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我……恋? しちゃった♡

楽しみがあるかも?

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 何者かの後を追うこと、随分と廃れた場所にたどり着いた。
「臭いなぁ、臭すぎる」

 悪臭とは違う、こう悪意がこもった臭いに鼻が反応してしまう。影はボロボロの建物に入っていき見えなくなる。俺は聴力を魔法で強化し壁の外から中を探ってみた。

「娘には手を出さないと約束したじゃないか‼」

 聞き覚えのある声に思わず笑いが漏れそうになる。

「ケケケケッ……知らなかったんだ。悪く思うな」
「知らないで済まさなれない! もし、今後娘に手を出したら許さない!」
「うるさい、黙れ! その大切な娘を助けるために、変な男が現れて俺たちの仲間がやられたんだ!」

 なるほど、そういうことか……。やはり人は見かけによらないとは、よく言ったものだ。

「頼む、今後も情報は渡す。だから、娘だけは見逃してくれ!」
「無理だ、俺たち仲間の絆は深い。仲間の仇を討ったらお前の娘はもらう!」
「話が違う!」
「バカかお前は⁉ 俺らを裏切ってみろ、お前が内通者だとバラすぞ……そうなればお前の大事な大事な娘はなんと思うだろうな? 愛していたパパが俺らに情報を売っていたなんてな!」

 ゲラゲラと下品な笑い声が聞こえてくる。なんとも不快でしかない。

「娘は守る……もし、手を出すなら全員この場で捕らえる! 私はもう嫌だ。小さな盗み程度までなら見逃していたが、街の子どもたちをさらうまでは許容していない」

「だから、お前はバカなのか? 俺らに警備の情報なんかを渡す代わりに金貰っておいて、何を言うんだか! 結局同類なんだよ」

「心は売った。だが、愛する娘まで売ったつもりはない!」
「あぁ、本当に話にならねぇ。クソがやめたやめた。もうこの街で活動していくうえで、お前の情報はもう必要ない。だから、この場で殺し娘は売ってやるよ。感謝しな、殺さないだけ慈悲と思え!」

「こ、このクズがぁ!」

 魔法の気配がした。まぁ、両方どうなろうが俺にはまったく関係ない。しかし、あいつらは口に出してはならないことを言ってしまった。
 壁に手を付け、中の情報を整理し力を抑える。本気でやればこの街が吹き飛んでしまうので、注意が必要だ。

「【断罪の矢フォビドゥン ・アロー】」

 スパっと手のひらから小さな針が壁を突き刺し、そのままスルッと中に入っていく。建物からする気配は五つ、一つはアイリスの父のだから他のはどうなっても良い。彼女が悲しむ顔さえ見なければそれでよいのだから。
 針はそのまま部屋の中を飛び回り、順番に賊どもの脳天を突き通りぐるっと一周するころには賊どもは絶命していた。

「な、なにが起きたんだ⁉ お、おい。どうした? な、なんだ?」

 ふぅ……力を抜くのは逆に疲れる。髪の毛程度の細さだが、殺傷能力は十分だったようだな。まずは上手くいった自分をほめたい。
 さて、問題は……。慌てている彼女の父親に気が付かれないように、建物を離れていく。このまま姿を消すことも考えたが、おそらく賊はあれだけではない。中堅どろこの街から情報などを流す役目を担った奴らであろう。

「森か……」

 先程、敵の脳天を攻撃したとき一瞬ではあるが、情報も抜いておいた。そのため、相手の本拠地がおおよそどこにあるのかも把握している。
 
「許さない。俺の愛しいアイリスを売るだと? ふざけるな」

 さて、どうやってやろうか? 森ごと消し飛ばすか、あるいわ……いや、待てよ? そういえば、召喚術というものをまだ殆ど体験したことがない。昼の相手は弱すぎたが、今度の相手は……ふふふふ。

 森の中を歩いていくと、すぐに敵の本拠地が見えてくる。まぁ、歩くと言っても人間の脚ではあなり時間が必要な距離であったが、俺にとっては軽い運動にもならない。
 小さな洞窟の入口に、ご立派に門まで作っている。ここにいますよ! と、宣言している感じがしてよほど自信があるのか、それともバカなだけなのか……頼むから前者であってほしい。
 あの勇者と戦った後の絶望感を拭ってくれる可能性があると思うと、心が躍るような感じがしてきた。

「なるほど、随分と土の中にいたが世の中は面白くなっている。これは、早々に元の場所に戻ろうと思ったがもう少し楽しんでみたくなったな」

 賊のたちは俺の心臓を早めるだけの実力があることを祈って歩いていく。
 途中、門番の男二人がこちらに気が付き矢を放ってくるが、俺に当たっても傷一つつかないことに驚き召喚術を発動させた。
 一人は急いで奥に走り俺の存在を告げているだろう、早く早く。強いのがでてこい! 召喚されたのは、黒い影のような存在で男は【影の亡霊グレイマン】と、呼んでいたが……ここでも偽物か! 本物のグレイマンはもっと巨大で強い。こんな小物なわけがないだろう。

「いや、でも……アイリスの召喚術ではカラドリウスの力をもった鳥が契約していた。まてよ? もしかすると、本物ではなく何かしらの力だけと契約しているのでは?」

 そう思ったとき、一気に熱が冷めていく感じがしたが今は彼女を守ることが最優先だった。

「キシャーー!」
 
「さらばだ偽物よ、返るのだ」

 ふっと息を吹きかけると、影は跡形もなく消えてしまう。ほら、やはり本物のグレイマンならもう少し歯ごたえがあるというのに、まったく話にならない。

「な、なんだって! てめぇ、どんな魔法使っているのか知らねえが、ここは黒の盗賊団の本拠地……」

「うるさい【永久の火葬パーペチュアル.・ クリメイト 】」

 あ、しまった! つい昼よりも少しだけ力んでしまった。案の定、ポッと黒い炎が出たと思ったらそのまま門ごと吹き飛ばしてしまった。

「あぁ……もう少しカッコよくするつもりだったが、まぁ始まりの合図と考えればよいのか」

 

 
 
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