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哀さえ愛に変えて鳴らせ
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(1)
「あれ?」
「どうしたの麗華?」
私は何かを探しているように見える麗華に声をかけた。
麗華の顔を見るとなんか青ざめている。
「なんかあったのか?」
「翼、光聖たち見てない?」
「え?」
さっきまでそこで遊んでいたじゃない?
そう思ったけどどこにも姿が見えない。
一面芝生で遊具が少しあるくらいで隠れる場所なんてない。
なのに二人の姿が見えない。
……まさか!?
麗華が狼狽えて2人の名前を呼んでいる。
「麗華落ち着いて!私と美希で探すから麗華はここで待ってて」
麗華が探してる間に光聖たちが戻ってくることもあるかもしれない。
探す必要もなかった。
光聖たちには万が一の為に連絡先を持たせておいたらしい。
そして麗華のスマホが鳴る。
麗華はすぐに電話に出て話をしていた。
そしてお決まりのセリフ。
「光聖たちの声を聞かせて!」
やっぱり確定の様だ。
今のうちに私も茜と連絡を取る。
麗華のスマホの発信先を特定させるため。
その後すぐに電話が終る。
麗華は絶望的な表情でその場に膝を崩す。
「麗華!しっかり!今みんなで探してるから!」
麗華の落胆ぶりに私は思わず声をかけた。
それで自分を取り戻した麗華は一言言った。
「……2人が誘拐された」
やっぱりか。
電話で話してる麗華の表情を見て何となく察した。
「まずは警察だね」
「警察には言うな。言ったら二人の命はないって……」
麗華はかなり気が動転している。
一人にさせる事は出来ない。
私は愛莉に連絡しながら美希に麗華を送ってもらうようにお願いした。
今の麗華に一人で帰らせるなんて出来ない。
実家に帰ると愛莉がすぐに玄関にくる。
「茜から話は聞きました。麗華は?」
「結構動揺してるみたい。美希に送ってもらった」
ふざけた真似をしてくれるじゃない。
私は晶さんと連絡しながら茜の部屋に行った。
「茜!特定できた?」
「居場所は分かった。この近くの山の中の施設」
そんな施設を利用できる人間なんて限られてる。
その施設の所有者は白鳥グループだった。
そこまで調べていた芋づる式に犯人が割りだせる。
SHの脱退組のスマホがいくつかその場所にあるそうだ。
間違いないだろう。
犯人は白鳥和志。
「ふざけた連中ね。そんなに首を吊りたいなら望みを叶えてあげようじゃない」
晶さんが言っている。
「首吊るくらいで済ませられるか!粉々にして海にばらまいてやる!」
グルチャを見ていた天音達もかなり怒っているようだ
「私達である程度調べる」
茜が言うと私は茜達の部屋を出て、リビングに行く。
恵美さんや晶さんと相談した。
「翼、あなたも今は無理しないであとは私達に任せなさい」
「晶の言う通りよ。心配しないで、警察に知らせるなんて馬鹿な真似しないから」
晶さんと恵美さんが言う。
多分犯人の言いなりになるわけではない。
警察の生温い処分じゃ済まさないという意味だろう。
愛莉も言う。
「きっと善明も翼の心配してる。自分の体調を考えなさい」
「……分かった。とりあえず私帰る。何かあったら連絡する」
そう言って私は家に帰った。
私はまだ産まれてないけど麗華の気持ちはなんとなく分かる。
子供を連れ去られた時の母親の絶望感がどんなものか馬鹿共に教えてやらないと気が済まない。
家に帰って夕食の準備をしていると善明が帰って来た。
善明は真っ先に聞いた。
「麗華どうだった?」
「かなり動揺してる」
「……この件は僕達に任せて翼は無理しないでおくれ」
善明がそう言って私の肩を抱く。
ただで済むと思うな。
しかし、私や天音よりも絶対に怒らせてはいけない人間の逆鱗に触れた事を和志は知らないようだった。
(2)
「空、ちょっと来なさい」
父さん……社長から呼び出された。
そんなミスはしてないはずだけど、何か問題あったかな?
「失礼します」
そう言って社長室に入ると険しい顔の社長がいた。
客先とトラブルがあったか?
「今は2人だけ。父親として言わせてもらう。すぐに帰りなさい」
「え、でもまだ今日回らないといけない担当が……」
「それは父さんから話をしておくから。ちょっと厄介なことになった」
え?
「何かあったの?」
「帰れば分かるよ」
帰るまでも無かったようだ。
僕のスマホが鳴る。
「出てもいいよ。ただしスピーカーにしてくれないかな?」
父さんは相手が誰か知っているのだろうか?
画面を見ると相手の名前はない。
誰だろう?
「もしもし」
「娘は預かった」
は?
「どういう意味?」
「そのままだよ。君、案外頭悪そうだね」
僕の頭が悪いのか?
僕の子供はまだ生まれてもないし男の子の予定だぞ?
「お前誰?」
「白鳥和志。SHの新しい王だよ」
「言ってる意味がさっぱりわからないんだけど」
「等価交換だよ」
は?
「君がSHの王の座を僕に渡せば娘は返してあげる。受け入れないなら……」
「お前何をした?」
すると電話から「パパー!」って小さな子供たちの声がした。
「どうする?」
冷静になれ。
判断をしくじったらこの子達が危険だ。
どう出る?
どう答えようか悩んでいると父さんが「変わって」と笑顔で言った。
僕は父さんにスマホを渡す。
「もしもし」
「あんた誰?」
「空の父親だよ」
「関係ない奴は引っ込んでてくれないか?孫がどうなってもいいのか?」
「お前馬鹿だろ?」
「なんだと?」
父さんが相手をを挑発してる。
「人質は無事だから価値があるんだ。それにその子は空の子供じゃない」
まだ産まれてもないのにどうやって攫うんだ?
「孫じゃなかったらどうでもいいっていうの?案外薄情なんだね」
「だから言ってるだろ。人質は無事だから価値があると」
その子達に何かしたら全力で潰してやると父さんが警告する。
「あんたの方が頭悪いんじゃないの?俺達の言う通りに従わないと……」
「だから馬鹿だって言ったんだよ。お前はミスをしたんだ。誘拐なんて卑劣な真似をする奴をまともに相手する甘い集団じゃないはずだぞ」
どのみち和志たちをただで済ますわけにはいかない。
死んでいくか遠方に海外旅行に行くかの選択肢くらいしかないぞ、と父さんは言う。
仮にSHが動かなくても父さん達の渡辺班が動く理由にはなった。
もうお前には破滅の道しかない。
父さんはそう警告する。
「孫娘の命はそんなに軽いの?」
「少しは自分で考えろ。その軽い命に手出ししたらお前の命なんてないも同然だぞ」
「……取引は公園でする。息子さんと慎重に相談しろ」
「相談するまでもないよ。この程度のミスも気づけないお前にまともな取引が出来るはずが無いと思うけど」
電話は切れた。
「愛莉から話は聞いてたんだ。栗林さんの子供が誘拐されたらしい」
光太の子供か。
「ああは言ったけど空、これはお前の油断が招いたミスだ」
相手の苦し紛れの一手を読めなかった僕のミスだと父さんは指摘する。
「自分のしでかした不始末くらい自分でなんとかしなさい」
「うん、それより一つ頼みがあるんだけど」
「僕達は手を出すな。そう言いたいんだろ?」
もともとこの程度の事は僕達で何とかなると考えていたらしい。
ただし子供たちに何かあったら父さん達は容赦なく動くと警告された。
それからすぐに家に帰る。
美希が玄関に走って来た。
「旦那様。どうしましょう」
「落ち着いて。和志とは話をした。取引場所も時刻も決めた。後は任せて」
美希も一緒に行きたいだろうけどお腹の赤ちゃんに何かあったら大変だ。
「お願い、あの子達を」
「分かってる。必ず助け出すから」
スマホが鳴る。
SHのグループチャットだ。
「空、どうする?」
「そんなの決まってるだろ?」
「どういう意味だ?」
「取引まで時間がある。近くのファミレスに集まろう」
そう言うと僕は「夕食は帰ってちゃんと食べるから」と美希に言う。
「ごめん……」
「大丈夫。しっかり後悔させてやるから」
そう言って家を出る。
ファミレスには光太達がいた。
天音達は先に公園に向かったみたいだ。
善明と大地に天音の制御を任せている。
そして善明と大地には別の指示を出していた。
「容赦する必要はないって事ですね」
大地がそう言っていた。
「向こうは本気でやってるのかどうか知らないけど後悔させる必要はあるからね」
後悔させただけで済ませるつもりはないけど。
「光太、すまない」
「いや、それはしょうがない。まさかこんな事態になるとは思わなかったな」
「そうじゃないよ」
「え?」
僕が言うと光太が反応した。
「僕の予想が甘かった。ここまで馬鹿だとは思わなかった。俺の失態だ。……俺の手で片づける」
「空……やり過ぎるなよ」
「さあね」
光太が言うと俺はそう答えた。
(3)
やれやれ参ったね。
地元で絶対に怒らせたらいけない人間を怒らせたようだ。
子供を確保したら大人しくなるなんて思い違いをしている人間だったようだ。
そいつらは既に公園に来ている。
大地とは打合せしてる。
僕がこの場にいる時点ですでに被害は生まれているんだけどね。
ただ今回の件は翼もある程度考慮してくれた。
しかし和志の家の破滅は免れない者になったようだと翼と母さんのやり取りで理解した。
あと考えなければならないのは和志の処刑方法くらいだ。
取引時間までまだ時間はある。
少しだけ救いの手を差し出すか。
「和志といったかい?今大人しく光聖君達を返したら助かる見込みがあるかもしれないよ?」
ほんのちょっとだけね。
荼毘にされるか普通に火葬されるかの違いくらい。
「あんまり舐めた事言うと本当にこの子達殺すよ?」
そういう事を今言わない方がいいと思うんだけど。
「ざけんな!そんな真似させねーぞ!ボケナス童貞だか何だか知らねーけどてめーら全員皆殺しだ」
そう言って今にも暴れ出しそうな天音を必死に抑える大地。
「天音は暴れていい体じゃないだろ!」
「お前もふざけてるんじゃねえぞ大地!どこの木の股から生まれてきたか知らないあいつには分からないだろうから、私がしっかり教育してやる!あいつは私の獲物だ!誰にも譲らないぞ!!」
大地でも時間まで抑えるのが無理な気がする。
SHの皆もすでに我慢する必要が無いと思ってるらしい。
「ふざけた真似しやがって。お前等の寿命はここで終わりだ!」
「袋にしてぶっ殺して海に沈めてやる!」
遊と粋も今にも動き出しそうだ。
そして非情にも時間前に一番危険な人物が来てしまった。
「天音……そこをなんとか俺に譲ってくれないか?」
「空!?」
天音が振り返ると完全に怒っている空がいた。
もう和志とやらの命の炎は消える寸前だね。
そうとも知らず和志は悠長に語っている。
「やっぱり娘の命が大事かい?じゃあ、取引を始めようか?」
「……光聖と玲衣はどこだ?」
空が聞くと小さな子供が2人現れた。
酷く怯えた目で空を見ている。
「じゃ、君達から僕の条件を飲んでもらうかな?」
和志が言うと空が意外な事を言いだした。
「君たちが光聖君と玲衣ちゃんかな?ごめんね、このおバカなおじさんが二人の事を間違えたみたいだ」
空はそう言って静かに二人に近づいていく。
和志の表情が変わる。
どういうルートで手に入れたのか知らないけど、やはり彼等も拳銃を持っていた。
それを空に向けて言った。
「あんまり舐めないで欲しいんだけど。それ以上近づいたら頭吹き飛ばすよ?腰抜け」
「……命かけろよ」
「は?」
「拳銃抜いたからには命かけろよ?」
「何言ってるんだ?」
「それは脅しの道具じゃないって言ったんだ」
それが空の合図だった。
僕と大地は拳銃を持った男の眉間を目掛けて発砲する。
しっかりした実弾の中でも特に凶悪なホローポイント弾。
頭を吹き飛ばされたのは相手の方だったようだ。
頭部を失った死体を確認すると、大地は天音と水奈と紗理奈に指示を出す。
3人が陽葵と菫を確保するまで彼等から目を離さない。
近づこうとすると一発真上に撃つ。
「今のが警告。次に動いた奴から殺すよ」
大地がそう言うと誰も動かなかった。
それは脅しではないことは十分理解しているようだ
3人が光聖と玲衣を連れて来る。
「パパ~」
「あとで一緒に帰ろうな。ママが待ってるから」
「うん」
光太がそう言って二人の頭を撫でると天音達に預ける。
「ひ、卑怯だぞ!!」
和志が見苦しい言い訳をする。
しかし空達には通じない。
「卑怯?」
「甘い事言ってるんじゃねーぞ、聖者でも相手にしてるつもりか?」
「お前らの前にいるのはSHだぞ」
遊と光太と空が言う。
「舐めがやって……お前ら全員ぶっ殺してやる!」
そう言ってBBの連中が空に襲い掛かる。
すると光太と遊と粋と学が前に出る。
「俺達でやる、十分だ」
天音のライド・ギグが発動しているとはいえ大勢のBBの連中をたった4人で片付けてしまった。
「うぬぼれるなよチンピラ。俺達と一戦やりたかったら米軍くらい連れてこい」
光太がにやりと笑って言った。
「く、くそ……」
「で、お前はどうするんだ?」
「舐めてんじゃねーぞ!」
和志がナイフを持って空に突進してくる。
もう少し冷静に空を見るべきだったね。
空の持ってる道具把握してるの?
キレている時の空の速度は異常だ。
僕や大地でも目で追えない。
和志の付きだしたナイフの先からは既に空の姿はなく、半回転して延髄に一撃食らわせていた。
普通の日本刀だったら間違いなく切断されていたね。
だけどこれは恋愛小説。……のつもりでいるらしい。
空の持っている”紅月”は峰と刃が逆さになっている逆刃刀。
どうしてそんなものを空が持っているのかは”優等生と劣等生”を読めば分かるよ。
しかし空の強烈な一撃は和志を倒し動けなくしてあった。
まあ、普通の人なら延髄に決められたらそうなる気がするけど。
だけど空はゆっくりと倒れた和志を見て刀を向ける。
「立て……そのまま串刺しにされたいのか?」
その声に反応した和志はゆっくりと起き上がる。
空はその様子をただ見ていた。
BBの他のメンバーが逃げ出そうとしたがそれは空の想定内だった。
ちゃんと純也達を背後に配置していた。
「まさか見逃してもらえるとは思ってないよな?全員生きて帰れると思うなよ」
純也が言う。
連中は高校生組の方がやりやすいと思ったのだろうか?
純也達に向かって襲い掛かる。
分かってないようだ。
SHの本体は他のグループに絡んでも弱すぎて暇つぶしにもならないから手を出さないだけ。
ただし、手を出してきた相手には容赦はしない。
それは高校生だろうが中学生だろうが片桐家には関係ない。
遊達も加わって一方的な虐待が始まった。
全員叩きのめすのに15分もかからなかった。
完全にBBの連中は戦意喪失してる。
だからといって「ごめんなさい」で済むレベルではない。
「俺達はお前らを皆殺しにすると言ったはずだ!」
倒れているメンバーにさらに暴行を加える純也達。
一方和志は微動たりともしない。
正確に言うと震えていた。
そりゃ完全にキレている刀を持った男を目の前にしていたら無理も無いよ。
「す、すいませんでした」
そう言って土下座をする和志。
それで許してもらえるとまだ勘違いしている様だ。
空は和志を思いっきり蹴飛ばす
「おふざけもたいがいにしろよ?このくらいで謝るんだったら調子に乗ってちょっかい出してくるな!」
空の暴行は止まらない。
BBの仲間は全員純也達の餌になっていた。
SHも今の空を止める手段なんて持ってない。
ある程度ボコボコにけりつけると和志を持ち上げる。
「少しは役に立ってくれたら放っておこうと思ったけど、調子に乗り過ぎたな。死ね」
空は意識があるかどうかわからない和志に向けて刀を突きさそうとしていた。
ようやく天音が空を止める。
「あ、後は私達に任せて空はもう帰れ」
刀で刺し殺したなんていったらもみ消し様が無くなる。
今の段階でもみ消せると思ってるのが天音の凄い所だけどね。
「空、打ち合わせ通りにやろう。準備は出来てるから」
大地達も加わって必死に空を説得する。
「そこまでです」
そう言ってやって来たのは美希だった。
美希は空に近づくと頭をポカッと叩く。
「愛莉さんから注意するように言われたから来てみたけど。あまり皆に心配をかけないでくださいな」
空は落ち着いたようだ。
和志を投げ捨てると「あとは任せる」と大地に言う。
「後始末は俺達がやっておくから取りあえず光太は光聖達を連れて帰って麗華を安心させてやれ」
「空も後始末は僕達に任せて」
学と大地が言うと光太は2人を連れて帰っていった。
空も美希と一緒に帰って行った。
助かったと安堵してるBBと和志。
「勘違いしないでくださいね」
大地が冷淡に告げる。
ほぼ同時に輸送車から兵隊が出て来て連中を積む。
今度はどこの国に派兵する気だい?
「どっちみちFGの標的だし長生きできないでしょ」
むしろ助けたやったと思って欲しい。
大地がけろっという。
彼等の人生は面白くないからという理由で終わりを告げたようだ。
ちなみに和志の家も悲惨な運命を遂げたらしい。
自分の息子が絶対に怒らせてはいけない人間を怒らせた結末だね。
(4)
ガチャッ
ドアが開く音がした。
光太が帰って来た?
私はすぐに玄関に向かう。
「ままぁ~」
光聖と玲衣が私に抱きついてきた。
私も座り込んで2人を抱く。
「大丈夫?何もされなかった?」
「うん。パパが助けてくれたの」
私は光太の顔を見る。
「ごめんね、僕が少し甘い所があったみたいだ。と、空からの伝言」
「2人が無事ならそれでいいよ」
夕飯食べるんでしょ?
用意してあるから、温めてるうちにお風呂行ってきなよ。
光太は風呂に入った。
私はおかずを温めなおす。
光太が風呂から出ると皆で夕食にした。
その後光聖たちがお風呂に入ってパジャマに着替えて寝かしつける。
色々あって疲れたんだろう。
すぐに寝息を立てていた。
それを見てから光聖たちの部屋を出ると光太が立っていた。
「どう?」
「疲れてたみたい。すぐに寝たよ」
それより……
ぽかっ
「美希から聞いたよ。また暴れたんでしょ」
あまり無理をしないで。
「そりゃ子供を誘拐した奴をただで帰すわけにはいかないだろ」
「心配しなくても帰る場所はないみたい」
恵美さん達が後始末したらしい。
これでもうSHの名を騙って馬鹿な真似をする奴はいないと思った。
しかしその強さゆえに生まれる歪みはどうしようもない。
今度は違う方法を模索するしかない。
BBは多分解散するんじゃないか?
和志は海外旅行にでたし、二度と帰ってこないだろう。
しかし愚か者ほど群れを作る。
同じような組織が現れるかもしれない。
だから力が必要なんだろう。
私達を敵に回したら割に合わないと思わせる必要がある。
だけどその力を利用しようとする馬鹿が現れる。
その先に答えがあるのかどうかは今は分からない。
ただ今私達に与えてくれた宝物を守る為ならどんなことだって躊躇わない。
光太とそんな事を話しながら私達も眠りについた。
「あれ?」
「どうしたの麗華?」
私は何かを探しているように見える麗華に声をかけた。
麗華の顔を見るとなんか青ざめている。
「なんかあったのか?」
「翼、光聖たち見てない?」
「え?」
さっきまでそこで遊んでいたじゃない?
そう思ったけどどこにも姿が見えない。
一面芝生で遊具が少しあるくらいで隠れる場所なんてない。
なのに二人の姿が見えない。
……まさか!?
麗華が狼狽えて2人の名前を呼んでいる。
「麗華落ち着いて!私と美希で探すから麗華はここで待ってて」
麗華が探してる間に光聖たちが戻ってくることもあるかもしれない。
探す必要もなかった。
光聖たちには万が一の為に連絡先を持たせておいたらしい。
そして麗華のスマホが鳴る。
麗華はすぐに電話に出て話をしていた。
そしてお決まりのセリフ。
「光聖たちの声を聞かせて!」
やっぱり確定の様だ。
今のうちに私も茜と連絡を取る。
麗華のスマホの発信先を特定させるため。
その後すぐに電話が終る。
麗華は絶望的な表情でその場に膝を崩す。
「麗華!しっかり!今みんなで探してるから!」
麗華の落胆ぶりに私は思わず声をかけた。
それで自分を取り戻した麗華は一言言った。
「……2人が誘拐された」
やっぱりか。
電話で話してる麗華の表情を見て何となく察した。
「まずは警察だね」
「警察には言うな。言ったら二人の命はないって……」
麗華はかなり気が動転している。
一人にさせる事は出来ない。
私は愛莉に連絡しながら美希に麗華を送ってもらうようにお願いした。
今の麗華に一人で帰らせるなんて出来ない。
実家に帰ると愛莉がすぐに玄関にくる。
「茜から話は聞きました。麗華は?」
「結構動揺してるみたい。美希に送ってもらった」
ふざけた真似をしてくれるじゃない。
私は晶さんと連絡しながら茜の部屋に行った。
「茜!特定できた?」
「居場所は分かった。この近くの山の中の施設」
そんな施設を利用できる人間なんて限られてる。
その施設の所有者は白鳥グループだった。
そこまで調べていた芋づる式に犯人が割りだせる。
SHの脱退組のスマホがいくつかその場所にあるそうだ。
間違いないだろう。
犯人は白鳥和志。
「ふざけた連中ね。そんなに首を吊りたいなら望みを叶えてあげようじゃない」
晶さんが言っている。
「首吊るくらいで済ませられるか!粉々にして海にばらまいてやる!」
グルチャを見ていた天音達もかなり怒っているようだ
「私達である程度調べる」
茜が言うと私は茜達の部屋を出て、リビングに行く。
恵美さんや晶さんと相談した。
「翼、あなたも今は無理しないであとは私達に任せなさい」
「晶の言う通りよ。心配しないで、警察に知らせるなんて馬鹿な真似しないから」
晶さんと恵美さんが言う。
多分犯人の言いなりになるわけではない。
警察の生温い処分じゃ済まさないという意味だろう。
愛莉も言う。
「きっと善明も翼の心配してる。自分の体調を考えなさい」
「……分かった。とりあえず私帰る。何かあったら連絡する」
そう言って私は家に帰った。
私はまだ産まれてないけど麗華の気持ちはなんとなく分かる。
子供を連れ去られた時の母親の絶望感がどんなものか馬鹿共に教えてやらないと気が済まない。
家に帰って夕食の準備をしていると善明が帰って来た。
善明は真っ先に聞いた。
「麗華どうだった?」
「かなり動揺してる」
「……この件は僕達に任せて翼は無理しないでおくれ」
善明がそう言って私の肩を抱く。
ただで済むと思うな。
しかし、私や天音よりも絶対に怒らせてはいけない人間の逆鱗に触れた事を和志は知らないようだった。
(2)
「空、ちょっと来なさい」
父さん……社長から呼び出された。
そんなミスはしてないはずだけど、何か問題あったかな?
「失礼します」
そう言って社長室に入ると険しい顔の社長がいた。
客先とトラブルがあったか?
「今は2人だけ。父親として言わせてもらう。すぐに帰りなさい」
「え、でもまだ今日回らないといけない担当が……」
「それは父さんから話をしておくから。ちょっと厄介なことになった」
え?
「何かあったの?」
「帰れば分かるよ」
帰るまでも無かったようだ。
僕のスマホが鳴る。
「出てもいいよ。ただしスピーカーにしてくれないかな?」
父さんは相手が誰か知っているのだろうか?
画面を見ると相手の名前はない。
誰だろう?
「もしもし」
「娘は預かった」
は?
「どういう意味?」
「そのままだよ。君、案外頭悪そうだね」
僕の頭が悪いのか?
僕の子供はまだ生まれてもないし男の子の予定だぞ?
「お前誰?」
「白鳥和志。SHの新しい王だよ」
「言ってる意味がさっぱりわからないんだけど」
「等価交換だよ」
は?
「君がSHの王の座を僕に渡せば娘は返してあげる。受け入れないなら……」
「お前何をした?」
すると電話から「パパー!」って小さな子供たちの声がした。
「どうする?」
冷静になれ。
判断をしくじったらこの子達が危険だ。
どう出る?
どう答えようか悩んでいると父さんが「変わって」と笑顔で言った。
僕は父さんにスマホを渡す。
「もしもし」
「あんた誰?」
「空の父親だよ」
「関係ない奴は引っ込んでてくれないか?孫がどうなってもいいのか?」
「お前馬鹿だろ?」
「なんだと?」
父さんが相手をを挑発してる。
「人質は無事だから価値があるんだ。それにその子は空の子供じゃない」
まだ産まれてもないのにどうやって攫うんだ?
「孫じゃなかったらどうでもいいっていうの?案外薄情なんだね」
「だから言ってるだろ。人質は無事だから価値があると」
その子達に何かしたら全力で潰してやると父さんが警告する。
「あんたの方が頭悪いんじゃないの?俺達の言う通りに従わないと……」
「だから馬鹿だって言ったんだよ。お前はミスをしたんだ。誘拐なんて卑劣な真似をする奴をまともに相手する甘い集団じゃないはずだぞ」
どのみち和志たちをただで済ますわけにはいかない。
死んでいくか遠方に海外旅行に行くかの選択肢くらいしかないぞ、と父さんは言う。
仮にSHが動かなくても父さん達の渡辺班が動く理由にはなった。
もうお前には破滅の道しかない。
父さんはそう警告する。
「孫娘の命はそんなに軽いの?」
「少しは自分で考えろ。その軽い命に手出ししたらお前の命なんてないも同然だぞ」
「……取引は公園でする。息子さんと慎重に相談しろ」
「相談するまでもないよ。この程度のミスも気づけないお前にまともな取引が出来るはずが無いと思うけど」
電話は切れた。
「愛莉から話は聞いてたんだ。栗林さんの子供が誘拐されたらしい」
光太の子供か。
「ああは言ったけど空、これはお前の油断が招いたミスだ」
相手の苦し紛れの一手を読めなかった僕のミスだと父さんは指摘する。
「自分のしでかした不始末くらい自分でなんとかしなさい」
「うん、それより一つ頼みがあるんだけど」
「僕達は手を出すな。そう言いたいんだろ?」
もともとこの程度の事は僕達で何とかなると考えていたらしい。
ただし子供たちに何かあったら父さん達は容赦なく動くと警告された。
それからすぐに家に帰る。
美希が玄関に走って来た。
「旦那様。どうしましょう」
「落ち着いて。和志とは話をした。取引場所も時刻も決めた。後は任せて」
美希も一緒に行きたいだろうけどお腹の赤ちゃんに何かあったら大変だ。
「お願い、あの子達を」
「分かってる。必ず助け出すから」
スマホが鳴る。
SHのグループチャットだ。
「空、どうする?」
「そんなの決まってるだろ?」
「どういう意味だ?」
「取引まで時間がある。近くのファミレスに集まろう」
そう言うと僕は「夕食は帰ってちゃんと食べるから」と美希に言う。
「ごめん……」
「大丈夫。しっかり後悔させてやるから」
そう言って家を出る。
ファミレスには光太達がいた。
天音達は先に公園に向かったみたいだ。
善明と大地に天音の制御を任せている。
そして善明と大地には別の指示を出していた。
「容赦する必要はないって事ですね」
大地がそう言っていた。
「向こうは本気でやってるのかどうか知らないけど後悔させる必要はあるからね」
後悔させただけで済ませるつもりはないけど。
「光太、すまない」
「いや、それはしょうがない。まさかこんな事態になるとは思わなかったな」
「そうじゃないよ」
「え?」
僕が言うと光太が反応した。
「僕の予想が甘かった。ここまで馬鹿だとは思わなかった。俺の失態だ。……俺の手で片づける」
「空……やり過ぎるなよ」
「さあね」
光太が言うと俺はそう答えた。
(3)
やれやれ参ったね。
地元で絶対に怒らせたらいけない人間を怒らせたようだ。
子供を確保したら大人しくなるなんて思い違いをしている人間だったようだ。
そいつらは既に公園に来ている。
大地とは打合せしてる。
僕がこの場にいる時点ですでに被害は生まれているんだけどね。
ただ今回の件は翼もある程度考慮してくれた。
しかし和志の家の破滅は免れない者になったようだと翼と母さんのやり取りで理解した。
あと考えなければならないのは和志の処刑方法くらいだ。
取引時間までまだ時間はある。
少しだけ救いの手を差し出すか。
「和志といったかい?今大人しく光聖君達を返したら助かる見込みがあるかもしれないよ?」
ほんのちょっとだけね。
荼毘にされるか普通に火葬されるかの違いくらい。
「あんまり舐めた事言うと本当にこの子達殺すよ?」
そういう事を今言わない方がいいと思うんだけど。
「ざけんな!そんな真似させねーぞ!ボケナス童貞だか何だか知らねーけどてめーら全員皆殺しだ」
そう言って今にも暴れ出しそうな天音を必死に抑える大地。
「天音は暴れていい体じゃないだろ!」
「お前もふざけてるんじゃねえぞ大地!どこの木の股から生まれてきたか知らないあいつには分からないだろうから、私がしっかり教育してやる!あいつは私の獲物だ!誰にも譲らないぞ!!」
大地でも時間まで抑えるのが無理な気がする。
SHの皆もすでに我慢する必要が無いと思ってるらしい。
「ふざけた真似しやがって。お前等の寿命はここで終わりだ!」
「袋にしてぶっ殺して海に沈めてやる!」
遊と粋も今にも動き出しそうだ。
そして非情にも時間前に一番危険な人物が来てしまった。
「天音……そこをなんとか俺に譲ってくれないか?」
「空!?」
天音が振り返ると完全に怒っている空がいた。
もう和志とやらの命の炎は消える寸前だね。
そうとも知らず和志は悠長に語っている。
「やっぱり娘の命が大事かい?じゃあ、取引を始めようか?」
「……光聖と玲衣はどこだ?」
空が聞くと小さな子供が2人現れた。
酷く怯えた目で空を見ている。
「じゃ、君達から僕の条件を飲んでもらうかな?」
和志が言うと空が意外な事を言いだした。
「君たちが光聖君と玲衣ちゃんかな?ごめんね、このおバカなおじさんが二人の事を間違えたみたいだ」
空はそう言って静かに二人に近づいていく。
和志の表情が変わる。
どういうルートで手に入れたのか知らないけど、やはり彼等も拳銃を持っていた。
それを空に向けて言った。
「あんまり舐めないで欲しいんだけど。それ以上近づいたら頭吹き飛ばすよ?腰抜け」
「……命かけろよ」
「は?」
「拳銃抜いたからには命かけろよ?」
「何言ってるんだ?」
「それは脅しの道具じゃないって言ったんだ」
それが空の合図だった。
僕と大地は拳銃を持った男の眉間を目掛けて発砲する。
しっかりした実弾の中でも特に凶悪なホローポイント弾。
頭を吹き飛ばされたのは相手の方だったようだ。
頭部を失った死体を確認すると、大地は天音と水奈と紗理奈に指示を出す。
3人が陽葵と菫を確保するまで彼等から目を離さない。
近づこうとすると一発真上に撃つ。
「今のが警告。次に動いた奴から殺すよ」
大地がそう言うと誰も動かなかった。
それは脅しではないことは十分理解しているようだ
3人が光聖と玲衣を連れて来る。
「パパ~」
「あとで一緒に帰ろうな。ママが待ってるから」
「うん」
光太がそう言って二人の頭を撫でると天音達に預ける。
「ひ、卑怯だぞ!!」
和志が見苦しい言い訳をする。
しかし空達には通じない。
「卑怯?」
「甘い事言ってるんじゃねーぞ、聖者でも相手にしてるつもりか?」
「お前らの前にいるのはSHだぞ」
遊と光太と空が言う。
「舐めがやって……お前ら全員ぶっ殺してやる!」
そう言ってBBの連中が空に襲い掛かる。
すると光太と遊と粋と学が前に出る。
「俺達でやる、十分だ」
天音のライド・ギグが発動しているとはいえ大勢のBBの連中をたった4人で片付けてしまった。
「うぬぼれるなよチンピラ。俺達と一戦やりたかったら米軍くらい連れてこい」
光太がにやりと笑って言った。
「く、くそ……」
「で、お前はどうするんだ?」
「舐めてんじゃねーぞ!」
和志がナイフを持って空に突進してくる。
もう少し冷静に空を見るべきだったね。
空の持ってる道具把握してるの?
キレている時の空の速度は異常だ。
僕や大地でも目で追えない。
和志の付きだしたナイフの先からは既に空の姿はなく、半回転して延髄に一撃食らわせていた。
普通の日本刀だったら間違いなく切断されていたね。
だけどこれは恋愛小説。……のつもりでいるらしい。
空の持っている”紅月”は峰と刃が逆さになっている逆刃刀。
どうしてそんなものを空が持っているのかは”優等生と劣等生”を読めば分かるよ。
しかし空の強烈な一撃は和志を倒し動けなくしてあった。
まあ、普通の人なら延髄に決められたらそうなる気がするけど。
だけど空はゆっくりと倒れた和志を見て刀を向ける。
「立て……そのまま串刺しにされたいのか?」
その声に反応した和志はゆっくりと起き上がる。
空はその様子をただ見ていた。
BBの他のメンバーが逃げ出そうとしたがそれは空の想定内だった。
ちゃんと純也達を背後に配置していた。
「まさか見逃してもらえるとは思ってないよな?全員生きて帰れると思うなよ」
純也が言う。
連中は高校生組の方がやりやすいと思ったのだろうか?
純也達に向かって襲い掛かる。
分かってないようだ。
SHの本体は他のグループに絡んでも弱すぎて暇つぶしにもならないから手を出さないだけ。
ただし、手を出してきた相手には容赦はしない。
それは高校生だろうが中学生だろうが片桐家には関係ない。
遊達も加わって一方的な虐待が始まった。
全員叩きのめすのに15分もかからなかった。
完全にBBの連中は戦意喪失してる。
だからといって「ごめんなさい」で済むレベルではない。
「俺達はお前らを皆殺しにすると言ったはずだ!」
倒れているメンバーにさらに暴行を加える純也達。
一方和志は微動たりともしない。
正確に言うと震えていた。
そりゃ完全にキレている刀を持った男を目の前にしていたら無理も無いよ。
「す、すいませんでした」
そう言って土下座をする和志。
それで許してもらえるとまだ勘違いしている様だ。
空は和志を思いっきり蹴飛ばす
「おふざけもたいがいにしろよ?このくらいで謝るんだったら調子に乗ってちょっかい出してくるな!」
空の暴行は止まらない。
BBの仲間は全員純也達の餌になっていた。
SHも今の空を止める手段なんて持ってない。
ある程度ボコボコにけりつけると和志を持ち上げる。
「少しは役に立ってくれたら放っておこうと思ったけど、調子に乗り過ぎたな。死ね」
空は意識があるかどうかわからない和志に向けて刀を突きさそうとしていた。
ようやく天音が空を止める。
「あ、後は私達に任せて空はもう帰れ」
刀で刺し殺したなんていったらもみ消し様が無くなる。
今の段階でもみ消せると思ってるのが天音の凄い所だけどね。
「空、打ち合わせ通りにやろう。準備は出来てるから」
大地達も加わって必死に空を説得する。
「そこまでです」
そう言ってやって来たのは美希だった。
美希は空に近づくと頭をポカッと叩く。
「愛莉さんから注意するように言われたから来てみたけど。あまり皆に心配をかけないでくださいな」
空は落ち着いたようだ。
和志を投げ捨てると「あとは任せる」と大地に言う。
「後始末は俺達がやっておくから取りあえず光太は光聖達を連れて帰って麗華を安心させてやれ」
「空も後始末は僕達に任せて」
学と大地が言うと光太は2人を連れて帰っていった。
空も美希と一緒に帰って行った。
助かったと安堵してるBBと和志。
「勘違いしないでくださいね」
大地が冷淡に告げる。
ほぼ同時に輸送車から兵隊が出て来て連中を積む。
今度はどこの国に派兵する気だい?
「どっちみちFGの標的だし長生きできないでしょ」
むしろ助けたやったと思って欲しい。
大地がけろっという。
彼等の人生は面白くないからという理由で終わりを告げたようだ。
ちなみに和志の家も悲惨な運命を遂げたらしい。
自分の息子が絶対に怒らせてはいけない人間を怒らせた結末だね。
(4)
ガチャッ
ドアが開く音がした。
光太が帰って来た?
私はすぐに玄関に向かう。
「ままぁ~」
光聖と玲衣が私に抱きついてきた。
私も座り込んで2人を抱く。
「大丈夫?何もされなかった?」
「うん。パパが助けてくれたの」
私は光太の顔を見る。
「ごめんね、僕が少し甘い所があったみたいだ。と、空からの伝言」
「2人が無事ならそれでいいよ」
夕飯食べるんでしょ?
用意してあるから、温めてるうちにお風呂行ってきなよ。
光太は風呂に入った。
私はおかずを温めなおす。
光太が風呂から出ると皆で夕食にした。
その後光聖たちがお風呂に入ってパジャマに着替えて寝かしつける。
色々あって疲れたんだろう。
すぐに寝息を立てていた。
それを見てから光聖たちの部屋を出ると光太が立っていた。
「どう?」
「疲れてたみたい。すぐに寝たよ」
それより……
ぽかっ
「美希から聞いたよ。また暴れたんでしょ」
あまり無理をしないで。
「そりゃ子供を誘拐した奴をただで帰すわけにはいかないだろ」
「心配しなくても帰る場所はないみたい」
恵美さん達が後始末したらしい。
これでもうSHの名を騙って馬鹿な真似をする奴はいないと思った。
しかしその強さゆえに生まれる歪みはどうしようもない。
今度は違う方法を模索するしかない。
BBは多分解散するんじゃないか?
和志は海外旅行にでたし、二度と帰ってこないだろう。
しかし愚か者ほど群れを作る。
同じような組織が現れるかもしれない。
だから力が必要なんだろう。
私達を敵に回したら割に合わないと思わせる必要がある。
だけどその力を利用しようとする馬鹿が現れる。
その先に答えがあるのかどうかは今は分からない。
ただ今私達に与えてくれた宝物を守る為ならどんなことだって躊躇わない。
光太とそんな事を話しながら私達も眠りについた。
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