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異世界編 2章
第85話 石人その1
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戦車の周りで美味しい蜜柑を喰らう御一行様。
スイが頑張ってヒールを付与してくれたので、美味しい上に元気百倍だ。
正秀を除いては……
「ゲプッ、30個は食べたはずだが全然動けないぜ」
「怪我はしてなかったしねぇ、寝れば治るでしょ」
経験上、寝たら治ったので間違いないと思った為次。
「ヒールは怪我しか治らないのよ」
「だってさ、マサ」
「おう、ま、仕方ないか……」
「ところで、マサヒデ君は何者なのかい? 見たところ戦士のようだが、あの力は一体……」
「気功士の力だってさ」
シャルの問いに為次は答えた。
「何と! あの生きた伝説の冒険者サダムネ氏と同じ能力が使えるのか!?」
「でも、俺は戦士なんだぜ」
「さしずめ、気功戦士だなマサヒデ君は」
「どっかのロボットみたいな名前ですな」
「それ以上は言うんじゃねーぞ、為次」
「あ、はい」
「ではでは、マサヒデ様もお疲れですし、一度戻ってお休みになられた方がいいです。いいのです」
と、スイは為次の近くで、おどおどしながら帰宅を促す。
どうにも、シムリ視線が痛いので……
姉の背後に隠れ、顔だけ出してスイを睨んでいる。
否、むしろ監視と言ったほうが正しいのかも知れない。
「じぃー……(勝手な真似はさせないんだよ)」
「はうぅぅぅ……」
だから、スイは大好きな主にベタベタと触りたいのを我慢していた。
早く帰って一緒に寝床に入りたいのだ。
「じゃぁ、帰りましょ」
「そうですマヨマヨ様の言う通りなのです。帰りましょう、帰りましょう」
「むぬぅぅぅ(逃がさないよ)」
「帰るなら、為…… じゃ無理だな、スイちゃん悪いがレオの上まで運んでくれないか」
「はいです」
スイは泥だらけで地面に転がっている正秀を拾い上げると、ぴょんぴょんと砲塔の上に登った。
戦闘用ポーションの効果は既に切れているのであろう、一度にジャンプしては登らない。
それでも、大の大人をお姫様抱っこしながらジャンプする華奢な少女は、見た目に凄いものがある。
「何処に置きますか?」
「前の方だと急ブレーキされた時に吹っ飛びそうだからな、後ろの空いてるとこでいいぜ」
「では、あちらに…… うぉっととと…… です~!」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ!!
スイが移動しようとした時であった。
突如、大きな地鳴りと共に大地が揺らぐ。
砲塔の上でバランスを崩すスイ。
「あわわわわわぁ」
動けない正秀は慌てふためくしかない。
「うわぁー!」
どてーん!
正秀を掴んだままスイは戦車から落ちてしまった。
慌ててマヨーラは駆け寄る。
「マサヒデ、大丈夫なの!?」
「痛たたたた」
「痛たい痛いですー」
皆が慌てているので為次も、仕方なく慌てることにした。
「ぬぉ、地震だ、地震。大変だー」
そんな中、シャルだけは冷静である。
「かなりの揺れだな、みんな気を付けるんだ」
慌てふためく皆をよそに、シムリは数百メートル先の地面を指しながら何か姉に訴えかけている。
「お姉ちゃん! お姉ちゃん! あれっ!」
そこは、先程まで何も無かった場所なのだが、異様に地面が盛り上がっておりモゾモゾと土が動いている。
「どうしたシムリ? 何があると……」
シムリが指し示す場所を見たシャルは、その光景に驚きを隠せない。
「なんだ、あれは!?」
蠢く地面が、どんどんと盛り上がっていくのだ。
皆は何事かと揺れ動く大地の上でそれを眺めていた。
ひっくり返って、起き上がれない正秀を除いては。
「なんだ? なんだ? 何が起こってるんだ?」
「なんか地面から産まれるっぽいかも」
「はぁ? なんだそりゃ? 俺も見たいんだぜ」
そして……
ドドドーン!!
豪快な音を立て、盛り上がった土の中から巨大な石が勢い良く飛び出して来た!
周囲には黒い雨のように土が降り注ぐ。
出てきた巨石は上へと伸びて行き、高さは優に15メートルは超えただろか?
そこで止まると同時に、地震も収まるのであった。
「な、なんだありゃ」
流石に為次も、それを見ると驚きを隠せない。
マヨーラとシャルは、その正体を知っている様子だ。
「どうしてこんな奴がここに……」
「これは…… マズいな」
地面から生えてきた石が動き出す。
しかも、「グォォォ!」って吠えたりする始末だ!
爽快に叫び終わった石は、周囲を見渡すように首を振る。
そう、その石には頭があった。
しかも頭だけではなく、手も足も生えている。
「はわわわ、ゴーレムさんなのです!」
「ゴーレム? これが…… デカ過ぎんでしょ!」
ゴーレムは「グゴゴゴォー」と呻きながら、ドシンドシンと歩き始める。
その先には、残ったゴブリンを袋叩きにした冒険者の集団が居た。
当然、冒険者集団も新たなるモンスターの出現は確認している。
そんな彼らは遠目に見ても、あたふたしながら焦っているのは見て取れた。
「あっちに行っちゃうね」
為次は不思議そうに言った。
「ええそうね、あいつら大丈夫かしら?」
「ねーマヨ。あれって、魔獣じゃないの?」
「魔獣に決まってるじゃない、それがどうしたのよ?」
「あ、いや…… ちょっとね」
あっちに行ってしまうゴーレムを見る為次は、少々疑問に思うことがあった。
最初に魔獣は肉食だから、肉に集まるものだと思った。
しかし、それは違うようで先程はスイを目掛けて襲って来た。
だが今回のゴーレムはスイではなく、複数の冒険者集団を襲おうとしている。
「とにかく、あのデカブツを叩くわよ」
「ああ、そうだなゴーレムに壁を攻撃されては、ひとたまりもないからな」
マヨーラとシャルは討伐する気らしい。
早速、為次はお見送りをするのだ!
「行ってらっしゃーい」
「あ…… タ…… えぇ(タメツグさんは行かないの!?)」
「行くぞシムリ!」
「え? 私も行くの? お姉ちゃん」
「当たり前だろう! どうしたと言うのだ?」
「行ってらっしゃいませ、です」
「う、スイさん…… 私の見てないとこで変なコトしたら許さないからね!」
「はぅぅぅ、何もしないですよ」
「大丈夫かシムリ? 今日のお前は少しおかしいぞ」
「う…… だ、大丈夫だよ、お姉ちゃん」
「本当か? では行くぞ」
「うん」
そうして、シムリはスイを一睨みしてから、姉と一緒にゴーレム討伐に向かって行った。
「スイ、シムリになんかしたの?」
「な、な、何もしてないのです!」
「あんたも大変ね…… スイ」
「うぅ……」
残されたタンククルーは、呆然とゴーレムVS冒険者集団の戦闘を眺めることにした。
そうすると決めた言うよりは、誰一人として行こうとは言わないので必然的にそうなっただけではある。
ゴーレムを叩くと言ったマヨーラも、自分一人では何もできないことは理解している。
だから、皆と一緒に眺めていた。
為次に至っては、楽しそうに双眼鏡を覗いている。
「あっ、また潰された…… スゲーなー」
「苦戦してるようね、あの2人は大丈夫かしら?」
「さぁ? どうだろ」
「ちょっと遠くて見え辛いわね。タメツグの覗いてるのだと良く見えるんでしょ、状況はどう?」
「さっき、3人目が潰れて…… それと3、4人ってとこかな? 生きてるけど下が失くなっちゃった感じかな」
「そ、そう……」
「あぁっ! ハイハイしてた人が食べられたよ。今2人程……」
「よぉ為次、楽しそうだな」
「ん?」
為次は呼びかけに振り向くと、そこには地べたに座り込んだ正秀がこちらを見ていた。
どうやら、自分で起き上がった様子ではある。
「マサ…… おっきしたん?」
「少し休んでたら、ちょっとは動けるようになったぜ」
「へぇ……」
「でもまだ、上手く立ち上がれないぜ。だから俺にも双眼鏡を貸してくれよ」
「ああ、うん、いいよ」
どうぞと双眼鏡を渡す。
「サンキューな、為次」
双眼鏡はまだ他にもあるが、取りに行くにが面倒臭いので自分のを渡した。
今度は、双眼鏡を受け取った正秀が戦場を覗き始める。
「うぉぉぉ! マジでスゲーぜ、俺も動けりゃな」
15メートル以上もある巨人が暴れる様は、正に圧巻だ。
映画やゲームでもなく、現実において怪物が人々を殴り潰す生の情景は、なんとも言えない不思議な感覚を覚えるのであった。
「ねぇ、マヨ」
「何よ、気持ち悪いわね」
「ええっ!? なんもしてないよぉ」
「タメツグのくせに、真面目な顔してるからよ」
「ぶぅ」
「で、なんなのよ」
「ああっとね、ゴーレムって自我とか意識とかそんな感じの思考って持ってるのん?」
「ゴーレムは人形みたいなものよ、そんなのある分けないでしょ」
「やっぱそうだよねー。ゴーレムってファンタジーだと誰かが作ったやつだよね、確か」
「……誰が作ったっていうのよ?」
「魔獣を産み出すのは、ターナの仕事じゃなかったけな」
「はぁ!? あんた何バカなこと言ってんのよ!」
「怪物作りが趣味の神官様ってね、ははっ」
「いい加減になさいよっ!」
「あれ? マヨ怒った?」
「当たり前よっ! いくらタメツグがバカでも怒るわよ! どうして、ターナがゴーレムを作ってこんなとこで暴れさすのよ!」
「へぇ…… 怒るんだ……」
そう呟きながら、為次はマヨーラを見つめる……
「な、何よ……」
「ターナがやろうとしていることは知ってるの?」
「え?」
「神様を召喚したいってさ」
「知ってるわ…… それがどうしたのよ」
「どうやって神様を連れて来るの?」
「それは…… エレメンタルストーンを集めてでしょ!」
「どうやって、集めるの?」
「強大な魔獣を倒して……!? まさかタメツグ、あんた本当にターナが魔獣を召喚したとでも言いたいのっ!?」
「ファーサの村人を食べ尽くしたドラゴンとか」
「いい加減になさいって言ってるでしょ!」
怒りをあらわにするマヨーラ。
次の瞬間……
ビタンッ!
為次の頬に平手打ちが飛んできていた。
「痛ってぇー」
マヨーラは引っ叩いた手をそのままに、為次を睨みつけていた。
その瞳には、薄っすらと涙が浮かび上がっている。
「おーい為次、そのへんにしとけよ。白でいいだろ」
為次は赤くなった頬をさすりながら言う。
「白っすか、パンツは黒でも」
「ああ、そうだぜ」
「ふ、ふざけないでよっ!」
「なあマヨーラ、俺達は仲間だろ?」
正秀は双眼鏡から目を離しマヨーラを見て言った。
「……仲間?」
「違うのか?」
「えっと……」
「為次のことは気にする必要ないぜ、なにせ嫌われるのは慣れてるからな。だよな為次」
「はいはい」
「何よそれ……」
「んじゃ、後は自分の街がヤバイのにバックレてる隊長…… 貞宗のおっさんに聞くとして、あいつを先になんとかしますか」
「だな」
正秀はヨロヨロと立ち上がると、為次に寄り掛かる。
だいぶ動けるようにはなった感じではあるが、まだ戦える状態ではない。
「やけにやる気じゃないか、この世界が気に入ったのか?」
「いや…… こんな世界はどうでもいいけどさ。マヨが仲間とか言っちゃうし」
「何よ……」
「ぼっちのマヨに笑い方ぐらい教えてからでもいいかなって、帰るのは」
「だ、誰がぼっちよ」
為次はレオパルト2を振り返り、パンパンと手を叩きながら言う。
「はい、搭乗、搭乗、お話は瓦礫の山を作ってからね。マヨも手伝ってね」
「仕方ないわねぇ…… い、一応仲間だしぃ……」
「よろしくな、マヨーラ」
「よろしくなのです」
「ばか」
と、マヨーラはそっと呟くのであった。
そして、四人はぞろぞろとレオパルト2に乗り込む。
ゴーレム討伐に向けて。
そんな搭乗時にマヨーラは為次を見ながら思う……
今度パンツ見たら殺してやる……
と……
スイが頑張ってヒールを付与してくれたので、美味しい上に元気百倍だ。
正秀を除いては……
「ゲプッ、30個は食べたはずだが全然動けないぜ」
「怪我はしてなかったしねぇ、寝れば治るでしょ」
経験上、寝たら治ったので間違いないと思った為次。
「ヒールは怪我しか治らないのよ」
「だってさ、マサ」
「おう、ま、仕方ないか……」
「ところで、マサヒデ君は何者なのかい? 見たところ戦士のようだが、あの力は一体……」
「気功士の力だってさ」
シャルの問いに為次は答えた。
「何と! あの生きた伝説の冒険者サダムネ氏と同じ能力が使えるのか!?」
「でも、俺は戦士なんだぜ」
「さしずめ、気功戦士だなマサヒデ君は」
「どっかのロボットみたいな名前ですな」
「それ以上は言うんじゃねーぞ、為次」
「あ、はい」
「ではでは、マサヒデ様もお疲れですし、一度戻ってお休みになられた方がいいです。いいのです」
と、スイは為次の近くで、おどおどしながら帰宅を促す。
どうにも、シムリ視線が痛いので……
姉の背後に隠れ、顔だけ出してスイを睨んでいる。
否、むしろ監視と言ったほうが正しいのかも知れない。
「じぃー……(勝手な真似はさせないんだよ)」
「はうぅぅぅ……」
だから、スイは大好きな主にベタベタと触りたいのを我慢していた。
早く帰って一緒に寝床に入りたいのだ。
「じゃぁ、帰りましょ」
「そうですマヨマヨ様の言う通りなのです。帰りましょう、帰りましょう」
「むぬぅぅぅ(逃がさないよ)」
「帰るなら、為…… じゃ無理だな、スイちゃん悪いがレオの上まで運んでくれないか」
「はいです」
スイは泥だらけで地面に転がっている正秀を拾い上げると、ぴょんぴょんと砲塔の上に登った。
戦闘用ポーションの効果は既に切れているのであろう、一度にジャンプしては登らない。
それでも、大の大人をお姫様抱っこしながらジャンプする華奢な少女は、見た目に凄いものがある。
「何処に置きますか?」
「前の方だと急ブレーキされた時に吹っ飛びそうだからな、後ろの空いてるとこでいいぜ」
「では、あちらに…… うぉっととと…… です~!」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ!!
スイが移動しようとした時であった。
突如、大きな地鳴りと共に大地が揺らぐ。
砲塔の上でバランスを崩すスイ。
「あわわわわわぁ」
動けない正秀は慌てふためくしかない。
「うわぁー!」
どてーん!
正秀を掴んだままスイは戦車から落ちてしまった。
慌ててマヨーラは駆け寄る。
「マサヒデ、大丈夫なの!?」
「痛たたたた」
「痛たい痛いですー」
皆が慌てているので為次も、仕方なく慌てることにした。
「ぬぉ、地震だ、地震。大変だー」
そんな中、シャルだけは冷静である。
「かなりの揺れだな、みんな気を付けるんだ」
慌てふためく皆をよそに、シムリは数百メートル先の地面を指しながら何か姉に訴えかけている。
「お姉ちゃん! お姉ちゃん! あれっ!」
そこは、先程まで何も無かった場所なのだが、異様に地面が盛り上がっておりモゾモゾと土が動いている。
「どうしたシムリ? 何があると……」
シムリが指し示す場所を見たシャルは、その光景に驚きを隠せない。
「なんだ、あれは!?」
蠢く地面が、どんどんと盛り上がっていくのだ。
皆は何事かと揺れ動く大地の上でそれを眺めていた。
ひっくり返って、起き上がれない正秀を除いては。
「なんだ? なんだ? 何が起こってるんだ?」
「なんか地面から産まれるっぽいかも」
「はぁ? なんだそりゃ? 俺も見たいんだぜ」
そして……
ドドドーン!!
豪快な音を立て、盛り上がった土の中から巨大な石が勢い良く飛び出して来た!
周囲には黒い雨のように土が降り注ぐ。
出てきた巨石は上へと伸びて行き、高さは優に15メートルは超えただろか?
そこで止まると同時に、地震も収まるのであった。
「な、なんだありゃ」
流石に為次も、それを見ると驚きを隠せない。
マヨーラとシャルは、その正体を知っている様子だ。
「どうしてこんな奴がここに……」
「これは…… マズいな」
地面から生えてきた石が動き出す。
しかも、「グォォォ!」って吠えたりする始末だ!
爽快に叫び終わった石は、周囲を見渡すように首を振る。
そう、その石には頭があった。
しかも頭だけではなく、手も足も生えている。
「はわわわ、ゴーレムさんなのです!」
「ゴーレム? これが…… デカ過ぎんでしょ!」
ゴーレムは「グゴゴゴォー」と呻きながら、ドシンドシンと歩き始める。
その先には、残ったゴブリンを袋叩きにした冒険者の集団が居た。
当然、冒険者集団も新たなるモンスターの出現は確認している。
そんな彼らは遠目に見ても、あたふたしながら焦っているのは見て取れた。
「あっちに行っちゃうね」
為次は不思議そうに言った。
「ええそうね、あいつら大丈夫かしら?」
「ねーマヨ。あれって、魔獣じゃないの?」
「魔獣に決まってるじゃない、それがどうしたのよ?」
「あ、いや…… ちょっとね」
あっちに行ってしまうゴーレムを見る為次は、少々疑問に思うことがあった。
最初に魔獣は肉食だから、肉に集まるものだと思った。
しかし、それは違うようで先程はスイを目掛けて襲って来た。
だが今回のゴーレムはスイではなく、複数の冒険者集団を襲おうとしている。
「とにかく、あのデカブツを叩くわよ」
「ああ、そうだなゴーレムに壁を攻撃されては、ひとたまりもないからな」
マヨーラとシャルは討伐する気らしい。
早速、為次はお見送りをするのだ!
「行ってらっしゃーい」
「あ…… タ…… えぇ(タメツグさんは行かないの!?)」
「行くぞシムリ!」
「え? 私も行くの? お姉ちゃん」
「当たり前だろう! どうしたと言うのだ?」
「行ってらっしゃいませ、です」
「う、スイさん…… 私の見てないとこで変なコトしたら許さないからね!」
「はぅぅぅ、何もしないですよ」
「大丈夫かシムリ? 今日のお前は少しおかしいぞ」
「う…… だ、大丈夫だよ、お姉ちゃん」
「本当か? では行くぞ」
「うん」
そうして、シムリはスイを一睨みしてから、姉と一緒にゴーレム討伐に向かって行った。
「スイ、シムリになんかしたの?」
「な、な、何もしてないのです!」
「あんたも大変ね…… スイ」
「うぅ……」
残されたタンククルーは、呆然とゴーレムVS冒険者集団の戦闘を眺めることにした。
そうすると決めた言うよりは、誰一人として行こうとは言わないので必然的にそうなっただけではある。
ゴーレムを叩くと言ったマヨーラも、自分一人では何もできないことは理解している。
だから、皆と一緒に眺めていた。
為次に至っては、楽しそうに双眼鏡を覗いている。
「あっ、また潰された…… スゲーなー」
「苦戦してるようね、あの2人は大丈夫かしら?」
「さぁ? どうだろ」
「ちょっと遠くて見え辛いわね。タメツグの覗いてるのだと良く見えるんでしょ、状況はどう?」
「さっき、3人目が潰れて…… それと3、4人ってとこかな? 生きてるけど下が失くなっちゃった感じかな」
「そ、そう……」
「あぁっ! ハイハイしてた人が食べられたよ。今2人程……」
「よぉ為次、楽しそうだな」
「ん?」
為次は呼びかけに振り向くと、そこには地べたに座り込んだ正秀がこちらを見ていた。
どうやら、自分で起き上がった様子ではある。
「マサ…… おっきしたん?」
「少し休んでたら、ちょっとは動けるようになったぜ」
「へぇ……」
「でもまだ、上手く立ち上がれないぜ。だから俺にも双眼鏡を貸してくれよ」
「ああ、うん、いいよ」
どうぞと双眼鏡を渡す。
「サンキューな、為次」
双眼鏡はまだ他にもあるが、取りに行くにが面倒臭いので自分のを渡した。
今度は、双眼鏡を受け取った正秀が戦場を覗き始める。
「うぉぉぉ! マジでスゲーぜ、俺も動けりゃな」
15メートル以上もある巨人が暴れる様は、正に圧巻だ。
映画やゲームでもなく、現実において怪物が人々を殴り潰す生の情景は、なんとも言えない不思議な感覚を覚えるのであった。
「ねぇ、マヨ」
「何よ、気持ち悪いわね」
「ええっ!? なんもしてないよぉ」
「タメツグのくせに、真面目な顔してるからよ」
「ぶぅ」
「で、なんなのよ」
「ああっとね、ゴーレムって自我とか意識とかそんな感じの思考って持ってるのん?」
「ゴーレムは人形みたいなものよ、そんなのある分けないでしょ」
「やっぱそうだよねー。ゴーレムってファンタジーだと誰かが作ったやつだよね、確か」
「……誰が作ったっていうのよ?」
「魔獣を産み出すのは、ターナの仕事じゃなかったけな」
「はぁ!? あんた何バカなこと言ってんのよ!」
「怪物作りが趣味の神官様ってね、ははっ」
「いい加減になさいよっ!」
「あれ? マヨ怒った?」
「当たり前よっ! いくらタメツグがバカでも怒るわよ! どうして、ターナがゴーレムを作ってこんなとこで暴れさすのよ!」
「へぇ…… 怒るんだ……」
そう呟きながら、為次はマヨーラを見つめる……
「な、何よ……」
「ターナがやろうとしていることは知ってるの?」
「え?」
「神様を召喚したいってさ」
「知ってるわ…… それがどうしたのよ」
「どうやって神様を連れて来るの?」
「それは…… エレメンタルストーンを集めてでしょ!」
「どうやって、集めるの?」
「強大な魔獣を倒して……!? まさかタメツグ、あんた本当にターナが魔獣を召喚したとでも言いたいのっ!?」
「ファーサの村人を食べ尽くしたドラゴンとか」
「いい加減になさいって言ってるでしょ!」
怒りをあらわにするマヨーラ。
次の瞬間……
ビタンッ!
為次の頬に平手打ちが飛んできていた。
「痛ってぇー」
マヨーラは引っ叩いた手をそのままに、為次を睨みつけていた。
その瞳には、薄っすらと涙が浮かび上がっている。
「おーい為次、そのへんにしとけよ。白でいいだろ」
為次は赤くなった頬をさすりながら言う。
「白っすか、パンツは黒でも」
「ああ、そうだぜ」
「ふ、ふざけないでよっ!」
「なあマヨーラ、俺達は仲間だろ?」
正秀は双眼鏡から目を離しマヨーラを見て言った。
「……仲間?」
「違うのか?」
「えっと……」
「為次のことは気にする必要ないぜ、なにせ嫌われるのは慣れてるからな。だよな為次」
「はいはい」
「何よそれ……」
「んじゃ、後は自分の街がヤバイのにバックレてる隊長…… 貞宗のおっさんに聞くとして、あいつを先になんとかしますか」
「だな」
正秀はヨロヨロと立ち上がると、為次に寄り掛かる。
だいぶ動けるようにはなった感じではあるが、まだ戦える状態ではない。
「やけにやる気じゃないか、この世界が気に入ったのか?」
「いや…… こんな世界はどうでもいいけどさ。マヨが仲間とか言っちゃうし」
「何よ……」
「ぼっちのマヨに笑い方ぐらい教えてからでもいいかなって、帰るのは」
「だ、誰がぼっちよ」
為次はレオパルト2を振り返り、パンパンと手を叩きながら言う。
「はい、搭乗、搭乗、お話は瓦礫の山を作ってからね。マヨも手伝ってね」
「仕方ないわねぇ…… い、一応仲間だしぃ……」
「よろしくな、マヨーラ」
「よろしくなのです」
「ばか」
と、マヨーラはそっと呟くのであった。
そして、四人はぞろぞろとレオパルト2に乗り込む。
ゴーレム討伐に向けて。
そんな搭乗時にマヨーラは為次を見ながら思う……
今度パンツ見たら殺してやる……
と……
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ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
日本は異世界で平和に過ごしたいようです。
Koutan
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2020年、日本各地で震度5強の揺れを観測した。
これにより、日本は海外との一切の通信が取れなくなった。
その後、自衛隊機や、民間機の報告により、地球とは全く異なる世界に日本が転移したことが判明する。
そこで日本は資源の枯渇などを回避するために諸外国との交流を図ろうとするが...
この作品では自衛隊が主に活躍します。流血要素を含むため、苦手な方は、ブラウザバックをして他の方々の良い作品を見に行くんだ!
ちなみにご意見ご感想等でご指摘いただければ修正させていただく思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
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