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出産祝い
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「それでは、行ってくる。決して無理はするなよ」
「ええ。分かっておりますお前さま」
難産であったが、徐々に回復しつつあるはるを気遣う成政。
本音を言えばしばらく傍に居たかった。しかし家康直々の命で出仕しなければならなかった。どうしても相談したいことがあるらしい。
成政は家族が大事だった。同時に家康を敬愛していた。
だからはるに申し訳ない気持ちで登城しなければならなかった。
けれど、はるは明るく「私は大丈夫ですよ」と笑った。
「この子も元気ですし」
「ああ、そうだな」
胸に抱いた赤子――松千代丸すやすやと寝ている。
可愛らしい顔を見つめていると救えて良かったと心から成政は思った。
「松千代丸とお前のためにも仕事に励むか。遅くならないうちに帰る」
そう言い残して成政は家から出た。
はるは胸の中の子を見つめながら、産婆に言われたことを思い出す。
――あんたの旦那は、何者なんだい?
産婆は松千代丸を取り上げる前、成政から指示をされていた。
使う道具を熱湯にくぐらせ、手は清潔にした後、酒をつける。
意味不明な指示だったので理由を聞くと、赤子を無事に出産できる方法だと真剣な顔で言っていた。
長年、多くの赤子を迎えてきた産婆はそんな方法など聞いたことがないと言ったが、ならば試してみろと成政は答えた。他の赤子で試せなどあまり感心しない言い方だったが、城下町を発展させているやり手の家老が自信満々に言っているものだから、半信半疑でやってみると――効果覿面だった。知らなかったことを後悔するくらいに。
息をしなくなった赤子を生き返らせたことも疑問視していた。いくら何でも死にかけた赤子の息を吹き返させるなんて、風の噂でも聞いたことがない。
はるは産婆からそれらを聞いた後、十分な金を渡して誰にも言わないでくださいと懇願した。そして自分も成政がどうしてそんな方法を知っていたのかも分からないと答えた。産婆は金を黙って受け取った。もちろん、好奇心は少なからずあった。でもはるがあまりにも悲しそうな顔をしていたので訊けなかった。いや、訊く気持ちが失せてしまったのだ。
はるは穏やかに寝ている松千代丸を見て思う。
成政様と一緒に寝ているとき、うなされることが多かった。
初めは戦で人を殺したからだと思っていた。
しかし注意深く聞いていると、誰かに何かを謝っているようだった。
――ごめんなさい、お父さん、お母さん。死んでしまって、ごめんなさい。
成政は生きている。
織田家から離れても、松平家で家老に出世している。
謝ることなんてない。それなのに――
時々、成政が遠くの世界の人のように感じることがある。
幸せを求めていることも言葉の節々から分かる。
はるは常々、どうすればいいのかと考える。
「私は一生、お前さまについて行きます。でも――」
自分を嫁に貰ってくれたこと。
家老まで出世してくれたこと。
松千代丸を救ってくれたこと。
愛しているし、返しきれない恩もある。
それでも寂しい気分になる。
何か隠し事をしていると分かるから。
その虚しさは――止められない。
◆◇◆◇
登城すると家康の前に案内された成政。
上座に現れた家康に平伏する。
「面を上げよ……そなた、子が産まれたそうだな」
「ははっ。既にお耳に入っていましたか。報告が遅れて申し訳ありません」
「良い。そなたも大変だっただろう。あれのときは、男など狼狽えるしかできぬからな」
家康にも子がいることを知っていた成政は「そうですな」と肯定した。
柏手を鳴らした家康は「出産祝いだ」と小姓に包みを持ってこさせる。
細長い包み。小姓が丁寧に広げると、そこには立派な刀があった。
打刀で鞘と鍔が黒一色に染まっている。
刀に関しての知識はないものの、それなりの審美眼を持っている成政はこれが名刀であることを感じた。
「これは……名刀であることは分かりますが、恥ずかしながら……」
「伊勢国の刀工が打った刀だ。村正なる者をそなた知っているか?」
成政は息を飲んだ。前世が歴史オタクだった彼でなくとも、知っている者が多い有名な刀鍛冶であり、刀の名称となっている――村正。
当時の三河武士は村正の刀を愛用していた。それは三河国と村正一派が拠点としていた伊勢国が近いこともあるが、芸術品や美術品ではなく、実践的な刀であることが起因する。武骨な三河武士との相性も良かった。
しかし歴史的価値を知っている成政は「こ、これを私にくださるのですか?」と震える声で訊ねてしまった。動揺するほど嬉しかったのだ。子供が架空の英雄を模した物を買ってもらった心境なのだろう。
「もちろん良い。私とそなたの仲ではないか」
鷹揚に頷いた家康。成政が目に見えて嬉しがっているのを見て気分が良かったのもある。こんなに喜んでくれるのなら、短刀を加えて大小で渡せば良かったと思うくらいだった。
「ありがたき幸せ! 一生の宝とします!」
「うむ。これからも忠勤を頼むぞ」
成政が深く頭を下げた。
家康は「そういえば」と思い出したように言う。
「銘が書かれていたはずだ。後で確認するがいい。確か……『濡烏』だ」
「良き名にございます」
成政は刀を手に取る。
しっくりとくる重みと手触り。
まるで自分の身体のようだと錯覚してしまう。
刀の銘が『濡烏』なのは漆黒で統一された拵えだからという理由である。
しかし烏の名を持つ刀を成政が持つのは、相応し過ぎるだろう。
何故なら烏の別名に――『大虚鳥』があるからだ。
思わぬ出産祝いに喜びながら岡崎城の城内を歩いていると「おや。佐々殿ですか」と女性に声をかけられた。
家康の妻、瀬名である。成政は表情を引き締めて「ご無沙汰しております」と応じた。
成政は家康に命じられて瀬名の話し相手となっていた。家康の少年時代の話を瀬名は嬉しそうに聞いていた。最近は夫婦の間で少しずつ会話が増えているらしい。瀬名も成政のことを織田の家臣ではなく、佐々殿と呼ぶようになった。表情も最初と比べて柔らかくなったと成政は思う。
「殿から聞きました。奥方が出産されたと。母子共に健在で何よりです」
「ありがたきお言葉です」
「今日は佐々殿に頼みがございまして」
成政は「私にですか?」と怪訝な顔になった。
瀬名は「殿から許可は下りております」と真面目な顔で言う。
「私たちの息子、竹千代のことです。あの子、武芸ばかりで……」
「勉学に励んでいないと? それは困りましたな」
「ええ。ですから佐々殿に教育してもらいたいのです」
息子の教育係を任せるほど信頼されている。成政はようやく瀬名に頼られていると実感できた。
成政は「分かりました。それで、竹千代様はどちらに?」訊ねた。
瀬名が答えようとして、顔が驚きに変わる――成政は振り向くことなく頭に背中へ振られた木刀の一撃を掴む。
「ああ! なんで分かったんだ!?」
成政は昔の家康を懐かしんでしまう。
まるで今の家康を幼くしたような、もしくは昔に戻ったような、生き写しとしか言いようがない八才の子供――竹千代がいた。彼は顔を真っ赤にして成政の手から木刀を取ろうとしている。
「こら! 竹千代! 後ろからとは卑怯ですよ!」
「母上! 戦いに卑怯などありません! 勝てば良いのです!」
母親が叱っても悪ぶる様子のない竹千代に吹き出してしまう成政。
それから「放しますゆえ、力を緩めてください」と言う。
「尻餅を突きますよ」
「へっ? ……わあああ!?」
直前で力を弱めたので竹千代は尻餅を突くことは無かったが、たたらを踏んでしまう。
木刀を見つめ、しっかりと握ると――再び成政に襲い掛かる。
「えい、やあ!」
「おお、良き太刀筋です」
感心しながらも成政は木刀を片手――いや、指先のみでいなす。
「竹千代様は活発ですな。奥方様、良き跡継ぎをお産みになりましたね」
「あ、はい……」
子供とはいえ本気で振るっている木刀を、ほとんど見ずに捌く成政の姿に瀬名は慄いていた。工場や城下町を整備していると家康から聞いていたから、文官だと思っていた。だから教育係に任じようとしていたのだ。
「あ。ご無礼しました。竹千代様、奥方様とお話の最中ですので」
最後は親指と人差し指で木刀を掴む成政。
竹千代は再び顔を真っ赤にして抵抗する。
「しばしお待ちを。それで、私は何を教えればよろしいのでしょうか?」
「えっと……佐々殿なら何でも教えられると考えておりました」
「それは買いかぶりすぎです。私にもできないことがありますから」
瀬名はしばらく黙ってから「次代の主君としての心構えをお願いします」と言う。
「殿から昔いろいろ教わっていて、今でも教えてもらうことがあるとおっしゃっていました」
「かしこまりました。時間を見てご教授しましょう。その前に――」
成政は木刀から指を放した。
今度は体勢を崩してしまった竹千代を素早く支える。
「まずは私から一本取りましょう。よろしいですか?」
「おお! ようやく遊んでくれるのか! よし、一本取ってやる!」
竹千代の嬉しそうな顔に、殿と違って活発で人見知りしない子だなと成政は思った。
「もし一本取れなかったら、私の話を素直に聞くこと。良いですね?」
「いいだろう! 私が取れないなどありえないからな!」
教師と生徒というより、親戚の子と遊ぶ大人のようだった。
それを瀬名は微笑ましい気持ちで見る。
しかし成政の腰に提げてあるのは、村正が作りし名刀。
後世に『徳川に仇名す刀』と呼ばれる刀でもあるのだ。
「ええ。分かっておりますお前さま」
難産であったが、徐々に回復しつつあるはるを気遣う成政。
本音を言えばしばらく傍に居たかった。しかし家康直々の命で出仕しなければならなかった。どうしても相談したいことがあるらしい。
成政は家族が大事だった。同時に家康を敬愛していた。
だからはるに申し訳ない気持ちで登城しなければならなかった。
けれど、はるは明るく「私は大丈夫ですよ」と笑った。
「この子も元気ですし」
「ああ、そうだな」
胸に抱いた赤子――松千代丸すやすやと寝ている。
可愛らしい顔を見つめていると救えて良かったと心から成政は思った。
「松千代丸とお前のためにも仕事に励むか。遅くならないうちに帰る」
そう言い残して成政は家から出た。
はるは胸の中の子を見つめながら、産婆に言われたことを思い出す。
――あんたの旦那は、何者なんだい?
産婆は松千代丸を取り上げる前、成政から指示をされていた。
使う道具を熱湯にくぐらせ、手は清潔にした後、酒をつける。
意味不明な指示だったので理由を聞くと、赤子を無事に出産できる方法だと真剣な顔で言っていた。
長年、多くの赤子を迎えてきた産婆はそんな方法など聞いたことがないと言ったが、ならば試してみろと成政は答えた。他の赤子で試せなどあまり感心しない言い方だったが、城下町を発展させているやり手の家老が自信満々に言っているものだから、半信半疑でやってみると――効果覿面だった。知らなかったことを後悔するくらいに。
息をしなくなった赤子を生き返らせたことも疑問視していた。いくら何でも死にかけた赤子の息を吹き返させるなんて、風の噂でも聞いたことがない。
はるは産婆からそれらを聞いた後、十分な金を渡して誰にも言わないでくださいと懇願した。そして自分も成政がどうしてそんな方法を知っていたのかも分からないと答えた。産婆は金を黙って受け取った。もちろん、好奇心は少なからずあった。でもはるがあまりにも悲しそうな顔をしていたので訊けなかった。いや、訊く気持ちが失せてしまったのだ。
はるは穏やかに寝ている松千代丸を見て思う。
成政様と一緒に寝ているとき、うなされることが多かった。
初めは戦で人を殺したからだと思っていた。
しかし注意深く聞いていると、誰かに何かを謝っているようだった。
――ごめんなさい、お父さん、お母さん。死んでしまって、ごめんなさい。
成政は生きている。
織田家から離れても、松平家で家老に出世している。
謝ることなんてない。それなのに――
時々、成政が遠くの世界の人のように感じることがある。
幸せを求めていることも言葉の節々から分かる。
はるは常々、どうすればいいのかと考える。
「私は一生、お前さまについて行きます。でも――」
自分を嫁に貰ってくれたこと。
家老まで出世してくれたこと。
松千代丸を救ってくれたこと。
愛しているし、返しきれない恩もある。
それでも寂しい気分になる。
何か隠し事をしていると分かるから。
その虚しさは――止められない。
◆◇◆◇
登城すると家康の前に案内された成政。
上座に現れた家康に平伏する。
「面を上げよ……そなた、子が産まれたそうだな」
「ははっ。既にお耳に入っていましたか。報告が遅れて申し訳ありません」
「良い。そなたも大変だっただろう。あれのときは、男など狼狽えるしかできぬからな」
家康にも子がいることを知っていた成政は「そうですな」と肯定した。
柏手を鳴らした家康は「出産祝いだ」と小姓に包みを持ってこさせる。
細長い包み。小姓が丁寧に広げると、そこには立派な刀があった。
打刀で鞘と鍔が黒一色に染まっている。
刀に関しての知識はないものの、それなりの審美眼を持っている成政はこれが名刀であることを感じた。
「これは……名刀であることは分かりますが、恥ずかしながら……」
「伊勢国の刀工が打った刀だ。村正なる者をそなた知っているか?」
成政は息を飲んだ。前世が歴史オタクだった彼でなくとも、知っている者が多い有名な刀鍛冶であり、刀の名称となっている――村正。
当時の三河武士は村正の刀を愛用していた。それは三河国と村正一派が拠点としていた伊勢国が近いこともあるが、芸術品や美術品ではなく、実践的な刀であることが起因する。武骨な三河武士との相性も良かった。
しかし歴史的価値を知っている成政は「こ、これを私にくださるのですか?」と震える声で訊ねてしまった。動揺するほど嬉しかったのだ。子供が架空の英雄を模した物を買ってもらった心境なのだろう。
「もちろん良い。私とそなたの仲ではないか」
鷹揚に頷いた家康。成政が目に見えて嬉しがっているのを見て気分が良かったのもある。こんなに喜んでくれるのなら、短刀を加えて大小で渡せば良かったと思うくらいだった。
「ありがたき幸せ! 一生の宝とします!」
「うむ。これからも忠勤を頼むぞ」
成政が深く頭を下げた。
家康は「そういえば」と思い出したように言う。
「銘が書かれていたはずだ。後で確認するがいい。確か……『濡烏』だ」
「良き名にございます」
成政は刀を手に取る。
しっくりとくる重みと手触り。
まるで自分の身体のようだと錯覚してしまう。
刀の銘が『濡烏』なのは漆黒で統一された拵えだからという理由である。
しかし烏の名を持つ刀を成政が持つのは、相応し過ぎるだろう。
何故なら烏の別名に――『大虚鳥』があるからだ。
思わぬ出産祝いに喜びながら岡崎城の城内を歩いていると「おや。佐々殿ですか」と女性に声をかけられた。
家康の妻、瀬名である。成政は表情を引き締めて「ご無沙汰しております」と応じた。
成政は家康に命じられて瀬名の話し相手となっていた。家康の少年時代の話を瀬名は嬉しそうに聞いていた。最近は夫婦の間で少しずつ会話が増えているらしい。瀬名も成政のことを織田の家臣ではなく、佐々殿と呼ぶようになった。表情も最初と比べて柔らかくなったと成政は思う。
「殿から聞きました。奥方が出産されたと。母子共に健在で何よりです」
「ありがたきお言葉です」
「今日は佐々殿に頼みがございまして」
成政は「私にですか?」と怪訝な顔になった。
瀬名は「殿から許可は下りております」と真面目な顔で言う。
「私たちの息子、竹千代のことです。あの子、武芸ばかりで……」
「勉学に励んでいないと? それは困りましたな」
「ええ。ですから佐々殿に教育してもらいたいのです」
息子の教育係を任せるほど信頼されている。成政はようやく瀬名に頼られていると実感できた。
成政は「分かりました。それで、竹千代様はどちらに?」訊ねた。
瀬名が答えようとして、顔が驚きに変わる――成政は振り向くことなく頭に背中へ振られた木刀の一撃を掴む。
「ああ! なんで分かったんだ!?」
成政は昔の家康を懐かしんでしまう。
まるで今の家康を幼くしたような、もしくは昔に戻ったような、生き写しとしか言いようがない八才の子供――竹千代がいた。彼は顔を真っ赤にして成政の手から木刀を取ろうとしている。
「こら! 竹千代! 後ろからとは卑怯ですよ!」
「母上! 戦いに卑怯などありません! 勝てば良いのです!」
母親が叱っても悪ぶる様子のない竹千代に吹き出してしまう成政。
それから「放しますゆえ、力を緩めてください」と言う。
「尻餅を突きますよ」
「へっ? ……わあああ!?」
直前で力を弱めたので竹千代は尻餅を突くことは無かったが、たたらを踏んでしまう。
木刀を見つめ、しっかりと握ると――再び成政に襲い掛かる。
「えい、やあ!」
「おお、良き太刀筋です」
感心しながらも成政は木刀を片手――いや、指先のみでいなす。
「竹千代様は活発ですな。奥方様、良き跡継ぎをお産みになりましたね」
「あ、はい……」
子供とはいえ本気で振るっている木刀を、ほとんど見ずに捌く成政の姿に瀬名は慄いていた。工場や城下町を整備していると家康から聞いていたから、文官だと思っていた。だから教育係に任じようとしていたのだ。
「あ。ご無礼しました。竹千代様、奥方様とお話の最中ですので」
最後は親指と人差し指で木刀を掴む成政。
竹千代は再び顔を真っ赤にして抵抗する。
「しばしお待ちを。それで、私は何を教えればよろしいのでしょうか?」
「えっと……佐々殿なら何でも教えられると考えておりました」
「それは買いかぶりすぎです。私にもできないことがありますから」
瀬名はしばらく黙ってから「次代の主君としての心構えをお願いします」と言う。
「殿から昔いろいろ教わっていて、今でも教えてもらうことがあるとおっしゃっていました」
「かしこまりました。時間を見てご教授しましょう。その前に――」
成政は木刀から指を放した。
今度は体勢を崩してしまった竹千代を素早く支える。
「まずは私から一本取りましょう。よろしいですか?」
「おお! ようやく遊んでくれるのか! よし、一本取ってやる!」
竹千代の嬉しそうな顔に、殿と違って活発で人見知りしない子だなと成政は思った。
「もし一本取れなかったら、私の話を素直に聞くこと。良いですね?」
「いいだろう! 私が取れないなどありえないからな!」
教師と生徒というより、親戚の子と遊ぶ大人のようだった。
それを瀬名は微笑ましい気持ちで見る。
しかし成政の腰に提げてあるのは、村正が作りし名刀。
後世に『徳川に仇名す刀』と呼ばれる刀でもあるのだ。
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