姉妹チート

和希

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僕らはきっとこのままで

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(1)

「ねえ、ママ」

 比呂が美希に何か聞きたい事があるようだ。
 最近好奇心が芽生えたらしい。
 魔の2歳児と表現されるほど、いう事を聞いてくれなかったりするらしいけど比呂と結にそれは無かった。
 素直に育ってると言うか反抗しても無駄な時間を過ごすのを面倒に思ってるらしい。

「ちゃんと自分の足で歩きなさい」

 結にいたっては普通考えられないような注意をしているくらいだ。
 天音もその様だった。
 結莉と茉莉は元気に遊んでいる。
 やる事が徐々に過激になってるらしい。
 家に置いておく方が余程危険なんだそうだ。
 ふすまを破るなんて生易しい事はしない。
 モデルガンをプレゼントして注意された天音はプラスチックのバットを渡した。
 これなら害はないだろうと思った。
 バットは2日で壊れた。
 家の窓ガラスに叩きつけたらしい。
 ガラスが割れた事よりもバットが壊れた事を悔んでいた。
 朔は普通に反抗期を迎えて祈が手を焼いているそうだ。
 陽葵や菫と秋久は相変らずらしい。
 変わったのは陽葵と菫が秋久にいたずらをするのではなく、色々とお世話をするようになったそうだ。
 秋久は抵抗する事無くなすがままにされてるらしい。
 公園で遊んでいると植物を見ている。
 毒があるかそうでないかを見極めているんだそうだ。
 遊達も今日は子供を連れて楽しんでいた。
 今日は花見の日。
 みんなで遊ぶ日も徐々に減っていく。
 それなら、親に孫を見せてやるのもいいかもしれない。
 被る行事は渡辺班と共に行動することに決めていた。
 で、遊達が騒いでる様子を見ていて比呂が美希に聞いた。

「ねえ、ママ」
「どうしたの?」
「おっぱいって何?」

 比呂の一言が周りの空気を凍りつかせる。
 美希も困惑している。
 まあ、これが多分一番手っ取り早いだろうな。

「食べ物じゃないよ」

 僕がそう言うと比呂は「ふーん」と言って料理を食べ始めた。

「遊達はいい加減にしろ!ただでさえ反抗期に入ってるのにてこずらせるんじゃねえ!」

 天音が怒り出すとなずな達も一斉に不満を言い出した。
 まだ異性を意識するのは早すぎる。
 ましてやそんなものに興味を示された息子の母親はたまったもんじゃない。
 息子だけではない。
 結莉と茉莉も一緒だった。

「私って女なんだよね?」
「それがどうかしたのか?」
「いつになったらママみたいに胸が膨らむの?」
 
 そんな質問を受けたらしい。
 ある意味厄介だな。
 朔はそんな事は全くない。

「空達はまだましだよ……」

 麗華が言った。
 光聖の話だ。
 やっぱり母親の胸が気になったらしい。

「中に何が入ってるの?」

 そんな質問を光聖がしたそうだ。

「光聖、あの中にはロマンがつまってるんだ……いてぇ!」
「光太は息子に何馬鹿な事を吹き込んでるの!」

 その後麗華がしっかり教えたらしい。
 これは麗華が女である証。
 何の特徴もなかったら女性は男性を惹きつけることが出来ない。
 だから光聖が興味を持つのは男として当たり前の事。
 だけどそれはとてもデリケートな物。
 女性にとってとても気にしている部分だから、不思議に思っても女性に聞いたらいけない。
 そう説得して、光聖が納得したと思ったら光太や遊が馬鹿な歌を歌っている。
 光聖は不思議に思ったそうだ。
 で、麗華も激怒する。
 それだけじゃない、もっと過激な歌を歌う。
 幸い子供だから意味が分からない。
 だけど遊が余計な事を言う。

「これはフランスパンの歌だ!」

 すると比呂が興味を示す。

「パンを食べるのに人に許可を得ないといけないの?」

 苦戦しながらもうまく説明しようとする美希。
 しかし案外簡単に片付いた。
 
 ぽかっ
 
「比呂は気にしたらだめ!」

 多分結莉がその意味を知ってるわけじゃない。
 ただそれが女性にとって不愉快な歌だと天音を見て思ったのだろう。

「分かった」

 そう言って再び食べ始める。

「お花綺麗だよ」

 何とか結に食べ物以外に興味を持たせようと結莉が四苦八苦している。
 本当に天音の娘なのかと思うような行動だ。

「心配するな。あの行動は結の前でだけだ」

 天音はそう言った。
 なぜか結の前では大人しいらしい。
 結がいなかったら茉莉とやりたい放題らしい。
 最近は海翔という遊び道具が出来た。

「学はどうだ?」
 
 学に聞いてみた。
 悠翔はしっかりしてるらしい。
 自分が今何をするべきかちゃんと弁えているような行動をする。
 お腹が空いたら「まんまー」と言って、満たされたら寝る。
 もうじき寝返りくらいは出来るようになるんじゃないかと言っていた。
 双子の妹の茉奈の面倒もみているらしい。
 水奈の娘とは思えない程気弱な性格みたいだ。
 今も優翔から離れずに大人しくジュースを飲んでいる。

「本当に私の娘なんだろうか?」
 
 水奈ですら首を傾げていた。
 だけど僕は気になる事があった。
 優翔の影に隠れながらも、結莉と仲良く弁当を食べている結をじっとみていた。
 ……気のせいだろうか? 

「優奈と愛菜はどうなんだ?」
「それなんだよ問題は……」

 水奈がため息をついてた。
 学が仕事から帰ってくる頃になる喚きだす。
 そして学が帰ってくると喜ぶ。
 とにかく学が好きみたいだ。
 もちろん水奈の事も母親と認識している。
 突然泣き出して水奈があやしても無理なのに、学が抱きかかえると大人しくなる。
 だから傍から見ると水奈は助かっている。
 学がいる間は大人しいのだから。
 
「別に問題ないじゃないか」
 
 天音が聞いていた。

「夜はそれでいいんだけど昼間が大変でさ」

 2人同時に「抱っこ!」とねだる。
 当然水奈はなんとか2人を抱える。
 すると何も出来ない状態になる。
 しかも寝たと思ってベッドに寝かせるとすぐに目が覚める。
 後結莉達との決定的な差は優奈達の側には物を置いておくことは厳禁な事。
 結莉や茉莉、海翔は天音や大地が口に入れている物だけを食べるという事が出来ていた。
 しかし普通の生後4ヶ月の子だ。
 手につかめる物は何でも口に入れようとする。
 口に入る大きさなら何でも飲み込んでしまう。
 そんな調子だから水奈は一時も優奈達から目が離せないらしい。
 まだハイハイも出来な時点でそんな状態だ。
 立ったり歩き始めたら何を始めるか分からない。
 水奈は困り果てていた。
 天音でも経験してない事だからアドバイスできない。
 なずなと花と3人で相談してるそうだ。
 琴音と快も同じだから。
 もちろん水奈の母さんにも相談したそうだ。

「まあ、そういう時期だから仕方ないよ」

 水奈だって同じだったんだ。と言われたらしい。
 改めて母親の凄さを実感したらしい。

「輝夜たちも他人事じゃねーぞ。赤ちゃん一人育てるだけでも苦労するぞ」

 水奈が輝夜に言っていた。
 むしろ結莉や茉莉、結達が異常なんだ。
 これから出産を控える輝夜たちに水奈が忠告していた。

「でも、水奈はまだいいよ……」

 なずなが言う。
 まさか……。
 同じ事を天音も考えたらしい。

「遊、まさかお前!!」

 天音が言うと「いや、参った」と答えた。

「遊は何やったんだ?」
「さすがは今は注意してるみたいだけどね……」

 なずなが言う。
 遊はなずなが家で赤ちゃんを世話するようになると夜遊びに行くようになった。
 天達が春休みだったからと言う理由もあるだろう。
 もちろん、遊は報いを受ける事になる。
 遊が琴音を抱きかかえようとすると、琴音は突然泣き出す。
 遊のお父さんが抱いても泣かないのにどうしてだ?となずなも不思議に思ったらしい。
 理由は遊を見ている琴音の顔を見て思った。
 もう3ヶ月になる。
 いい加減人の顔くらい覚える。
 普通なら「あーあー」と喜ぶくらいはするだろう。
 しかし琴音は遊の顔を不思議そうに見ているんだそうだ。

「この人誰?」

 そう言わんばかりに。
 普段琴音が起きてる間は遊は家にいない。
 そして夜の僅かな時間も遊は琴音と接していなかった。
 その結果が今の琴音だ。
 さすがに遊のお母さんも激怒したらしい。
 こっぴどく叱られた。
 今必死に「パパですよ~」と琴音の相手をしているそうだ。

「お前は馬鹿か!」

 天音が遊に怒鳴りつけている。
 他の母親達も遊を責めている。
 快はそんな事無いらしい。
 多少甘えん坊なところがあるらしい。
 しきりに指をくわえる癖が気になったので粋が快の指にタバスコをつけたらしい。
 当然快が泣き出す。
 それを知った花はさすがに粋に注意したらしい。

「あれは快が舌や手の感覚を認識している段階だからそっとしておいてあげて」

 花だって育児書を片手に奮闘している。
 それを分かっているから粋も手助けしてるらしい。
 
「朔はどうなんだ?」

 天音が聞いていた。

「いや、もう手が付けられない」

 買い物に言っても歩けるのに「抱っこ!」と店の中で泣きわめいたりするらしい。
 車で来てるからチャイルドシートに座らせてベルトをつけようとすると嫌がる。
 食事中に食べることを放棄する。
 まさみ魔の2歳児といった感じなんだそうだ。
 
「陸は手伝ってくれないの?」
「それはない。ただ陸もどうしていいか分からなくて途方に暮れてるよ」

 そんな苦戦をしている祈に祈の母親たちはただ見ているだけらしい。

「祈の子なんだから精々苦労しなさい」

 その苦労がいつか報われる時が来るから。
 それは祈の母親が実証している。
 結は相変わらず食べている。
 隣で必死にアピールしている結莉を気にも止めずに食べている。

 ぽかっ

「とーや。お花だよ!」
「食べれるの?」
「食べたらだめ!」

 すると結は食事に戻る。
 まあ、まだ2歳児だからしょうがないだろ。
 ……多分。
 食べ終えると冬夜は寝る。
 それをまた結莉がぽかっと小突く。
 結の相手はかなり大変みたいだ。
 まあ、大体平らげたし片付けて帰る事にする。
 ちなみに今日は誰もお酒を飲まなかった。
 半数以上が赤ちゃんいたり妊娠中だと嫌でも気を使うだろ。
 僕も車で家に帰る。
 美希が片付けている間に結を風呂に入れる。
 すると不思議な現象が起きた。
 風呂から出て結に服を着せようとすると「自分でやる」と言い出す。
 確かこういう時は出来る部分はやらせてやれって言ってたな。
 結が服を着ている様子を見ていた。
 どうやら僕が着せている様子をしっかり観察していたようだ。
 うまく服を着ていた。

「えらいな~、結」

 そう言って結の頭を撫でてやる。
 得意気になっている結。
 脱衣所を出ると美希に教えてやる。
 
「お利口さんだね」

 美希も結の頭を撫でている。
 その後は自分で勝手に部屋に行って寝る。
 美希が風呂から出ると話をしていた。

「皆の話を聞いてるとさ、なんか結はまだましって気になって来た」
「多分天音もそうじゃないかな?」
「だろうね」

 散々暴れ放題だった僕達が子育てに悩む時期。
 これからも子供の仕種一つで一喜一憂するんだろうな。

(2)

 冬吾と誠司達もいよいよU-18に招待されるようになった。
 俺がしてやれることももうそんなにない。
 既に残っていない。
 メンタルは誠司は大丈夫だろう。
 問題は冬吾だ。
 ここまで挫折したことがない。
 別にポジションを奪われる事だけが挫折じゃない。
 故障で試合に出れなくなったりすることもある。
 どんなに名選手でもW杯本戦出場を決めた直後に代表から外された選手だっている。
 何が理由でどんな挫折を味わうか俺にも分からない。
 結果が全て。
 それは監督等スタッフが決めるだけじゃない。
 代表のサポーターのブーイングを買う事もある。
 結果を残せなきゃ生き残れないのは監督も一緒だ。
 非情な判断を強いられることもある。
 冬吾のメンタルのケアをどうするかが課題だった。
 今のところは問題ないみたいだけど。
 誠司達はホームゲームの時と土曜の試合だけ出場させている。
 中学生がU-18に選ばれた事もあるらしい。
 高校生が出るくらい普通だろう。
 今日も試合が終ると反省会をして家に帰す。

「神奈。今日遅くなるけどいいか?」
「どうしたんだ?」
「ちょっと冬夜達と飲んでくる」
「あんまり変な事にトーヤ巻き込むなよ」

 そう言って約束していた居酒屋に入る。
 石原君達や瑛大もいた。

「どうしたんだ?急に」

 冬夜が聞いていた。
 
「まあ、ちょっと話をしたくてな」
「また、しょうもない愚痴とかじゃないだろうな?」

 俺や瑛大が一緒だと色々大変らしいと冬夜から聞いた。

「冬吾の事なんだけど相談したくてさ」
「何か問題あるのか?」
「そうだな……お前バスケで挫折したよな?」

 韓国とやりあって無茶苦茶なラフプレイを受けた時。

「……そろそろ冬吾にも壁が出来るかもしれないって事か?」
「と、いうより壁に当たった時どうしたらいい?」

 さすがに今さらサッカー辞めさせるなんてできないだろ?
 中学生の時からU-15でやってきたんだから、ファンだって多い。
 冬夜がバスケをやってた時はそうじゃなかったかもしれないけど、サッカーでは違うかもしれない。
 冬吾のポジションを狙ってる奴が足を引っ張るかもしれない。

「そうだね。だから冬吾には言い続けてきたよ」

 冬夜はそう言って笑う。

 そのプレイで存在意義を示せ。

 実際冬夜はそうやって周りに認められてきた。
 冬吾のプレイもそうだ。
 絶対決めてやるからボールをよこせ。
 そんな気迫の籠ったプレイをする。
 仲間はそんな冬吾を信頼して冬吾にボールをよこす。
 その期待に必ず応えるのが冬吾だった。

「体力面はどうなんだ?」

 むしろそっちの方が心配らしい。
 まあ30分試合時間が延びるしな。

「そこは今でもしっかり鍛えてある」

 格下相手の試合に出して故障させるよりはとトレーニングさせてる。

「冬吾と誠司は大丈夫だよ。誠も聞いたんだろ?2人の約束」

 いつか二人で地元チームを率いてクラブワールドカップを制す。
 そんな夢を持っていたらしい。
 そしてその夢に向かって準備している。

「その時までコーチを続けられるといいんだけどな」
「大丈夫なんじゃないのか」
「俺の相談も乗ってくれないか?冬夜」

 瑛大が何か言いたそうだ。

「何があったの?」

 冬夜が聞いた。

「地元に戻って来るなり恋が結婚するって言いだしてさ」

 亜依さんと恵美さんは聞いていたらしい。
 そうでもないとすぐに式場を手配なんて出来るわけがない。

「娘を嫁にやるってどうしたらいいか分からなくてさ……」

 それは確かにあるな。

「祝ってやるしかないだろ」

 俺が言った。
 石原君と酒井君が何も言わないのに気づいた。

「だからそういうしょうもない話を夫だけでするのは止めて下さいって言ったでしょ!」

 愛莉さんが言うと奥さんたちが座り注文をする。

「こういう楽しい席に自分達だけなんてずるくないか瑛大」

 亜依さんもそう言って笑ってる。

「でもさ、4年間いなくてやっと帰って来たかと思ったら結婚だぜ!やっぱり寂しいと思うのが父親だろ」

 亜依さんは怒鳴ると思った。
 だけど違うようだ。

「見守ってやれ。一時はお前を毛嫌いしていた恋が、お前を見直して恋人を選んで結婚するんだ。誰が何と言おうと私はお前を褒めてやるよ」

 おつかれさん。
 亜依さんはそう言っていた。

「誠達も同じだぞ。一人前の女性に育てたんだ。もっと胸を張って生きろ」

 その努力は妻である私が良く知ってる。
 水奈だって言ってたらしい。

「今更になって親の苦労を思い知った」

 水奈は子育てに必死で他のことを全くできないらしい。
 それでも学が手伝ってくれるらしいが。
 ちなみに遊は自分が父親だと認識してくれなくて困っているそうだ。
 また馬鹿なことしたな。

「まあ、あいつには良い薬になっただろう」

 亜依さんはそう言って笑う。
 それからみんな思い出話をしていた。
 色々あったなと楽しんでいた。
 愛莉さんはいまだに悩みの種があるらしいが。

「茜は本気で結婚しても実家がいいというかもしれませんよ?」
「まあ、僕はその方が嬉しいけどね」
「冬夜さんがそうやって娘を甘やかすからじゃないですか」

 そこまで娘に慕われている冬夜が羨ましいけどな。

「誠は自業自得だ。あれほどやめとけと言ったのに」

 神奈はそう言って笑う。

「冬夜!今から千帆達に尊敬されるようにはどうしたらいい!?」

 瑛大が冬夜に聞いていた。

「もう無理だろ?2人とも彼氏いるんだろ?」
 
 そのうち挨拶にくるだろうから、覚悟しておいた方がいい。
 父親より彼氏を庇う姿をみて寂しく思うだろうから。

「問題はそこよ!なんで父親は娘に彼氏が出来たくらいでギャーギャーいうわけ?」
「恵美の言う通りね。人間いずれはそうなるってわからないわけじゃないでしょ?」

 恵美さんと晶さんが言う。
 自分だってそうだったんだから。
 それは冬夜でもうまく言い訳がつかなかったらしい。
 冬夜は今でも現在進行形で同じ思いをしているんだから。
 俺だってまだ歩美がいる。
 それに誠司の心配もある。

「でも冬夜の娘は皆立派だよな。愛莉さんの手腕なのか?」
「それはそうよね!愛莉!コツがあるなら教えてよ!」
「亜依……それ聞かない方がいいぞ……」

 神奈が言う。
 理由を知っているのだろうか?
 そして愛莉さんが答えた。

「基本冬夜さんは私に任せてくれるの。ただ私が悩んだ時に一言言ってくれる」
「……な?」

 神奈がため息をついて言った。

「なるほどね……」

 亜依さんも溜息をついていた。
 やっぱり父親の影響なのだろうか?
 でも神奈が言ってくれた。

「でもな。誠司が悩んでいる時に親身にアドバイスをするのが誠なんだ。誠だから分かる事ってあるんだろうな」

 娘に対しては全く役に立たないと神奈は笑う。

「そろそろ帰ろうか」

 冬夜が言うと俺達は店を出る。

「あ、そうだ冬夜」
「どうした?」
「あの件は大丈夫なのか?」
「誠は大体把握できたの?」
「まあ、手こずったけど大体は」

 今度の相手はかなりやばいぞ?

「それは分かってる」

 使えない人材なら実の子供すら平気で始末する奴ららしいから。
 だから今は下手に動かない方がいい。
 ただでさえこっちは守るものが多すぎる。
 やるなら一撃でケリをつけたい。
 そのための切り札を俺に準備してもらってる。
 それを気取られないために子供達の好きにさせる。
 俺達が動いてる事を気取られたくないから。

「それって子供達を囮にするわけ?」

 話を聞いていた亜依さんが聞いてた。

「子供が頼ってきたら無理矢理にでも分解してやるさ」

 恵美さんに言えば拠点にミサイル撃ち込むくらいやるだろ?
 でも子供はそれを望んでいない。
 だから手は出さない。
 ただいつでも止めをさせるように準備は必要だと冬夜が言う。

「冬夜が相手だったらまずどうする?」

 俺が聞くと冬夜は躊躇うことなく答えた。

「空を潰すね」

 空の身に何かあったら絶対にSHは混乱する。
 下手すれば空中分解だってあり得る。

「それでは空の身が危ないのですか?」

 愛莉さんが不安そうに聞いていた。
 すると冬夜はくすっと笑った。

「一番有効な手段だけど一番無謀な手段なんだ」

 今の空を潰すとしたらそれこそ爆撃しかない。
 暗殺なんてやり方が今の空に通じるとは思えない。
 みんな空の人柄でSHの王になっていると思ってるけどそれは違う。
 SHの中で最強で最恐だから空の王なんだ。
 ……なるほどな。

「SHに手を出したら割に合わない。FGとやらは既にそう思ってるかもしれない」

 原川組だって薄々気づいてるはず。
 それを覆すカードが新しい役者なんだろう。
 だったら何ができるか構えて見極めたらいい。
 冬夜はそう言った。

「とりあえずはめでたい事を祝う事からしよう」

 瑛大はもうすぐ娘とヴァージンロード歩くんだろ?
 
「そうなんだよなぁ~」
「少しは喜べこの馬鹿!」

 そう言って瑛大の頭を亜依さんが小突く。
 悪い事ばかりじゃない。
 いい事だってあるんだ。
 一つずつ乗り越えていこうと冬夜が言う。

「瑛大!恋の結婚式の時は親だけで二次会やらないか?」
「それもそうだな!」
「じゃあ、会場は私が手配しておくわ」

 恵美さんが言う。
 こうやって笑っていられるのはあとどれだけあるんだろう?
 そんな事を考えながら家に帰った。
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