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後輩くんは愛したい、愛されたい 新発田 勇士のターン
変わらない気持ち
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会社に戻ると笑顔で吏奈さんが出迎えてくれる。
「ありがとう♪」
あぁ、きっとユウが連絡をとってくれたのだろう。
大丈夫ですよとだけ伝えて自分のデスクに戻っていく。
チラッと彼の姿を探したが、どこにもいなかった。
「もう、本当になんなのよ」
ぐったりと疲れてしまう。
せっかく美味しいご飯を食べたのに、午後のやる気がまってくでてこない。
結局、その後もズルズルとイヤな感じが尾を引いて仕事に集中できなかった。
間違って部長に変なメールを送ってしまい、軽く笑われてしまうし……リズムがまったくつかめなかった。
「もうダメ、帰る」
パチッとパソコンの画面を消して、退勤の準備にはいる。
帰り際、営業部の部屋をチラッと確認してみるが誰の姿も無かったのでまだ仕事中の可能性もあった。
彼は忙しいのか、私たちよりも遅くに帰ってくることが多く疲れた顔をしている。
「でも……ちょっと凄いかも」
だけど、まだ入社したばかりだというのに既に仕事を任され数件の仕事を受注してきていると聞いている。
家に帰ると誰も会社の話題を出さないので、噂程度にしか聞いていないが今度確認してみるのもよいかもしれない。
トボトボと帰宅すると、今日こそいっくんの気配はない。
「あぁ、そう言えば今日は飲み会だっけ?」
本人曰く、接待とのことでしたが飲み会には変わりないと思っている。
ただ、あまりお酒には強くないみたいで家でも飲んでいるのをみたことはない。
ユウもそう言えば、飲んでいるところを見たこと無いかもしれない。
「まぁ、私も飲まないんだけどね」
お酒は好きだ。だけど、家で飲むほどでもないというか……お店に行けばそれなりに楽しんで飲むと言った方がよいかもしれない。
「さて、今日は私がご飯を作りますか」
いっくんが不在なので、今日は私がご飯当番だ。
得意な料理というか、できる範囲が限られているのでさっさと準備を進めていく。
前もって用意していた鮭を焼いて、おひたしにお味噌汁と、副菜に金平ごぼうを作る予定だ。
「なんだか地味ね」
茶色が多いメニューだが、味には自信がある。
手際よくゴボウを割いていると、玄関から人の気配がしてきた。
「お? いい匂い」
ネクタイを緩めながら現れたのは、ユウだった。
予想よりも早めの帰宅にちょっと焦ってしまう、だってまだ昼のことを考えていたのだから。
「た、ただいま」
「おかえりなさい」
心なしか、声が控えめな感じで恐縮してしまう。
お互い顔をあわせることなく、着替えるために部屋に戻る後輩。
き、気まずい……どう接したらよいのか見当もつかなかった。
ご飯が出来上がり、テーブルに並べて待っていると彼が現れる。
「すみません、作ってもらって」
ブスっとした態度で席に座って「いただきます」と言ってくれる。
怒っているのだろうが、反抗的な態度や悪態をつく感じではないのでその点は安心できた。
「そ、その……」
無言のまま食べ進めていくのも、空気が重すぎて何か会話をと思い話しかけようとするが、ユウがこちらを向いて何か言いたげな顔をしている。
「な、なに?」
「俺は先輩が好きです。ずっと前からこの気持ちは変わっていません」
面と向かって言われると、ドキッと心臓が飛びはねてしまう。
「え、えっと……嬉しいけど、なんで?」
ずっと疑問に思っていた。
いったいなぜ私のことをそんなに好いてくれているのだろうか?
このタイミングをチャンスと思い、思い切ってきいてみることにする。
「どこから話しましょうか、俺って実は昔はけっこうヤンチャしていたんですよ。それこそ、先輩に言えないようなことばかりしていましたね」
箸とお茶碗を置いて、淡々と話しだしていく。
時折見せる違和感は、昔の名残と思うと合点してしまう。
「でも、なぜか勉強だけはソコソコだったんすよ。飛びぬけて良くはなかったですが将来やりたいことも見つけられなかったので、とりあえず的な感じで大学に入学しました。そこで今までの自分は捨てて一回リセットしたいなって、だからワザと地元から遠く離れた場所に入学したんですよ」
そして、自分を変えるために演劇部に入り一生懸命取り組んだと教えてくれた。
「ありがとう♪」
あぁ、きっとユウが連絡をとってくれたのだろう。
大丈夫ですよとだけ伝えて自分のデスクに戻っていく。
チラッと彼の姿を探したが、どこにもいなかった。
「もう、本当になんなのよ」
ぐったりと疲れてしまう。
せっかく美味しいご飯を食べたのに、午後のやる気がまってくでてこない。
結局、その後もズルズルとイヤな感じが尾を引いて仕事に集中できなかった。
間違って部長に変なメールを送ってしまい、軽く笑われてしまうし……リズムがまったくつかめなかった。
「もうダメ、帰る」
パチッとパソコンの画面を消して、退勤の準備にはいる。
帰り際、営業部の部屋をチラッと確認してみるが誰の姿も無かったのでまだ仕事中の可能性もあった。
彼は忙しいのか、私たちよりも遅くに帰ってくることが多く疲れた顔をしている。
「でも……ちょっと凄いかも」
だけど、まだ入社したばかりだというのに既に仕事を任され数件の仕事を受注してきていると聞いている。
家に帰ると誰も会社の話題を出さないので、噂程度にしか聞いていないが今度確認してみるのもよいかもしれない。
トボトボと帰宅すると、今日こそいっくんの気配はない。
「あぁ、そう言えば今日は飲み会だっけ?」
本人曰く、接待とのことでしたが飲み会には変わりないと思っている。
ただ、あまりお酒には強くないみたいで家でも飲んでいるのをみたことはない。
ユウもそう言えば、飲んでいるところを見たこと無いかもしれない。
「まぁ、私も飲まないんだけどね」
お酒は好きだ。だけど、家で飲むほどでもないというか……お店に行けばそれなりに楽しんで飲むと言った方がよいかもしれない。
「さて、今日は私がご飯を作りますか」
いっくんが不在なので、今日は私がご飯当番だ。
得意な料理というか、できる範囲が限られているのでさっさと準備を進めていく。
前もって用意していた鮭を焼いて、おひたしにお味噌汁と、副菜に金平ごぼうを作る予定だ。
「なんだか地味ね」
茶色が多いメニューだが、味には自信がある。
手際よくゴボウを割いていると、玄関から人の気配がしてきた。
「お? いい匂い」
ネクタイを緩めながら現れたのは、ユウだった。
予想よりも早めの帰宅にちょっと焦ってしまう、だってまだ昼のことを考えていたのだから。
「た、ただいま」
「おかえりなさい」
心なしか、声が控えめな感じで恐縮してしまう。
お互い顔をあわせることなく、着替えるために部屋に戻る後輩。
き、気まずい……どう接したらよいのか見当もつかなかった。
ご飯が出来上がり、テーブルに並べて待っていると彼が現れる。
「すみません、作ってもらって」
ブスっとした態度で席に座って「いただきます」と言ってくれる。
怒っているのだろうが、反抗的な態度や悪態をつく感じではないのでその点は安心できた。
「そ、その……」
無言のまま食べ進めていくのも、空気が重すぎて何か会話をと思い話しかけようとするが、ユウがこちらを向いて何か言いたげな顔をしている。
「な、なに?」
「俺は先輩が好きです。ずっと前からこの気持ちは変わっていません」
面と向かって言われると、ドキッと心臓が飛びはねてしまう。
「え、えっと……嬉しいけど、なんで?」
ずっと疑問に思っていた。
いったいなぜ私のことをそんなに好いてくれているのだろうか?
このタイミングをチャンスと思い、思い切ってきいてみることにする。
「どこから話しましょうか、俺って実は昔はけっこうヤンチャしていたんですよ。それこそ、先輩に言えないようなことばかりしていましたね」
箸とお茶碗を置いて、淡々と話しだしていく。
時折見せる違和感は、昔の名残と思うと合点してしまう。
「でも、なぜか勉強だけはソコソコだったんすよ。飛びぬけて良くはなかったですが将来やりたいことも見つけられなかったので、とりあえず的な感じで大学に入学しました。そこで今までの自分は捨てて一回リセットしたいなって、だからワザと地元から遠く離れた場所に入学したんですよ」
そして、自分を変えるために演劇部に入り一生懸命取り組んだと教えてくれた。
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