上 下
64 / 74

63

しおりを挟む
 招待客を集めた披露宴も終え、ソフィアはフランソワとともに自室でいわゆる初夜の準備をしていた。
「いや、やっぱり怖いです。今日は行かないー!」
 夜着を整え、香油を塗りたくり、髪も邪魔にならないように編み込んである。支度が終わったというのに、フランソワに引っ張られないようにソフィアはベッドの天蓋の柱をつかんで離さない。
「途中まではしてるんでしょう?じゃそんなに怖がらなくても大丈夫ですよ」
 フランソワはあきれ顔だ。
「だってフランソワ様も経験ないですよね。なぜ大丈夫かなんて分かるんですか」
「まぁそれは経験こそありませんけど、話は色々聞いてますし。大体例え今日初夜を迎えなくてもいずれ迎えなくてはいけませんよ?」
「分かってますが。でも」
 閨での営みとそれによって子を成すことが夫婦の義務だとは分かっている。だが、怖いものは怖い。
 以前は何も知らなかったが、今のソフィアは具体的にどのようなことをするのか聞いていた。その行為が、特に初めての痛みはすさまじいものだということも。
「……仕方ないですね」
 ソフィアからフランソワが手を放す。
 見逃してもらえたか、と安心したのもつかの間。
「急ぎクロード様を呼んでもらえる?そっちのほうが早いわ」
 呼び鈴を鳴らして呼びつけたメイドに、フランソワが告げる。
「フランソワ様……!」
 見逃してくれたのではなかったのかと縋り付くが、すげなくあしらわれる。
「私がいいって言ったところで、クロードが納得するわけないじゃないですか。10年お預けくらってるんですよ?
 最近は途中までしてたって最後までできないなら拷問ですよ、拷問。
 ソフィア様は確かに可愛いですよ?でもクロードも同じように可愛いですから」
「うう……」
 そうこうしているうちにクロードがやってくる。
「マリアもう部屋を出てよいぞ」
 フランソワはソフィアの耳元で「気合ですよ」とささやくと、
「はい。では失礼します」
 丁寧にお辞儀をして部屋を出て行った。
 ドアの閉まる音がやけに大きく聞こえ、ソフィアの心臓の鼓動が早まる。
「ソフィア」
「は、はい」
 クロードに話しかけられ、緊張のせいで声が裏返った。
 苦笑したクロードが
「ソフィアが落ち着くまでは何もしない。とりあえずソファーに座ってよいか?」
「どうぞ」
「ソフィアも座れ」
「はい」
 クロードに続いてクロードの隣に座る。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

軽い気持ちで超絶美少年(ヤンデレ)に告白したら

夕立悠理
恋愛
容姿平凡、頭脳平凡、なリノアにはひとつだけ、普通とちがうところがある。  それは極度の面食いということ。  そんなリノアは冷徹と名高い公爵子息(イケメン)に嫁ぐことに。 「初夜放置? ぜーんぜん、問題ないわ! だって旦那さまってば顔がいいもの!!!」  朝食をたまに一緒にとるだけで、満足だ。寝室別でも、他の女の香水の香りがしてもぜーんぜん平気。……なーんて、思っていたら、旦那さまの様子がおかしい? 「他の誰でもない君が! 僕がいいっていったんだ。……そうでしょ?」  あれ、旦那さまってば、どうして手錠をお持ちなのでしょうか?  それをわたしにつける??  じょ、冗談ですよね──!?!?

睡姦しまくって無意識のうちに落とすお話

下菊みこと
恋愛
ヤンデレな若旦那様を振ったら、睡姦されて落とされたお話。 安定のヤンデレですがヤンデレ要素は薄いかも。 ムーンライトノベルズ様でも投稿しています。

愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。 そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。 相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。 トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。 あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。 ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。 そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが… 追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。 今更ですが、閲覧の際はご注意ください。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

私の記憶では飲み会に参加していたハズだった(エロのみ)

恋愛
魔術協会所属の女性が飲み会に参加していたハズなのに気付けば知らない男に犯されていた、なエロシーンのみ。 ムーンライトより転載作品。

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

【R18】ヤンデレ侯爵は婚約者を愛し過ぎている

京佳
恋愛
非の打ち所がない完璧な婚約者クリスに劣等感を抱くラミカ。クリスに淡い恋心を抱いてはいるものの素直になれないラミカはクリスを避けていた。しかし当のクリスはラミカを異常な程に愛していて絶対に手放すつもりは無い。「僕がどれだけラミカを愛しているのか君の身体に教えてあげるね?」 完璧ヤンデレ美形侯爵 捕食される無自覚美少女 ゆるゆる設定

処理中です...