姉妹チート

和希

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ヒロイン

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(1)

 冬休みが始まった。
 今日は冬吾と冬莉の誕生日。
 私も愛莉と麻耶さんと一緒にクリスマス料理の準備をする。
 麻耶さんとはパパのお母さん。つまり私の祖母にあたる。
 空は部屋で勉強してる。
 宿題を片付けることに必死だ。
 そんなに慌てなくても今年はまだ一週間あるというのに。
 パパは冬吾達と部屋の飾りつけをしてる。
 お爺さんはテレビを見ていた。
 天音が降りて来た。
 もうそんなに緊張もしてないらしい。
 大地が迎えに来ると一緒に出掛けた。
 今日はクリスマスパーティがあるらしい。
 別に今日が特別というわけでも無い。
 毎月のようにパーティを開いている。
 だから愛莉は天音のクリスマスプレゼントは新しいパーティドレスを買ってやった。
 私にはイヤリングを、空には新作のゲームソフトだった。

「翼、そろそろりえちゃん達を呼んできてくれない?」

 愛莉がそう言うので私はエプロンを脱いで家を出る。
 りえちゃん達が住んでるのは2軒隣の家。
 りえちゃん達はケーキとシャンパンを用意してくれていた。
 家に帰って空を呼ぶと皆がダイニングに集まる。

「メリークリスマス。そして冬吾と冬莉、お誕生日おめでとう」

 パパが言うと細やかな宴の始まり。
 私と空と冬吾と冬莉はひたすら食べる。
 純也と茜はそんなに食べないらしい。
 もったいない気がするんだけど。
 でも自分が正しいと思ったことが相手を傷つけることもある。
 だから強要してはいけない。
 パパがいつも言っている事。
 料理が無くなる頃パーティは終わる。
 女性陣は片づけをしている間男性陣も飾りつけを外したりしてる。
 片づけを終えるとケーキを食べて遠坂家の人は帰って行った。
 その後私は風呂に入って部屋に戻る。
 ラジオからはクリスマスソングが流れている。
 暫くすると天音が帰ってくる。
 部屋に戻って風呂に行って戻ってくる。
 それからしばらくすると私達も寝ることにする。
 今年も後わずかとなった。
 来年の今頃は何をしているんだろう?
 受験勉強に必死になってるのかな?
 
(2)

「ふん、たかだか税理士事務所の社長の娘如きが来る場所じゃないのよ」

 目の前のおばさんはそう言った。
 私は耐えた。
 私だけならこの無礼なババアを殴り飛ばしていただろう。
 だけど恥をかくのは大地だ。
 そう言い聞かせて頭を下げると道を譲る。
 こんな例は今日に始まった事じゃない。
 江口家のパーティに招待されるようになってからよくある事だ。
 地元銀行の支店長の妻とか県議員の娘とかに良く遭遇する。
 まあ、私に無礼な真似をした人間は大人も子供も江口家の報復を受けることになる。
 地元銀行の支店長の首を変える事くらい江口家なら造作もない事だ。
 あのおばさんも悲惨な未来が待っているだろう。

「今年は大丈夫みたいだな」

 祈が来た。

「さすがに慣れたよ」

 毎月やってりゃ慣れるだろ。

「僕の大事な彼女がどうかされましたか?」

 大地のその一言でたいていの人間は黙って立ち去る。
 その一言がどれだけ嬉しい事か。

「天音、折角なんだから何か食べよう」

 大地がそう言うと適当に料理を取って食べた。
 食べ終えると私達も大地の祖父、江口家の総帥に挨拶に行く。

「片桐天音ちゃんだったかな。もう慣れたみたいだね。堂々としていたらいいんだからね。何かあっても大地が守ってくれる」
「大地君には大変お世話になってます」
「うむ」

 挨拶が済むと一息つく。
 その間にも大地は次々と挨拶を交わしていた。
 一通り済むと22時になる。
 私達は一足先に帰る。

「良かったよ。天音も大分馴染んだみたいで」
「思ったより簡単だったよ。大地に身を預けてればいいんだって考えたら気が楽になった。こう見えて大地を頼りにしてるんだぞ」
「ありがとう。天音、今日のドレスいつもと違うね。似合ってる」
「ありがとう」
「そしてこれ、僕から天音へのプレゼント」

 大地は私にクリスマスプレゼントをくれた。
 それはショールだった。

「来年は僕とドレスを買いに行こう。僕から天音にプレゼントするよ」
「わかった、大地の好みの女になってやるよ」
「それは無理だよ」
「私じゃ不満か?」
「天音はすでに僕の理想の女性だから」

 そうか……。
 車は私の家に着く。
 私は車を降りる。

「じゃあ、また」
「うん、また連絡する」

 そう言って車は走って行った。
 家に帰ると部屋に戻って着替える。
 着替えると風呂に行く
 風呂に入ると部屋に戻って大地とチャットをする。
 ほんの少ししただけで眠くなる。
 シンデレラの魔法が解ける時間。
「おやすみ」と送って私はベッドに入る。
 私は大地の好みの女性に慣れたようだ。
 大地のヒロインでいられるようだ。
 だから安心してくれ。
 私にとっても大地はヒーローだから。
 私が躓いたり転んだりしても手を差し伸べてくれる唯一の人。
 大地はもう私の隣にいる。
 だからそんなに急がないでいいぞ。
 ゆっくり歩いて行こう。

(3)

 父さんが主催するグループ「渡辺班」の忘年会。
 子供の私達も毎年呼ばれている。
 私の姉弟と梅本優子くらいしか顔なじみがいないんだけど。
 あと片桐天音とか校区外の友達が出来た。 
 片桐天音達が主催するグループ”SH”に所属している。
 天音達の校区では猛威を振るっているグループらしい。
 彼の一部は中学生になりその活動範囲を広げている。
 もっと大きなグループ”FG”があるらしいがSHには逆らえないらしい。
 そして天音達に優美たちを紹介した。
 すぐに打ち解けた。
 他にも知らない連中が沢山いた。
 天音達は構わず話しかける。
 中には別府から大在まで幅広い範囲に渡辺班というのは分布しているらしい。
 渡辺班の大人の勢力は地元では敵なしと言われている。
 それをまとめているのが父さんだと思ってた。

「実際に動かしてるのは冬夜だよ」

 父さんはそう言った。
 そしてSHを実質動かしているのは片桐天音だという。
 片桐家ってすごいんだな。
 そうやって話しているとライブが始まる。
 3時間にわたってずっと盛り上がる。
 ライブが終ると、私達子供は店を出なくちゃならない。
 父さんは明日から仕事だからだと母さんを残して帰る。
 母さんは、自営業だから休もうと思えばいつでも休める。
 それに連休明けから来るような客もそんなにいない。
 家に帰ると風呂に入って寝る。
 もう冬休みだ。
 うちの母さんはあまり「宿題くらいしろ」とか言わない。

「やりたい事があるなら決めとけ。その手伝いくらいはしてやる」

 そう言うだけだった。
 だけど私のやりたい事はまだ見つからずにいた。
 母さんの店は妹の茉里奈が継ぐつもりでいる。
 父さんを習って公務員ってのもありかもしれないが私はそんなに頭が良くない。
 恋も未来も決まらないままただ過ぎていく日々。
 誰か私を攫って欲しい、奪って欲しい。これからでもまだ間に合うから。

(4)

 一年で今日だけは夜更かしをしてもいい日。
 それが大晦日。
 私は部屋でチャットをしていた。
 もちろん、壱郎ともメッセージをしながら。

「おそば出来たわよ~」

 愛莉から呼ばれるとリビングに向かう。
 リビングでそばを食べてそして部屋に戻る。
 時計が0時0分を指すと皆が新年のあいさつをする。
 また新しい年が明けた。
 今年はどんな一年になるんだろう?
 私もそろそろ寝よう。
 皆に挨拶をしてそして眠りについた。
 朝になると起きる。
 愛莉達に挨拶をして朝ごはんを食べると遠坂のおじさんが「初詣に行こうか?」と家に来た。
 今年も春肥神社にした。
 お参りするとお守りを買う。
 家に帰ると、お年玉をもらった。
 天音たちと西寒田神社にお参りに行く。
 帰ると再びPCに向かう。
 私の机には2台のPCとタブレットが並んでいる。
 1台は去年のクリスマスプレゼントで買ってもらった奴。
 一緒にパーツショップに行って見て回って自由にパーツを買ってもらい組み立てた。
 ノートPC比べて雲泥の差のスペックのPCだ。
 そして私達の新しい年が始まった。
 そして私達にはもうじき新しいステージが用意されていた。
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