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惑星アクア編 終章
第5話 作戦失敗
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彼らは再びサイクスを訪れていた。
上空から見下ろす街並みは、以前と変わらず活気に溢れている。
破壊した屋台街もすっかり修復されており、多くの人々が行き交っていた。
「何処に降りるんスかぁ?」
砲塔の上で街を見下ろす貞宗に為次は訊いた。
「階段を登ったあたりだ」
「ああ、はいっス」
どうやらリングを潜る前に立ち寄った時同様に、上級国民区画の入り口付近らしい。
そこでターナ達と待ち合わせの予定とのことだ。
今回は皆でレオパルト2に乗ってきた。
クリスは家の用事でお留守番なので、貞宗とマヨーラを余分に乗せている。
2人は車内に入れないので正秀と貞宗が砲塔の上でウロチョロしていた。
「しかし、これは驚きだな。10分もかからずに着いたぞ」
貞宗は驚きを隠せないといった様子で下を眺めていた。
すかさず為次は自慢げに言う。
「ま、これでものんびり走って来たけどね」
「しかも風がまったく無いな」
「ふふん。宇宙も走れるからねー、当然ッスよ」
生命維持装置を兼ねるノーマルシールド内は外界と分け隔てられている。
同時にシールドジェネレーターは酸素なども生成するのだ。
おかげで、宇宙空間でもシールドの範囲内ならば外に出ることが可能だ。
そうこうしている内にターナとスレイブを見つけた。
階段を登った辺りでこちらを見上げているのが伺える。
戦車を地上走行モードに切り替えると、ゆっくりと近くに着地するのであった。
「ようっ、久しぶりだな」
そう言いながら正秀は大剣を担いで砲塔から飛び降りた。
続けて貞宗も飛び降り、皆も後に続いてゴソゴソと降車する。
「皆さんお元気そうで何よりですわ」
「なんだか見慣れない奴も居るな」
スレイブはユーナを見ながら言った。
「ユーナちゃんだぜ。ちょっとしたとこで知り合いになってな」
「へー、そうかい」
「私はターナと申しますの、よろしくねユーナさん」
「よろしく」
「隣の彼がスレイブ。私の息子ですわ」
「分かった」
「なんだか愛想の無い奴だな」
「スレイブ…… そのようなことを言うものではありませんよ」
「ちっ。分かった、分かった」
「それでは自己紹介も終わった所で、バハムートを見に来たのでしたわね」
「ここに居るの?」
と、為次が訊くとターナは答える。
「ええ、タメツグさん達の手に入れてくれたエレメンタルストーンのおかげで、立派な魔獣に育ってますわ」
「それは何よりってね。じゃあ早速拝ませてよ」
「ふふっ、よろしくってよ」
どうやら話はついているらしい。
なんの疑いも持たないターナに連れられて神殿内部へと進む。
例によって中央のエレベーターからアンカーの下部へと向かうのだった。
※ ※ ※ ※ ※
到着したのは3階であった。
地下と言っても地面に埋まっている分けではないので最下層は1階となる。
上級国民区画が高台になっているせいで、神殿入り口より下は地下と表現されているだけだ。
狭いエレベーターを降りて、しばらく進むと扉に突き当たった。
プシュー
扉が開くと……
先には目を疑うような光景が広がっていた。
中は格納庫であろう、5階までの吹き抜けで天井は高く周囲にキャットウォークがあしらえてある。
眼前には奴が居る……
広い部屋で狭そうにうずくまっている。
体中には至る所に太いケーブルが接続してあった。
あまりの惨状にタンククルーとユーナは言葉を失う。
「どうかしら? 素敵でしょう。ふふっ」
ターナの笑顔に悪寒が走る。
為次は恐る恐る手摺の方へと近づき下を覗き込んだ。
「うっ……」
凄まじい腐臭に思わず口と鼻を押さえてしまう。
そこには格納庫が狭く感じるまでの巨大なバハムートが目を閉じて横たわっており、周りには人間であったろう部品が床を埋め尽くさんばかりに散らばっていた。
覚悟はしていた。
だが予想以上の惨状を目の当たりにすれば気分も悪くなる。
せめて食べるならば残さず食えと思うが、必要なのが魂だけらば仕方ないとも妙な納得もしてしまう。
それでも……
「いやぁ、凄いねカッコいいよ。こんなの見れるなんて感激だなー…… ね、ねぇマサもそう思うよね」
為次はそう言いながら正秀に目配せをした。
ターゲットは目と鼻の先だ、幸い頭部もこちらを向いている。
「お、おう…… こりゃ本当にすげぇぜ」
と、大剣に手をかけた時だった!
「きゃっ、うげぇ」
奇妙な悲鳴に為次と正秀は振り返る。
「なんじゃ……?」
「スイちゃん……?」
見るとターナの首を片手で掴み足が宙に浮くまで持ち上げながら鬼の形相で睨むスイの姿があった。
一瞬、何が起こっているのか分からなかったが次第に状況が理解できる。
「お母様…… あなたはいったい…… いったい何をしているのですかっ!?」
「うっ、うぐぅ…… ス…… イ……」
「どうして…… どうして! みんなをこんな…… こんな惨たらしいことができるのですか! なんの罪があって殺されなければならなかったのですか!!」
泣き叫ぶスイの言葉を聞く為次に激しい後悔が襲い掛かる。
くそっ、なんで俺は気が付かなかったんだ。
スイが感情を取り戻していたのは昨日の夜に気がついたのに……
あの死骸の中に知り合いでも居たのか?
などと悔やんでも、もう遅かった。
貞宗があからさまにスイではなく、こちらを疑いの眼差しで見ている。
取り敢えず誤魔化そうとも思うが……
「ス…… マサっ!!」
咄嗟に正秀を振り返った。
「おうっ!!」
返事をしながら背中の大剣を構えると正秀はバハムート目掛けて飛び掛かる!
「行くぜ! 必殺滅殺…っ!?」
ガキンッ!!
「やらせないぜっ!」
必殺技の出掛かりをスレイブに阻まれてしまった。
「スレイブっ!」
「何しようってんだよっ、あっ? マサヒデよぉ」
2人は死骸とドス黒くなった血の池に着地する。
「邪魔しないでくれっ、今アイツを殺っとかないと!」
「へへっ、丁度いい。ここでどっちが強いかケリを付けようぜ」
「くそっ」
一方、正秀とスレイブが対峙しているのを横目に為次は、どうしようかと考えていた。
もう言い訳は通用しない。
どうにかしてバハムートを退治してしまいたいのだが……
「山崎よ、これはどういうことだ?」
「いやぁ、これはそのー、あははは」
「タメツグ失敗した。所詮はタメツグの考えはこの程度」
「うっ…… ユーナ……」
「ほう、失敗とはなんだ?」
「えっとですねぇ…… なんだろねー」
そんな為次が困っている所へマヨーラだけは呑気に言う。
「ちょっとぉタメツグ。なんだかスイが怒ってるわよ、どうにかしなさいよぉ」
「あああ…… もうマヨ……」
「なあ山崎よ、騙したのか? そうなのか?」
「違うって! プレゼントをあげようと思ってっ」
「あ? プレゼントだ?」
「そうそう、はいこれ」
そう言いながらデザートイーグルを引き抜くと同時にトリガーを引いた。
ドンッ! ガッキィィィン!!
まるで分かっていたかのように、貞宗は抜刀で弾丸を斬り防いだ。
だが、励起爆薬を使った弾丸だ。
とてつもない威力に若干の怯みができた。
「スイ! いつまでもカーチャンと戯れてんじゃない!」
「はう?」
一瞬、スイの手が緩んだ隙きにターナから引き離し脇に抱え込む。
「こんなんやってられるか、ベロベロバー」
と、スイを持ったまま一目散に逃げ出した。
「てめぇ山崎! 待てっ」
「ちぇ、ホローポイントじゃダメージ無しか……」
貞宗が追い掛けて来るが、無視して通信機を起動する。
「アイちゃん、失敗した」
『ああ、こちらでも確認している』
「グレイ、マインドジェネレーターを起動してっ」
『オッケーだ。許可は出ているから、すぐに起動してやる』
「早く、早く…… うわっととっ」
宛もなく逃げ回る為次の前に貞宗は素早く回り込み行く手を塞いだ。
スイを抱えたままでは力も体力も無い為次では逃げきれる筈もない。
「何処へ行く気だ? 気を使わないと話にならんぞ?」
「……あっ、あっちに裸のお姉さんが!」
などとふざけたことを言いながら発砲する。
ドンッ! ドンッ!
が、2発弾丸は狙った的を外れ虚しく格納庫の奥へと飛んで行った。
意表を突いたつもりの攻撃もなんの意味もなく避けられてしまったのだ。
「バカかお前は、そんなものじゃ当たらんぞ? しかも気を使わないと撃てないようだな」
「ぐぬぬぬ……」
図星であった。
励起爆薬など使えば常人にはとても撃てる代物ではない。
撃つ瞬間だけ気を集中して無理矢理に反動を抑え込んでいたのだ。
それはつまり、相手の気を捉えることが可能な気功士にとって攻撃タイミングがバレバレなのを意味している。
「すまんな山崎よ。この世界は神によって導かれる必要があるのだ、今ここでバハムートを殺らせる分けにはゆかん」
貞宗はそう言って刀を構え直した。
「ねぇ隊長さん」
「なんだ?」
「どうして俺達よそ者の思考汚染が早いか知ってる?」
「さあな。そんなことは、もうどうでもいい」
「考え方があまりにも違い過ぎるからだよ。記憶の圧縮率が悪くなるからだってねっ!」
と、為次は屈んだ。
ゴチッ
「ふぎゃ」
脇に抱えていたスイの頭を床にぶつけてしまったが、それこそどうでもいい。
同時に後ろからユーナが貞宗を目掛けて高速飛行で斬りかかる!
「はぁぁぁぁぁ!!」
ギシィン!
凄まじい反応速度だ。
A.A.S.を身に纏ったユーナの斬撃を受け止めた。
「うそっ!?」
更に驚きなのが、只の鉄で作られている刀を対魔獣ブレードで傷1つ付けることができないことだ。
特殊金属の刀身を覆っている薄いエネルギー膜が高速回転するチェーンソーのような攻撃によって、本来は防ぐ為に何かしらのシールドが必要な筈であった。
それを生身の人間が鉄の棒で受け止めるなど常識外れもいいとこだ。
「何をそんなに驚いているっ!」
ドカッ
「あぐっ!」
ユーナは腹を蹴り飛ばされてしまい膝を付く。
シールドによって保護されている筈なのに衝撃が貫通していた。
「ちょ、ユーナもっと真面目にやってよ」
「やっている、バカタメツグ…… くっ」
「邪魔するなら貴様も斬るぞ…… うが……」
貞宗は刀を振り上げようとしたが、なんだか様子がおかしい。
「うがぁぁぁぁぁ!? な、なんだこれはっ?」
頭を抱えながらもがき苦しみ始める。
「え? どうしたの?」
ユーナは立ち上がると再びブレードを構えた。
「よっしゃ、マインドジェネレーターが起動したかも」
と、為次はターナの方も見てみる。
すると同じようにもがいていた。
それでも……
ヨタヨタと壁際の端末へと近づいて行く。
「あ、やべ」
慌てて為次はターナの方へと向かうが間に合わない。
正秀は何をやっているのかと下をみるが、未だにスレイブと戯れ合っていた。
どうやら変身も気も使わずに戦っている様子だ。
戦士としてお互いの剣技だけで勝負を付けたいらしい。
この忙しい時に甚だ迷惑である。
「ターナ! やめろってばぁ!」
「少し早いですが…… これで…… これで私達の悲願は達成されますわァァァァァ!!」
為次の伸ばした手は僅かに届かず、拳を振り上げ端末を叩くターナ。
次の瞬間……
ゴゴゴゴゴ……
激しい振動と共に壁が揺れ始める。
繋がっていたケーブルがバシバシと外れ落ち、静かに眠っていた悪魔は瞼を開き赤く光る目を輝かせた。
千年の時を超え復活するバハムート。
如何なるものをも焼き尽くす。
悪夢が再び惑星アクアを飲み込もうとするのであった……
上空から見下ろす街並みは、以前と変わらず活気に溢れている。
破壊した屋台街もすっかり修復されており、多くの人々が行き交っていた。
「何処に降りるんスかぁ?」
砲塔の上で街を見下ろす貞宗に為次は訊いた。
「階段を登ったあたりだ」
「ああ、はいっス」
どうやらリングを潜る前に立ち寄った時同様に、上級国民区画の入り口付近らしい。
そこでターナ達と待ち合わせの予定とのことだ。
今回は皆でレオパルト2に乗ってきた。
クリスは家の用事でお留守番なので、貞宗とマヨーラを余分に乗せている。
2人は車内に入れないので正秀と貞宗が砲塔の上でウロチョロしていた。
「しかし、これは驚きだな。10分もかからずに着いたぞ」
貞宗は驚きを隠せないといった様子で下を眺めていた。
すかさず為次は自慢げに言う。
「ま、これでものんびり走って来たけどね」
「しかも風がまったく無いな」
「ふふん。宇宙も走れるからねー、当然ッスよ」
生命維持装置を兼ねるノーマルシールド内は外界と分け隔てられている。
同時にシールドジェネレーターは酸素なども生成するのだ。
おかげで、宇宙空間でもシールドの範囲内ならば外に出ることが可能だ。
そうこうしている内にターナとスレイブを見つけた。
階段を登った辺りでこちらを見上げているのが伺える。
戦車を地上走行モードに切り替えると、ゆっくりと近くに着地するのであった。
「ようっ、久しぶりだな」
そう言いながら正秀は大剣を担いで砲塔から飛び降りた。
続けて貞宗も飛び降り、皆も後に続いてゴソゴソと降車する。
「皆さんお元気そうで何よりですわ」
「なんだか見慣れない奴も居るな」
スレイブはユーナを見ながら言った。
「ユーナちゃんだぜ。ちょっとしたとこで知り合いになってな」
「へー、そうかい」
「私はターナと申しますの、よろしくねユーナさん」
「よろしく」
「隣の彼がスレイブ。私の息子ですわ」
「分かった」
「なんだか愛想の無い奴だな」
「スレイブ…… そのようなことを言うものではありませんよ」
「ちっ。分かった、分かった」
「それでは自己紹介も終わった所で、バハムートを見に来たのでしたわね」
「ここに居るの?」
と、為次が訊くとターナは答える。
「ええ、タメツグさん達の手に入れてくれたエレメンタルストーンのおかげで、立派な魔獣に育ってますわ」
「それは何よりってね。じゃあ早速拝ませてよ」
「ふふっ、よろしくってよ」
どうやら話はついているらしい。
なんの疑いも持たないターナに連れられて神殿内部へと進む。
例によって中央のエレベーターからアンカーの下部へと向かうのだった。
※ ※ ※ ※ ※
到着したのは3階であった。
地下と言っても地面に埋まっている分けではないので最下層は1階となる。
上級国民区画が高台になっているせいで、神殿入り口より下は地下と表現されているだけだ。
狭いエレベーターを降りて、しばらく進むと扉に突き当たった。
プシュー
扉が開くと……
先には目を疑うような光景が広がっていた。
中は格納庫であろう、5階までの吹き抜けで天井は高く周囲にキャットウォークがあしらえてある。
眼前には奴が居る……
広い部屋で狭そうにうずくまっている。
体中には至る所に太いケーブルが接続してあった。
あまりの惨状にタンククルーとユーナは言葉を失う。
「どうかしら? 素敵でしょう。ふふっ」
ターナの笑顔に悪寒が走る。
為次は恐る恐る手摺の方へと近づき下を覗き込んだ。
「うっ……」
凄まじい腐臭に思わず口と鼻を押さえてしまう。
そこには格納庫が狭く感じるまでの巨大なバハムートが目を閉じて横たわっており、周りには人間であったろう部品が床を埋め尽くさんばかりに散らばっていた。
覚悟はしていた。
だが予想以上の惨状を目の当たりにすれば気分も悪くなる。
せめて食べるならば残さず食えと思うが、必要なのが魂だけらば仕方ないとも妙な納得もしてしまう。
それでも……
「いやぁ、凄いねカッコいいよ。こんなの見れるなんて感激だなー…… ね、ねぇマサもそう思うよね」
為次はそう言いながら正秀に目配せをした。
ターゲットは目と鼻の先だ、幸い頭部もこちらを向いている。
「お、おう…… こりゃ本当にすげぇぜ」
と、大剣に手をかけた時だった!
「きゃっ、うげぇ」
奇妙な悲鳴に為次と正秀は振り返る。
「なんじゃ……?」
「スイちゃん……?」
見るとターナの首を片手で掴み足が宙に浮くまで持ち上げながら鬼の形相で睨むスイの姿があった。
一瞬、何が起こっているのか分からなかったが次第に状況が理解できる。
「お母様…… あなたはいったい…… いったい何をしているのですかっ!?」
「うっ、うぐぅ…… ス…… イ……」
「どうして…… どうして! みんなをこんな…… こんな惨たらしいことができるのですか! なんの罪があって殺されなければならなかったのですか!!」
泣き叫ぶスイの言葉を聞く為次に激しい後悔が襲い掛かる。
くそっ、なんで俺は気が付かなかったんだ。
スイが感情を取り戻していたのは昨日の夜に気がついたのに……
あの死骸の中に知り合いでも居たのか?
などと悔やんでも、もう遅かった。
貞宗があからさまにスイではなく、こちらを疑いの眼差しで見ている。
取り敢えず誤魔化そうとも思うが……
「ス…… マサっ!!」
咄嗟に正秀を振り返った。
「おうっ!!」
返事をしながら背中の大剣を構えると正秀はバハムート目掛けて飛び掛かる!
「行くぜ! 必殺滅殺…っ!?」
ガキンッ!!
「やらせないぜっ!」
必殺技の出掛かりをスレイブに阻まれてしまった。
「スレイブっ!」
「何しようってんだよっ、あっ? マサヒデよぉ」
2人は死骸とドス黒くなった血の池に着地する。
「邪魔しないでくれっ、今アイツを殺っとかないと!」
「へへっ、丁度いい。ここでどっちが強いかケリを付けようぜ」
「くそっ」
一方、正秀とスレイブが対峙しているのを横目に為次は、どうしようかと考えていた。
もう言い訳は通用しない。
どうにかしてバハムートを退治してしまいたいのだが……
「山崎よ、これはどういうことだ?」
「いやぁ、これはそのー、あははは」
「タメツグ失敗した。所詮はタメツグの考えはこの程度」
「うっ…… ユーナ……」
「ほう、失敗とはなんだ?」
「えっとですねぇ…… なんだろねー」
そんな為次が困っている所へマヨーラだけは呑気に言う。
「ちょっとぉタメツグ。なんだかスイが怒ってるわよ、どうにかしなさいよぉ」
「あああ…… もうマヨ……」
「なあ山崎よ、騙したのか? そうなのか?」
「違うって! プレゼントをあげようと思ってっ」
「あ? プレゼントだ?」
「そうそう、はいこれ」
そう言いながらデザートイーグルを引き抜くと同時にトリガーを引いた。
ドンッ! ガッキィィィン!!
まるで分かっていたかのように、貞宗は抜刀で弾丸を斬り防いだ。
だが、励起爆薬を使った弾丸だ。
とてつもない威力に若干の怯みができた。
「スイ! いつまでもカーチャンと戯れてんじゃない!」
「はう?」
一瞬、スイの手が緩んだ隙きにターナから引き離し脇に抱え込む。
「こんなんやってられるか、ベロベロバー」
と、スイを持ったまま一目散に逃げ出した。
「てめぇ山崎! 待てっ」
「ちぇ、ホローポイントじゃダメージ無しか……」
貞宗が追い掛けて来るが、無視して通信機を起動する。
「アイちゃん、失敗した」
『ああ、こちらでも確認している』
「グレイ、マインドジェネレーターを起動してっ」
『オッケーだ。許可は出ているから、すぐに起動してやる』
「早く、早く…… うわっととっ」
宛もなく逃げ回る為次の前に貞宗は素早く回り込み行く手を塞いだ。
スイを抱えたままでは力も体力も無い為次では逃げきれる筈もない。
「何処へ行く気だ? 気を使わないと話にならんぞ?」
「……あっ、あっちに裸のお姉さんが!」
などとふざけたことを言いながら発砲する。
ドンッ! ドンッ!
が、2発弾丸は狙った的を外れ虚しく格納庫の奥へと飛んで行った。
意表を突いたつもりの攻撃もなんの意味もなく避けられてしまったのだ。
「バカかお前は、そんなものじゃ当たらんぞ? しかも気を使わないと撃てないようだな」
「ぐぬぬぬ……」
図星であった。
励起爆薬など使えば常人にはとても撃てる代物ではない。
撃つ瞬間だけ気を集中して無理矢理に反動を抑え込んでいたのだ。
それはつまり、相手の気を捉えることが可能な気功士にとって攻撃タイミングがバレバレなのを意味している。
「すまんな山崎よ。この世界は神によって導かれる必要があるのだ、今ここでバハムートを殺らせる分けにはゆかん」
貞宗はそう言って刀を構え直した。
「ねぇ隊長さん」
「なんだ?」
「どうして俺達よそ者の思考汚染が早いか知ってる?」
「さあな。そんなことは、もうどうでもいい」
「考え方があまりにも違い過ぎるからだよ。記憶の圧縮率が悪くなるからだってねっ!」
と、為次は屈んだ。
ゴチッ
「ふぎゃ」
脇に抱えていたスイの頭を床にぶつけてしまったが、それこそどうでもいい。
同時に後ろからユーナが貞宗を目掛けて高速飛行で斬りかかる!
「はぁぁぁぁぁ!!」
ギシィン!
凄まじい反応速度だ。
A.A.S.を身に纏ったユーナの斬撃を受け止めた。
「うそっ!?」
更に驚きなのが、只の鉄で作られている刀を対魔獣ブレードで傷1つ付けることができないことだ。
特殊金属の刀身を覆っている薄いエネルギー膜が高速回転するチェーンソーのような攻撃によって、本来は防ぐ為に何かしらのシールドが必要な筈であった。
それを生身の人間が鉄の棒で受け止めるなど常識外れもいいとこだ。
「何をそんなに驚いているっ!」
ドカッ
「あぐっ!」
ユーナは腹を蹴り飛ばされてしまい膝を付く。
シールドによって保護されている筈なのに衝撃が貫通していた。
「ちょ、ユーナもっと真面目にやってよ」
「やっている、バカタメツグ…… くっ」
「邪魔するなら貴様も斬るぞ…… うが……」
貞宗は刀を振り上げようとしたが、なんだか様子がおかしい。
「うがぁぁぁぁぁ!? な、なんだこれはっ?」
頭を抱えながらもがき苦しみ始める。
「え? どうしたの?」
ユーナは立ち上がると再びブレードを構えた。
「よっしゃ、マインドジェネレーターが起動したかも」
と、為次はターナの方も見てみる。
すると同じようにもがいていた。
それでも……
ヨタヨタと壁際の端末へと近づいて行く。
「あ、やべ」
慌てて為次はターナの方へと向かうが間に合わない。
正秀は何をやっているのかと下をみるが、未だにスレイブと戯れ合っていた。
どうやら変身も気も使わずに戦っている様子だ。
戦士としてお互いの剣技だけで勝負を付けたいらしい。
この忙しい時に甚だ迷惑である。
「ターナ! やめろってばぁ!」
「少し早いですが…… これで…… これで私達の悲願は達成されますわァァァァァ!!」
為次の伸ばした手は僅かに届かず、拳を振り上げ端末を叩くターナ。
次の瞬間……
ゴゴゴゴゴ……
激しい振動と共に壁が揺れ始める。
繋がっていたケーブルがバシバシと外れ落ち、静かに眠っていた悪魔は瞼を開き赤く光る目を輝かせた。
千年の時を超え復活するバハムート。
如何なるものをも焼き尽くす。
悪夢が再び惑星アクアを飲み込もうとするのであった……
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自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
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大和型戦艦、異世界に転移する。
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辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
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