「お前らには撃てるのか?」
「やっぱり馬鹿だろ、少しは自分で考えろ」
 
 撃たれてもいいということは命を賭けるということだ。
 光太がそう言うと彼らは全員消え去った。
 突然だった。
 敢えて一人残しておいたみたいだった。
 何が起きたか分からず困惑して怯えているそいつに遊は言う。

「わざわざ空が出てくることになったらもっと大惨事になるから俺から忠告してやる。今のがふざけた馬鹿の末路だ」

 SHはリベリオンをただの餌くらいにしか思っていない。
 命乞いのセリフくらい考えておけと遊が伝えるとそいつは逃げ去った。

「な、何が起きたの?」

 私が聞くと雪菜は答えた。
 雪菜は菫の顔を見て言う。

「起きたとおりのまま。消したんだって」

 菫の能力の一つ。
 菫は死の象徴。
 光の陽葵に対して闇の菫。
 そんな菫の能力”奈落”
 何もない無の世界に放り込むことが出来るそうだ。
 何もない世界だからその末路は決まっている。

「間に合ってよかったね」

 翼がそう言う。
 私は泣いていた。

「雪菜ごめん。あんなひどい事言ったのに」
「気にしてない。それより紀子が心配で」

 常に私の動向を気にしていたらしい。
 で、今日私が青ざめていたから調べてもらってここに来た。

「紀子もSHに入ったら?」
「そんな事許されるの?」
「私を受け入れてくれる優しいグループだから」
「でも私の父親は……」
「ガキの癖にめんどくせー奴だな」

 遊が言った。
 そして勝次を指す。
 勝次はもともとはFGのリーダーだったんだ。
 そいつの正体が何だろうとそんなもん関係ない。
 私が入りたいと言えばそれでいい。
 なんなら空に聞くか?
 私は少し考えてスマホを取り出す。
 FGを抜けると雪菜が私をSHに招待する。

「これからが大変だよ」

 雪菜が言う。

「どうして?」

 私が聞くと陽葵と菫も笑う。

「SHなのに恋人がいないってどういうことだ?って怒られるの」

 そんなこと考えていなかった。
 そんな事考えていい世界にたどりついたんだ。
 気づいたら私は泣いていた。

「じゃ、帰ろうか」

 そう言ってみんなで家に帰る。
 しかし私の変える場所はどこなのだろう?
 その答えを探す旅に出ることになる。
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