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呻る双腕重機は雪の香り
第一波 極秘! 鋼鉄の双腕 ③
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護衛である蒲生さんにも視線を向けるが、やはり渋い顔をしている。
それはそうだ、せっかくの休日なのだから、守りやすい家にいてもらったほうが守る側としてはやり易いだろう。
ショックではあるが、私の行動で現状を乱してしまった以上は、どこかで我慢するしかないと思っている。
だから、ここは我慢するべきだ。
それでも、本日発売の新刊を事前にチェックしていたので、どこか気の抜けた感じがする。
「では、午後は何かお暇をつぶせるものをお持ちいたしますので」
爺はそう言って部屋から出ていく。 あとに残ったのは微妙な静寂だけだった。
「誰かに買ってきていただくのはダメなんですか?」
今度は彼から話しかけられる。
「それは、私に拘りがありまして、ダメなんです」
変な拘りだというのは知っている。 実際のところ、既に買いたい本には目星をつけているが、いざ本屋に行ってみると全然違った本に惹かれてしまうことも多々あった。
「では、ご提案ですが本日は無理ですが、明日の放課後に買いにいくぐらいの手間でしたら大丈夫かと思います。 学園に行かれるのですから、外出はしないといけませんし、ほとんど車の中だと思いますので」
その言葉を聞いて、一気に胸の中に溜まっていた霧が晴れるような感覚がする。
「本当に? 大丈夫?」
「そのために私がいます。 確かに生活を制限したほうがこちら側は仕事がしやすですが、ストレスで倒れられても困ります。 それに、趣味ではないと思いますが、私も何冊かもっておりますので、午後はそちらをお読みになられては?」
正直興味があった。 彼はいったいどんな物語を読んでいるのかを。
「ご迷惑でなければ」
少し遠慮気味に言葉を返すと、微笑んでくれる。
「少し待っていてください、今持ってきますので」
椅子をならすことなく席をたち、風のように部屋から出ていく。
私は飲みかけの紅茶が、ほどよい温度になったのを確かめてゆっくりと飲み込む。
簡単に護衛が離れてしまうのは、少し問題があるように感じたが、それだけこの家は安心なのだろうか?
とりあえずは、様子をみているのかそれとも別に自分の部屋に近づけたくないのか?
昨日出会ったばかりの異性を早々に部屋に入れてしまった個人としては、少しショックな気もするが、本来ならばそれが普通なのだろう。
十分ほど待っていると、本を数冊持ちながら彼が部屋に入ってくる。
もちろん、ノックをしてから私が開けるまで待っていた。
「お待たせいたしました」
「待つというほど待っていない気もするけど、とりあえず入ってください」
持ってきてくれた本の数は三冊ほどで、どれも読みごたえのありそうな厚みのある本だった。
「どうぞ」
手渡してくれたのは、どれも文庫サイズでいつも私が読むような感じの本は一冊もなく、古典的な政治哲学本だった。
「へぇ、こうゆうの読むの?」
「お嫌いですか?」
私は本ならば大抵のジャンルは読むことができる。
しかし、このジャンルは初めてなので不思議に緊張してくるが嫌ではない。
「ご無理はなさらずに」
そう言われると、更に緊張してくる。
まずは一ページ目を読もうとするが、ふと読みかけの本を思い出し、最初にそちらを読むことにした。
午前中は読書で終わりを告げる。
再度本を読むのに集中した私は、彼の視線を気にせず一気に読み進めていく。
特別凄い落ちは無くとも、この物語を書いた人のメッセージは私に伝わってくる。
それは、とても幸福なことであり、満足できる瞬間でもあった。
「ふぅ」
小さなため息を漏らすと、視線を横に向ける。
そこには、寝ているような綺麗な顔で瞳を閉じている蒲生さんがいた。
本人曰く、考え事をしているそうだがいったいどんなことを考えているのか知りたくなってくる。
最後のページを閉じ、本をテーブルに置くと同時に彼も瞳を開きこちらをみつめてくる。
それと同時に、部屋に備え付けの電話にお昼ご飯を告げるベルが三回鳴り響いた。
このルールは、私と使用人しかしらないルール。
いちいち確認しなくてもよいと、私から申し出たシステムだった。
ベルが鳴って、ちょうど五分もすると昼食が運ばれてきた。
美味しそうな香りが、少し淀んだ部屋の空気と混ざり、なんとも表現し難い空間に早変わりする。
それはそうだ、せっかくの休日なのだから、守りやすい家にいてもらったほうが守る側としてはやり易いだろう。
ショックではあるが、私の行動で現状を乱してしまった以上は、どこかで我慢するしかないと思っている。
だから、ここは我慢するべきだ。
それでも、本日発売の新刊を事前にチェックしていたので、どこか気の抜けた感じがする。
「では、午後は何かお暇をつぶせるものをお持ちいたしますので」
爺はそう言って部屋から出ていく。 あとに残ったのは微妙な静寂だけだった。
「誰かに買ってきていただくのはダメなんですか?」
今度は彼から話しかけられる。
「それは、私に拘りがありまして、ダメなんです」
変な拘りだというのは知っている。 実際のところ、既に買いたい本には目星をつけているが、いざ本屋に行ってみると全然違った本に惹かれてしまうことも多々あった。
「では、ご提案ですが本日は無理ですが、明日の放課後に買いにいくぐらいの手間でしたら大丈夫かと思います。 学園に行かれるのですから、外出はしないといけませんし、ほとんど車の中だと思いますので」
その言葉を聞いて、一気に胸の中に溜まっていた霧が晴れるような感覚がする。
「本当に? 大丈夫?」
「そのために私がいます。 確かに生活を制限したほうがこちら側は仕事がしやすですが、ストレスで倒れられても困ります。 それに、趣味ではないと思いますが、私も何冊かもっておりますので、午後はそちらをお読みになられては?」
正直興味があった。 彼はいったいどんな物語を読んでいるのかを。
「ご迷惑でなければ」
少し遠慮気味に言葉を返すと、微笑んでくれる。
「少し待っていてください、今持ってきますので」
椅子をならすことなく席をたち、風のように部屋から出ていく。
私は飲みかけの紅茶が、ほどよい温度になったのを確かめてゆっくりと飲み込む。
簡単に護衛が離れてしまうのは、少し問題があるように感じたが、それだけこの家は安心なのだろうか?
とりあえずは、様子をみているのかそれとも別に自分の部屋に近づけたくないのか?
昨日出会ったばかりの異性を早々に部屋に入れてしまった個人としては、少しショックな気もするが、本来ならばそれが普通なのだろう。
十分ほど待っていると、本を数冊持ちながら彼が部屋に入ってくる。
もちろん、ノックをしてから私が開けるまで待っていた。
「お待たせいたしました」
「待つというほど待っていない気もするけど、とりあえず入ってください」
持ってきてくれた本の数は三冊ほどで、どれも読みごたえのありそうな厚みのある本だった。
「どうぞ」
手渡してくれたのは、どれも文庫サイズでいつも私が読むような感じの本は一冊もなく、古典的な政治哲学本だった。
「へぇ、こうゆうの読むの?」
「お嫌いですか?」
私は本ならば大抵のジャンルは読むことができる。
しかし、このジャンルは初めてなので不思議に緊張してくるが嫌ではない。
「ご無理はなさらずに」
そう言われると、更に緊張してくる。
まずは一ページ目を読もうとするが、ふと読みかけの本を思い出し、最初にそちらを読むことにした。
午前中は読書で終わりを告げる。
再度本を読むのに集中した私は、彼の視線を気にせず一気に読み進めていく。
特別凄い落ちは無くとも、この物語を書いた人のメッセージは私に伝わってくる。
それは、とても幸福なことであり、満足できる瞬間でもあった。
「ふぅ」
小さなため息を漏らすと、視線を横に向ける。
そこには、寝ているような綺麗な顔で瞳を閉じている蒲生さんがいた。
本人曰く、考え事をしているそうだがいったいどんなことを考えているのか知りたくなってくる。
最後のページを閉じ、本をテーブルに置くと同時に彼も瞳を開きこちらをみつめてくる。
それと同時に、部屋に備え付けの電話にお昼ご飯を告げるベルが三回鳴り響いた。
このルールは、私と使用人しかしらないルール。
いちいち確認しなくてもよいと、私から申し出たシステムだった。
ベルが鳴って、ちょうど五分もすると昼食が運ばれてきた。
美味しそうな香りが、少し淀んだ部屋の空気と混ざり、なんとも表現し難い空間に早変わりする。
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