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第三話「須川」

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 ギシギシギシギシッ、とダブルベッドは激しい振動を受けて軋み続けていた。


 ―――パンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンッッッッッ!!!!!!!


 「ひいっ、いやあっ、いやっ、あう、あぅ、あ、くっ、あ、あっ、あっっ!!」
 「ぐ、うっ、くそっ、締めつけ、凄すぎだろっ!!!」

 須川は美果の腰を掴み、加減もせずに腰を振っていた。
 と言うよりも須川には手加減の仕方も分からなければ、そんな余裕もない。
 須川は美果の蜜壷に自らの肉棒をドチュンッ、と突き入れると、先程のような暴発をする前にと我武者羅に腰を打ち付け続けていた。
 しかし想像の何倍もの締めつけと、それに伴って訪れた言葉にする事できない程の快楽に、須川は口の端から涎を垂らして一心不乱にピストンを繰り返す。


 ―――パンパンパンパンパンッッ…バチュンッバチュンッバチュッッ!!!


 「あッ、あぅ、あんッ、あう、あぐッ、うぐッ!」
 「美果ちゃん凄いよっ、マンコ凄い!!」

 須川は大きく腰を前後に動かし、より強く打ち付ける。肌のぶつかる音はより激しくなり、二人の動きに合わせてベッドはさらに激しく揺れ続けていた。

 「翔さ…翔さん…!」

 はあはあ、と喘ぎながら、美果は恋人の名前を呼んだ。須川は美果の足に噛み付いた。

 「痛っ」
 「今日から、呼んでいいのは僕の名前だけだ!」

 須川が美果を睨みつける。美果は涙を零して首を振る。

 「良いから呼べよ、火加留さんって!」
 「やだぁ…」

 須川は美果の上に覆いかぶさった。

 「お前の声、そいつに聞かせてやろうか?」
 「…っ」

 例の音声ファイルを翔に送信すると、須川は脅してきた。

 「ほら、どうするんだよ」
 「うっ」

 ドチュッ、と再び強く突かれて、美果は呻いた。

 「…ひ、か…」
 「小さいよ、声」

 早くしないと送信ボタンを押すと言われ、美果は再び口を開いた。

 「ひ、かるさん…っ」
 「…っ、は、ははっ、もっと呼んでよ!」


 ―――パンパンパンパンパンパンパンッッッッッ!!!!!!!


 美果に一度名前を呼ばれただけで、須川はぞくぞくとした快楽のようなものが背中を駆け抜けた。ますます激しく腰を振りたくる。もはや獣と変わらない。

 「ひかる、さんっ、はげしっ、も、や、やめっ、あ、あっ、あっ!」
 「美果ちゃん、俺の初めて貰ってくれたお礼に、俺の初めての中出しもあげるからな!!」

 美果は気がついた、そう言えば結局須川は避妊具を装着せずに挿入していた。

 「やめてっ、やめて、あうっ、あっ、あっ、お、お願いっ、ひかる、さん、中に出さないでぇ!」
 「はあはあはあ! 中出し、中出しっ、中出しっ、うっ、うっ、くっ、も、出る…っ!!!」

 出るッ、ともう一度切なく叫ぶと、須川は美果の奥目掛けて腰を打ち付け、そのまま精子をぶちまけた。


 ―――ドピュッッ、ブビュルルルルルルルルルルルーーーッッッッッ!!!!!!!!


 「いやああああああっ!!! 中に出てっ、熱いっ、抜いてぇ、離してぇっっ!!!!」

 須川は目をつむって顔を真っ赤にし、美果の足を力の限り掴みながら快楽に浸っていた。
 結局、美果がどれほど訴えても須川は体を離さず、全て出し切るまでぴったりと密着し続けたのだった。

 「…マンコに…中出し出来る何て…」

 そうつぶやきながら、須川は目を開けた。美果はぐったりとして目を閉じていた。

 「み、美果ちゃん!?」

 須川が慌てて肉棒を抜いて美果の口元に手を当てる。呼吸はしていた。どうやら肉体的にか精神的にか疲労がピークに達したらしく、気を失っていた。

 ホッと息を吐いて、須川は美果の体を再び見つめた。

 「…」

 ごくりと唾を飲む。何度見ても、美果の乳房の形や大きさは須川の理想そのものである。初めて女を抱いたという事もあり、須川はこの一回ですっかり美果の身体に惚れ込んでしまった。

 「も、もう一回くらい…いいよな、もう僕のなんだし」



 ―――~♪~~~♪


 寝ている美果に再び手を伸ばそうとした時、インターホンが押されたことを知らせる音楽が部屋中に響いた。
 須川はびくりと肩を震わせ、それがただのインターホンの音だと分かるとそれを無視した。彼は今、最高の恋人を見つけて浮かれまくっているのである。


 ―――~♪~~~♪~~~♪


 再びインターホンが鳴らされる。それでも無視しようとしたが、相手は連打でもしているのか音楽が鳴り止まない。

 「くそっ!」

 舌打ちをしつつ須川はパーカーを乱暴に着直し、下着を穿いてインターホンに出た。

 「はい!」

 お楽しみを邪魔しようという不埒ものに、カメラの映像も見ずに須川は怒りのこもった挨拶をした。

 「よお、遊びに来たぜ、ちょっと中に入れてくれ」

 キャップを目深にかぶった城木が笑顔で画面の向こうに現れた。

 「げっ!」
 「げ?」
 「な、何でもないです」

 城木は嘘臭い笑顔でわざとらしく聞き返してくる。須川は心の底から驚きつつもどうにか平静を装い返事をした。

 「どうせ暇してるだろ?」
 「い、今はちょっと取り込み中で…てか入院してるんじゃなかったんすか城木さん」
 「退屈でさぁ、ちょっと抜け出してきちゃったわ」
 「そ、そうですか」

 大人しく寝てろよ、と心の中で毒づいて、須川は笑顔のまま口元をヒクつかせた。

 「それより中入れてくんね? さすがにちょっと疲れた」
 「いや、大人しく病院に帰ったほうがいいんじゃないっすか?」

 須川がすかさず入室を拒否した。城木の表情が冷たくなる。

 「…お前、大恩人が訪ねてきたのに茶の一つも出さずに追い返す気か?」
 「あ、あのでも俺今ちょっと調子悪くて、寝ようとしてたところで…」

 しどろもどろに視線を泳がせる須川に、城木は完全に表情を消してすっと目を細めた。

 「今すぐエントランスのドアロック解除しないと、ここでお前の名前連呼しながら暴れんぞ」
 「…開けます」

 勝手知ったるといった様子で城木が須川の家にエレベータで到着したのは数分後だった。
 ピンポンピンポンピンポンと圧を感じさせるインターホンの音に慌てて須川が扉を僅かに開けると、ガッと城木はその隙間目掛けて足を入れ、肋骨にヒビが入り、片手が折れているとは思えない力で扉をこじ開けた。

 「何でこんなにドアの隙間狭いんだよ、照れんなよ」
 「い、いや、一応念のための防犯というつもりで」

 俺に対して防犯意識しなくてもいいだろ、と笑われる。
 須川は、いやあんただから防犯意識高めてるんだよ、と心の中で返答した。

 無理矢理玄関に入ってきた城木に、須川は落ち着かなさげに目をきょろきょろと動かした。須川のその様子を見て、城木は再びあの胡散臭い笑顔を向ける。

 「お前さ、俺に何か言うことない?」
 「な、なにがですか?」

 声がひっくり返りそうになりながら、須川はどうにか返事をした。
 城木は残念なものを見る目つきで、小さなビニール袋を差し出してきた。よく見ると、そのビニール袋の中には須川が以前城木の入院部屋に取り付けた盗聴器が二つ入っていた。

 「お前だろ、俺の病室に盗聴器しかけたの、俺の声聞いて楽しいか? …もしかして俺に気でもあんの?」

 と冷ややかな目付きで言ってきたのである。

 「いや、全くないっす」

 須川なりに巧妙に隠したつもりだった盗聴器を二つとも見つけ出した城木に感心しつつ、最後の言葉には即座に反応して否定した。

 「ふーん…金に困ってなくて、俺に気があるわけでもないのに、盗聴器をねえ…」
 「…いや、僕には身に覚えが」

 シラを切ろうとする須川の目を見ながら、城木は最後に問いかけた。

 「まさかとは思うけど、ここに美果ちゃん居ないよな?」
 「な、ななな、なんのこ」

 須川は盛大に動揺した。わかり易すぎる。

 ―――ズボッ!

 城木は上着のポケットに隠し持っていた極太バイブを動揺する須川の口に突っ込んだ。

 「ぐえっ、ごほっ!?」

 尻餅をついて口に突っ込まれた大人の玩具を吐き出すと、須川は涙目になった。だが再び立ち上がる前に須川は強い力で前髪を掴まれ強引に上を向かされた。

 「ひっ」

 城木はこのまま須川を殺しかねない目つきで睨んでいた。片手にギプスを巻いている重症の患者だとはとても思えない迫力である。

 「見覚えのある女物の靴と、動揺するお前を見てたらな、何か突っ込んでやりたくなったんだよなぁ」

 口元に弧を描いているが、城木の目は笑っていなかった。

 「これ以上シラを切るなら今口に突っ込んだバイブ、今度はお前のケツに突っ込んでやろうか?」
 「ひい!」

 須川は真っ青になって震えた。後ずさりして逃げたいが、城木に前髪を掴まれているので逃げられない。

 「上がるぞ」
 「あ、あ、ちょっと、まってくださ」

 怯える須川の顔を見て少し楽しくなりかけた城木だが、それよりも確かめることを優先した。須川の静止を無視して城木は靴のままずかずかと上がっていく。迷うことなく須川の寝室の扉を開けた。

 「…んなことだろうと思った、美果ちゃんが自分から俺にメッセージ送ってくる何てありえないからな」
 「あ、あの城木さん、これはその」

 須川の寝室のダブルベッドには、縛られたまま気絶している美果がいた。明らかに行為の後である。
 城木は笑顔で振り返った。

 「ケツ出せ」
 「え?」
 「俺の女寝取った大罪をケツのバージンで勘弁してやるって言ってんだよ」
 「す、すいませんすいません!! 本当に勘弁してください!!!」

 須川は結局、その場で土下座しながら城木の靴を舐めさせられ、涙ながらに謝ることでどうにか許しを得たのだった。


 「つまり、お前が目をつけてた女を美果ちゃんに横取りされたから、逆恨みで美果ちゃんに目にもの見せてやろうと思ってたら、ちょうど良く俺がお前に美果ちゃんの身辺調査を依頼した、と」

 城木の靴を舐めさせられたので口の中を洗浄しつつ、須川は涙目で頷いた。

 「目上に話しかけられたらはい、だろうが、ケツ犯すぞ!」
 「ひっ、は、はい! その通りです!」
 「んで、美果ちゃんとその沙織って子がSNSとかでフレンド登録したからそこを伝って美果ちゃんのアカウントを乗っ取って脅しつけたって?」
 「ま、まあそんな感じです、あの程度のセキュリティ何てないも同然なんで」
 「はあ…」

 城木は呆れたため息をついた。
 この男はやれば出来るのだ。プロ顔負けのハッキング知識もあり、クラッキング野郎に攻撃されたらどれほどネットの深い闇に逃げ込もうが必ず捕まえて、相手の情報をネットに晒す程の技術もある。
 金儲けだって城木が少しやり方を教えただけで、数年後にはこんな高級マンションを一括で買うほどの男に成長している。なのにやる事がこれである。

 「お前の技術、もう少しまともな事に使えよ、つかツラも悪くないんだからもう少し自身持てよ」
 「そ、そういうお世辞は良いんで、ほんと」
 「誰がお前に世辞を言うか」

 城木は須川に命じて体を清めさせた美果の頭を優しく撫でた。
 その様子を見ていて不満顔になった須川は、城木に申し出た。

 「城木さん、頼みがあるんですが」
 「…何だ?」

 須川は意を決して宣言した。

 「美果ちゃんは俺の彼女になったんで、もう手を出さな」
 「このバイブ、いきなり突っ込んだらお前のケツ耐えられっかな?」

 城木は涼しい顔で凶器を見せてくる。先ほど須川が美果に使ったものよりも確実に大きかった。先端には謎の突起まで付いている。明らかに上級者向けである。

 「…あの、せめて共有させてください」
 「ふーん…」

 珍しく食い下がるな、と考えて城木はピンときた。

 「お前、美果ちゃんで童貞卒業しただろ」
 「…は、はい」

 城木は片手で額を押さえた。そしてやや同情的な顔をすると、須川を見た。

 「最初に美果ちゃん何か抱いたらもう他の女でイクのは無理だわ」
 「…へ?」
 「こんな凄い名器、俺も初めてだわ…絶対に手放したくないんだよなぁ」
 「やっぱり、美果ちゃんって凄いんですね…」
 「そりゃもう」

 城木と須川はそのまま意気投合し、眠っている美果を挟んで実に楽しく彼女がいかに名器なのかと語り合ったのだった。
 美果が悪夢にうなされたのは言うまでもない。




第三話「須川」 終わり
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