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 そのあとソフィアたちは、メイドの運んできてくれた昼食をとって、しばらく午睡した。
 その間クロードはライナスに引きずられて溜まっていた執務をこなしに行き、ジャンはソフィアの部屋で読書をしたり、王宮を散策したりして待っていた。
 ソフィアたちが起きた頃ちょうどお茶の時間だったので、使用人の買ってきてくれたマカロンで三人でお茶をした。店に並んでいる分を全部買い占めたような量だったので、残りは王妃たちにもおすそ分けすることにする。
 いろいろなハーブが配合されたハーブティーは香りがよくリラックス効果があるので落ち着く。用意してくれたメイドが配慮してくれたのだろう。
「王子の婚約者になるということは他の令嬢の嫉妬などにさらされますし、ある程度の危険は予想していましたが、ここまでとは想像していませんでした」
 はぁー、とジャンがため息をつく。
「父上にご報告せずに済んでよかったです」
「二度目はごめんですわね」
「そうね」
 フランソワにソフィアも同意する。数日のことだったが、もっと長い間囚われていた気がする。
「ベル様たちはどうなるのかしら」
「何らかの極刑が科せられるのは避けられないでしょうね。私たちの誘拐監禁に加えて、人身売買もしていましたし」
 ベルはモンブール国王の裁量に任せられるが、国王は厳しい人物なので、身内だからと言って軽減されることはないだろうとのことだった。
 人身売買についてはモンブールで取引されているため、事情聴取と並行して共同で捜査することになるそうだ。
「皆家に帰れるといいのだけれど……」
「そうですね……」
 フランソワは口を濁らせた。
 売買されてしまった者も可能な限り取り戻すはずだが、全員は難しいと分かっているのだろう。中には最悪な事態になっているものもいるかもしれない。
「姉上たちは結局どこにいたのですか?」
「さあ?オレーユ様の別宅かしらね?」
 建物の全ては見ていないしよく分からない。広さは貴族の邸宅といっても差し支えないと思うが、それにしては内装など簡素すぎるというか、きらびやかでない気がしたが。
「演習場ですよ。地方に勤めている騎士たちも使うのでいくつも部屋があるのです。
 ブノワ侯爵が管理していますので、使う予定がないときはオレーユが使っていたのでしょうね。
 ベルが私たちの誘拐に関わっているとすれば、オレーユとのつながりも予想がつきますので、演習場が一番悪さしやすいですからね」
「演習場……。そうなの」
 敷地が広い割に何もないと思ったが、演習場ならば納得がいく。王都からさほど遠くもなかった。
「マリアは……メイドだよね?」
 ジャンがもの言いたげにフランソワを見つめる。
「そうですが」
 顔色を変えずにフランソワが答える。
 蚊帳の外のソフィアのほうがなんだかひやひやしてしまう。いずれはジャンも知ることとなるだろうが。
「前から思ってたけど、メイドにしては裏事情に詳しい気がするんだよね。……まあいいや」
 とりあえずジャンは追及するのをやめたらしい。
 ソフィアはほっと胸をなでおろす。
「来月から夏休みなので帰省しようと思うのですが、姉上はどうされますか?」
「もうそんな時期なのね。どうしようかしら」
 学校の夏休暇は確か一か月半ほどだ。ソフィアは実家に帰省というかそのまま返品となる気がする。
 ソフィアの危惧を予想したようにフランソワが優しく言う。
「いずれにしてもクロード様にお話しになってください。ご実家に行かれるときは私も一緒に参ります」

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