後継社長奮闘す

tathufuntou

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第一章 現実を直視する

愚痴を聞くも経営

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部下や社員の愚痴を
積極的に聞けているか?

ある経営者の集まりで、
そんなやり取りがあった。

愚痴から、何か新たな価値が
生まれる事はない。

達社長はそう考え、
出来るだけ、そうした声とは、
向き合わないようにしていた。

ところが、ある時、
いつものように休憩室で
コーヒーを飲んでいると

廊下で立ち話する
若い社員数名の話が
たまたま聞こえてきた。

幹部が重要だと言う「物件戦略会議」

実は単なる報告会で、現場に来ない、
役員陣へのレクチャーでしかなく
そのためだけに 
膨大な資料を用意する無駄を
これからも延々続けるのか・・

誠実に仕事をこなす総務部員の
雑談、いや愚痴だからこそ
達社長はただただ、
唖然とするばかりだった。

この事が一つのきっかけとなり
愚痴をこぼすなんてもってのほか
そんな暇があったら、仕事を・・

そう決めつけるのは辞めようと
考えを改めることにした。

「愚痴にも耳を傾ける」。
現実を知るには、そう悪くない
教科書なのかもしれない。

もちろん、社長に面と向かって
「愚痴」を言う社員はいないだろう。

しかし、社員との「雑談」を通じて、
感じ取れることはあるはずだ。

そう考えた達社長。

「徒歩マーケティング」
現場への訪問を増やし、
社内でも、極力各部門へ
足を運ぶだけでなく
社員とお昼を一緒にとったり、
出かける時も、
極力色んな社員に同行してもらう
など

「会話」すなわち「雑談」が
出来る状態を
心がけるようしていった。

始めは、ぎこちなかった社員も
時間をかけ、回数を重ねるにつれ、
少しずつだが、「雑談」を
してくれるようになってきた。

そうした中、達社長、
気づいたことがある。それは
「良い愚痴と悪い愚痴」

つまり、愚痴にも二種類がある
ということだ。

定義するのは難しいが、

上司あるいは同僚や部下
または、顧客担当など
、ヒトに関わることは
その大半が「悪い愚痴」。

一方、制度や仕組み、ルールに
関わることは「良い愚痴」
即ち、聞くに値する事も少なくない。

もちろん、例外もあるし、
都合良く「良い愚痴」だけを
選り好みすることは出来ない。

また「悪い愚痴」を聞くからこそ、
聞ける「良い愚痴」も
あるのだと思う。

加えて、
社内に関する「雑談」や
いわゆる「愚痴」がよくでる
部門とそうでない部門が
あることも見えてきた。

「風通しってこういう事かな?」

こうした
「一人風通しカイゼン活動」
を粘り強く続けた結果、

数ヶ月たった今、なんとなくだが
会社の景色が変わってきたように
感じ始めていた。

クレームなどの悪い報告が
いち早く達社長の耳に入る
ようになってきたからだ。

「社長が身近になりました」
総務課メンバーから
そう言われるのも、
なんとなく嬉しかった。

「愚痴を聞ける私自身の度量と
おかしいと思った事を言える仕組み
そして何より社風づくりが必要だ」

何度か、そう呟きながら 

胸ポケットにいつも入れている
「変えるべきメモ帳」に
記載し、自分に言い聞かせていた。
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