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可愛く着飾って

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「あーぁ、もっと遊びたいなぁ。」

最近の土曜日は律に会いに行く事がお決まりになっている。今日もそうだ。


「おい、俺と一緒なのに暇だってのか?」

最近は私に対してだいぶ砕けた感じに話してくれる。
少し律との距離が縮まったみたいで結構嬉しい。


「あ、違うよ?ただ律とお出かけとかしてみたいなぁって。」

いつもみたいにこの神社で律とお話するのも楽しいんだけど、出来るなら一緒にどこか出かけてみたい。

「なんだ、それならそうと言え。…どこに行きたいんだ?」


「え、いいの?ここから出ても大丈夫なの?」


「何でだ?俺は神使でもなければ、土地に縛られてる訳でも無い。どこにだって行けるぞ。」

そうなんだ。じゃあ、デートスポットとかも一緒に行けるってこと⁈
あ、でも…

「でも、人混みとか大丈夫?苦手だからこんな辺鄙へんぴな所に住んでるんじゃないの?」


「辺鄙言うな。お前がそんな事気にする必要はない。行きたいんだろ?」


「そりゃ、律と出掛けられるなら…行きたい。」


「じゃあ行こうぜ。普段お前がどう過ごしてるのかも見てみたいしな。」


「ほんと?私の事気になる?」


「…まぁ、興味はある。」



「えへへー!じゃあ行こうよ!私行きたい所あるんだ!」

この間出来た駅前の新しいモールもいいな。
そこでご飯食べて、色々買い物して、甘いものも食べたいなぁ。
律と出掛けられるなんて、凄く嬉しい!


「甘いものか。」


「っ何でそこだけ読み取るの⁈」


「涎出てたぞ。」
ニヤリと口元を示す。

「え、嘘!」

慌てて口に手をやったけど、よく分からない。


「ふ、嘘だ。」


「はぁ⁈」


「はは、悪い。そんなに楽しみなのかと思ってな。」


「そりゃ、律とデート出来るんだよ?嬉しいし、楽しみに決まってるじゃん!」

これが私の初デートなんだから!

「…デート?」


「デートでしょ。」

これでデートじゃなかったらなんなのよ。


「そうか。それなら男がエスコートしなければな。よし、駅前のモールに行くか。」


「やっぱりエスパー⁈」


「お前が考えてる事なんて手に取るように分かる。」

得意顔の律もカッコいいけど、それってプライバシー無いじゃん!私の心ダダ漏れ⁈


「…恥ずかしいから、あんまり心読まないでね。」


「あぁ。じゃあ行こう。」

ちょっと、本当に分かったの?何で笑ってるのよ!


「そうだ。はぐれないようにな。」

律はそう言うと私の手を取った。
あったかい。

「手、繋いで行くの?」


「なんだ、嫌か?」


「ううん、嬉しい。」

こんなの、ニヤけちゃうよ…。


「なら、行こう。」


❇︎❇︎❇︎



「わぁー、賑わってるね!」


「流石に多いな。」


ちなみに律はもう人間の姿だ。
これなら目立たないなんて言ってたけど、十分目立ってるよ律。

女の子の視線も凄いけど、男の嫉妬する視線も凄い…。

モテモテだなぁ、律は。

「なかなかいないもんね、こんなカッコいい人。」


「俺のことか?」


「…そうなんだけど、自分で言う?」

ほんと律って自信家だよね。

「お前がカッコいいなんて思う男は俺くらいだろうからな。」


「それはそうなんだけど…!」

なんでこんなにも自信に溢れてるの⁈
そんな所も素敵なんだけど!


「それで、何を買いたいんだ?」


「…服。ねぇ、私に似合う服を律が選んでよ。」

律が選んでくれた服なら毎日でも着てたいし。


「あぁ、いいぞ。」

そうして律に連れられてモールの中の1つの店に来たんだけど…


「何でこんなフリフリの店に!」

私に似合う服って言ったじゃん!
何で私から一番遠いイメージの店に来るの⁈


「別にそこまでじゃ無いだろう。」

確かに律の言う通り、私と同じ年代の女の子が多い店だけど、私には可愛すぎるの。

「私にとっては少しのフリルも勇気がいるんだから。シンプルイズベスト!」


「お前はシンプルを分かってないな。
よし、俺がシンプル且つお前に似合う可愛い服を選んでやろう。」

律が思う私に似合う服っていうのがどんなのか気になるけど、

「ほんとに似合うやつにしてね?期待しても着るのは私なんだからね?」


「大丈夫、何でも似合うから。」


「な、何でもは言いすぎだよ。」


それから律の後を付いて歩いていくけど、手に取って見ていくもの全てが可愛いすぎる…。
私は綺麗目シャツにスキニーとかでいいんだけど。



「私にはそんなの似合わないもん…。」

…自分で言ってて悲しくなってきた。
でも律はそんな私とは裏腹に服選びに夢中だ。


「お、これなんかいいな。」

やっと納得する服を見つけたのか、私に見せてきたそれは、私服では滅多に着ないワンピース。


「これいいだろう?お前の言うフリルは無いぞ。肌も程よく出るデザインだし、俺好みだ。」

律好み…!でも、

「フリルは無くてもレースじゃん。」


それは白の膝丈レースニットワンピース。
袖と裾がレース仕様の可愛らしいものだ。
確かに大人も着れるシンプルなデザインだけど、私に似合うかが問題なのに!


「黒髪のお前にはこの色はよく映えるし、その長い髪も結い上げればもっと色気も増すぞ?」


「あんたは私に何を求めてるのよ。」

女子高生に色気を求めないでよね!


「お前は可愛いんだから、もっと着飾れって事だよ。」


「か、可愛い…っ?」

っちょっと、不意打ちはやめてよーっ!


「ふはっ、真っ赤だぞ。」


「な、笑わないで!…でも、仕方ないからこれにしてあげる。」


「それは良かった。」



私はそのワンピースを買った。

いつかまた律とデートする時に着て行こう。律の言うように、髪は結い上げてウンと可愛いくして。
色気が出るかは分からないけど、
 律が私に似合うって選んでくれたんだから。

やっぱり好きな人好みの女の子でありたいもの!


ふふ、次はどこに行こうかなぁ!
もうすぐ夏休みだし、律とたくさんデートしたいな!
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