姉妹チート

和希

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Destiny

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(1)

「ねえ、翼や」
「どうしたの?」
「親としてこのクリスマスプレゼントはどうなんだい?」
「天音も与えてたそうだよ?」

 翼はそう言ってにこりと笑う。
 翼にクリスマスプレゼントを任せていた。
 僕も一緒に選ぶべきだったのだろうか?
 しかし女の子のプレゼントなんてわからない。
 秋久の分は問題なかった。
 水鉄砲なんか渡して母さんを銃撃したら大惨事になる。
 それなら弾を撃てないモデルガンの方がいくらか安全だろう。
 茉莉と結莉は家の中を舞台にガンアクションを楽しんでるらしいけど。
 そう、茉莉と結莉はモデルガンで遊んでいた。
 だから美希は陽葵と菫にもちょうどいいだろうと買ってきた。
 幸運にも翼は女性の立ち振る舞いというものを学んでいる。
 だから言葉遣いはしっかりしていた。
 まちがっても母さんに「ガッデム」なんて言わないだろう。
 しかしモデルガンを持って秋久のこめかみに銃口を向けている菫を見ると不安にもなる。
 
「撃てないから大丈夫だよ」

 翼はそういうけど将来絶対実弾を撃てる銃を装備しかねないよ?この子。
 そして秋久はというと……。
 弾を撃てないとわかるとあまり興味を示さないように見えた。
 しかし常に携帯している。
 そして僕や翼は自分の親だと認識している。
 姉に銃を向けたらどうなるか想像がついたのだろう。決して銃を向けない。
 しかし天音や翼が遊びに来た時、異常な反応速度で銃を向ける。
 それに気づくと結莉や茉莉も銃を手にする。
 秋久は銃はあまり好きではないらしい。
 確かに常に携帯できないし、サプレッサーをつけたって音は出るし、匂いが残る。
 秋久はそれを嫌う傾向にあるようだ。
 1歳の考える事じゃないような気がするんだけど。
 秋久は僕が陽葵や菫に少しでも女の子らしくと思って買ってきたままごとのセットに着目した。
 2人は当然そんなものに興味を示さなかった。
 秋久は玩具の包丁を持っている。
 しかし秋久はその能力だけは2人を越えている。
 秋久は気配をすでに消す技術を持っている。
 気づいたら首すじにナイフを当てられていたなんてことはよくあった。
 玩具だから親を練習台にしていいと思ったのだろう。
 親としては複絶な気分だよ。
 父さん達に相談してみた。

「確かに銃は隙がどうしても出るから暗殺には向いてるかもしれないね」

 孫を暗殺者にしたいのかい?
 と、いう能力を秋久は持っているから銃のデメリットをすでに熟知している。
 誰が教えたというわけでもないけど。
 とりあえず今日はクリスマスイブ。
 翼も陽葵や菫が大好物だからと張り切ってクリスマスケーキを作っていた。
 案の定秋久の分は僕が先にとっておいてやらないと2人が食べてしまう。

「女の子だからデザートは別腹なんじゃない?」

 翼はそういうけど1歳の食欲じゃないよ?
 ケーキも食べて風呂に入れて寝ると思ったけどリビングで立ち止まってしまった。
 まずい……。
 今年はどんなものをやるつもりだ……。
 恐る恐る僕はテレビを見る。
 駅のホームに女子高生が手を繋いで並んでいる。
 やばい。
 まあ、都会の駅だとこんな風に人が多いんだろうね。
 地元の駅じゃ帰省時くらいしかこんな状況生まれないよ。
 
「み、美希。僕は最近の流行の音楽を知りたいんだけど」
「急にどうしたの?」
「ほ、ほら。会社で同僚と話すときに話題になるかもしれないじゃないか?」

 会長相手にそんな話をしてくれる人がいるのかどうか疑問だけど。

「そんなことして若い女性社員と話を合わせようって魂胆でしょ?だめ」

 見事に却下された。
 会長と流行のアイドルの話が出来る若い女性社員ってある意味凄いと思うんだけど。
 今年もやっぱり企んでいたらしい。
 毎年クリスマスになる0時に「ナイスボート」になるアニメを垂れ流す企画者は絶対彼女いないだろうと誰かが言ってたね。
 陽葵や菫の目は何かを期待している様だ。
 秋久はいつの間にか部屋にもどって寝ていた。
 いっせいの……で、電車が入ってくる線路に飛び込む女子高生達。
 さすがにその直後の描写はカットされていた。
 想像はしてしまうけど。
 この映画単にこのシーンを撮影したかっただけらしい。
 後は適当に残酷な描写を織り交ぜているだけで何のストーリー性もない物だった。
 小さな子供が「何であなたは生きてるの?」とかよく分からない質問を繰り返して頭がどうにかなりそうな映画。
 きゅうりを千切りしていたと思ったら自分の手まで千切りにしている母親。

「パパ、ママがおかしいよ」

 子供が父親にそんな事を言っていた。
 おかしいってレベルじゃないよ?
 というか美希、そんな映画を陽葵や菫に見せて平気なのかい。

「酷い映画だったね」

 翼は目を背けていた。
 翼が目を背けるような映画を陽葵や菫が見てその輝いている瞳に気づいてないのかい?
 映画が終ると2人は部屋に戻って寝る。
 それを確かめると僕は翼と少しだけ酒を飲む。

「今日はなんだか浮かない顔をしているけど仕事で何かあったの?」

 仕事で何か問題があるなんて口にしたら社員一人は確実に失業するよ。

「僕はあの子達の教育がこのままでいいのかとちょっと心配になってね」

 茉莉や結莉程じゃないけど、あの子達は後は実戦を経験するだけの段階に来てるような気がする。
 そしてその実戦を経験させる何かを企んでいるような気がしてしょうがない。

「私が間違ってる?」

 翼が不安そうに言う。
 そんなこと口が裂けても言えない。

「いや、僕が子供にあまり関わってやれないから」
「……きっとそれはないから」

 翼がそう言って笑みを浮かべた。
 その証拠に僕が帰ると「おかえり~」と玄関に向かう。
 食事の時のマナーもしっかり身につけようと翼を見ている様だ。
 翼が料理している様子を陽葵や菫はしっかり見ている。
 普通の女の子にに育ってます。と翼は言う。
 僕は多分翼が持っている包丁に興味があるだけのような気がしてならないんだけどね。
 秋久も自分が男の子だと悟っている様だ。
 自分は必要最低限の分だけ確保して後は陽葵や菫に与える。
 玄関に陽葵達が行くときも、必ず秋久が前に出るんだそうだ。
 そして結莉達が身につけていた、僕の間合いを的確に見極めている。
 その中に入らないように2人を守っている。
 酒井家の男子の行動はしっかり把握しているようだ。
 もっとも「邪魔」だと2人に蹴飛ばされているらしいけど。
 
「子供の教育は私が責任持ってするから、善明さんは仕事頑張ってよ」

 悩みがあったら相談相手になってもらえたらいい。
 まあ、翼に言われるとそれでいいような気がする。
 少なくとも母さん達に「ババア」なんて無謀な事はしない。

「任せっきりで申し訳ないと思ったんだけどね」
「それが母親の務めだから」
「……任せるよ」
「はい、それともう一つ。秋久の事なら問題ないよ」
「……何かあったのかい?」

 もうあの子達も自分で歩けるようになった。
 それでも買い物に言ったりすると「抱っこ」って我儘を言う年頃だ。
 なのに秋久はそれがない。
 それは陽葵や菫に譲ってやるものだと悟っているらしい。
 言い方を変えると”レディファースト”
 2人を守る立場だと自覚してる行動が偶にあるそうだ。 
 横断歩道で信号待ちしてる間に2人の前にさり気なくたったり。
 2人に誰かが近寄ると物凄い警戒心を出すらしい。
 翼に解るくらいだから余程強いのだろう。

「頼もしい騎士が出来そうだね」
「そうですよね」

 言い方を変えたら、絶対2人には逆らえない悲惨な人生が待っているんだろうけど。

(2)

「んじゃ乾杯!」

 子供達は皆勝手に年越しパーティを楽しんでる。
 冬莉達は例年通り連れて来た。
 空達も誘ったのだけど「天音から招待を受けた」と言っていた。
 多分結莉が結に会いたいんだろうな。
 僕達は酒井リゾートフォレストで年越しパーティをしていた。

「あ、冬夜。探してたんだ」
 
 誠とカンナがやって来た。

「誠、お前水奈の子供は大丈夫なのか?」
「それは大丈夫だよ。片桐君」

 亜依さん達も来た。
 学も年末年始の休暇に入った。
 適度に子供達の育児を手伝っているらしい。
 天音もたまに遊びに行ってるそうだ。

「それなんだ。トーヤ……お前天音大丈夫か?」

 カンナが言った。

「何かあったの?」

 するとカンナが水奈から聞いたことを教えてくれた。
 翼より天音が胸が小さくて結を抱いた時に結が違和感を感じたらしい。
 それがショックだったそうだ。

「あの子はまたそんなしょうもない事を……」

 困った娘だと隣にいる愛莉が言っていた。

「しかしそんなに気になるものなのか?」
「まあ、男には分からねーだろうな」
「大丈夫だ神奈。優奈と愛菜ならきっと勝てる!」

 なんせ水奈が神奈より大きくなったんだ。2人はもっと成長するはず。
 そういう事あまり言わない方がいいと思うぞ誠。

「お前は人が気にしている事をズバズバ言いやがって!」

 話題変えた方がいいだろうな。

「学はともかく遊は大丈夫なのか?」
 
 クリスマスに嫁さん放って遊んでたらしいけど。

「少しは堪えたみたい。とりあえず年末年始くらい様子を見てみようと思って」

 ずっと姑がいるのもなずなが気づかうだろうしと亜依さんが言った。

「神奈と亜依の時はいなかったの?」

 愛莉が二人に聞いていた。

「私はいたよ」とカンナ。
「私はいなかったよ」と亜依さん。

 亜依さんは瑛大を睨みつけている。

「この馬鹿は私が陣痛来たって知らせてもアイドルのライブに行ってたから」
「さ、最初は皆そうだろ?な?冬夜と誠」

 僕達は聞こえないふりをした。

「お前は恋の時も同じだっただろうが。どこの世界に酒の匂いをまき散らして自分の赤ちゃん見に来る父親がいるんだ!?」
「瑛大……そりゃさすがにまずいぞ」

 誠ですらそう言うくらいだからかなり酷いんだろうな。
 その挙句遊が似たような行動していたらそりゃ亜依さんも不安になるだろう。

「冬夜さんは毎日見舞いに来てくれたし、料理も覚えてくれたし、家事もしてくれたし、陣痛の知らせを送ったらすぐ来てくれたの」

 愛莉は嬉しそうに言う……

「……神奈、心配しないで。朝まで付き合うよ」
「そうだな亜依。嫌な事は忘れよう」

 落ち込んでいる2人を不思議そうに見ている愛莉。

「冬夜、そんなに簡単に仕事抜け出せたのか?」
「まだ独立してなかったから。その時の事務所の社長もそういう時は嫁さん優先にしてやれって言うから」
「とーやは羨ましいな!」

 美嘉さんが来た。

「美嘉はどうだったんだ?」

 カンナが聞いていた。

「電話くらいは毎日貰ってた。電話がしんどい時はメッセージ」

 渡辺君は先輩からレクチャー受けてたって言ってたな。
 愛莉の時は凄かったらしい。
 愛莉ママが陣痛きたら愛莉パパはサイレン鳴らして病院に駆け付けたって言ってた。
 無茶するなあって思ったけど、今なら分かる気がする。
 それだけ楽しみなんだと実感したことを愛莉パパに話したことがある。
 すると愛莉パパは言った

「……その気持ちを絶対に忘れたらいけないよ。子供は一番大切な宝物なんだ」

 そんな事を思い返しているとカンナに呼ばれた。

「トーヤ!なんで私を選んでくれなかったんだ。私は初めて男の前で服を脱いだんだぞ!私じゃやっぱりおっぱいが足りなかったのか?」

 うわぁ……荒れてるな。

「そんな話私は一言も聞いてませんよ?冬夜さん」
「お前!まさか神奈を保険にしていたんじゃないだろうな!」

 誠が言う。
 そんな中学生いるわけないだろ!
 
「あの時は薄暗かったから良く分からなかったし……愛莉の事は前に話したろ?」
「へえ、そんな話あるなら私達にも聞かせて欲しいな」

 亜依さんと美嘉さんが食いついて来る。
 愛莉は思い出したのか嬉しそうにしていた。

「そんなに大した話じゃないよ」

 カンナがイジメられているのを助けてあげようと思ったけど転校してしまった事。
 そのあとに近所にいる愛莉を見ていると妬みでいじめられていた。
 だからそっと助けてあげたら、愛莉から話しかけて来た。

「片桐君は昔から困っている女の子を放っておけない性格だったんですね」
「本当に愛莉ちゃんが羨ましいわ」

 石原夫妻と酒井夫妻が来た。

「海翔の調子はどう?」

 愛莉が聞いていた。

「結莉達より手がかからないって天音ちゃんから聞いてるわ」

 恵美さんが答える。
 石原君は笑っている。
 
「一度見に行った時に僕達が近づくと凄い警戒してるんです」
「ってまだ一月経ってないのに?」

 愛莉が驚いていた。
 しかも自分に近づくだけじゃない。
 結莉と茉莉に近づくと同じような反応を示すらしい。
 
「さっきの話聞いてたら何となく分かりました。姉弟の中で自分だけが男だから2人を守ろうと思ってるんですね」

 天音が二人の事を教えると警戒を解くらしい。

「お前は子供まで完璧なのかよ!大食いなんて癖どうでもいいくらいだぞ」
「何で私達だけこんな苦労しないといけないの!」

 カンナと亜依さんが再び荒れだす。

「でも、私も天音や茜達には手を焼かされているし」
「天音のやんちゃなんて遊達のそれに比べたら可愛い物じゃない!」

 2人の事は愛莉に任せて浮かない顔をしている酒井君に話しかけてみた。
 いつもの通り善明達はクリスマスイブが大変だったらしい。

「それはいいんだけど秋久が段々性格が出て来たみたいで」
 
 陽葵や菫を守ろうとしている意思がはっきりしたらしい。
 それはそれでいいんだけど……。
 夏のキャンプの時に見せた気配を消す技術。
 それに加えて近接戦闘を得意とするらしい。
 気配を消して、射程にはいったら一気に仕留める。
 そんな技術を身につけようとしているらしい。
 酒井君らしいな。
 1歳で身に着ける技術じゃないだろうけど。

「あとは絶対に陽葵達には逆らえないみたいですね」

 それは多分渡辺班は皆そうなんじゃないかと思う。

「片桐君の所はどうなんだい?冬夜」
「あの子は着実に成長しているよ」

 色んな意味で。
 結莉や茉莉が持ってるからとクリスマスプレゼントにモデルガンをプレゼントしたらしい。
 そしたら……やらかしたらしい。
 発動させた場所が公園だったから惨事は免れた。
 他の人がいなくてよかった。
 遊具に当たらなくてよかった。
 多分狙ってやったんだろうけど。
 そう、正確に木を撃ち抜いた。
 木は倒れたよ。
 美希もそれ以来家の中ではやってはいけない、人を狙ったらいけないと言い聞かせたらしい。
 結は素直な子だ。
 美希の言いつけは絶対守る。
 だから多分大丈夫。

「結はともかく比呂はどうなんだい?」

 酒井君が聞いていた。

「それがさ……」

 全くというほど手のかからない子供だった。
 美希的にも比呂の方がやりやすいんじゃないだろうか?
 育児書に乗ってるような模範的な子供だったから。
 
「片桐君のところは順調みたいですね」

 石原君が言う。

「まだ海翔がわからないよ」

 僕が答えた。
 それに遊の子供が気になる。 
 色んな意味で。
 
「俺も悠翔はしっかり見ようと思ってな」

 誠が言う。
 誠司の二の舞はさせたくない。
 ちゃんと愛情というものから教えていこうと思っているらしい。

「それは学に任せた方がいいんじゃないか?」

 カンナが言う。

「ま、それもそうだろうな」

 学ならしっかり教えるだろう。
 他の子供もそうだ。
 困ってる時だけアドバイスしてやればいい。
 自分の子供じゃないのだから。
 だけどそれが難しい事だとまだ分かっていなかった。

(3)

「結。だめっ!」

 ぽかっ

 結がぼーっとしてると結莉が怒る。
 そんな事を何度も繰り返しながら神社に来ていた。
 結がぼーっとしてるのは夜空を見ているから。
 
「結には何が見えるの?」

 美希が聞いていた。

「空とお星さまと月」

 普通だな。
 しかし何かを考えていたらしい。

「ママ。僕はどのお星さまから来たんだろう?」

 普通の子供の考える事だな。
 天音もさすがに結莉に子供の作り方なんて教えるはずがなかった。
 美希も回答に困っている様だ。
 僕が答えてみた。

「結、星の光っていうのは何億年も昔のものなんだ」

 何億年もかけて色々寄り道もしたりしてそして僕達の下たどり着いた命。
 だから誰もわかるわけがない。
 だって自分たちが生まれるずっとずっと前からやってきたんだから。
 きっとママの声を頼りにやってきたんだ。
 ママはここにいるよって声に惹かれて来たんだ。
 それを皆は「運命」って呼ぶんだよ。

「そうなんだ」

 まだ意味がよく分かってないかもしれない。
 だけど「結は美希と出会う運命」だという事さえ分かれば良い。

「旦那様は意外とロマンティストなのですね」

 美希がそう言って笑みを浮かべる。

「それにしても結も結莉も寝なくていいの?」
「2人とも運命を待ってるのでは?」

 美希が言う。
 お参りをするとラーメンを食べていた。
 
「美味しいね」

 結莉はそう言って結の隣に座って食べている。
 その匂いで気づいた茉莉が「茉莉も食べる!」と暴れ出す。

「海翔は私が預かっておくから」

 そう言って美希が海翔を抱く。
 天音が不安そうに見ていた。

「どうしたの?」

 美希が言うと天音は悩みを言う。

「美希の抱き心地に慣れたら私が抱いても寝てくれないんじゃないかってな」

 母さんにも同じ事を聞いたらしい。

「馬鹿な事考えないでちゃんと海翔の面倒を見なさい!」
 
 そう言って怒られたそうだ。

「美希にも愛莉にも私の気持ちは分からない。きっと水奈だけだ」
「水奈を見てるんだったら心配する必要ないじゃない」
「なんでだよ?」

 美希は笑いながら言った。

「だって水奈が抱いてるのは2人のうち一人だけで1人は学が抱いてるんでしょ?」

 天音の理屈だと学が泣いたら癇癪起こすんじゃない?
 まあ、美希の言う通りだな。
 結だって僕が抱っこしてる事もあるし、海翔だってさっきまで大地の腕の中で寝ていたじゃないか。

「うぬぬ……」

 これ以上は女性として譲れない何かがあるんだろうとあまり深入りしないことにした。
 茉莉がラーメンを食べ終わると家に帰る。
 先に天音の家に行った。

「結またね!」
 
 そう言って手を振る結莉。
 結は結莉達が家に入ると、役割が終ったと思ったのか美希に抱っこをねだる。
 そして美希が抱きかかえるとさっさと寝てしまった。
 
「一体どんな子供になるのでしょう?」

 美希がそう言った。

「どうだろうね。案外普通だったりするかもよ」

 自分がどう立ち振る舞えばいいか分かってるみたいだし。

「そこが怖いのよね……」
「確かに」
「パパ、僕も抱っこ!」

 比呂が言う。
 僕が比呂を抱えてやる。
 こんな時間まで起きてるのは珍しいから仕方ない。
 次々と芽吹いていく新しい命。
 どんな物語を作っていくのだろう。
 僕達も父さん達の様に子供の成長を見守っていられるだろうか?
 その前に片づけないといけない問題もあったけど。
 今は幸せな1年になるように願っていた。
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