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第一章『迷宮掌握』
淫魔の壊し方-インキュバスの場合-
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彼の前に現れた人型のそれは、目の前に立つ彼を上に下に舐め回すような視線で眺めていやらしい笑みを浮かべた。
「なんだ、強大な力を感じてやってきたがいるのはただの小娘じゃないか。」
『這いよる混沌』の権能でアマテラスの姿のままだった彼にそれはそう呟いた。
引き締まった肉体に女受けの良さそうな甘いマスクと艶のある声。
全てにおいて女を性的に刺激する要素の詰まったそれはしかし頭からはえるヤギを思わせる角と黒い尾がただの人ではないと物語っている。
まぁ亜人にもいるかもしれないがそんな事は彼にはどうでもいい話だ。
「なかなかいい女じゃないか。名前は?」
軽い雰囲気で尋ねたこの魔物にやや呆れる。ただ名前と言われて少し悩んだ。
必要はあまりないがあって困るものではないからだ。しばらく考えたのち彼は一言答えた。
「ノワール」
黒を表すその単語は今の自分に相応しいと彼は思ったのだ。
「ノワール、いい名前だ。」
無警戒に彼に近づいてくるそれを彼は無表情に見つめる。
殺すのは容易い。彼のかまいたちには射程等存在せず、ただ腕を振って太刀筋を描けば触れたものを両断するのだから。
しかしそれではつまらない。どうせ壊すなら尊厳も何もかも踏み躙らないと彼の気は済まない。
だから甘んじて彼はそれの誘惑を受け入れる。
無防備にそれを懐まで誘い出し、くちづけを受け入れる。
されるがままに衣服を剥ぎ取られ、覆い被さられる。
「『幻影の神』」
それの耳にも届かないぐらい小さな声で彼はそう呟いた。
モルぺウスは夢の神である。その権能は文字通り夢を見せる。五感を狂わせる。
それはインキュバスと呼ばれる淫魔の一種だった。声で匂いで手管で女を狂わせ虜にする。
まぐわいを通じて精気を奪い、気に入った女ならば胤を植え付け数を増やす。
それとまぐわった女はそれの淫惑に狂い、死ぬまでそれを求め続けるという。
あっさりと誘惑に落ちた彼にそれはほくそ笑んだ。
内包する力は悪くない。抱き潰した上でギリギリに生かして苗床にしてしまおう。
そう考えていた。しかしその思惑は外れた。
どんな手を使っても女は一向に表情も声も上げない。
口ではどう不感症だのなんだの言おうが淫魔の魔力でどんな女も発情するはずなのに。
どんなに腰を振っても決して女は上り詰めない。
射精をコントロールできるそれだが相手を絶頂に導かないまま自分だけ果てるのは淫魔としてのプライドが許さなかった。
何かがおかしい。そう思い離れようとすると女から抱き寄せられ身動きが取れない。
それの本能が警鐘を鳴らしている。自分の土俵に引き摺り込んだつもりが逆に引き寄せられたのではないか。
その通りであり、それは彼の生み出した幻影の中で虚空に向かって腰を振っていた。
スキルを発動させた時点でそれは壊れたおもちゃのように動かなくなり、後は幻影に導かれるまま何もいないところで1人のたうち回っている。
彼は元の姿に戻ってローブを羽織り、それを冷ややかに見ていた。
実に滑稽だ。淫欲を武器にする淫魔もこの程度。つまらない。壊しがいがない。
「世界蛇』
また1つ権能を使う。世界蛇と言われた邪神に蛇の妖怪を紐づける。
具現化した巨大な蛇がそれを一飲みする。
全身を躍動させ、飲み込んだそれをじわじわと溶かしていく。
それが何か悲鳴をあげているが蛇の中だからよくわからない。
蛇の消化には時間がかかる。成人男性サイズのものを消化しきるにはどれほどの時間がかかるだろうか。
また、蛇は男根の象徴でもある。自らの蛇で女を食い物にしていたそれが蛇に丸呑みされるという意趣返しになった。
彼はあまり動かなくなってきたそれを眺めながら消化が終わるまでの退屈な時間をどう潰すか悩んだ。
「なんだ、強大な力を感じてやってきたがいるのはただの小娘じゃないか。」
『這いよる混沌』の権能でアマテラスの姿のままだった彼にそれはそう呟いた。
引き締まった肉体に女受けの良さそうな甘いマスクと艶のある声。
全てにおいて女を性的に刺激する要素の詰まったそれはしかし頭からはえるヤギを思わせる角と黒い尾がただの人ではないと物語っている。
まぁ亜人にもいるかもしれないがそんな事は彼にはどうでもいい話だ。
「なかなかいい女じゃないか。名前は?」
軽い雰囲気で尋ねたこの魔物にやや呆れる。ただ名前と言われて少し悩んだ。
必要はあまりないがあって困るものではないからだ。しばらく考えたのち彼は一言答えた。
「ノワール」
黒を表すその単語は今の自分に相応しいと彼は思ったのだ。
「ノワール、いい名前だ。」
無警戒に彼に近づいてくるそれを彼は無表情に見つめる。
殺すのは容易い。彼のかまいたちには射程等存在せず、ただ腕を振って太刀筋を描けば触れたものを両断するのだから。
しかしそれではつまらない。どうせ壊すなら尊厳も何もかも踏み躙らないと彼の気は済まない。
だから甘んじて彼はそれの誘惑を受け入れる。
無防備にそれを懐まで誘い出し、くちづけを受け入れる。
されるがままに衣服を剥ぎ取られ、覆い被さられる。
「『幻影の神』」
それの耳にも届かないぐらい小さな声で彼はそう呟いた。
モルぺウスは夢の神である。その権能は文字通り夢を見せる。五感を狂わせる。
それはインキュバスと呼ばれる淫魔の一種だった。声で匂いで手管で女を狂わせ虜にする。
まぐわいを通じて精気を奪い、気に入った女ならば胤を植え付け数を増やす。
それとまぐわった女はそれの淫惑に狂い、死ぬまでそれを求め続けるという。
あっさりと誘惑に落ちた彼にそれはほくそ笑んだ。
内包する力は悪くない。抱き潰した上でギリギリに生かして苗床にしてしまおう。
そう考えていた。しかしその思惑は外れた。
どんな手を使っても女は一向に表情も声も上げない。
口ではどう不感症だのなんだの言おうが淫魔の魔力でどんな女も発情するはずなのに。
どんなに腰を振っても決して女は上り詰めない。
射精をコントロールできるそれだが相手を絶頂に導かないまま自分だけ果てるのは淫魔としてのプライドが許さなかった。
何かがおかしい。そう思い離れようとすると女から抱き寄せられ身動きが取れない。
それの本能が警鐘を鳴らしている。自分の土俵に引き摺り込んだつもりが逆に引き寄せられたのではないか。
その通りであり、それは彼の生み出した幻影の中で虚空に向かって腰を振っていた。
スキルを発動させた時点でそれは壊れたおもちゃのように動かなくなり、後は幻影に導かれるまま何もいないところで1人のたうち回っている。
彼は元の姿に戻ってローブを羽織り、それを冷ややかに見ていた。
実に滑稽だ。淫欲を武器にする淫魔もこの程度。つまらない。壊しがいがない。
「世界蛇』
また1つ権能を使う。世界蛇と言われた邪神に蛇の妖怪を紐づける。
具現化した巨大な蛇がそれを一飲みする。
全身を躍動させ、飲み込んだそれをじわじわと溶かしていく。
それが何か悲鳴をあげているが蛇の中だからよくわからない。
蛇の消化には時間がかかる。成人男性サイズのものを消化しきるにはどれほどの時間がかかるだろうか。
また、蛇は男根の象徴でもある。自らの蛇で女を食い物にしていたそれが蛇に丸呑みされるという意趣返しになった。
彼はあまり動かなくなってきたそれを眺めながら消化が終わるまでの退屈な時間をどう潰すか悩んだ。
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