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異世界編 2章
第82話 迎撃その4
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適当な囮作戦、その名もお肉大作戦を決行することになりました烏合の衆。
為次の作戦内容を聞き終わると、皆は可もなく不可もなくと言った感じで納得し、決まったのであった。
そんな、良く分からない連中と共に、戦車クルーの一同もなんだかやる気を出しているのでした。
「じゃあ、みんなー肉を載せ替えてー」
為次が何か言ってるけど、皆はバラバラで会話をしているだけで、言うことを聞いてくれない。
パジャマを着た、変なにーちゃんとしか認識されていないのだ。
さっきレオパルト2で強さを見せつけ、素晴らしい作戦も説明したばかりだいうのに、中の人には興味が無いらしい。
そもそも、為次には求心力がまったく無いのだ。
「ねーねー」
「誰も為次の言うことを聞かないぜ」
「うん……」
「どうすんのよ」
「仕方ない、私が指揮を取ろう」
「うん、たのんます」
結局、見かねたシャルが作戦の指揮を取ることになった。
本当は何故か情緒不安定となった妹の傍に居たいのだが、為次のペースでは作戦が何時終わるのか分かったものではない。
だから、さっさと終わらせたいと言うのが本心であった。
「おい! みんな聞くんだ! これよりお肉大作戦を開始する!」
シャルが叫ぶと皆がぞろぞろと集まって来た。
「戦士は食料の移し替え、闘魔道士は壁の上から魔法の準備だ!」
「よし! いっちょやるか」
「ああ、手伝うって約束だしね」
門を開けてた戦士風冒険者達は言った。
「船長! 防衛艇をこちらの陸上艇の横に着けてくれ」
「あ、牽引するから後ろで」
牽引ワイヤーを繋げる必要があるので、為次はそう頼んだ。
「了解だ」
「尚、聖魔道士は戦闘が始まったら、戦士のバックアップをやってもらう!」
「おうよ、任せときな」
船長も了解した。
「シムリ、お前は向こうだな。また後で会おう」
「うん…… 気を付けてね、お姉ちゃん」
「ああ、お互いにな」
「あれ? どっか行っちゃうんだ、シムリ」
為次は訊いた。
「そうだが、何か用でもあるのかい?」
「いや…… 特には……」
こうして、仲の良い姉妹が二手に分かれると、オペレーションONIKUが始まる。
皆はそれぞれの準備を始めると、為次も牽引の為に車体後部に添え付けてあるワイヤーを外す。
しかし、移動して来た防衛艇は何故だか横に置いてある。
戦士の皆は言われたように、食料の移し替えをせっせと始めているのにだ。
「くそっ、全然、人の話を聞いてくれないよ……」
「あんたの説明を聞いてくれたのも、シャルのおかげね」
「仕方ねーな、ワイヤーは俺が繋げるから為次はレオを前に移動させな」
「うん……」
そんな感じで、作戦準備を進めるのであった。
……………
………
…
しばらくすると、準備は直ぐに終わった。
肉の量が半端ないが、戦士の怪力を持ってすれば、ものの5分と掛からない。
それに、人が食べる分けでもないから、投げ込むだけだ。
「ふむ、こんなとこか」
シャルは全体を見渡し作業の完了を確認した。
「あたし達はどうするの?」
「マヨはこっちにモンスターが近づかないように、レオから魔法を撃ってよ」
「仕方ないわね、やってあげるわ」
「そりゃ、どうも。じゃあ、スイは車内待機ね。マサは上で必殺技の用意を」
「おう」
「はいです」
「私は、この陸上艇の上でマサヒデ君を援護しよう」
「了解だ、頼むぜシャル」
「任せてくれたまえ」
「スイちゃん、ポーションたのむぜ」
「はいです」
スイから貰った戦闘用ポーションを正秀とシャルが飲んでいると、シムリがやって来た。
「お姉ちゃん……」
「どうした!? シムリの持ち場は壁の上だろう?」
「うん…… そうだけど……」
「壁の上って、シムリは闘魔道士なの?」
為次は不思議そうにシムリを見た。
「そうだが、それがどうかしたのか?」
「あ、いや、てっきり聖魔道士かと思ってたわ」
「確かに、大人しそう性格から聖魔道士かと思うぜ」
「そうそう、闘魔道士ってマヨみたいな暴れん坊かと」
「あ? もう一回言ってみなさい、タメツグ」
「な、なんでもないッス……」
「そんなことより、ここに居ては危ないぞシムリ」
「でも…… やっぱりお姉ちゃんと……」
「ねーちゃんと一緒がいいってか」
為次は適当に納得した様子だ。
正秀も同感である。
「仲がいいんだな」
「あう…… うぅ……」
「どうしたものかな……」
「そいじゃ、砲手席が空いてるから、そこに入ってればいいよ。車内なら安全だし」
「いいのかい? タメツグ君。邪魔にならないだろうか?」
「問題ないよ」
「分かった。と言うわけだ、いいな? シムリ」
「うんっ。ありがとう、お姉ちゃん。それとタメツグさんも……」
「ついでに自己紹介しとくぜ。俺は正秀、よろしくなシムリちゃん」
「は、はい…… よろしく…… はぃ……」
「あたしは、マヨーラね。あなたと同じ闘魔導士よ」
「よろしく…… おね…… がいしま……」
「あい、んじゃ、全員搭乗ね」
為次が言うと、正秀とシャルを砲塔の上に残し、他の4人はぞろぞろとレオパルト2に入って行く。
為次は取り出したMG3を、使わないなら持ち出すんじゃなかったと、面倒臭そうに車長席に放り込むのであった。
……………
………
…
「よしゃ、行きま」
全員が持ち場に着いたのを確認すると、為次はアクセルを踏み込む。
レオパルト2はゴブリンとコボルトの集団へと突っ込んで行く。
ワイヤーで後方に繋がれた防衛艇も牽引され、一緒に食料の山を運んで来る。
これで、防衛艇に魔獣どもが引き寄せられ、一網打尽は間違い無しだ。
釣られず逃した敵も討伐する為に、その後ろから戦士と聖魔導士の集団が走って追いかけて来る。
「でりゃー! 凄い数だぜ」
正秀は大剣を振り回し、飛び付いて来たゴブリンを薙ぎ払う。
「そうだな…… ハッ! 甘い!」
シャルも相槌を打ちながら、ロングソードで華麗に立ち回る。
「流石に多いわね、マジックミサイル! マジックミサイル!」
マヨーラの魔法も次々と敵を墜として行くのだが、どうにも敵の数が多い。
グチャ! グチャ! バギャ……
あまりの数の多さなのだろう、どう見ても上の3人が倒している敵より、轢き殺される方が多い。
おかげで戦車の前方では、緑色の液体と肉片が飛び散りまくっている。
その光景はどう見ても異常であった。
ゴブリンは何故かレオパルト2が突進して来ても、避けるどころか向かって来るのである。
まるで、レオパルト2に襲いかからんとばかりに突っ込んで来ては、砕け散り肉塊となっていた。
「くそっ、なんだこりゃ…… 前が良く見えん」
潰した魔獣の液体が、ペリスコープのガラスにベチャベチャと掛かって視界が悪い。
洗浄液で流すものの、直ぐにまた視界が塞がれてしまう。
そんな為次の異変を感じたシムリは、後ろから運転席を覗き込む。
「あの…… どう…… されました?」
「前が見え辛いの」
「わ、私に…… 何か……」
「じゃあ、マヨの足元に座ってパノラマサイトの覗き方を教えてもらってよ」
「はぃ」
「マヨ!」
「何よ!? こっちは忙しいのよ!」
「教えてといて」
「分かったわよ、まったく!」
「シムリ! 教えてもらったら、魔獣の多い方向に誘導よろ」
「はぃ」
こうして、シムリはマヨーラから使い方を教わると為次の目となり、他で散らばり戦っている冒険者と魔獣の方へと誘導する。
戦車がゴブリンに近づくと、まるで何かに惹き寄せられるように付いて来る。
それから、どのくらい走行したのだろうか?
結構走ったと為次は思い、ふと横にある後方モニターへと目をやった。
「なんだこりゃ……」
我が目を疑った……
防衛艇に魔獣は集まっていなかった。
しかし、後ろからは津波のように押し寄せて来ている。
「どう言うことだよ……」
そう言いながら危険を承知で、ハッチを開放する。
周囲を見渡した為次は驚愕した。
レオパルト2の周りがコボルト混じりのゴブリンの海と化している。
どうみても、敵は食料を積んだ防衛艇ではなく、この戦車に引き寄せられているとしか思えない。
「…………」
唖然とする為次の顔に、ビチャリと緑の液体が掛かる。
慌てて頭を引っ込めハッチを閉じると、顔を拭きながら考える。
どうなってんだ? どうしてレオに向かってくるんだ?
鉄の塊が好きなのか? そんな分けないよなぁ
なんだ? 何に引き寄せられて…… 人か? だとしたら誰だ?
いつから狙われてる? 確かあの姉妹を助けて……
それから…… 俺が降車して、スイがゴブリンの相手をしてた時は……
っ!? こっちには来なかった! スイが相手してた時は!
なんとなく考えた結果、スイのせいじゃね?
と、思った為次は無線機を取り出すと正秀をコールする。
「なんだよ! 今、こっちはかなりヤバいぜ」
「もしもしぃ、スイを出すから一緒に陸上艇に飛び移ってよ」
「はぁ? 何言ってんだお前は!」
「もしもしぃ、よろしくねー」
「ふざけ……」
プツッ……
正秀の叫びを聞く前に、為次は無線をさっさと切ってしまった。
「ちきしょー、電源切りやがった! って、おわっ!」
「ジャジャーン、タメツグ様に言われて参上つかまつりです」
正秀がブツブツと文句を言う暇もなく、スイは砲塔上部へと飛び出して来た。
「スイちゃん……」
「ささ、マサヒデ様、参りましょうか」
スイは正秀を大剣ごと担ぎ上げる。
「でりゃっ!」
「って、おい!? 待ってくれ!」
砲塔から防衛艇に向かって、正秀を持ったまま思いっ切りジャンプするスイ。
「うわぁぁぁぁぁー! スイちゃぁぁぁぁぁん!」
跳び上がると、周りのゴブリン達が二人に向かって雪崩の如く押し寄せて来る。
そして、食品の山に着地すると、休む間もなく迎撃するハメになる。
先程までレオパルト2に襲い掛かっていた魔獣は、一瞬で防衛艇を取り囲んでいた。
そんな光景を為次は、運転席横の後方モニターで見ていた。
「ビンゴかも、やったぞい」
魔獣がスイを狙っているのが、なんとなく確信できた。
後ろの状況を見る限り、スイか正秀を狙っているはずである。
もし、異世界人と言うカテゴリを狙うならば、自分も狙われるであろうから正秀ではないと為次は思う。
それに、スイの禁忌魔法とやらを使える力も怪しいのだ。
「とにかく、考えるのは後だな。これで防衛艇を外して…… 外して……」
為次は外し方が分からなかった……
正秀が牽引用のワイヤーを繋げたのは知っている。
だが、外すには車外に出て、魔獣の群れの中で作業をしなければならない。
とてもじゃないが無理な話である。
このまま正秀が必殺技を使おうものなら、あの大爆発みたいな衝撃波に巻き込まれてしまう。
それはどうしても避けたい。
これ以上は、レオパルト2にダメージを与えたくないから。
「マサに外してもらおうかな」
そう呟くと、さっき電プチした無線機の電源を再度入れる。
「もしもしぃ、元気ぃ?」
「…………」
返事が無い、既に屍だろうか?
もう一度、後方モニターを見るが、ゴブリンがうじゃうじゃ居てよく見えない。
しかし、ゴブリンが吹っ飛んいるのが見えるので、まだ元気で戦っているのだろうとは思う。
それでも、長くは保たないであろう。
「ねぇ、シムリ!」
「はぃ?」
「誘導はもういいから、スイの居たハッチから後ろの援護してやってよ」
レオパルト2に纏わりついていた魔獣が防衛艇の方へと行ったので視界が開け、シムリも援護にまわすことにした。
「はぃ、わ、分かりました」
「よろしくね」
為次はもう一度無線機手に取ると、勝手に喋ることにした。
返答できなくとも声くらいは聞こえるかも、と勝手に思ったからだ。
「もしもしぃ、聞こえるー?」
「聞こえてるぜ!」
予想外にも返答があった。
「お、生きとった」
「こっちは忙しいんだ! 用があるなら早くしてくれ!」
「もしもしぃ、りょかーい」
「…………」
「もしもしぃ、もしもしぃ、ねぇ、もしもしぃ」
「うるせぇー! 早くしろっ!」
「あー、はいはい。じゃあ、そっちでワイヤー外してから予定通り必殺技よろ」
「ゴブちゃんの殆どは、もうそっちに溜まってるから何時でもいいよ。それとワイヤーは切断しないでね。じゃあね」
「くそっ! 勝手ばっか……」
プツッ……
正秀の悪態を聞く前に、無線機の電源を落とす為次。
「ふう、これで完璧だわ。失敗しても後はマサのせいだし」
などと車内で満足そうに、ほざくのであった……
為次の作戦内容を聞き終わると、皆は可もなく不可もなくと言った感じで納得し、決まったのであった。
そんな、良く分からない連中と共に、戦車クルーの一同もなんだかやる気を出しているのでした。
「じゃあ、みんなー肉を載せ替えてー」
為次が何か言ってるけど、皆はバラバラで会話をしているだけで、言うことを聞いてくれない。
パジャマを着た、変なにーちゃんとしか認識されていないのだ。
さっきレオパルト2で強さを見せつけ、素晴らしい作戦も説明したばかりだいうのに、中の人には興味が無いらしい。
そもそも、為次には求心力がまったく無いのだ。
「ねーねー」
「誰も為次の言うことを聞かないぜ」
「うん……」
「どうすんのよ」
「仕方ない、私が指揮を取ろう」
「うん、たのんます」
結局、見かねたシャルが作戦の指揮を取ることになった。
本当は何故か情緒不安定となった妹の傍に居たいのだが、為次のペースでは作戦が何時終わるのか分かったものではない。
だから、さっさと終わらせたいと言うのが本心であった。
「おい! みんな聞くんだ! これよりお肉大作戦を開始する!」
シャルが叫ぶと皆がぞろぞろと集まって来た。
「戦士は食料の移し替え、闘魔道士は壁の上から魔法の準備だ!」
「よし! いっちょやるか」
「ああ、手伝うって約束だしね」
門を開けてた戦士風冒険者達は言った。
「船長! 防衛艇をこちらの陸上艇の横に着けてくれ」
「あ、牽引するから後ろで」
牽引ワイヤーを繋げる必要があるので、為次はそう頼んだ。
「了解だ」
「尚、聖魔道士は戦闘が始まったら、戦士のバックアップをやってもらう!」
「おうよ、任せときな」
船長も了解した。
「シムリ、お前は向こうだな。また後で会おう」
「うん…… 気を付けてね、お姉ちゃん」
「ああ、お互いにな」
「あれ? どっか行っちゃうんだ、シムリ」
為次は訊いた。
「そうだが、何か用でもあるのかい?」
「いや…… 特には……」
こうして、仲の良い姉妹が二手に分かれると、オペレーションONIKUが始まる。
皆はそれぞれの準備を始めると、為次も牽引の為に車体後部に添え付けてあるワイヤーを外す。
しかし、移動して来た防衛艇は何故だか横に置いてある。
戦士の皆は言われたように、食料の移し替えをせっせと始めているのにだ。
「くそっ、全然、人の話を聞いてくれないよ……」
「あんたの説明を聞いてくれたのも、シャルのおかげね」
「仕方ねーな、ワイヤーは俺が繋げるから為次はレオを前に移動させな」
「うん……」
そんな感じで、作戦準備を進めるのであった。
……………
………
…
しばらくすると、準備は直ぐに終わった。
肉の量が半端ないが、戦士の怪力を持ってすれば、ものの5分と掛からない。
それに、人が食べる分けでもないから、投げ込むだけだ。
「ふむ、こんなとこか」
シャルは全体を見渡し作業の完了を確認した。
「あたし達はどうするの?」
「マヨはこっちにモンスターが近づかないように、レオから魔法を撃ってよ」
「仕方ないわね、やってあげるわ」
「そりゃ、どうも。じゃあ、スイは車内待機ね。マサは上で必殺技の用意を」
「おう」
「はいです」
「私は、この陸上艇の上でマサヒデ君を援護しよう」
「了解だ、頼むぜシャル」
「任せてくれたまえ」
「スイちゃん、ポーションたのむぜ」
「はいです」
スイから貰った戦闘用ポーションを正秀とシャルが飲んでいると、シムリがやって来た。
「お姉ちゃん……」
「どうした!? シムリの持ち場は壁の上だろう?」
「うん…… そうだけど……」
「壁の上って、シムリは闘魔道士なの?」
為次は不思議そうにシムリを見た。
「そうだが、それがどうかしたのか?」
「あ、いや、てっきり聖魔道士かと思ってたわ」
「確かに、大人しそう性格から聖魔道士かと思うぜ」
「そうそう、闘魔道士ってマヨみたいな暴れん坊かと」
「あ? もう一回言ってみなさい、タメツグ」
「な、なんでもないッス……」
「そんなことより、ここに居ては危ないぞシムリ」
「でも…… やっぱりお姉ちゃんと……」
「ねーちゃんと一緒がいいってか」
為次は適当に納得した様子だ。
正秀も同感である。
「仲がいいんだな」
「あう…… うぅ……」
「どうしたものかな……」
「そいじゃ、砲手席が空いてるから、そこに入ってればいいよ。車内なら安全だし」
「いいのかい? タメツグ君。邪魔にならないだろうか?」
「問題ないよ」
「分かった。と言うわけだ、いいな? シムリ」
「うんっ。ありがとう、お姉ちゃん。それとタメツグさんも……」
「ついでに自己紹介しとくぜ。俺は正秀、よろしくなシムリちゃん」
「は、はい…… よろしく…… はぃ……」
「あたしは、マヨーラね。あなたと同じ闘魔導士よ」
「よろしく…… おね…… がいしま……」
「あい、んじゃ、全員搭乗ね」
為次が言うと、正秀とシャルを砲塔の上に残し、他の4人はぞろぞろとレオパルト2に入って行く。
為次は取り出したMG3を、使わないなら持ち出すんじゃなかったと、面倒臭そうに車長席に放り込むのであった。
……………
………
…
「よしゃ、行きま」
全員が持ち場に着いたのを確認すると、為次はアクセルを踏み込む。
レオパルト2はゴブリンとコボルトの集団へと突っ込んで行く。
ワイヤーで後方に繋がれた防衛艇も牽引され、一緒に食料の山を運んで来る。
これで、防衛艇に魔獣どもが引き寄せられ、一網打尽は間違い無しだ。
釣られず逃した敵も討伐する為に、その後ろから戦士と聖魔導士の集団が走って追いかけて来る。
「でりゃー! 凄い数だぜ」
正秀は大剣を振り回し、飛び付いて来たゴブリンを薙ぎ払う。
「そうだな…… ハッ! 甘い!」
シャルも相槌を打ちながら、ロングソードで華麗に立ち回る。
「流石に多いわね、マジックミサイル! マジックミサイル!」
マヨーラの魔法も次々と敵を墜として行くのだが、どうにも敵の数が多い。
グチャ! グチャ! バギャ……
あまりの数の多さなのだろう、どう見ても上の3人が倒している敵より、轢き殺される方が多い。
おかげで戦車の前方では、緑色の液体と肉片が飛び散りまくっている。
その光景はどう見ても異常であった。
ゴブリンは何故かレオパルト2が突進して来ても、避けるどころか向かって来るのである。
まるで、レオパルト2に襲いかからんとばかりに突っ込んで来ては、砕け散り肉塊となっていた。
「くそっ、なんだこりゃ…… 前が良く見えん」
潰した魔獣の液体が、ペリスコープのガラスにベチャベチャと掛かって視界が悪い。
洗浄液で流すものの、直ぐにまた視界が塞がれてしまう。
そんな為次の異変を感じたシムリは、後ろから運転席を覗き込む。
「あの…… どう…… されました?」
「前が見え辛いの」
「わ、私に…… 何か……」
「じゃあ、マヨの足元に座ってパノラマサイトの覗き方を教えてもらってよ」
「はぃ」
「マヨ!」
「何よ!? こっちは忙しいのよ!」
「教えてといて」
「分かったわよ、まったく!」
「シムリ! 教えてもらったら、魔獣の多い方向に誘導よろ」
「はぃ」
こうして、シムリはマヨーラから使い方を教わると為次の目となり、他で散らばり戦っている冒険者と魔獣の方へと誘導する。
戦車がゴブリンに近づくと、まるで何かに惹き寄せられるように付いて来る。
それから、どのくらい走行したのだろうか?
結構走ったと為次は思い、ふと横にある後方モニターへと目をやった。
「なんだこりゃ……」
我が目を疑った……
防衛艇に魔獣は集まっていなかった。
しかし、後ろからは津波のように押し寄せて来ている。
「どう言うことだよ……」
そう言いながら危険を承知で、ハッチを開放する。
周囲を見渡した為次は驚愕した。
レオパルト2の周りがコボルト混じりのゴブリンの海と化している。
どうみても、敵は食料を積んだ防衛艇ではなく、この戦車に引き寄せられているとしか思えない。
「…………」
唖然とする為次の顔に、ビチャリと緑の液体が掛かる。
慌てて頭を引っ込めハッチを閉じると、顔を拭きながら考える。
どうなってんだ? どうしてレオに向かってくるんだ?
鉄の塊が好きなのか? そんな分けないよなぁ
なんだ? 何に引き寄せられて…… 人か? だとしたら誰だ?
いつから狙われてる? 確かあの姉妹を助けて……
それから…… 俺が降車して、スイがゴブリンの相手をしてた時は……
っ!? こっちには来なかった! スイが相手してた時は!
なんとなく考えた結果、スイのせいじゃね?
と、思った為次は無線機を取り出すと正秀をコールする。
「なんだよ! 今、こっちはかなりヤバいぜ」
「もしもしぃ、スイを出すから一緒に陸上艇に飛び移ってよ」
「はぁ? 何言ってんだお前は!」
「もしもしぃ、よろしくねー」
「ふざけ……」
プツッ……
正秀の叫びを聞く前に、為次は無線をさっさと切ってしまった。
「ちきしょー、電源切りやがった! って、おわっ!」
「ジャジャーン、タメツグ様に言われて参上つかまつりです」
正秀がブツブツと文句を言う暇もなく、スイは砲塔上部へと飛び出して来た。
「スイちゃん……」
「ささ、マサヒデ様、参りましょうか」
スイは正秀を大剣ごと担ぎ上げる。
「でりゃっ!」
「って、おい!? 待ってくれ!」
砲塔から防衛艇に向かって、正秀を持ったまま思いっ切りジャンプするスイ。
「うわぁぁぁぁぁー! スイちゃぁぁぁぁぁん!」
跳び上がると、周りのゴブリン達が二人に向かって雪崩の如く押し寄せて来る。
そして、食品の山に着地すると、休む間もなく迎撃するハメになる。
先程までレオパルト2に襲い掛かっていた魔獣は、一瞬で防衛艇を取り囲んでいた。
そんな光景を為次は、運転席横の後方モニターで見ていた。
「ビンゴかも、やったぞい」
魔獣がスイを狙っているのが、なんとなく確信できた。
後ろの状況を見る限り、スイか正秀を狙っているはずである。
もし、異世界人と言うカテゴリを狙うならば、自分も狙われるであろうから正秀ではないと為次は思う。
それに、スイの禁忌魔法とやらを使える力も怪しいのだ。
「とにかく、考えるのは後だな。これで防衛艇を外して…… 外して……」
為次は外し方が分からなかった……
正秀が牽引用のワイヤーを繋げたのは知っている。
だが、外すには車外に出て、魔獣の群れの中で作業をしなければならない。
とてもじゃないが無理な話である。
このまま正秀が必殺技を使おうものなら、あの大爆発みたいな衝撃波に巻き込まれてしまう。
それはどうしても避けたい。
これ以上は、レオパルト2にダメージを与えたくないから。
「マサに外してもらおうかな」
そう呟くと、さっき電プチした無線機の電源を再度入れる。
「もしもしぃ、元気ぃ?」
「…………」
返事が無い、既に屍だろうか?
もう一度、後方モニターを見るが、ゴブリンがうじゃうじゃ居てよく見えない。
しかし、ゴブリンが吹っ飛んいるのが見えるので、まだ元気で戦っているのだろうとは思う。
それでも、長くは保たないであろう。
「ねぇ、シムリ!」
「はぃ?」
「誘導はもういいから、スイの居たハッチから後ろの援護してやってよ」
レオパルト2に纏わりついていた魔獣が防衛艇の方へと行ったので視界が開け、シムリも援護にまわすことにした。
「はぃ、わ、分かりました」
「よろしくね」
為次はもう一度無線機手に取ると、勝手に喋ることにした。
返答できなくとも声くらいは聞こえるかも、と勝手に思ったからだ。
「もしもしぃ、聞こえるー?」
「聞こえてるぜ!」
予想外にも返答があった。
「お、生きとった」
「こっちは忙しいんだ! 用があるなら早くしてくれ!」
「もしもしぃ、りょかーい」
「…………」
「もしもしぃ、もしもしぃ、ねぇ、もしもしぃ」
「うるせぇー! 早くしろっ!」
「あー、はいはい。じゃあ、そっちでワイヤー外してから予定通り必殺技よろ」
「ゴブちゃんの殆どは、もうそっちに溜まってるから何時でもいいよ。それとワイヤーは切断しないでね。じゃあね」
「くそっ! 勝手ばっか……」
プツッ……
正秀の悪態を聞く前に、無線機の電源を落とす為次。
「ふう、これで完璧だわ。失敗しても後はマサのせいだし」
などと車内で満足そうに、ほざくのであった……
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その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
その他、多数投稿しています!
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2020年、日本各地で震度5強の揺れを観測した。
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そこで日本は資源の枯渇などを回避するために諸外国との交流を図ろうとするが...
この作品では自衛隊が主に活躍します。流血要素を含むため、苦手な方は、ブラウザバックをして他の方々の良い作品を見に行くんだ!
ちなみにご意見ご感想等でご指摘いただければ修正させていただく思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
"小説家になろう"にも掲載中。
"小説家になろう"に掲載している本文をそのまま掲載しております。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
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転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
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