姉妹チート

和希

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永遠は君の中

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(1)

「それじゃ、ありがとうございました」

 そう言って引越し業者が帰って行く。
 昼ご飯は買ってきた弁当を食べた。
 弁当を食べると早速荷ほどきを始める。
 凄い優良物件だった。
 3LDKで寝室の広さもお風呂の広さも申し分ない。
 カウンターキッチンで美希が炊事してる間も話が出来る。
 あ、もちろん手伝うって言ったよ。

「空はこういうの苦手って翼から私にさせて」

 そう言われた。
 洋室にはクローゼットもついている。
 クイーンサイズのベッドを置いても十分な広さがある。
 それで家賃も手頃な値段だ。
 こんな物件他にあるわけがない。
 漫画とかは実家に置いてきた。
 その代わりゲームは持って来た。
 多分そんなにさせてもらえる時間無いだろうけど。
 寝室の荷ほどきを終わらせるとキッチンとリビングの分を始める。
 日が暮れる頃美希が言った。

「夕食するついでに買い物行かない?」
「分かった」

 そう言って美希と買い物に行って夕食を食べて家に帰る。
 とりあえず風呂に入って美希が髪を乾かしてる間も1人リビングで作業を続ける。
 髪を乾かし終えた美希がリビングに来る。

「あまり夜にやると近所迷惑かもしれないよ」
「それもそうだね」
 
 作業を止めてソファに座るとテレビを見る。
 どうせゲームはさせてもらえないだろうから。
 だけど美希の要望は違ったようだ。

「寝室の方が落ち着くから寝室に行かない?」

 父さんが「寝室にもテレビ用意しておいた方がいいよ」って言ってたのはそういうことか。
 美希と寝室に行くとテレビを見る。
 一つ屋根の下で美希と二人っきり。
 周りに気を使う必要もない。
 美希は僕に甘えてくる。

「今日から二人っきりで生活だね」
「そうだね」
「よろしくね」
「うん」

 その日遅くまで起きていた。
 朝起きると美希はまだ眠っていた。
 とても穏やかな寝顔。
 起こすの悪いと思ったので一人でキッチンに向かう。
 トースターくらいは買っておいたのでそれをトースターに入れて焼きながらコーヒーを入れる。
 テレビを見ながらリビングでくつろいでると美希が部屋から飛び出て来た。
 僕を見ると抱きついてくる。

「夢だったのかと思った」
「そんなわけないだろ」

 美希の分もトーストとコーヒーを用意してやる。
 朝食を済ませると昨日残しておいた荷物を片付ける。
 やる事は沢山ある。
 大学入学の準備だってしないといけないし、卒業旅行も計画してある。
 午前中で荷物を片付けると午後から買い物。
 入学に必要なものを買っていく。
 スーツやカバンや私服や文房具、ノートパソコンも買わないといけない。
 ただノートパソコンは最低限度のスペックがあればいいみたいだ。
 GPUなんかは搭載する必要がない。
 そんなに高い物を買う必要がないので助かった。
 この時期だからスーツも安いのが売っていた、私服も売っているので一緒に買った。
 支払いは全てクレジットカードで。
 ちょっと大人になった気がした。
 帰りにスーパーで食材を買って帰る。
 初めてだから色々必要だった。
 当然米はいるし油や調味料だってない。
 全部買い終わると家に帰る。
 美希が調理してる間にノートパソコンのセットアップをしておく。
 セットアップをしてる間に美希が夕飯の支度を終える。 
 そして初めての2人での家での夕食。

「お口にあうかな?」
「大丈夫だよ」
「そっか、よかった」

 食事を終えると片づけくらいは手伝うよと言う。
 美希は少し考えてる。

「空、お風呂入ったら少し話があるんだけど」
「いいけど」
「とりあえず片づけは私がやるから空はテレビでも見ててよ」

 風呂に入ると寝室に行く。
 そっちの方が落ち着くんだそうだ。
 美希が髪の毛を乾かし終えると僕の向かいに座る。

「空は大学卒業したら私と一緒にいてくれるんだよね?」
「そのつもりだけど?」

 今さらどうしたんだ。

「愛莉さんは冬夜さんと同棲時代家事は一人で引き受けたそうなの。私もそうあるべきだと思う」
「……学生時代に父さん達は同棲なんてしてないよ」

 だったら家事を分担するべきなんじゃないのか?

「愛莉さんの気持ちよくわかるの。冬夜さんも同じように家事を手伝おうとしてくれたそうだから。病気で倒れたときは看病もしてくれたって」

 そうやって気づかってくれてるだけで嬉しい。想われてると感じてる瞬間が幸せなんだと翼は言う。
 僕は申し訳ない気持ちで一杯なんだけど。

「だからさ、空には空しかできないことをやってよ」
「それはなに?」
「冬夜さんは愛莉さんが炊事してる時ずっとダイニングにいて話を聞いてくれたそうだよ」

 一緒に居る時間を大切にしてほしい。私が休んでる時は側にいて欲しい。
 それが美希の提案だった。

「じゃあ、僕からも条件出して良い?」
「なに?」
「美希が明らかに無理してると思ったら僕は美希と交代して家事をする。そのくらいはさせて欲しい」
「そう思ってもらえるだけでも幸せだよ」
「それともう一つ」
「まだあるの?」
「僕だって18歳の健全な男子だよ。一つ屋根の下に2人っきりでいたら我慢できない事だってある」
「それがどうかしたの?」
「……僕が美希に甘えたいときは甘えさせてほしい」

 僕が言うと美希は笑い出した。

「それだと、まるで私にはそういう興味がないみたいじゃない」

 美希だって年頃の女性だと笑っている。
 ……そういうことか。

「なるほどね」
「偶に心配してたんだよね。荷解きしてた時にひょっとしたらと思ったけど、エッチなDVDとか全く持ってないし」

 ストレス溜めてるのかそれとも私にまったく興味がないのかどっちかと悩んでいたそうだ。
 そんな美希にかけてやる言葉なんて悩むほどない。

「僕が美希に興味ないなんてあり得ない。ちゃんと美希の下着が大人っぽくなってるのも体つきが大人びてきているのも把握してるよ」

 僕がそう言うと美希が抱き着いてきた。
 それをしっかりと受け止める。

「ちょっと早いけどそろそろ寝ようか?」
「もう寝ちゃうの?」
「ベッドに入ろう?って意味で言ったんだけど」
「わかった」

 ベッドに入ると明かりを消す。
 そんな感じで僕と美希の同棲生活が始まった。

(2)

「いやあ、悪い悪い」

 駅に最後にやって来たのは光太と麗華だった。

「駅に一番近い所に住んでる光太たちがどうして一番最後になるんだ?」

 学が質問していた。

「駅からは近いけど交通手段が車使えないとなると皆無なんだよ。バスもそんなに走ってるわけじゃないし」

 光太は徒歩で来たらしい。
 原因はまああった。
 3月の沖縄。
 気温が分からないから麗華が服装に悩んでたらしい。

「とりあえず、Tシャツの上に何か羽織っておけばいいんじゃね?」
「Tシャツとか衣装ケースにしまったばかりだよ」

 で、遅れたそうだ。

「まあ、学のいう事もわかるけどそろそろ電車出ちゃうんじゃないかい?」

 善明が言うと「それもそうだな」と電車に乗り込む。
 行先は博多。
 博多からタクシーで福岡空港に行ってそこから那覇空港まで飛行機で行く。
 その後昼ご飯食べて国際通りを散策してホテルに泊まる。
 それが1日目の日程。
 移動中も色々話をする。
 地元大学組は色々準備をしているそうだ。
 県外組も大きな荷物は配送した。
 旅行が終ったらすぐに発つと言っている。
 学は水奈の家庭教師をやってるらしい。
 よく入学出来たなと思うくらいやばいそうだ。
 高校生になって遊んでばかりで全く勉強をしていなかった。
 テスト勉強と言うものをやったことがないという。

「いくら私立大学でも白紙じゃ受からんぞ」

 そういってため息をついてまずは中学の基礎から教えることにした。
 そんな状態で進級できたのが奇跡だなと思った。
 学自身は一人暮らしどうなんだ?

「他の皆と変わらんよ」

 休みの日は水奈を泊めている。
 SH組は大体が1人暮らしか同棲を始めたそうだ。
 光太はさっそく麗華から苦情が出ていた。
 休みの日くらい掃除をしろというのに部屋でごろごろテレビを見ていると麗華が言う。
 麗華が「邪魔だから寝室に行ってろ」というほどだ。
 僕も寝室から出る事を許されない。
 掃除の間はベッドの上にいろと言われる。
 那覇に着くとホテルに荷物を預けて国際通りに向かう。
 沖縄そばを食べると女子の買い物に付き合う。
 女子が買い物に夢中になってる間に光太が何か言う。

「今夜予定空けとけよ。女子には内緒だからな」

 何があるんだろう?
 買い物が済むとホテルにチェックインして皆で夕食を食べて部屋で寛ぐ。
 シャワーを翼と一緒に浴びると僕のスマホが点滅している。
 メッセージを見る。

「美希には内緒で抜け出してこい」

 無理だよ。美希は隣で見てるよ。
 その事を教えようとすると美希がそれを止めた。

「どこに行くの?」

 美希が僕のスマホを操作している。
 光太は画像を送って来た。
 いや、それはまずいだろ。
 美希は自分のスマホにそれを転送して他の女子に教える。

「あ!そういえばあいつ部屋出て行って戻ってこない!」

 僕は何も悪い事をしていない。
 そんな僕を見て翼は言う。

「空も行きたかったの?」

 はいと言えるサムライを見てみたい。
 ちなみに僕には無理だった。
 ただ首を振る。

「ちょっとロビーで待ってて」

 美希が僕のスマホを操作する。

「急げよ。女子に気付かれる」

 もう手遅れだよ。

「じゃ、いこっか」

 女子は全員ロビーに行って浮かれている男子をこっぴどく叱っていた。
 善明は目的を確認するのを忘れていたらしい。
 翼に必死に弁解している。
 学は部屋を出ようとしたときに水奈に捕まったそうだ。

「どこに行く気だ?」
「いや、ちょっと野暮用だ」
「彼女を残して一人でお楽しみか?」
「いや、光太達も一緒だが。何で知ってるんだ?」

 水奈は学に美希のメッセージを見せる。
 一日目の夜からよくやるよ全く……。

「空から目を離せないね」

 美希はそう言って笑っていた。

(4)

 あ、やばい。

「皆先行ってて」
「どうしたんだ天音?」
「上履きのままきちまった」

 皆の笑い声を背に昇降口に戻る。
 笑いながら歩いているグループに出会った。
 別に「笑い声がムカつく」とかそんなしょうもない理由で喧嘩を売ったりはしない。
 ただなんとなく違和感を感じただけ。
 何かやった後だ。
 でもそれが何なのかは分からない。
 別に気にすることないだろう。
 もうすぐ終業式だ。
 ついでに教室にある使わないもん持って帰るか。
 そう思って教室に戻る。
 違和感の正体があった。
 この席は確か沢木知里の席だ。
 荷物が置きっぱなしになってる。
 さっきのグループのメンバーだ。
 あんまり仲良さそうって感じじゃなかったけど。
 だけどあまり気に留めなった。
 それが致命的な判断ミスだった。
 その日は普通に遊んで帰った。
 翌日学校に来る。
 知里の荷物は置いたまま。
 1ミリたりとて動いていない。

「今日は沢木は休みか?」

 担任の朝倉が言う。

「そうで~す」

 グループの一人が言った。
 他の奴等もクスクス笑ってる。
 HRが終るとそいつらの所に向かった。

「お前ら沢木に何した?」
「天音には関係ない」
「それは私が判断する。今すぐ答えろ。それともこの場で強制ストリップショーするか?」
「変な言いがかりやめてよね!私達が何かしたって理由があるの?」
「理由はないけど、お前らぶん殴るのにいちいち理由はいらねーだろ」
「天音、そんな奴らほっとけよ。急がねーと1限体育だぞ」

 紗理奈が言うので私は大人しく引き下がった。
 更衣室で体育着に着替えると体育館に向かう。
 体育館に向かう途中職員室の前を通る。
 体育の教師にあった。

「ちょうどいい。片桐、適当にバスケットしておいてくれ。ボールは倉庫にある。これ倉庫の鍵」

 何か問題があったみたいだ。
 体育館に入ると倉庫の鍵を開ける。
 すると隅っこに人影があった。
 その女子は倉庫の隅っこでうずくまっていた。
 その女子は知里だった。

「知里?」

 知里は私を見ると私に抱き着いて泣き出す。
 とりあえず落ち着かせる。
 何があったのかを問いただす。

「そこで一晩過ごせ」

 グループの奴等がそう言ったらしい。
 閉じ込められた。
 スマホは鞄の中に入れていて使えない。
 両親は出張で家にいない。
 助けを呼んでももう年度末だ。
 うちの高校はそこまで部活に必死じゃない。
 放課後の体育館に用がある奴なんていなかった。
 クラスの皆は騒然とする。
 そんな時にグループの奴等は来た。

「知里、そんなところに隠れていたんだ?」

 1人がそう言う。
 知里達はかくれんぼをしていたと主張する。
 知里が見つからないので諦めて帰ったという。

「ふざけんな!てめーらの仕業って事はバレてるんだよ!」

 紗理奈がそう言って掴みかかろうとするのを抑える。

「かくれんぼって言ったな?」

 私はそいつらに確認する。

「そうだよ。閉じ込められたのは知里がドジだっただけでしょ」
「じゃあ、私達も混ぜろよ。そのかくれんぼに」
「は?」
「心配するな、お前らの隠れ場所は私がちゃんと用意してやる」

 シベリアがいいか北の国がいいか自由に選べ。
 ……でもそれも面倒だからこの地に埋めてやる。

「墓石くらい用意してやらぁ!」

 そう言って一人殴り飛ばした。
 公開処刑は体育教師が駆け付けて私達を止めるまで続いた。
 そしてまたも校長室に呼び出される。
 事件は私達が思っていたより大事になっていたらしい。
 冷静に考えたらそりゃそうだろ。
 学校に来ないので家に電話したら留守電。
 転送されて両親のスマホに着信する。
 事態を重く見た両親は警察に連絡する。
 もしかして。
 そして学校も心当たりのある場所を探そうとしていた時に騒ぎが起こった。
 警察の取り調べを受ける千里達。
 そして千里への数々の虐めが発覚した。
 結果グループの生徒は一人残らず退学を言い渡された。
 次の日奴等報復を考えてないかと不安になった私は知里の家に迎えに行く。
 知里の前には知らない男子がいた。
 防府の制服を着ている。
 知里の彼氏らしい。
 佐野優樹。
 私達も名前を名乗る。
 知里は驚いていた。

「お前ら連絡先教えろよ」

 そう言って二人をSHに招待する。

「で、なんで佐野はここに来たんだ?」

 私が佐野に聞いた。
 虐めの事は知らなかったらしい。
 そして昨日の事件がニュースになっていて驚いた。
 私達と同じように心配して様子を見に来たらそうだ。
 いい彼氏じゃねーか。

「防府ならいい加減学校行かねーとまずいだろ?後は任せろ」
「で、でも」
「心配いらないから」

 SHに手を出したら必ず事故る。

「じゃあ、あとお願いします」

 そう言って佐野は学校へ向かった。
 私達も人の事は言えない。
 バスに乗り遅れたら大変だ。
 バス停に急ぐ。

「いい彼氏じゃないか?」
「うん、昨日の件で黙ってて怒られるかと思った」
「そんな彼氏はいねーよ。ただ知里を見守ってくれてるだけだ」

 強がりも我儘も弱さも涙も、ひとつ残らず受け止めようとしてくれる。
 佐野にとって探し続けた永遠は知里の中にあるのだから。
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