東京エースオブドラゴン

火村

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誰にも見せれない神高の授業

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「ガラっ・・」



ざわ・・



「ん?どうしました渡辺オーナー」担任

「いや、続けて・・。次の時間の授業は俺やるから」渡辺



最後なら、やはり一番熱い学年を見ていきたい・・



授業中に急に教室の中に入ってきた渡辺に少しだけざわつく生徒達。

渡辺は授業参観のように後ろの方でじっと授業を聞き始める。



「・・・では・・」



担任が授業を続け・・





「いいかぁ~『ちょっと』は、『ちっと』だ。これは昨日やったな。」担任



「ああ分かってるから、次の教えろよ」



毒づく生徒・・



「じゃあ、少年院ってのは・・・そうだな、テシっ」



担任が一人の生徒に答えを求める。本名が、勅使河原で、あだ名がテシだ。



「ああ?・・んなもん『ねんしょー』だろうが!」テシ

「そう。さすが勉強熱心なテシだな」担任



変わった授業だ・・

そして生徒達の悪行ぶり・・



煙草を吸いながらの者・・

机に足を上げて寝てる者・・

机にナイフで文字を刻んでる者・・



「これはもし数や、ハッタリにも屈しない、

 本物の不良が現れた時に使うんだが・・

 そうだな・・テシっ実演してみろ」担任



「んだよ・・」テシ



やる気はなさそうなのだが、他の生徒も加わって・・



「止めとけって!お前次何かあったらネンショーなんだろ!」

「ちっ・・くそがっ。

 俺ぁ、くだらねぇ事でネンショー入ってる暇はねぇんだよ・・」テシ



「うん・・ちょっと弱いね・・そっち(そっちの使い方)か・・」担任





そっちでもいいけど・・



「じゃあ、本物にやってもらうか・・零夜っ」担任

「・・・ああ・・」零夜



本物?・・



少し他の生徒と打ち合わせして・・



「・・・・・ぶち殺してやる・・もう年少でも構わねぇよ・・」零夜

「やっ!止めっ!止めろって零夜君っ!キレんなって!」



「おおーー」



感心する生徒達。



「恐ぇな、やっぱ零夜君は」テシ

「間がいいよな・・」

「ああ。やっぱ本物の不良は恐さがあるな」

「ああ。零夜君は、あの新時代の幕を開けた主役だしな」



「うん。今のが出来たら、うまく戦闘を回避出来るね」担任



相手も、こいつはヤバいぞ・・キチガイなのか?

もうナイフでも出しそうだぞ・・この仲間もすっげぇ焦ってるし・・てな感じかな。



「・・・・・・・・・」渡辺



いいのだろうか・・こんなので・・



この変わった授業の意味はチャイムが鳴ればよく分かる・・





「キ~ンコ~~ンカ~~ンコ~~ン♪」



授業終了のチャイムが鳴れば・・





「ぶはぁっ・・疲れるなりよ不良になりきるのわぁ」テシ



「しょうがないでござるよ。やらなきゃヤラれるんだからさぁ」

「そうですぞっ努力は絶対報われるって」





・・・不良になりきった生徒達・・いや・・オタク達。



そう・・まったく逆だ。秋高のオタク科と。



(ふぁ・・とんでもねぇとこに来ちまったな・・)零夜



この零夜だけが唯一の不良・・本物の不良だ。

だから休憩時間は、まるでハブにされてるようだ。



みんなの会話は、聞いた事の無いワードだらけだ・・





「おおーすごいでおじゃる~」

「ねぇ零夜君も少し覚えてみなよ楽しいよ」



「ん?・・お、おお。よ~し・・」零夜



だが、この仲間達の笑顔が俺の熱すぎる熱を冷やしてくれてる。



(ここで良かったかな・・落とされたしな秋高・・)零夜

 

久しぶりの入学拒否だったらしい。試験は通ったのだが、面接でバッサリだ。


「キ~ンコ~ンカーンコ~ン」



授業の始まりのチャイムが鳴れば・・



「んだよっ、もう休憩終わりかよ・・」テシ

「とっと授業やれよ!おっさん」


不良モードに変わる生徒達


「あ・・おうっ。じゃあ・・」渡辺オーナー

「お願いします」担任



これが最後の授業・・



「では・・」渡辺



生徒達も悪ぶってはいるが一様に緊張はしている。




「まず・・俺達の時代から・・散っていった友の・・」渡辺

「おお・・」生徒達



めったに聞ける話ではない。

この渡辺も伝説の抗争や時代を生き抜いて来た主役達の一人だ。



熱く語る抗争。時代時代のカリスマ達・・

渋谷・・六本木・・



何より・・



「あの時の熱い気持ちを思い出せば、今もこの胸が焼け焦がれそうで・・」渡辺



熱い感情・・



死んでいったカリスマ達の話では涙をボロボロとこぼしながら・・



熱く・・不良とはこうあるべき・・

いやっ、爆撃とはこうあるべきと。



誇れる先輩達の生き様・・





そして・・



「いいか、喧嘩ってのはな・・」渡辺



勝てばいいってもんじゃない・・

何の為にどう戦い・・

守るべき物(者)を守り・・



結局は・・



「負けてもいいじゃないかっ。負けても華は咲く!

 それでも守りきった物があるじゃないかっ」渡辺



プライド・・硬派・・正義・・威厳・・チーム・・





だが・・





「・・・・・・・その話は別にいいや・・」

「・・・・・・ふあぁ・・」

「・・・しーん・・だな・・」





響かない・・

この今の生徒達には。



「・・・・・・・はは・・」渡辺



どう伝えればいいのだろうか・・

いや、伝わらないのだろうか・・



「・・・渡辺オーナー・・」零夜

「ん?ああ・・どうした?」渡辺



この微妙な空気に零夜が割って入り・・



「俺は、派閥は違えど、良くも悪くも爆撃から学びました・・」零夜




十二分に熱き心や伝統の意味もよく分かる・・

だが時代時代で負けてきた爆撃・・

死んで失った過去のカリスマ達・・



「・・・うん・・俺達の遥か先に居た飛び切りの不良達でも・・」渡辺



負け戦の続いた爆撃。いつも最悪の結果で・・



「それでも、輝いてた!」渡辺



不良として。ただそれだけでいいじゃないかと・・。





「・・・違います・・」零夜

「ええ・・俺達もそう思います・・」



「・・何が?」渡辺



守るべき物じゃない・・



「・・・奪わなければ始まらない・・いや生きていけない」零夜

「ええ。ただ勝つのみで道は開かれる」


これを負けた爆撃から学んだ。
不良次代の負けは後のヤクザになってからも冷や飯を食う事になる。



だから俺達は攻めるっ。

いや、言い換えるなら・・



「これからは結果を・・」零夜

「ええ・・俺も負けてきたから分かるんです・・」テシ

「俺達も・・」



だから・・



「硬派とプライドは、もう今の時代では重荷なだけ・・」零夜

「どんな手を使ってでも勝つ・・いやっ勝ちたい!」テシ

「そう・・だからこの神高は・・」





「新時代に生きるっ!!!!」





「・・・・・・うん・・」渡辺



弱弱しい返事しか出来ない。





嘘でも逃げでもなんでもいい・・

使える物は何でも使って勝ちに行く。それが新時代の不良。



「・・・でも大丈夫です渡辺さん」零夜

「・・・何が?」渡辺



少しうつむいている渡辺に話しかける幹部。



「ここに居る生徒一人一人、渡辺さんが面接したじゃないですか」零夜



そう・・

ここに居る生徒達は、そのほとんどが、いじめられっ子で、

体も貧弱で今まで不良にヤラれて悔しい思いをしてきた連中ばかりだ。



だけど・・



「うん・・。アウトローの情熱か・・」渡辺

「ええ。すべての生徒達が・・」零夜



今の時代では誰にも負けないほどの熱きアウトローの情熱を持っている。



「・・・・うん・・・」渡辺



一人一人の顔を見れば面接を思い出す。

皆、熱くアウトローへの情熱を語った。

有名な不良の名前を挙げ、憧れを熱い眼差しで。

こんな自分だけど、いつしか時代の主役達になりたいと。





だが・・耳に入ってくる最近の神高の悪行の数々は・・



「・・・やってる事は悪党・・いや、ただのクズだ」渡辺





だが不良で有名になるには絶対に必要な能力だ。

弱い者にどれだけ非道、無情になる事が出来るか・・



これで神高の地位というか、色を纏う。

奴等はヤバイ・・って思わせるだけで、かなり有利に事は運ぶ。





「キ~ンコ~ンカーンコ~ン」



中途半端に授業が終わる・・





(俺が古い・・。確かに結果も出てないしな・・)渡辺





そう俺が悪い・・

硬派を押し付けるのが。現役時代も一番汚かったのに・・

それに、偉そうに教えるほどの人物でもない・・



(所詮俺は爆撃の残りカス・・)渡辺



たまたま激動の時代に生まれて、

たまたまキャラで目立ってて主役達の近くにいただけで、

たまたま生き残っただけ。



いや、誰よりも臆病だっただけ・・



そう・・最後に・・

これだけは・・





「臆病さが命を繋ぐっ!」渡辺





これが最後の教え・・



勝つよりも・・

生き残れ。



熱きアウトローの情熱達よ。


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