姉妹チート

和希

文字の大きさ
上 下
172 / 535

狂気の果実

しおりを挟む
「あれ~由衣じゃん!」

 由衣の友達らしい。
 だけど……

「ひ、久しぶり……」

 由衣の態度がおかしい。
 まるで会いたくない人に会ってしまったような感じがした。
 今日はお祭りの日。
 あれから気まずい関係が続いていて、それを改善しようと思って誘ってみた。

「行く!!」

 二つ返事だった。
 お互い勝手に気まずい空気を作っていただけの様だった。
 実際手を繋いで出店を見て回ってた。
 由衣の友達に会うまでは楽しかった。
 由衣の変化に気づいたのか気づいてないのか、由衣の友達は話を進める。

「隣の男の子って由衣の彼氏?」
「ち、違います!」

 思わず否定してしまった。

「またまた~手を繋ぐくらいの仲なんでしょ?」

 由衣は手を離そうとするけど思わず掴んでしまった。
 ここで離したらせっかく祭りでいい雰囲気になったのに台無しだから。

「で、やっぱり魅惑の魔眼の関係者なの?そんなに強そうには思えないけど」
「違うよ」

 由衣が否定した。
 由衣は魅惑の魔眼の関係者なのだろうか?
 それはすぐに分かった。

「去年は大変だったけど今年はどうなの?」
「ご、ごめん。その話はまたにしてくれないかな?」

 由衣は僕に話を聞かれたくないらしい。
 その事にようやく気づいたのか気づいてないのかこれ以上話すのはまずいと思ったらしい。

「じゃ、創世神の連中には気を付けてね。総長さん」

 え?
 思わず由衣の顔を見る。
 目線が落ちていた。
 聞かれたくない事を聞かれたと思ったのだろうか?
 僕が創世神のリーダーだから?
 それとも総長っていうのは……。

「私達も行こっか」

 由衣がそう言うので僕達は再び祭りを見て回った。
 しかし、一度抱いてしまった疑問は解決されるまでしこりが残る。
 家に帰るまで笑ってはいるものの口数が明らかに減っていた。
 家に帰るとお互い風呂に入って部屋に戻る。
 だけど戻ろうとする由衣を呼び止めていた。

「どうしたの?」
「さっきの件、片付けて置きたくて」

 でないとまた気まずい二人になってしまう。

「な、なんでもないよ」

 でも由衣の態度はそうは見えない。

「僕が創世神のリーダーになった事、あのリストバンドを受け取った事、翔和さんに会った時の態度……何でもないとは思えない」
「そ、それは……」
「今までみたいな気まずい中で一緒に過ごすのは嫌だ。この際ハッキリさせたい」

 僕がそう言うと由衣は座った。

「……今から話すことは内緒にしておいてほしい」
「そういう話なんだね?」

 僕が言うと由衣は頷いた。
 そしてある人物の名前を言った。

「武内利花」

 誰だろう……武内?

「武内翔和の妻。……そして私の姉」

 え?
 驚いた。
 そんな関係だったのか?
 でも、血は繋がってないらしい。
 孤児だった由衣を利花さんが引き取ったらしい。
 でもそれならなぜ創世神を敵視しているのだろうか?

「それは私が創世神と敵対する組織、魅惑の魔眼の総長だから」

 やっぱりそうだったのか。
 信じたくなかったけど。
 でも姉の所属するグループと敵対っておかしくないか?

「創世神はもともとは魅惑の魔眼のメンバーだったの。それがある事件が起きて分裂した」

 理由はイーリス。
 魅惑の魔眼はイーリスを守護するために結成された組織。
 しかし、武内翔和の真の狙いに気付いた魅惑の魔眼のメンバー・宮田キリクが造反。
 武内翔和の一派は魅惑の魔眼を抜け創世神を結成した。
 と、言う事は……

「由衣はイーリスの正体を知ってる?」
「……知らない」

 知っていたとしても言えないものなのだろう。
 そんなに重要な事なのだろうか?
 あんまり問い詰めるのも悪いと思ったので止めておいた。
 話題を変えよう。

「どうしてその事を黙っていたの?」

 SHに知らせれば手掛かりになる。

「お願い!SHにも言わないで。あれは人が手にしていい物じゃない」

 誰かが手に入れたら、待ってるのは血塗れた抗争。
 だから誰もが手に届かない場所に置いておく必要がある。
 そういうものこそSHの手の中に入れておくべきものじゃないのか?

「私はまだSHを本当に信用していいのかわからない。キリクもまだ早いと判断してる」
「キリクって人はどんな人なの?」
「……私の姉の夫」

 今の魅惑の魔眼のブレイン。
 武内翔和の暴走を止めた本人。
 正体が分からないけどイーリスとは誰もが夢見るような宝物じゃない。
 少なくとも地元の闇を支配する狂気の果実。
 誰かが手に入れたら必ず抗争が起きる。
 それを守るのが魅惑の魔眼の役目。

「……分かった」
「じゃ、創世神を抜けてくれる?」
「その逆だよ」
「え?」
「僕がリーダーなら少なくともイーリスを狙おうとするのを止める事が出来るかもしれないし、少なくとも創世神の行動を把握できる」
「……私達に協力してくれるって事?」

 由衣が言うと僕は頷いた。
 少なくとも由衣の理解者ではありたいと思った。

「……ありがとう」

 由衣は僕を抱きしめる。

「その代わり時期が来たら僕達にも教えて欲しい。イーリスというものの在処を」
「……わかった。キリクと相談する」

 そう言って由衣は何やら考え出した。

「これは魅惑の魔眼の総長の判断と受け取って欲しい。もちろん景太郎も創世神のリーダーとして」
「……わかった」
「いつにするかは私がキリクと相談して決める。トロパイオンに景太郎を招待したい」
「トロパイオン?」
「私達のアジト……イーリスが鎮座する場所」

 イーリスを隠している魅惑の魔眼のアジトだと言う。

「分かった。その話受けるよ」
「ありがとう」

 もちろんSHには教えなかった。
 僕と由衣だけの密約。
 この騒乱の真実に近づける。
 そう舞い上がっていた僕は自分がまだ神の手の中で踊っているに過ぎない事に気付かなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

私は何人とヤれば解放されるんですか?

ヘロディア
恋愛
初恋の人を探して貴族に仕えることを選んだ主人公。しかし、彼女に与えられた仕事とは、貴族たちの夜中の相手だった…

【R-18】クリしつけ

蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。

オークションで競り落とされた巨乳エルフは少年の玩具となる。【完結】

ちゃむにい
恋愛
リリアナは奴隷商人に高く売られて、闇オークションで競りにかけられることになった。まるで踊り子のような露出の高い下着を身に着けたリリアナは手錠をされ、首輪をした。 ※ムーンライトノベルにも掲載しています。

【R18】もう一度セックスに溺れて

ちゅー
恋愛
-------------------------------------- 「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」 過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。 -------------------------------------- 結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。

【R18】散らされて

月島れいわ
恋愛
風邪を引いて寝ていた夜。 いきなり黒い袋を頭に被せられ四肢を拘束された。 抵抗する間もなく躰を開かされた鞠花。 絶望の果てに待っていたのは更なる絶望だった……

性欲の強すぎるヤクザに捕まった話

古亜
恋愛
中堅企業の普通のOL、沢木梢(さわきこずえ)はある日突然現れたチンピラ3人に、兄貴と呼ばれる人物のもとへ拉致されてしまう。 どうやら商売女と間違えられたらしく、人違いだと主張するも、兄貴とか呼ばれた男は聞く耳を持たない。 「美味しいピザをすぐデリバリーできるのに、わざわざコンビニのピザ風の惣菜パンを食べる人います?」 「たまには惣菜パンも悪くねぇ」 ……嘘でしょ。 2019/11/4 33話+2話で本編完結 2021/1/15 書籍出版されました 2021/1/22 続き頑張ります 半分くらいR18な話なので予告はしません。 強引な描写含むので苦手な方はブラウザバックしてください。だいたいタイトル通りな感じなので、少しでも思ってたのと違う、地雷と思ったら即回れ右でお願いします。 誤字脱字、文章わかりにくい等の指摘は有り難く受け取り修正しますが、思った通りじゃない生理的に無理といった内容については自衛に留め批判否定はご遠慮ください。泣きます。 当然の事ながら、この話はフィクションです。

完結【R―18】様々な情事 短編集

秋刀魚妹子
恋愛
 本作品は、過度な性的描写が有ります。 というか、性的描写しか有りません。  タイトルのお品書きにて、シチュエーションとジャンルが分かります。  好みで無いシチュエーションやジャンルを踏まないようご注意下さい。  基本的に、短編集なので登場人物やストーリーは繋がっておりません。  同じ名前、同じ容姿でも関係無い場合があります。  ※ このキャラの情事が読みたいと要望の感想を頂いた場合は、同じキャラが登場する可能性があります。  ※ 更新は不定期です。  それでは、楽しんで頂けたら幸いです。

処理中です...