姉妹チート

和希

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追悼集会

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(1)

「構いませんよね?映司さん」
「俺達はもう引退した身だ。ただ……」

 俺は友達の真島淳一の家に遊びに来ていた。
 そこに現れたのは佐島春樹。
 俺達亡くなった吉村真人は「音速の四天王」と呼ばれていた。
 真人は事故で亡くなり、俺と淳一は雪華団を解散させた。
 それを今村真琴が復活させた。
 春樹の用件はただ一つ。
 真人の追悼集会を開きたい。

「ただ、なんですか?」

 俺の代わりに淳一が答えた。

「あいつは春樹達とは違う世界の人間だ。そんな集会をしても喜ばないぞ」
「わかってます。ただの自己満足だと理解しています」

 散っていった戦友の為に何かしてやりたいと春樹は言った。
 俺達の答えは出ていた。
 選択肢なんて端から無い。
 止めたところで春樹は決行するだろう。

「勝手にしろ」

 それが俺と淳一の判断だった。

「ありがとうございます」
「気をつけろよ……」

 ただでさえ最近族が増えてる。
 春樹の行動を妨害しようとする連中だっているはずだ。
 例えば藤崎竜也率いる堕天使とか。
 堕天使と春樹の率いる美獣がぶつかれば大事だ。
 警察の介入も十分あり得る。

「わかってます……小僧共いるんだろ?出てこい」

 春樹が言うと奥に隠れているように指示していた真琴たちが出てきた。

「お前らをゲストとして招待する。もちろん来るよな?雪華団」
「当たり前だろ?」

 真琴が即答した。

「今週末の21時に7号地集合だ。遅れるなよ」

 そう言って春樹は帰っていった。
 春樹もまたあの事故以来バイクは封印していた。
 あいつなりのケジメだったんだろう。

「構いませんよね?映司さん」
「さっき言ったろ?俺達は引退してる。お前の判断で動け」

 今週末か……
 きっと血の匂いを嗅ぎつけた野獣共が襲い掛かって来るだろう。
 ただでは済まない気がする。
 しかし俺達は見守るしかなかった。

(2)

 俺達が約束通り7号地に行くと美獣の連中が群がっていた。
 人数は俺達の倍以上はいる。
 まともにやりあったら無事じゃ済まない。
 真琴が暴走しないように止めてくれ。
 それが俺と粋が映司さんから受けた頼み事だった。
 その真琴は春樹と話をしている。
 今後の行動に着いて打ち合わせをしているんだろう。
 その間雪華団のメンバーと美獣の連中はにらみ合っていた。
 何かきっかけがあれば乱闘になりそうな一触即発の状態。
 ちなみに美獣と書いて”ビースト”と読むらしい。
 よくそういう事を思いつくな。
 真琴が戻ってくる。
 そして今夜の予定を伝えた。
 産業道路から国道に抜けてそのまま別府の観光港が終着点。
 今夜は喧嘩は無し。
 とにかく暴走る。
 春樹がバイクにまたがると、皆バイクにまたがる。
”不倶戴天”と刺繍の入った紫の特攻服を着た真琴をが先頭に立つと並んで走るのは美獣の頭の佐島春樹。

「小僧共、遅れたら置いてくからな」

 そう言うと一斉に爆音を立てて走り出す。
 そのまま産業道路に出るとスピードを上げる。
 俺と粋も一緒についていく。
 何かあると思ったらやっぱりあった。
 途中で堕天使の連中と遭遇する。
 あいつらも狙っていたらしい。

「真琴!今夜は喧嘩はなしだ!」

 俺が声をかけるが届いてないようだ。

「竜也!!」

 真琴が特攻する。
 やっぱりこうなるのか。
 俺達がバイクを止めて降りると背中を思いっきり蹴られた。
 振り返ると美獣の特攻服を着たモヒカンが立っていた。

「てめぇら最初っから生意気で気に入らねーんだよ!」

 そうか、それは安心した。
 俺もお前らの態度が気にいならなかったんだ。
 仕掛けたのはそっちからだからな。
 思いっきりそいつを殴り飛ばした。

「喧嘩を売るなとは言われたが、売られた喧嘩を買うなとは言われてねぇ!」
「目障りな連中は皆殺しにしろとも言われてるんだ。てめぇら無事に帰れると思うなよ!」

 粋もやる気になったようだ。
 堕天使の連中は他の雪華団のメンバーに任せる事にした。
 俺達が堕天使と……その上にいるFGと揉めたら喜一が東京湾に沈むことになる。
 代替わりなんて俺達の知った事じゃない。
 天音はいつでも殺る気でいる。
 しかし乱闘をしていると春樹が美獣のメンバーを数人殴り飛ばした。

「てめぇら、自分が何者か俺の顔を見て言ってみろや!」
「す、すんません……」

 統率は堕天使よりもとれているようだ。
 歴史は美獣の方が長いのだから当然か。
 美獣の連中はバイクに乗ると走り出す。
 俺達も真琴を止める。

「先に春樹にゴールされたらカッコ悪くね?」

 俺が言うと真琴も落ち着いたようだ。
 俺は竜也にも声をかける。

「今夜の件は見逃してやるから失せろ」
「なんだと?」
「お前らの事情なんざ俺達は知らない。ただ、FGの連中が鬱陶しい真似したら死体が海に浮かぶ事になるぞ?」

 目に映る鬱陶しい連中は全部潰せ。
 それが天音の下した判断だと説明する。
 堕天使の連中は去っていった。
 俺達は慌てて美獣の連中を追いかける。
 次の障害は警察だった。
 バリケードを作って意地でも通さないつもりらしい。
 だが美獣の連中は意にも介さず突っ込んでいく。
 警察との乱闘になる。
 美獣は春樹一人ゴールすればいいと思ってるらしい。

「桐谷先輩と栗林先輩は真琴を援護してくれ!」

 淳二がそう言うと俺達は春樹を追いかける真琴を追いかける。
 勝負は最後まで分からないと思っていた。
 だが意外と呆気ない物だった。
 産業道路から10号線に合流する地点で春樹の乗るバイクが信号ギリギリで交差点に進入してきたトラックと接触する。
 不運と踊ったってやつだろうか?
 なんて悠長な事言ってられない。
 俺は単車を降りると粋に真琴を任せて救急車の手配をする。
 結局観光港に辿り着いたのは真琴と粋と徹だけだったらしい。
 警察に検挙されたけど責任はすべて春樹が負う事になった。

「遊!何度言えばわかってくれるの!?」
「だからちゃんと帰って来ただろ!」
「心配してる身にもなってよ!」
「ちょっとドライブしてくるつもりだったんだよ」

 実際堕天使の介入が無かったらそうだったんだから。

「無茶なスピード出してドライブとかふざけないで」
「まあまあ、なずなも少し落ち着け」

 天音がなずなを宥める。

「でも、遊もそういう事なら先に言え。そしたら集会始める前に全員ぶっ殺してやるのに」

 そうなると思ったから言わなかったんだよ。
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