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第二章『都市制圧』

崩壊した都市へ

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 迷宮の外は荒れ果てていた。それはそうだ。彼を恐れ溢れ出した魔物によって木々は踏み倒され、破壊し尽くされたのだから。

辺りを見回してどこに向かうか考える。『魔物大海嘯スタンピード』で荒れ果てた大地のせいで道も何もわかったもんじゃない。

適当に歩くかと思ったら声をかけられた。

「あ、あんた・・・今そこから出てきたのか?」

4人の人族の男女。おそらく冒険者か何かのパーティだろうと彼はあたりをつける。

彼のいた迷宮は魔王の居城。当然危険度も高い事で有名だ。そんな所からどう見ても軽装な彼が出て来れば不審に思われても仕方がない。

「中は?」

こちらを警戒しながらリーダーらしい男が尋ねる。

「空っぽだ。魔物も何もいない。」

彼は観察を続けたまま男の問いに首を振った。

「空っぽって・・・という事はあのスタンピードはやっぱりここから?一体何が起きてやがる・・・」

そのスタンピードの原因が目の前にいるのだが男達はそれに気づかない。

(殺すか?いや、奴等の拠点に案内させるのもありか。)

「ここはどこだ?妙に広い迷宮だったが気付いたらここにいたからよくわからん。」

彼の言葉に男達は何やら内輪で話し始めた。

「転移トラップってやつの可能性があるな。あんた、名は?飛ばされる前はどこにいた。」

男の問いにどう答えるか考える。

(面倒だな。やはり殺すか?しかし街を探して彷徨うのはもっと面倒か。)

「名はノワール。とうきょ・・・日本という国にいたんだが気付いたら迷宮?何か知らんがこの穴の中にいた。」

多少の嘘を混ぜつつ答えると何やら納得顔になった。しかし、

「お前、マヨイビトか?しかしなんでよりによって魔王の居城に・・・まさか邪神サウムが送り込んだ魔王!?」

途端に警戒を強め武器を構えだした。

「待て待て待て。よくわからんが俺は人間だ気づいたらここに来てるし服もこんな布1枚しかないし武器も何も持ってない。」

ローブをめくり上げ、中が裸なのを見せる。4人の中の女の1人が悲鳴を上げて目を逸らしたが警戒は解けたようだ。

「確かに魔王がそんな無防備なわけがないか。いいだろう。ついてこい。俺たちの拠点に連れて行ってやるよ。」

まんまと内に入り込めたノワールは男達に連れられ彼らの拠点に向かった。

----------

 道すがら外での出来事を聞かされる。20日ほど前に起こった異常なスタンピード。

それによって周辺の都市は大打撃を受けたらしい。

運良く生き残ったのは100人に満たず、彼らは被害の少なかった海沿いの街に集まって生活をしているらしい。

「止まれ。その男は?」

街にたどり着くと衛兵に呼び止められた。リーダーの男が事情を話すが衛兵の警戒は緩まない。

「その石に触れろ。今からいくつか質問する。」

おそらく真偽を探る魔道具か何かであろうとノワールはあたりをつける。

「名は?」

「ノワール。」

石に反応はない。確かに彼の生前の名前はノワールなんかではないが転生した彼が自分の名前に定めたからだ。

「どこからきた。」

「わからない。」

「殺人は?」

人を殺した事はない・・・・・・・・・。」

衛兵の質問に答え続けるが反応はないままだ。

それからもいくつか質問をされた上で衛兵は彼を安全と判断した。

 街に入ると彼はそのまま宿へと招かれた。本来は冒険者ギルドで身分証を発行するらしいのだが、先のスタンピードで今はそんな余裕もないらしい。

調査の報告に行ったリーダーの男はそういうと仮の身分証を発行してもらったと彼に手渡した。

簡単な食事と古着だが彼に合ったサイズの衣服、そして湯の張った桶と手ぬぐいを渡された彼は与えられた自室で身体を拭きながら今後を考える。

(100人程度なら壊滅させるのも簡単だが魔物の時のように逃げられると後が面倒だな。

今回は慎重にやらないと。)

人は群れる生き物だ。そして群れると魔物より厄介な生き物でもある。

策を考えていると部屋の扉がノックされた。

来客はさっきの4人の1人。女神ルドラを信仰する巫女だった。
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