226 / 256
対策会議
しおりを挟む
片付けなければならない問題が山ほどあった。
第一は徳川家だ。既に僕は本能寺の変の真相を秀吉に知らせていた。そのとき、秀吉は悲しそうな顔をして「光秀は愚か者だ」とだけ言った。そして徳川家を何とかしなければならないと二人して決意した。
それは上様の仇を討つためであり、羽柴家による太平の世のためだった。その二つの理由から、徳川家は討たねばならなかった。加えて徳川家には野心があった。変事のどさくさに紛れて甲斐国と信濃国を奪い取った――もしかするとそれが本能寺の狙いかもしれない――ことで天下を取る狙いが見えた。もはや隠すつもりもないのだ。
第二に毛利家だった。彼らは和睦を破り羽柴家を攻め立てた。それについては元将軍の義昭さんが何らかの手を打ってくれているらしい。これは想像だが朝廷に働きかけて朝敵に認定させるのかもしれない。僕としても頼廉や山中殿の死の原因である彼らは許せなかった。
第三は四国の長宗我部家だった。四国統一を目指している彼らにとって、阿波国の織田家勢力――つまりは羽柴家の領地だ――を奪う好機は今しかなかった。しかし逆に言えば四国だけに留まってくれれば脅威になりえない。血迷って畿内に攻めてくるのであれば対処しなければならない。
というわけで、優先順位が上位の敵から述べたけど、やはり徳川家は脅威だ。羽柴家の主家である織田家の同盟国というのは味方のときは心強かったけど、敵となったら厄介というか強敵と言うべきだろう。今はまだ大丈夫だが、信雄さまと手を組まれたらと考えると頭が痛くなる。
しかし僕一人悩んでもどうしようもない。それは秀吉も同じなようで僕と官兵衛、そして正勝は摂津国の大坂に呼ばれた。なんでも石山本願寺の跡地に新しく城を築くらしい。徳川家と戦うのならもう少し東に築くはずだが、どうやら西国を中心に方針を決めるようだ。
「おう。よう参った。それでは今後の方針を決める」
大坂の武家屋敷に来たのは僕が最後らしく、小さな部屋で羽柴家の重臣は話し合うことになった。ちなみに秀長さんは姫路城で毛利家の動きを探っている。
襖を締め切って、蝋燭の明かりだけしか無い暗い部屋。そこで円を描くように、僕たち四人は座った。
「まず、信孝さまの処遇だが――雲之介、念のため言っておくが、出家させるのはなしだ」
僕の正面の上座に座る秀吉が牽制するように言ってきた。
ある程度覚悟していたけど、それでもずっしりとした重い言葉だった。
「……ああ、分かっているよ。徳川家に祭り上げられたら厄介だからね」
「でもよ。羽柴家が切腹を申し付けるわけにはいかねえだろ」
僕の左に座っている正勝は意見を述べた。確かにそれは正しい。
すると右に座っている官兵衛は「うひひひ。命じられる人に命じてもらえばいいぜ」と不気味に笑う。
「信雄さまに命じてもらえばいい。仲が悪いし馬鹿だからきっと頷くぜ」
「ではそのとおりにするか。これで徳川家との対立は決定的だな」
秀吉は眉間に皺を寄せた。本当は戦いたくないと思っているみたいだ。
「徳川家は今や武田家や今川家以上の領地を持つ大国。攻めるのも守るのも難しいぜ?」
正勝の言うとおりだ。しかも信雄さまと手を組まれたら領土的に連携できてしまう。
「徳川家の力を削ぐにはどうしたら良い?」
秀吉の優れたところは家臣に意見を求めるところ、つまり人使いが上手いところだ。
これは上様を遥かに凌駕する。
「一つは領地や兵を削るだな」
正勝が真っ先に言う。
「二つ目は領地の治安を悪くして戦どころじゃないようにする」
次に答えたのは僕だった。
「ひひひ。三つ目は調略で将を寝返らせるだな」
最後に答えたのは官兵衛だ。
三者三様、異なった答えだった。
「ふむ。理想は将を寝返らせる作戦だな。羽柴家は譜代の家臣が居らず、将の数が少ない」
「まあそうだけど……秀吉、もしかして狙っている徳川家家臣が居るのか?」
ほとんど当てずっぽうで言ったけど「おぬしの言うとおりだ」と的中してしまった。
「徳川家と交渉をしたら、確実にその者が使者として来るだろう」
「ふひひひ。誰なんだ?」
官兵衛の問いに秀吉はあっさりと答えた。
「徳川家家老、石川数正だ」
その名前に僕は驚き、正勝は顔をしかめて、官兵衛は納得した。
「そいつ、徳川家の家老だろ? しかも頑固で律儀な三河者だ。てっきり今川家か武田家の旧臣だと思ったが」
「いや。俺は分かるぜ。そいつは……裏切る」
官兵衛はにやにやしながら理由を述べた。
「嫡男の信康の死で他の家臣とわだかまりがあるらしい。特に筆頭家老の酒井忠次とは険悪になっているそうだ」
「よく知ってるな、官兵衛」
「忍びを使わなくても市井の噂は入って来るさ」
僕は「どうして石川殿が交渉に来ると思うんだ?」と秀吉に訊ねた。
「石川は徳川家の外交担当だ。酒井忠次もありえるが、信康殿の件で失敗しているからな。十中八九、石川で決まりだろう」
「使者を指名しなくてもいいのか?」
正勝がそう言うと秀吉は「それだと疑念が持たれる」と指摘した。
「徳川家康という男は些細なことでも見逃さない。こちらが石川を調略しようと企んでいるのを察知してしまうかもしれん」
「はあん。なるほどな」
「問題は調略だが、それはわしに任せろ」
自信満々に秀吉は言う。
「こういうのはわしの得意とするところだからな」
「……その前に、ちょっといいかな?」
三人が僕を見る。
正直、言いにくいことだけど……やっぱり言わないといけないな。
「嫡男の信康殿のことなんだけど」
「うん? それがどうした?」
「……実は生きているんだよね」
僕の言葉に全員が仰天した。
秀吉は猿みたいに呆けて、正勝は目を丸くして、官兵衛はあまりのことに引きつっていた。
「……偽りではないのか?」
恐る恐る秀吉が僕に聞く。
「ほら。僕は上様の指示で徳川家の様子を探るように命じられたんだよ。覚えてる?」
「ええ!? 俺覚えてねえぜ?」
官兵衛が素っ頓狂な声をあげると「そんときお前は土牢の中だった」と正勝が補足した。
「そ、そうだったのか……ふひひ、続けてくれ」
「それで、殺すのは忍びなかったから、本多さんと服部さんと正信と協力して偽首作って偽造工作した」
あっさりと白状すると秀吉が呆れながら「そんなことをしでかしたのか!」と喚いた。
「わし全然知らんぞ!」
「言ってなくてごめん。秀吉に迷惑かけたくなかったんだよ」
秀吉がなおも喚こうとしたのを遮って「そんで信康殿はどこに居るんだよ」と正勝が言った。
「雑賀衆で世良田二郎三郎という名前になって生きてるよ。今では雑賀衆で重鎮になっている」
「……兄弟は度胸がある男だと思ってたけどよ。ここまでとは思わなかったぜ」
正勝の言葉に官兵衛も頷いた。
「……雲之介。わしは怒るとか叱るとか通り越して、もはや呆れている」
「悪かったよ、秀吉」
複雑そうな笑みを浮かべた秀吉。そして「その世良田を呼ぶことはできるか?」と訊ねてきた。
「ああ。できる」
「……石川を簡単に寝返らせるかもしれんな」
秀吉は何かを思いついたようだった。
「よし。徳川家に使者を出そう。とりあえず、戦の前に調略をしよう」
「分かった」
「とりあえず、徳川家はこれで良いとして、後は毛利家と長宗我部家だな」
「毛利家は朝敵認定すれば瓦解するし、長宗我部家は雑賀衆に牽制してもらおうぜ」
その後、会議は有意義に進んだと思ったが、途中から宴会となってしまった。
ま、真剣に話せる時間なんて限られているということだろう。
第一は徳川家だ。既に僕は本能寺の変の真相を秀吉に知らせていた。そのとき、秀吉は悲しそうな顔をして「光秀は愚か者だ」とだけ言った。そして徳川家を何とかしなければならないと二人して決意した。
それは上様の仇を討つためであり、羽柴家による太平の世のためだった。その二つの理由から、徳川家は討たねばならなかった。加えて徳川家には野心があった。変事のどさくさに紛れて甲斐国と信濃国を奪い取った――もしかするとそれが本能寺の狙いかもしれない――ことで天下を取る狙いが見えた。もはや隠すつもりもないのだ。
第二に毛利家だった。彼らは和睦を破り羽柴家を攻め立てた。それについては元将軍の義昭さんが何らかの手を打ってくれているらしい。これは想像だが朝廷に働きかけて朝敵に認定させるのかもしれない。僕としても頼廉や山中殿の死の原因である彼らは許せなかった。
第三は四国の長宗我部家だった。四国統一を目指している彼らにとって、阿波国の織田家勢力――つまりは羽柴家の領地だ――を奪う好機は今しかなかった。しかし逆に言えば四国だけに留まってくれれば脅威になりえない。血迷って畿内に攻めてくるのであれば対処しなければならない。
というわけで、優先順位が上位の敵から述べたけど、やはり徳川家は脅威だ。羽柴家の主家である織田家の同盟国というのは味方のときは心強かったけど、敵となったら厄介というか強敵と言うべきだろう。今はまだ大丈夫だが、信雄さまと手を組まれたらと考えると頭が痛くなる。
しかし僕一人悩んでもどうしようもない。それは秀吉も同じなようで僕と官兵衛、そして正勝は摂津国の大坂に呼ばれた。なんでも石山本願寺の跡地に新しく城を築くらしい。徳川家と戦うのならもう少し東に築くはずだが、どうやら西国を中心に方針を決めるようだ。
「おう。よう参った。それでは今後の方針を決める」
大坂の武家屋敷に来たのは僕が最後らしく、小さな部屋で羽柴家の重臣は話し合うことになった。ちなみに秀長さんは姫路城で毛利家の動きを探っている。
襖を締め切って、蝋燭の明かりだけしか無い暗い部屋。そこで円を描くように、僕たち四人は座った。
「まず、信孝さまの処遇だが――雲之介、念のため言っておくが、出家させるのはなしだ」
僕の正面の上座に座る秀吉が牽制するように言ってきた。
ある程度覚悟していたけど、それでもずっしりとした重い言葉だった。
「……ああ、分かっているよ。徳川家に祭り上げられたら厄介だからね」
「でもよ。羽柴家が切腹を申し付けるわけにはいかねえだろ」
僕の左に座っている正勝は意見を述べた。確かにそれは正しい。
すると右に座っている官兵衛は「うひひひ。命じられる人に命じてもらえばいいぜ」と不気味に笑う。
「信雄さまに命じてもらえばいい。仲が悪いし馬鹿だからきっと頷くぜ」
「ではそのとおりにするか。これで徳川家との対立は決定的だな」
秀吉は眉間に皺を寄せた。本当は戦いたくないと思っているみたいだ。
「徳川家は今や武田家や今川家以上の領地を持つ大国。攻めるのも守るのも難しいぜ?」
正勝の言うとおりだ。しかも信雄さまと手を組まれたら領土的に連携できてしまう。
「徳川家の力を削ぐにはどうしたら良い?」
秀吉の優れたところは家臣に意見を求めるところ、つまり人使いが上手いところだ。
これは上様を遥かに凌駕する。
「一つは領地や兵を削るだな」
正勝が真っ先に言う。
「二つ目は領地の治安を悪くして戦どころじゃないようにする」
次に答えたのは僕だった。
「ひひひ。三つ目は調略で将を寝返らせるだな」
最後に答えたのは官兵衛だ。
三者三様、異なった答えだった。
「ふむ。理想は将を寝返らせる作戦だな。羽柴家は譜代の家臣が居らず、将の数が少ない」
「まあそうだけど……秀吉、もしかして狙っている徳川家家臣が居るのか?」
ほとんど当てずっぽうで言ったけど「おぬしの言うとおりだ」と的中してしまった。
「徳川家と交渉をしたら、確実にその者が使者として来るだろう」
「ふひひひ。誰なんだ?」
官兵衛の問いに秀吉はあっさりと答えた。
「徳川家家老、石川数正だ」
その名前に僕は驚き、正勝は顔をしかめて、官兵衛は納得した。
「そいつ、徳川家の家老だろ? しかも頑固で律儀な三河者だ。てっきり今川家か武田家の旧臣だと思ったが」
「いや。俺は分かるぜ。そいつは……裏切る」
官兵衛はにやにやしながら理由を述べた。
「嫡男の信康の死で他の家臣とわだかまりがあるらしい。特に筆頭家老の酒井忠次とは険悪になっているそうだ」
「よく知ってるな、官兵衛」
「忍びを使わなくても市井の噂は入って来るさ」
僕は「どうして石川殿が交渉に来ると思うんだ?」と秀吉に訊ねた。
「石川は徳川家の外交担当だ。酒井忠次もありえるが、信康殿の件で失敗しているからな。十中八九、石川で決まりだろう」
「使者を指名しなくてもいいのか?」
正勝がそう言うと秀吉は「それだと疑念が持たれる」と指摘した。
「徳川家康という男は些細なことでも見逃さない。こちらが石川を調略しようと企んでいるのを察知してしまうかもしれん」
「はあん。なるほどな」
「問題は調略だが、それはわしに任せろ」
自信満々に秀吉は言う。
「こういうのはわしの得意とするところだからな」
「……その前に、ちょっといいかな?」
三人が僕を見る。
正直、言いにくいことだけど……やっぱり言わないといけないな。
「嫡男の信康殿のことなんだけど」
「うん? それがどうした?」
「……実は生きているんだよね」
僕の言葉に全員が仰天した。
秀吉は猿みたいに呆けて、正勝は目を丸くして、官兵衛はあまりのことに引きつっていた。
「……偽りではないのか?」
恐る恐る秀吉が僕に聞く。
「ほら。僕は上様の指示で徳川家の様子を探るように命じられたんだよ。覚えてる?」
「ええ!? 俺覚えてねえぜ?」
官兵衛が素っ頓狂な声をあげると「そんときお前は土牢の中だった」と正勝が補足した。
「そ、そうだったのか……ふひひ、続けてくれ」
「それで、殺すのは忍びなかったから、本多さんと服部さんと正信と協力して偽首作って偽造工作した」
あっさりと白状すると秀吉が呆れながら「そんなことをしでかしたのか!」と喚いた。
「わし全然知らんぞ!」
「言ってなくてごめん。秀吉に迷惑かけたくなかったんだよ」
秀吉がなおも喚こうとしたのを遮って「そんで信康殿はどこに居るんだよ」と正勝が言った。
「雑賀衆で世良田二郎三郎という名前になって生きてるよ。今では雑賀衆で重鎮になっている」
「……兄弟は度胸がある男だと思ってたけどよ。ここまでとは思わなかったぜ」
正勝の言葉に官兵衛も頷いた。
「……雲之介。わしは怒るとか叱るとか通り越して、もはや呆れている」
「悪かったよ、秀吉」
複雑そうな笑みを浮かべた秀吉。そして「その世良田を呼ぶことはできるか?」と訊ねてきた。
「ああ。できる」
「……石川を簡単に寝返らせるかもしれんな」
秀吉は何かを思いついたようだった。
「よし。徳川家に使者を出そう。とりあえず、戦の前に調略をしよう」
「分かった」
「とりあえず、徳川家はこれで良いとして、後は毛利家と長宗我部家だな」
「毛利家は朝敵認定すれば瓦解するし、長宗我部家は雑賀衆に牽制してもらおうぜ」
その後、会議は有意義に進んだと思ったが、途中から宴会となってしまった。
ま、真剣に話せる時間なんて限られているということだろう。
0
お気に入りに追加
212
あなたにおすすめの小説
冷酷王子が記憶喪失になったら溺愛してきたので記憶を戻すことにしました。
八坂
恋愛
ある国の王子であり、王国騎士団長であり、婚約者でもあるガロン・モンタギューといつものように業務的な会食をしていた。
普段は絶対口を開かないがある日意を決して話してみると
「話しかけてくるな、お前がどこで何をしてようが俺には関係無いし興味も湧かない。」
と告げられた。
もういい!婚約破棄でも何でも好きにして!と思っていると急に記憶喪失した婚約者が溺愛してきて…?
「俺が君を一生をかけて愛し、守り抜く。」
「いやいや、大丈夫ですので。」
「エリーゼの話はとても面白いな。」
「興味無いって仰ってたじゃないですか。もう私話したくないですよ。」
「エリーゼ、どうして君はそんなに美しいんだ?」
「多分ガロン様の目が悪くなったのではないですか?あそこにいるメイドの方が美しいと思いますよ?」
この物語は記憶喪失になり公爵令嬢を溺愛し始めた冷酷王子と齢18にして異世界転生した女の子のドタバタラブコメディである。
※直接的な性描写はありませんが、匂わす描写が出てくる可能性があります。
※誤字脱字等あります。
※虐めや流血描写があります。
※ご都合主義です。
ハッピーエンド予定。
【完結】飽きたからと捨てられていたはずの姉の元恋人を押し付けられたら、なぜか溺愛されています!
Rohdea
恋愛
──今回も飽きちゃった。だからアンタに譲ってあげるわ、リラジエ。
伯爵令嬢のリラジエには、社交界の毒薔薇と呼ばれる姉、レラニアがいる。
自分とは違って美しい姉はいつも恋人を取っかえ引っ変えしている事からこう呼ばれていた。
そんな姉の楽しみは、自分の捨てた元恋人を妹のリラジエに紹介しては、
「妹さんは無理だな」と笑われバカにされる所を見て楽しむ、という最低なものだった。
そんな日々にウンザリするリラジエの元へ、
今日も姉の毒牙にかかり哀れにも捨てられたらしい姉の元恋人がやって来た。
しかし、今回の彼……ジークフリートは何故かリラジエに対して好意的な反応を見せた為、戸惑ってしまう。
これまでの姉の元恋人とは全く違う彼からの謎のアプローチで2人の距離はどんどん縮まっていくけれど、
身勝手な姉がそれを黙って見ているはずも無く……
よいこ魔王さまは平穏に生きたい。
海野イカ
ファンタジー
史上最も嫌われた魔王と名高い第67魔王デスタリオラは、勇者との戦いに敗れた後、気づけば辺境伯の娘として生まれ直していた。おかしな役割を押し付けられたものの『魔王』よりは気楽に生きられそうだと軽く承諾。おいしいものをいっぱい食べて、ヒトとしての暮らしを平穏にエンジョイしようと決意。……したはずが、襲撃やら逃亡やら戦闘やら何かと忙しく過ごす、元魔王お嬢様のおはなし。
(挿絵有の話はタイトルに ✧印つき)
愛されていないはずの婚約者に「貴方に愛されることなど望んでいませんわ」と申し上げたら溺愛されました
海咲雪
恋愛
「セレア、もう一度言う。私はセレアを愛している」
「どうやら、私の愛は伝わっていなかったらしい。これからは思う存分セレアを愛でることにしよう」
「他の男を愛することは婚約者の私が一切認めない。君が愛を注いでいいのも愛を注がれていいのも私だけだ」
貴方が愛しているのはあの男爵令嬢でしょう・・・?
何故、私を愛するふりをするのですか?
[登場人物]
セレア・シャルロット・・・伯爵令嬢。ノア・ヴィアーズの婚約者。ノアのことを建前ではなく本当に愛している。
×
ノア・ヴィアーズ・・・王族。セレア・シャルロットの婚約者。
リア・セルナード・・・男爵令嬢。ノア・ヴィアーズと恋仲であると噂が立っている。
アレン・シールベルト・・・伯爵家の一人息子。セレアとは幼い頃から仲が良い友達。実はセレアのことを・・・?
もうあなたを待ちません。でも、応援はします。
LIN
恋愛
私とスコットは同じ孤児院で育った。孤児院を出たら、私はこの村に残って食堂で働くけど、彼は王都に行って騎士になる。孤児院から出る最後の日、離れ離れになる私達は恋人になった。
遠征に行ってしまって、なかなか会えないスコット。周りの人達は結婚して家庭を持っているのに、私はスコットを待ち続けていた。
ある日、久しぶりに会えたスコットの寝言を聞いてしまった私は、知りたくもない事実を知ってしまったんだ…
王太子様には優秀な妹の方がお似合いですから、いつまでも私にこだわる必要なんてありませんよ?
木山楽斗
恋愛
公爵令嬢であるラルリアは、優秀な妹に比べて平凡な人間であった。
これといって秀でた点がない彼女は、いつも妹と比較されて、時には罵倒されていたのである。
しかしそんなラルリアはある時、王太子の婚約者に選ばれた。
それに誰よりも驚いたのは、彼女自身である。仮に公爵家と王家の婚約がなされるとしても、その対象となるのは妹だと思っていたからだ。
事実として、社交界ではその婚約は非難されていた。
妹の方を王家に嫁がせる方が有益であると、有力者達は考えていたのだ。
故にラルリアも、婚約者である王太子アドルヴに婚約を変更するように進言した。しかし彼は、頑なにラルリアとの婚約を望んでいた。どうやらこの婚約自体、彼が提案したものであるようなのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる