姉妹チート

和希

文字の大きさ
上 下
199 / 535

頂点

しおりを挟む
(1)

「なんだてめぇ?」

 様々な色の特攻服を着て喧嘩をしている連中の一人が僕に話しかけてきた。
 どうして、この手の類の輩は港や埠頭を好むのだろう?
 僕は一人でこの地に来た。
 理由は喧嘩の仲裁。
 県内の族の頭が集まってるらしい。

「私もついていこうか?」

 美希は心配だったらしい。
 もちろん僕が怪我する事じゃない。
 暴走して死人を出すんじゃないか?
 そんな心配だったらしい。

「”アレ”は置いていくよ。それに終わったらきっとお腹ペコペコだから」

 そう言って笑うと美希は「わかった」と笑顔で返した。

「あんまり遅くなっちゃだめだよ」
「分かってる」

 美希は僕達に救援を求めた浅井徹と中村加奈子を家に送るらしい。

「人の話聞いてるのか?何者だてめぇ?」

 図体は僕よりはるかにでかい。
 鍛えている様だ。
 そんな奴が僕を睨みつける。
 まずは名乗る事から始めようか。

「片桐空。SHのリーダー」

 僕が名乗ると連中は騒めく。
 一人狼狽えているのは勝次だ。

「お前の出る幕じゃない、引っ込んでろ!」

 一番体格のでかい奴が僕につかみかかろうとする。
 僕はその腕を躱して、男の顎を掴み持ち上げる。

「人の話は最後まで聞いた方がいいよ?」
「邪魔するとお前もやっちまうぞ」

 特攻服の色を見ると、多分彼が雪華団の頭の今村真琴だろう。
 僕は男を掴んだまま、真琴たちに向かって告げる。

「お前たちの目的は”誰が地元で一番強いか?”なんだろ?」
「それがお前とどう関係があるんだ?」

 真琴が聞くと、とりあえず男を放り投げて答えた。

「お前らだけで小競り合いしても決着つかないだろ?」

 永遠と闘争が続くのみ。
 だからハッキリさせてやる。

「まとめてかかってきてもいい。僕が相手になってやる」

 お前達が全力を出しても倒せない男がこうして目の前に立ってやってるんだ。
 
「なんなら僕を倒せたら、”空の王”という称号もくれてやる」

 真琴達が考えていた。
 そして最初に襲い掛かったのは真琴だった。
 木刀を僕に向かって振り下ろす。
 半身で躱すとみぞおちに膝蹴りを打ち込む。
 よろめく真琴の顔を殴り飛ばす。
 すると他のメンバーも僕に襲い掛かって来た。
 冷静に一人ずつ叩きのめす。
 一度倒れても何度も立ち上がってくる。
 その度に僕は何度でも殴り飛ばす。
 何度でも繰り返す。
 やがて全員の戦意を削いだようだ。
 座り込んで黙ってしまう。

「もう終わり?」

 僕が挑発しても完全に戦意を喪失したようだ。
 それを確認すると僕は勝次に近づく。

「お前何やってるの?」
「SHには関係ないだろ」
「ああ、SHは関係ない。だから僕一人で来た。それより僕の質問に答えろ。お前何やってるの?」
「地元で一番偉い奴を今日ハッキリさせる為に来た」
「その割には勝次は一度も僕にかかってこなかったじゃないか?」
「……お前が最強だってのは俺だって知ってるよ」
「じゃあ、この喧嘩に意味はないね?」

 勝次は何も言わなかった。

「……勝次。お前の力は何の為にある?」
「わかんねーよ」
「そうか。じゃあ、話をしてやる。僕の家に中村加奈子さんが来た」
「加奈子が?」

 勝次が僕の顔を見る。
 僕は頷いた。

「お前等がバカな事をしようとしてるのを止めて欲しいとお願いしに来たんだ」
「加奈子は関係ない。これは男の意地の問題だ」

 舐められたままでは終われないと、勝次は言う。

「そうか……じゃあ、僕が止めてあげるって言った時に加奈子さんが大粒の涙を流したのは知ってるか?」

 喧嘩を止めてやると言った時に涙した加奈子さんの事をどう思う?

「キスするタイミングに苦戦するくらい大切な彼女を泣かせるのは、お前の意地には関係ないのか?」

 よく考えろ。
 お前の力は何の為にある?

「それでもまだ納得がいかないなら、何度でも叩きのめしてやる。そんなしょぼいプライド僕がへし折ってやる」

 勝次はじっと僕を見ていた。
 他のやつらにも言う。

「君達にも大切な人いるんじゃないのか?君達に何かあった時、その人がどんな気持ちか考えた事はあるのか?」

 誰も何も答えなかった。
 全員納得したらしい。

「早く行け。直に警察が来る。見つかってからじゃ遅いから」

 後始末は僕がする。
 そう言うと皆黙ってバイクにまたがって帰っていった。

「やっぱり地元で一番強いのはSHなんだな」

 勝次がそう言って笑うと、勝次もまたバイクにまたがって帰っていった。
 僕も車に乗って家に帰る。

「おかえり~今日はハンバーグだよ」

 美希の声が聞こえてくる。
 今頃勝次たちも帰るべき場所に帰っているだろう。

(2)

 空に制圧された俺達は皆帰っていった。
 俺は帰ると車に乗り換えて加奈子の家に行く。

「あ、勝次。大丈夫?」
「ああ、お前のせいで空にこてんぱんだ」
「怪我したの?」
「俺だってFGのメンバーだ。空に喧嘩売るなんて馬鹿な真似しねーよ」
「そっか」

 加奈子は「良かった」と安心していた。
 その笑顔を守るための力……か。

「加奈子、お前今から外出しても大丈夫か?」
「今更どうこういう親じゃないよ。ちょっと待ってて」

 加奈子はそう言うと準備して外に出て来た。
 加奈子を車に乗せると走り出す。

「ねえ?どこ行くの?」
「内緒だ」

 車は別府インターで降りて山を下る。
 明礬温泉を抜けて地元必須のデートスポットに行く。

「いつ来ても綺麗だね」

 加奈子を嬉しそうに言う。
 俺は緊張していた。
 加奈子にとっては数あるかもしれない。
 だけど俺が本気で好きになったのは加奈子だけだ。
 少しだけ勇気を出せばいい。
 あとは加奈子が気づいてくれる。
 俺は決意すると加奈子の肩を抱き寄せる。
 驚いた加奈子は俺を見る。
 俺も加奈子の顔を見ていた。
 やがて少し恥ずかしそうにしているのが分かった。
 そして加奈子との初めてのキス。
 キスの後加奈子は抱き着いてきた。

「私でよかったの?」
「加奈子以外にいねーよ」
「ありがとう。……ねえ?」
「どうした?」
「今日お泊りでも構わないよ?」

 さすがに俺は動揺した。
 そんな俺を見て加奈子は笑う。

「あんまり待たせるなよ」

 今頃他の奴等も大切な人と会って、その事を確かめているのだろう。
 愛と希望をばらまくセイクリッドハート。
 あいつらは文字通り地元の頂点に辿り着いた。

(3)

「ははっ」

 夕食を済ませて風呂に入るとテレビを見ていた。
 するとスマホを見ていた美希が笑い出す。

「どうしたの?」

 美希に聞いてみた。

「スマホ見て」

 美希が言うので見てみた。
 紗奈からの報告だ。
 今日は帰ってこないと思った勝次が1人で帰って来た。
 そして勝次が紗奈に聞いたらしい。

「女性と一泊する時に必須な事ってあるか?」
「……勝次まだしてなかったの?」
「今日やっとキス出来たんだぞ」
「ゴムくらい買っときなよ」

 そしてその顛末を聞いてSHのチャットは爆笑してた。
 
「あいつあのナリでまだ未経験だったのかよ!」

 遊と粋が爆笑している。
 天音と大地は新婚旅行に行っている。
 しかしチャットを見たらしい。
 天音はベッドの上で笑い転げているそうだ。
 水奈も同じらしい。

「あいつ人を笑わせるセンスあり過ぎだろ!」

 問題はその後だ。
 勝次が言ったらしい。

「お前らSHが地元の頂点だと伝えてくれ」

 そんなものにまったく興味が無いんだけど。
 
「まあ、空の王は九州最強だからな!」

 水奈と天音が口をそろえて言う。

「あんまり空を困らせないで」

 そう言う美希も笑っているのが分かった。
 
「次は全国制覇でも狙うか?空の王」

 遊が言う。
 さすがにそこまでは考えてない。
 時間になると美希からスマホを没収される。
 ここからは私に構ってと訴えてくる。
 美希を抱えてベッドに入る。

「ねえ?空」
「どうしたの?」
「今年は色々あったね」
「そうだね」
「来年はもっと大変だよ?」

 きっと色々あるんだろうな。
 美希は僕に抱きつく。

「例え何があっても私達は一緒だよ」
「ああ、何があろうと一緒だ」

 そう言って僕達は眠りにつく。
 僕達は色んな喜怒哀楽を共にして歩いていくのだろう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

私は何人とヤれば解放されるんですか?

ヘロディア
恋愛
初恋の人を探して貴族に仕えることを選んだ主人公。しかし、彼女に与えられた仕事とは、貴族たちの夜中の相手だった…

【R-18】クリしつけ

蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。

オークションで競り落とされた巨乳エルフは少年の玩具となる。【完結】

ちゃむにい
恋愛
リリアナは奴隷商人に高く売られて、闇オークションで競りにかけられることになった。まるで踊り子のような露出の高い下着を身に着けたリリアナは手錠をされ、首輪をした。 ※ムーンライトノベルにも掲載しています。

【R18】もう一度セックスに溺れて

ちゅー
恋愛
-------------------------------------- 「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」 過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。 -------------------------------------- 結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。

【R18】散らされて

月島れいわ
恋愛
風邪を引いて寝ていた夜。 いきなり黒い袋を頭に被せられ四肢を拘束された。 抵抗する間もなく躰を開かされた鞠花。 絶望の果てに待っていたのは更なる絶望だった……

性欲の強すぎるヤクザに捕まった話

古亜
恋愛
中堅企業の普通のOL、沢木梢(さわきこずえ)はある日突然現れたチンピラ3人に、兄貴と呼ばれる人物のもとへ拉致されてしまう。 どうやら商売女と間違えられたらしく、人違いだと主張するも、兄貴とか呼ばれた男は聞く耳を持たない。 「美味しいピザをすぐデリバリーできるのに、わざわざコンビニのピザ風の惣菜パンを食べる人います?」 「たまには惣菜パンも悪くねぇ」 ……嘘でしょ。 2019/11/4 33話+2話で本編完結 2021/1/15 書籍出版されました 2021/1/22 続き頑張ります 半分くらいR18な話なので予告はしません。 強引な描写含むので苦手な方はブラウザバックしてください。だいたいタイトル通りな感じなので、少しでも思ってたのと違う、地雷と思ったら即回れ右でお願いします。 誤字脱字、文章わかりにくい等の指摘は有り難く受け取り修正しますが、思った通りじゃない生理的に無理といった内容については自衛に留め批判否定はご遠慮ください。泣きます。 当然の事ながら、この話はフィクションです。

完結【R―18】様々な情事 短編集

秋刀魚妹子
恋愛
 本作品は、過度な性的描写が有ります。 というか、性的描写しか有りません。  タイトルのお品書きにて、シチュエーションとジャンルが分かります。  好みで無いシチュエーションやジャンルを踏まないようご注意下さい。  基本的に、短編集なので登場人物やストーリーは繋がっておりません。  同じ名前、同じ容姿でも関係無い場合があります。  ※ このキャラの情事が読みたいと要望の感想を頂いた場合は、同じキャラが登場する可能性があります。  ※ 更新は不定期です。  それでは、楽しんで頂けたら幸いです。

処理中です...