後継社長奮闘す

第六章 次代を創る

リ・ビジョン活動③地域開発から地域経営へ

「建設屋からの脱皮」
繰り返しになるが
決して建設の仕事を
バカにしている訳ではない。

しかし、
ビジョンキャンプの時
皆と決意した
「建設の仕事を極めると同時に
建設会社らしくない活動へも
大いに幅を拡げる」

すなわち、
「従来型の建設屋からの脱皮」
は成し遂げたいと考えているが
まだまだ出来ていない。

宿題でもあった
プロジェクトメンバーから
発表された
「街を元気にする」プラン。

一生懸命の思いが感じられる。

その中で、達社長始め、
皆の目にとまったのが、
住宅事業の課長から
紹介されたある論文だった。

題して
「地域開発から地域経営へ」

ヨーロッパ中心ではあるが、

人口減少に苦しむ街を、
例えば、ベンチャー事業家が
働ける場を作り、地域が
補助する仕組みを作ったり

イベントとセットになった
アートな街づくりをしたり

極端だが、酪農を本業にする方が
週のうち、２日ほど役場の仕事を担う
など、様々な工夫で、

街の再活性化に取り組む
事例集である。

「地域の実情を踏まえ、
かつ地域市民が主役」

「これがポインですね」

税理士の所長先生に
補足して頂いた。

そうなのだ。  

大きなビルを造る
格好良い商業施設を展開する
木造の子育て施設を企画する

それも大切だが、
そもそも私達が住み暮らす地域を
どのような街にしていきたいのか？

「地域市民が主役」
この概念がやや希薄に
なりかけていたように思われた。

「街だけでなく、もっと暮らしに
焦点を当てましょう」

住宅事業の責任者らしい
しかし、的を得た提言である。
 
実は、九州地域に、そうした活動を
先導する先生がいることも
紹介された。

「建物だけでなく、
もっとそこに暮らす人に焦点を当て
地域をリノベーションしましょう」
と提言されているそうだ。

「もっと地域を勉強しないと」

総務課長らしい一言が、
皆を代表する言葉だと
達社長、強く感じた。


「私達のビジョンに欠けている
ものが、見つかりましたか？」
達社長から、プロジェクトメンバーに
問いかけられた。

「はい」
「街を元気にする。これは引き続き
必要だと思います。しかし、
主役は地域、そして暮らしです」
リーダー、総務課長は
凛として、そう答えた。

以前から、そのつもりだったが  
そうなっていないと、皆理解した
ようだ。

その後、
いくつか皆の意見を聞いた上で
「リ・ビジョン」案を取り纏めた。

それが

「私達の街を元気に、そして
暮らしを楽しくする」である。

従来は
「街を元気にする」だから

第三者の方が見れば、
従来のものを若干リニューアルした  
ように見えるだけかもしれない。

かなり違う。
達社長はそう確信している。

暮らしにフォーカスするなら
必ずしも、造るとはならないからだ。

しかし、何より違うのは
「新ビジョンを若手リーダー
中心に作ったこと」にある。

「「街を経営する」
一翼を担える会社に成長しましょう」

リーダー総務課長の一言が
何より嬉しい達社長であった。