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カイトとルナ

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「おにいちゃん、まって!」


「るな、はやく!のあたちいっちゃう!」


あれから2年ーー
子供たちはカイトルナと名付けられ、元気に成長していた。


中庭ではノアとメイリー、そして2人の子供が元気に駆け回っている。


城の者達も微笑ましく見ていた。


「2人とも、あまり遠くには行っちゃダメよ?」

ベンチに座っているラナがそう声を掛ける。


「「はーい!」」


元気な返事をすると、2人は城の者達に飛びついたり、ノアとメイリーを追いかけ回したりと随分と活発であった。


ラナはそんな2人を愛しそうに見つめながらも、気持ちの良い日差しにうとうととしてしまう。

「(っちゃんと子供達を見てなきゃ…)」


「ラナ様、大丈夫ですよ。
私達が見ていますから。お疲れの様子ですもの、少し休まれてはいかがですか?」


「でも、」


「大丈夫だって姫さん。俺もいるし。」


アンジュに続き、ルイスもそう答えた。


ちなみに父カイルは団長の仕事で忙しくしており、
カイルはいつでも子供達と遊べるルイスを密かに羨ましく思っていた。


「ん、ありがとう…。」


そう言ったかと思うとあっという間に眠りに落ちてしまった。


「相当お疲れのようですわね…。」


「そりゃあ、遊び盛りの子供2人の相手だもんなぁ。

よっしゃ、俺も仲間に入れてもらおー!」


ルイスは2人の元へ駆け寄った。



「おふたりさん!俺も仲間に入れて下さいな!」


「いいよー!」


「なにしてあそぶ?」



「んじゃー、隠れんぼか?」


「えー、るな、すぐわかっちゃうもん!」


「あー、それもそうか。」

ルナはラナと同じ、動物と話せる能力を持って生まれた。
誰がどこにいるのかなど、聞かなくてもそこらの動物が教えてくれるのだ。

「じゃー、鬼ごっこはどうだ!」


「えー、さっきいっぱい、はしったよー!」


「もっと走ってもいいと思うぞ…?」

それが子供の仕事だろとルイスは思った。



「…んじゃ、何がしたい?」

「「たんけんごっこー!」」


そうしてルイスは子供たちを引き連れて、
城の探検へと向かったのだった。

最近の双子のお気に入りの遊びである。



ちなみにラナはアンジュに起こされ、子供たちが遊びから戻ってくるまで部屋でゆっくり休んでいるよう勧められた。


ーーーー



騎士団控え室付近にて。



「むむっ⁈カイト隊長!この先に獰猛どうもうな魔物がわんさかいると情報が!
どうされますか⁈」


「なに⁈もちろん、とつげきだー!!
いくぞ、るいすたいいん!」


「るなもー!」


そうして、3人は騎士団控え室獰猛な魔物へと突撃した。




バンッ!!


「かくごー!」

小さくも勇敢な戦士が扉を開けて騎士達へと突撃する。
手には木の枝。剣のつもりだろう。



「っぐあー!やられたー!」

魔物は喋らないはずだが…。
騎士達は真面目に子供達に付き合っている。


「るなもー!かくごー!」

ルナは騎士へ飛びつき足から離れない。



「…ルイス殿、毎回ここを遊び場にするのはやめていただきたいのだが。」

ーー副団長のジンである。


「えー、可愛いだろ?」


「それはもちろん、団長のお子様ですから可愛いです。
しかし、ここは子供がくるような所ではありません。いつ出撃の命が下るか分からないのです。
そうなればここは子供達にとっては危険なのですよ。」


「まぁ、俺もいるし。
何よりほら、見てみろよ。あいつら、めっちゃデレデレじゃん、癒されてんじゃん!」


ルイスの言う通り、騎士達は可愛い双子の相手を嬉々として受け入れていた。


「…まぁ、尊敬している団長の子供ですからね。」


「ジンも話してみなって。
絶対虜になるから!
おーい、ルナ!ちょっとこっちきてみ!」


「なぁにー?」

ルナがパタパタと駆け寄ってくる。



「このおじさんが、遊んで欲しいんだと。」

そう副団長を指差して言う。



「っな、ルイス殿!私はそんなこと…!」


「おじさん、おなまえなーに?」


「…ジンだ。あと、おじさんじゃなくて、俺はお兄さんだ。」


「おにいちゃん?るな、もうおにいちゃんいるよ?
じんも、るなのおにいちゃん?」



「そうではなく、いや、もういい。
…ジンと呼べ。」


「わかった!じん!なにしてあそぶ?」


「あ、いや俺は…」



そのやり取りをみていたルイスはプククと笑っていた。


「ルイス殿!笑っていないで、どうにかしてくれ!」



「んー、じゃルナ、仕方ないから俺と遊ぼ!」



「えー、るいす、いつもだっこするから、やー。」


「な、何⁈…今、嫌だって言ったか!?」

今度はジンに笑われた。


「あのねー、るいすとあそぶとき、あぶないっていって、いつもだっこするの。
つまんないー!」


「そんなっ!過保護過ぎたとでも⁈

いや、でも木登りとか、危ないだろう?」



「…ルイス殿、ルナ殿は木登りを?
女子おなごだよな?」


「きのぼりたのしいよ!
でも、るいすはだめっていうー!
のあと、めいりーと、きのうえでおはなしたのしいよー?」


「…そもそも、誰がそんなこと?」


「あー、姫さんがね、やりたいことはやらせたいって。
ただし、俺とか兄さんがいる時だけだってさ。
女の子だぜ?いいだろ、そんな事覚えなくても⁈」


「まぁ、だが、色々な事は経験させたいのか…?」



そんな話をしていると、カイトのいる方からどよめきが起こった。

様子を伺いに行くと、カイトが騎士達の小さな切り傷を治していたのだ。


「おおぅ、やっぱすごいよなぁ、こんな小さいのに癒しの力はしっかりあるんだろ?
ルナは動物と話せるし…。
姫さんの力をいい具合に受け継いだよなぁ。」


「そうだな。ただその分危険も増すというもの。外では特に注意が必要だろう。」




そこへ、アンジュが入ってきた。

「カイト様、ルナ様、そろそろお母様の元へ帰りましょう。お母様がお待ちですよ。」



「うん!ままのところいくー!」


「るなもいくー!」


そしてカイトがアンジュと手を繋ごうとした時、アンジュの手を見て言った。


「あんじゅ、おてていたい?」


よくみると手が荒れ、所々血が滲んでいる。


「これは、お見苦しい所をお見せ致しましたわ。大丈夫です。
ありがとうございます。」

カイトの優しい言葉ににっこりと笑う。


「ねぇ、あんじゅ、ここまでしゃがんで!」


カイトは床をペシペシと叩く。


「え?こ、こうですか?」


アンジュが言われた通りにカイトの目線までしゃがむと、カイトはアンジュを抱きしめた。


「え⁈カイト様?」


「あんじゅも、ぼくをぎゅってして!」



また言われた通りににカイトを抱きしめる。

すると、あっという間にアンジュの手の傷が綺麗に無くなった。


「まぁ!治して下さったのですね。
ありがとうございます。
ですが、カイト様はいつもこうやって治しているのかしら…?」


「いや、さっき騎士の傷を治した時は、
ただ手を当ててただけだぜ?」







「んふふー、おんなのこには、こうするの!」



「「「…………」」」




その場にいた者達は皆言葉を失った。



「………ルイス。」


アンジュの顔は般若の如く恐ろしい。



「いや!俺じゃない!そんな事教えて無いって!いや、ほんとに!!」


ルイスは慌ててそう言った。



「では、誰が教えたというのですか⁈」



「知らねぇよ、ほんと!」





ーーーそしてこの事はすぐに両親へと伝わった。



「…女だけは抱きしめて癒すだって?
………ルイス。」


「だから、俺じゃねぇって!!
そんな恐ろしい事教えられるか!」



「それじゃぁ、誰に?もし教えられてないとしたら、一体誰に似たのかしら?」

ラナが不思議そうに言う。



「…こんな事でお前と血が繋がっていることを実感するとはな。」



「俺かよ!!」







「矯正せねば。お前のようになられたらたまらん。」


「酷いぜ、兄さん…」

ルイスは涙が出そうだった。




こうして賑やかな1日は過ぎていった。
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