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歩き出せる明日へ
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(1)
「あっ!」
それは運動会のリレーでの出来事だった。
最後の種目紅白対抗リレーで1年生の女子がこけてしまった。
中々起き上がらない。
その時誠司が叫んだ。
「諦めるな!」
女子は起き上がりバトンを誠司に渡す。
「後は任せろ!」
誠司はそう言って相手との差をみるみる詰めた。
「冬吾!あと頼む!」
誠司からバトンを受け取ると同時に地面を蹴りつける。
ロケットスタートを決めて半周もしないうちに相手を捕らえる。
そのまま抜き去ると歓声が沸いた。
そして次の走者の冬莉にバトンを渡す。
SHの小学生組の中でも各学年運動能力の高い者がリレーに参加していた。
意地でもFGには負けない!
最後は6年生の如月万理がフィニッシュを決めてリレーは勝った。
今年も優勝は白組った。
「ありがとう」
リレーでこけた1年生の渡会愛海が誠司にお礼を言った。
「お互いフォローするのがチームだろ?気にするな」
誠司はそう言って笑った、
「それにしても抜き返すと信じていたけど相変わらず冬吾のダッシュはすげーな」
「誠司も良くあそこまで差を詰めてくれたよ」
それだけじゃない。
皆が協力した結果だ。
何より渡会さんが諦めずに誠司にバトンを渡したから生まれた結果だ。
勝って気分がいいのはサッカーと同じだ。
僕達ははしゃぎながら帰った。
家に帰ると父さん達が先に帰っていた。
お爺さん達とお酒を飲んでいた。
「2人ともおかえり。今日はお寿司でいいわよね?」
母さんがそう言った。
父さんが飲んでいるんじゃしょうがない。
「いいよ」
「じゃあ、部屋で着替えてらっしゃい」
母さんが言うと僕達は部屋で体育着を脱いで服を着る。
体育着は洗濯機に入れる。
すると冬眞と茜が玄関にいた。
タイヤの汚れや油の汚れがついた作業着を着て父さんを呼んでいる。
「パパ原因がわかったよ」
茜たちの勧めでブレーキパッドやらを交換してから父さんは運転に違和感を感じたらしい。
車が微妙に真っ直ぐに進まない。
ハンドルの微調整で修正が効く程度だったけど念のために見てもらったそうだ。
「子供が勝手に弄るから!」
父さんは決してそんな事言わない。
そして整備工場に出すこともなかった。
「ちょっと見てもらえないかな?」
茜たちにその原因を探すという課題を出した。
たぶん父さんは原因を知っていたのだろうけど敢えて言わなかった。
そうやって茜たちに自分で考えるという事をさせていた。
一歩間違えたら大惨事を引き起こしかねない事を茜たちに託していた。
そして茜と冬眞は答えを探し当てた。
「アライメントが狂ってた、左前タイヤが3ミリほど外向きになってたから修正しておいたよ」
ブレーキや足回りを交換したくらいじゃアライメントは誤差程度しか生じない。
だけどアライメントは乗っていたら自然と狂ってくるもの。
たまたま時期が重なっただけだろう。と茜が回答する。
それを聞いて父さんはにこりと笑った。
「よく気が付いたね」
「最初はブレーキパッドの引きずりを疑ったんだけど違うみたいだったから」
父さんに頭を撫でられながら小さなメカニックは答えた。
「今日は運転できないから今度試運転するよ。また不具合があったら教える」
「わかった!」
「じゃあ、着替えておいで」
父さんが言うと二人は部屋に戻った。
母さんは大きな車の運転は苦手だ。
それに父さんじゃないと気づかない程度の誤差だった。
敢えて二人を試してみたそうだ。
アライメントの狂い自体は前から気になっていたらしい。
丁度いい機会だからと二人を試した。
そして二人は正解を導き出した。
皆揃うと夕食にした。
母さんが寿司を注文したらしい。
かなりの量だがこれだけ人数がいたら食べきれる。
むしろ足りないくらいだ。
夕食が終ると順番にお風呂に入る。
それぞれの部屋でそれぞれの夜を過ごす。
僕は父さんとリビングでテレビを見ている。
父さんが色々解説してくれる。
でもスマホが鳴り出すと部屋に戻る。
そして瞳子とメッセージをやり取りする。
そして時間になると「おやすみ」と言ってベッドに入る。
月曜日は振り替え休日。
僕だけが休み。
皆は学校や幼稚園がある。
初めて瞳子の家に招待された。
ケーキをご馳走になった。
夕方には帰る。
また明日から学校が始まる。
(2)
私は廊下で財布を拾った。
誰のだろうか分からない。
どうしようか悩んだ末中味を見ていた。
幸か不幸か名前入りのデビットカードが入っていた。
女子高生でデビットカードってすげーな。
名前を見た。
加沢絵理。
私のクラスの生徒だ。
教室に戻ると加沢が慌てていた。
理由は分かる。
私は加沢に近づくと財布を差し出した。
「これ廊下に落ちてたよ」
「ありがとう!マジ焦ったんだよね」
そりゃそうだろうな。
デビッドカートやらプリペイドカード等いろいろカードが入ってた。
悪用されたら一たまりもない。
現金はそんなに入ってないけど。
男子はベルトの所にチェーンをつけて落ちるのを防止する事が出来る。
最近はあまり見ないけど。
「中味見た?」
「まあな、だから名前が分かった。絵理の家金持ちなのか?」
普通はデビットカード持ってる女子高生なんていないぞ。
絵理の家は資産家らしい。
いくつものマンションを経営してるんだそうだ。
その後も色々話をしていた。
金持ちだからって特別色眼鏡をかけたりご機嫌とったりすることはない。
私もそこまで金に不自由はしてない。
デートは大体大地が金払ってるし大地もデビットカードを持ってる。
そして大地の口座にはいつでもお金が補充されている。
祈もデビットカード持ってるって言ってたっけ?
私は持ってない。
口座に金を入れてあってもすぐ引き落とすから。
愛莉は私名義の口座を作って貯蓄してあるみたいだけど。
多分私が高校卒業した時にくれるんだろうな。
私の周りには金持ちなんていくらでもいる。
だから特別羨ましいと思ったこともない。
私だって人並み以上に親の恩恵をうけているのだから。
中堅企業とはいえ一応社長令嬢なのだから。
だけど絵理はそういう風に接してくれる人は初めてだったそうだ。
大体の人が金をたかってくるという。
「だったらうちのグループに入れよ」
「いいの?」
「全然気にすることねーよ」
なんせ地元四大企業やら総合病院の子供やら地元銀行の子供やらがいるんだから。
そう言って絵理をSHに招待する。
昼休みにクラスメートに絵理を紹介する。
「すごいね」
そんなに大げさに驚く者はいなかった。
帰りに遊んでバスで帰る。
寝ている絵理に「そろそろ着くぞ」と起こしてやる。
そして定期が期限切れしていることに気付く。
ICカードも持っていたがチャージしてない。
そして千円札を持っていなかった。
私が貸してやる。
翌日返してもらえた。
絵理がスカートのポケットに財布をしまっているのを見た。
原因はそれだな。
「絵理、財布は鞄の中にしまっとけ?」
「でも鞄だと盗難に遭わない?」
「そんなデカい財布ポケットにいれて落とす方が確率たけーよ」
学校にいる間はロッカーに入れとけばいいだろ?
鍵くらいついてるだろ?
「ちょっとした買い物がしたいなら小銭入れ持っとけばいいんじゃね?」
「あ、そっか。じゃあ、今日買いに行くから天音付き合ってくれない」
「いいけど」
帰りに駅ビルに寄って絵理の小銭入れを選ぶ。
絵理が選んだのは日本のブランドの物。
高校生としてはちょうどいいくらいの値段の物。
そのついでにフードコートでご飯を食べる。
家での夕食をパスなんていうと愛莉に怒られるから控えめにしておいた。
ついでにバスセンターで定期の更新をして、キャッシュもチャージする。
用が済むと家に帰る。
「カードタッチするの忘れてるぞ」
「あ、教えてくれてありがとう」
慌て者なんだな。
帰りも色々話をしていた。
そしてバス停で降りると「またね」と言って歩き出す。
すっかり暗くなっていた。
家に帰ると愛莉が料理を温めなおしている間に着替える。
夕食を食べると風呂に入って部屋に戻る。
茜と話をしながら茜はPCを触り私はゲームをしていた。
時間になると眠りにつく。
夜と朝の狭間で揺れる思い。
明日さえも決められずに彷徨う瞳。
本当はいつだって心ごと休める場所を求め続ける。
今は布団に包まれている。
いつだって本当は探し続けている。
ただ真っ直ぐに見つめる事が怖かった。
2人でいるから明日へ歩き出せる。
どんな時でも恐れずに。
未来があるからその輝きの中へ少しずつ近づいている。
もう迷うことはないだろう。
「あっ!」
それは運動会のリレーでの出来事だった。
最後の種目紅白対抗リレーで1年生の女子がこけてしまった。
中々起き上がらない。
その時誠司が叫んだ。
「諦めるな!」
女子は起き上がりバトンを誠司に渡す。
「後は任せろ!」
誠司はそう言って相手との差をみるみる詰めた。
「冬吾!あと頼む!」
誠司からバトンを受け取ると同時に地面を蹴りつける。
ロケットスタートを決めて半周もしないうちに相手を捕らえる。
そのまま抜き去ると歓声が沸いた。
そして次の走者の冬莉にバトンを渡す。
SHの小学生組の中でも各学年運動能力の高い者がリレーに参加していた。
意地でもFGには負けない!
最後は6年生の如月万理がフィニッシュを決めてリレーは勝った。
今年も優勝は白組った。
「ありがとう」
リレーでこけた1年生の渡会愛海が誠司にお礼を言った。
「お互いフォローするのがチームだろ?気にするな」
誠司はそう言って笑った、
「それにしても抜き返すと信じていたけど相変わらず冬吾のダッシュはすげーな」
「誠司も良くあそこまで差を詰めてくれたよ」
それだけじゃない。
皆が協力した結果だ。
何より渡会さんが諦めずに誠司にバトンを渡したから生まれた結果だ。
勝って気分がいいのはサッカーと同じだ。
僕達ははしゃぎながら帰った。
家に帰ると父さん達が先に帰っていた。
お爺さん達とお酒を飲んでいた。
「2人ともおかえり。今日はお寿司でいいわよね?」
母さんがそう言った。
父さんが飲んでいるんじゃしょうがない。
「いいよ」
「じゃあ、部屋で着替えてらっしゃい」
母さんが言うと僕達は部屋で体育着を脱いで服を着る。
体育着は洗濯機に入れる。
すると冬眞と茜が玄関にいた。
タイヤの汚れや油の汚れがついた作業着を着て父さんを呼んでいる。
「パパ原因がわかったよ」
茜たちの勧めでブレーキパッドやらを交換してから父さんは運転に違和感を感じたらしい。
車が微妙に真っ直ぐに進まない。
ハンドルの微調整で修正が効く程度だったけど念のために見てもらったそうだ。
「子供が勝手に弄るから!」
父さんは決してそんな事言わない。
そして整備工場に出すこともなかった。
「ちょっと見てもらえないかな?」
茜たちにその原因を探すという課題を出した。
たぶん父さんは原因を知っていたのだろうけど敢えて言わなかった。
そうやって茜たちに自分で考えるという事をさせていた。
一歩間違えたら大惨事を引き起こしかねない事を茜たちに託していた。
そして茜と冬眞は答えを探し当てた。
「アライメントが狂ってた、左前タイヤが3ミリほど外向きになってたから修正しておいたよ」
ブレーキや足回りを交換したくらいじゃアライメントは誤差程度しか生じない。
だけどアライメントは乗っていたら自然と狂ってくるもの。
たまたま時期が重なっただけだろう。と茜が回答する。
それを聞いて父さんはにこりと笑った。
「よく気が付いたね」
「最初はブレーキパッドの引きずりを疑ったんだけど違うみたいだったから」
父さんに頭を撫でられながら小さなメカニックは答えた。
「今日は運転できないから今度試運転するよ。また不具合があったら教える」
「わかった!」
「じゃあ、着替えておいで」
父さんが言うと二人は部屋に戻った。
母さんは大きな車の運転は苦手だ。
それに父さんじゃないと気づかない程度の誤差だった。
敢えて二人を試してみたそうだ。
アライメントの狂い自体は前から気になっていたらしい。
丁度いい機会だからと二人を試した。
そして二人は正解を導き出した。
皆揃うと夕食にした。
母さんが寿司を注文したらしい。
かなりの量だがこれだけ人数がいたら食べきれる。
むしろ足りないくらいだ。
夕食が終ると順番にお風呂に入る。
それぞれの部屋でそれぞれの夜を過ごす。
僕は父さんとリビングでテレビを見ている。
父さんが色々解説してくれる。
でもスマホが鳴り出すと部屋に戻る。
そして瞳子とメッセージをやり取りする。
そして時間になると「おやすみ」と言ってベッドに入る。
月曜日は振り替え休日。
僕だけが休み。
皆は学校や幼稚園がある。
初めて瞳子の家に招待された。
ケーキをご馳走になった。
夕方には帰る。
また明日から学校が始まる。
(2)
私は廊下で財布を拾った。
誰のだろうか分からない。
どうしようか悩んだ末中味を見ていた。
幸か不幸か名前入りのデビットカードが入っていた。
女子高生でデビットカードってすげーな。
名前を見た。
加沢絵理。
私のクラスの生徒だ。
教室に戻ると加沢が慌てていた。
理由は分かる。
私は加沢に近づくと財布を差し出した。
「これ廊下に落ちてたよ」
「ありがとう!マジ焦ったんだよね」
そりゃそうだろうな。
デビッドカートやらプリペイドカード等いろいろカードが入ってた。
悪用されたら一たまりもない。
現金はそんなに入ってないけど。
男子はベルトの所にチェーンをつけて落ちるのを防止する事が出来る。
最近はあまり見ないけど。
「中味見た?」
「まあな、だから名前が分かった。絵理の家金持ちなのか?」
普通はデビットカード持ってる女子高生なんていないぞ。
絵理の家は資産家らしい。
いくつものマンションを経営してるんだそうだ。
その後も色々話をしていた。
金持ちだからって特別色眼鏡をかけたりご機嫌とったりすることはない。
私もそこまで金に不自由はしてない。
デートは大体大地が金払ってるし大地もデビットカードを持ってる。
そして大地の口座にはいつでもお金が補充されている。
祈もデビットカード持ってるって言ってたっけ?
私は持ってない。
口座に金を入れてあってもすぐ引き落とすから。
愛莉は私名義の口座を作って貯蓄してあるみたいだけど。
多分私が高校卒業した時にくれるんだろうな。
私の周りには金持ちなんていくらでもいる。
だから特別羨ましいと思ったこともない。
私だって人並み以上に親の恩恵をうけているのだから。
中堅企業とはいえ一応社長令嬢なのだから。
だけど絵理はそういう風に接してくれる人は初めてだったそうだ。
大体の人が金をたかってくるという。
「だったらうちのグループに入れよ」
「いいの?」
「全然気にすることねーよ」
なんせ地元四大企業やら総合病院の子供やら地元銀行の子供やらがいるんだから。
そう言って絵理をSHに招待する。
昼休みにクラスメートに絵理を紹介する。
「すごいね」
そんなに大げさに驚く者はいなかった。
帰りに遊んでバスで帰る。
寝ている絵理に「そろそろ着くぞ」と起こしてやる。
そして定期が期限切れしていることに気付く。
ICカードも持っていたがチャージしてない。
そして千円札を持っていなかった。
私が貸してやる。
翌日返してもらえた。
絵理がスカートのポケットに財布をしまっているのを見た。
原因はそれだな。
「絵理、財布は鞄の中にしまっとけ?」
「でも鞄だと盗難に遭わない?」
「そんなデカい財布ポケットにいれて落とす方が確率たけーよ」
学校にいる間はロッカーに入れとけばいいだろ?
鍵くらいついてるだろ?
「ちょっとした買い物がしたいなら小銭入れ持っとけばいいんじゃね?」
「あ、そっか。じゃあ、今日買いに行くから天音付き合ってくれない」
「いいけど」
帰りに駅ビルに寄って絵理の小銭入れを選ぶ。
絵理が選んだのは日本のブランドの物。
高校生としてはちょうどいいくらいの値段の物。
そのついでにフードコートでご飯を食べる。
家での夕食をパスなんていうと愛莉に怒られるから控えめにしておいた。
ついでにバスセンターで定期の更新をして、キャッシュもチャージする。
用が済むと家に帰る。
「カードタッチするの忘れてるぞ」
「あ、教えてくれてありがとう」
慌て者なんだな。
帰りも色々話をしていた。
そしてバス停で降りると「またね」と言って歩き出す。
すっかり暗くなっていた。
家に帰ると愛莉が料理を温めなおしている間に着替える。
夕食を食べると風呂に入って部屋に戻る。
茜と話をしながら茜はPCを触り私はゲームをしていた。
時間になると眠りにつく。
夜と朝の狭間で揺れる思い。
明日さえも決められずに彷徨う瞳。
本当はいつだって心ごと休める場所を求め続ける。
今は布団に包まれている。
いつだって本当は探し続けている。
ただ真っ直ぐに見つめる事が怖かった。
2人でいるから明日へ歩き出せる。
どんな時でも恐れずに。
未来があるからその輝きの中へ少しずつ近づいている。
もう迷うことはないだろう。
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