姉妹チート

和希

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「じゃ、始めようか。乾杯」

 渡辺さんが挨拶いて宴が始まった。
 まさか4大企業のトップが揃ってさらに県知事までこんな公園で花見をしてるとは誰も思わないだろう。
 片桐君と渡辺君が挨拶をして回っていた。
 
「晴斗、仕事はどうだ?」
「よくわかんねーから春奈に聞いてるっす」

 それでいいのか?県知事。
 まあ、ただの税理士事務所の社長に頭を下げる大企業の社長がいる世の中だからいいんだろう。
 今日は僕達渡辺班と子供達のSHが揃って花見を催していた。
 大体の子供は孫が生まれてこれからもどんどん生まれていくらしい。
 一々書くのも面倒になって来てる程だ。
 
「ついに来たな冬夜」
「そうだね」
「冬吾は他の国でも大食いしてお腹壊さなければいいんだけど」
「冬吾なら大丈夫だろ?」

 多田君と片桐君と愛莉さんと神奈さんが言っている。
 今年の5月にあるU-20のW杯に呼ばれていた。
 U-18を飛び越えての招集だ。
 体力はしっかり多田君が仕込んだらしい。
 何度か海外試合を経験してコンディションの調整の仕方も覚えたらしい。
 
「冬吾は多分食い物目当てなんだろうけど、誠司は何か楽しみあるの?」
「どうやって冬吾と活かそうか考えててそれどころじゃないよ。なんかお土産欲しいか?」
「どうせ自分で行く事になるからいいよ」

 そんな話を娘の泉としている。
 もちろん彼氏の村井育人が隣にいる。
 あくまでもただの友達らしい。
 誠司がサッカーに夢中なのは親から見ても間違いないらしい。
 しかし心配もある。
 そんなにサッカーに熱を入れ過ぎてサッカーを失った時大丈夫なのか?
 まだそんな心配をする年じゃないけどやはり不安だ。
 桜子の夫の佐がそうだったから。

「あんたもいい加減彼女作ったらどうなの?」
「じゃあ、泉が付き合ってくれよ」
「二股かけるような女子が好きなの?」

 そんな感じで軽口をたたいている。
 反省をしたのは間違いない。
 ただそのあまりに自信を失っているのじゃないか?
 彼女を幸せにする自身。
 そんな自信を持っている高校生がいるわけないけど。
 でもそんな自信過剰なくらいの男子は多少はいるだろう。

「違うよ」

 片桐君が来た。

「誠司は落ち着いたんだよ。ちょっと早すぎるけど」

 散々遊んで遊ばれて傷ついて。
 そしてやっと気づいた真実の愛。
 それは与える物でも奪う物でも無くて気づいたらそばにある物。
 自分でどうこうしなくてもふとした時に気づく物。
 だから慌てる必要は無いと思ってるんだろうと片桐君が説明した。

「それで大丈夫なわけ?」

 亜依さんが言う。

「恵美さん達だってそうだったでしょ」

 何がきっかけになるのか分からない。

「なるほどね」
「あいつそこまで大人になったんだな」

 恵美さんと多田君が言っている。

「それより翼達はどうだった?入園式」

 片桐君は翼に聞いていた。
 ちなみに僕は善明から聞いている。
 だからまずいと思った。
 天音ですらまずいと思ったのか「普通だった。やっぱつまんねーよな。大人になっても苦手だよ」と答えた。
 翼もただ作り笑いをしているだけ。
 石原君達は聞いていないらしい。
 だから興味があったのだろう。
 しかしあれは恵美さん達に聞かせて良い話じゃない。
 しかし子供は正直だ。

「つまんなかった。知らないおっさんが話を始めてつまんなかったから……」

 茉莉は悪気はない。
 だから質が悪い。
 大地は苦笑いしている。
 天音は慌てている。
 そして茉莉が全部話した。
 恵美さんは笑っていた。

「そういうつまらない時も我慢する必要があるんだからだめですよ」

 そう言って注意していた。
 それに対して愛莉さんは……。

「天音!どういう事ですか!?」

 天音に詰め寄る愛莉さん。

「いや、子供は正直って言うだろ」
「ええ、正直です。子供はすぐ親の真似をするんです」
「わ、私は愛莉みたいにはならなかったぞ」
「どうしてなんでしょうね?」
「な、なんでだろうな?大地、どうなんだ?」

 大地に救援を求める天音。
 多分大地は理由を知っている。

「テレビとかの影響じゃないかな」
「ば、馬鹿!!」

 大地に救援を求めたのが間違いだったようだ。
 天音が普通の3歳児が見るテレビを観るはずがない。
 そして過激な映画やゲームを見て育って来た。
 するとこうなるんだろう。

「だからあれほど気をつけなさいと言ったでしょ!」

 愛莉さんの怒りが爆発する。

「あ、愛莉ちゃん。元気があっていいじゃない。天音ちゃんそっくりよ」
「恵美……だから問題なの!」

 このまま成長したら天音か天音以上に手に負えない子になる。

「大丈夫よ。茉莉ちゃんに無礼な真似した奴は片っ端から地獄に突き落としてやるから」

 むしろ茉莉は自分で地獄に突き落としかねないけどね。

「それにしても結莉は不思議ですね」

 石原君がそう言って結莉を見ている。
 結莉は結と一緒に弁当を食べている。

「結莉がおにぎり握ったんだよ」
「美味しいね」
「ありがとう」

 同じ双子でこうも違うのか?
 それに気になるのはやはり茉奈。
 今は優翔の隣で愛菜や優菜の世話をしているけど、結莉達を羨ましそうに見ている。
 茉奈の気持ちに気付くなという方が無理な話だろう。

「で、肝心の結はどう思ってるんだ?」

 美嘉さんが聞いていた。

「まだ3歳ですから。何も考えてないんじゃないかな?」

 美希が答える。
 そりゃ3歳だもんね。
 食べ物をくれる人程度にしか思ってないんじゃないだろうか。

「それで思ったんだけどさ」
「どうしたんだ水奈」
「天音確かうちの娘と同じ年の子がいたよな?」
「ああ、海翔か?それがどうしたんだ?」
「いや、うちの優奈か愛菜をどうだと思ってな」

 恋人がいれば大人しくなるなら試してみたいらしい。

「お前は娘の彼氏探す前に、娘の教育をどうにかしろ!」

 神奈さんが怒ってる。
 まあ、無理もない。
 惨状は善明から聞いてるよ。
 多田君がついていた方が良かったんじゃないかと思うくらい酷い。
 その分悠翔と茉奈はしっかりしてきているらしい。
 ただ優奈と愛菜が神奈さんの手にもおえないくらいになっている。

「亜依、琴音はどうなんだ?」
「遊を手こずらせて遊んでるよ」

 遊が注意するといったん止めて目を離すとまた始めるらしい。
 遊が帰ってくる時間になると「ちぇーん」となずなに言うらしい。
 そして家に入れようとしない琴音。
 少しでも酒を飲もうとすると「お酒臭いパパ嫌い」と訴えるそうだ。
 なずなが困ってる遊を困らせる琴音。
 なずなも面白がってるみたいだ。
 それでも琴音は遊を気に入ってるらしい。

「パパはママと琴音どっちが好き?」

 そんな意地悪な質問をして遊を悩ませる。

「なんだかんだ言ってちゃんと父親してるんだな」

 亜依さんが感心していた。
 まあ、瑛大君に比べたら全然マシなんだろうね。

「秋久は相変わらず?」

 晶さんが翼に聞いていた。

「そうなんですよ。良くも悪くも欲がないんです」

 誕生日プレゼントに何か買ってあげようかと言っても玩具をねだらない。
 辞典をせがむらしい。

「どういう理由なんだい?」

 善明は疑問に思ったらしい。
 しかし家に帰ると納得した。
 分厚い辞典を枕にして寝てるそうだ。
 自分の役割をしっかり把握している。
 入園式の時もそうだった。
 茉莉が爆睡して園長が激怒してる中周りを観察していた。
 人間観察だ。
 そして四宮と神谷を見つけると結を見る。
 結も秋久に気づくと頷く。
 自分は結の指示を仰げばいい。
 ポジションまで把握したらしい。

「四宮と神谷か……」

 渡辺君が呟く。
 渡辺班に恨みを持つ者の集団リベリオン。
 そのリーダーが神谷十郎。
 四宮も関わって言うという事はアルテミスとも繋がっているのだろうか?

「それは無いと思うよ」

 片桐君が言う。

「なんでだ?」
「だってリベリオンには高橋グループも絡んでるんでしょ?」

 太陽の騎士団の残党みたいな連中がアルテミスと組むわけがない。
 確かに片桐君の言う通りだね。

「だけど、手を組んで俺達を潰すかもしれないんじゃないか?」
「誠、相変わらず視野が狭いぞ。よく考えろ。そんなことまでして潰さなきゃいけない存在か?」

 利害関係が一致しているように見えて実は全違う。
 敵対関係になる可能性はあるかもしれないけど、そんな相手と組んでまで潰す理由があるのか?
 元々敵対してた相手だぞ。

「そういう事か」

 多田君は納得したみたいだ。
 
「しかし次から次へときりないな」

 渡辺君がため息を吐く。
 少なくともリベリオンは僕達が恨みを買ってしまっているだけの気がするけどね。
 いつかは出て来るんじゃないかと予感はしてたよ。

「なんとかなるでしょ」

 片桐君は気楽に言う。
 その根拠は多分結だろう。
 結が変に性格が歪まない限り大惨事は無いはずだ。
 その結も結莉によって制御されている。
 心配する事はない。
 精々処刑方法が変わるくらいだ。
 恐ろしい事言うね、君。

「こっちは知事まで準備したんだ。そう簡単に手出ししないでしょ」

 相手して欲しいならするけどどうなっても知らないよ。
 そんな意味だろう。

「水奈!いい加減にしろ!そんなに飲んで帰って悠翔達を誰が風呂に入れるんだ!?」
「いつも学がやってるからいいだろう。私は今日はもう帰ったら寝るよ」
「水奈!お前は全部学に押し付けるつもりか!?」

 聞けば朝ごはんと晩御飯は学が作ってるらしい。
 昼はカップ麺。
 3歳と2歳の子供なのにそれでいいの?
 離乳食なんてレベルじゃないよ?
 
「……そろそろお開きにするか」
「そうだね……」

 渡辺君と片桐君が言うと皆片づけを始める。
 子供達もそれに気づいたらしくて片づけを始める。
 そして代行を頼んで家に帰った。
 
「泉!先にお風呂に入りなさい!」
「明日は日曜だよ」
「じゃあ、夕食に育人君呼んでも問題ないわね?」
「……それ、ずるくない?」

 とはいいつつ本当に呼ばれたらまずいと思ったのか渋々風呂に入る。

「晶ちゃんは泉の扱い方慣れて来たね」
「まあ、弱点が勝手に出来たみたいなものだし」
「時に晶ちゃんに聞きたいんだけど」
「どうしたの?」
「やっぱり彼氏と一緒だと風呂に入らないと気になるのかい?」
「どうかしらね。私は毎日入っていたから」

 でも体臭が気になるくらい大切な人なんでしょ?
 晶ちゃんの言う通りなんだろうな。
 
「私達の子育てもあと少しで終わるわね」
「そうだね」

 あとは善斗と善久だ。
 あの子達は問題ないだろう。
 
「で、善君はどう思ったの?」
「何がだい?」
「秋久と陽葵と菫。全く話してなかったから」
「秋久の事は話したじゃないか」

 あの子は自分の役割を理解してるよ。
 問題があるとしたら菫だろう。
 何か能力があるのは今日見た感じ察した。
 子供がいくら隠そうとしても分かってしまうんだ。
 親って凄いね。
 これからの世代がどんな物語を織り上げていくのか。
 そんな事を考えながら眠りについた。
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