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その後34.改めて客がきた

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 午後はロイにまたがられたり、抱かれたりした。ロイのことはいつも抱いたっていうより、まんままたがられて搾り取られるかんじだった。さすが元娼夫と思ってしまう。俺をイカせた後は甘く抱いてくれた。

「天使さまの方ががたいがいいから不思議なかんじはしますね」

 ケンが素直な感想を言う。

「えー? 天使さまかわいいよ?」
「それは同意します」
「あっ、あっ、あっ……」

 ちゅ、ちゅと顔中にキスをされながら、もう勝手に言ってろと思った。
 で、翌日はいつも通りだった。翌々日、ロイが言っていた客? が来た。

「昨日どうにか天使さまを買い取りまして、一応全身を治癒して抱いたのです。とりあえず命の危険はなくなりましたが、心得や扱いの注意点などありましたら教えていただきたい」

 客は、エインと同じ巨人族だった。それなりに整った顔をしており、ハンサムと言ってもいいほどである。巨人族はとても優しいと言っていたから、その天使は穏やかに暮らしていけるだろう。よかったなと思った。

「失礼ですが貴方は巨人族ですよね。天使さまは巨人族の村に連れていくのですか?」

 ロイが尋ねる。それに客は首を振った。

「いえ、村には戻りません」
「それは何故?」
「村に戻れば他の者たちと天使さまを分け合わなければなりませんから。天使さまを購入したのは私ですが、双子の兄と共に暮らしています。天使さまのお相手は私たち二人で十分と思っています」
「そうですか」

 俺は半目になった。俺の相手って現時点でかなりいるよな。インが所有者として、ロイ、エイン、ケン、それにいつもではないけどファンとハレも。それだけで六人とか。しかもそれで感じまくってあんあん喘ぐだけとか。俺が終わってる。
 巨人族の村に行ったら更に相手が増えるわけ? 冗談じゃない。

「お二人で、というと治癒と抱くのは問題ないと思いますが、護衛はどうなされるおつもりですか?」
「護衛、ですか?」
「はい。天使さまはその存在自体が希少故に一部の好事家には高値で取引されています。例え所有者がいたとしても天使さまが狙われていることに変わりはありません。今天使さまはどちらに?」
「兄が一緒にいますが」
「ではこちらに連れて来られた方がいいと思います」
「……わかりました。連れて参ります」

 客はロイの言葉を素直に聞くと、一旦その場を辞した。

「……なぁ」
「どうしたの?」
「俺も、狙われてんの?」
「うん、だから一人で部屋を出ないように言ってるよね」
「部屋から出るのも危ないのか……」

 そういえば部屋の窓には簡単には外せないような頑丈な格子がある。バルコニーに続く窓も普段は厳重に鍵がかけられている。しかも確かなんか魔法もかけているようなことを言っていた。

「まぁうちはまず守ってる人数が多いから早々狙ってくる人もいないけど、二人しかいなかったら狙うかもねぇ」
「でも扱いに困るんだろ?」
「一日二日以内に好事家に売ってしまえばそれほど手間ではないでしょ」
「……こわっ」
「大丈夫、天使さまは僕たちのだから絶対に誰にも渡さないよ」
「……うん」

 エインの腕の中で俺は思わず顔が熱くなるのを感じた。

「天使さまかわいいー。あーもー客の相手なんかしないで天使さまとしっぽりしたーい!」

 ロイのあけすけな科白に俺は苦笑した。

「終わってから……」
「うん、まぁでも話だけじゃすまないんだけどね……」
「?」

 なんのことだろう。俺は軽く首を傾げた。
 ちなみにインは今日も仕事だと言って出て行った。客が来たら連絡しろと言われたからすでに連絡はしているはずだ。もしかしたらそろそろ帰ってくるかもしれない。客とイン、どちらが先に戻ってくるかと思っていたらインの方が早かった。

「客は?」
「今天使さま連れに行ったよー」
「そうか」

 そう言ってエインをどかし、俺を膝に乗せた。ダッ〇ちゃん人形じゃないんだが。

「どうだった?」
「? どうだったって、何が?」

 抽象的で質問の意味がわからない。

「客だよ。抱かれたいと思ったか?」
「……そんなに節操なしじゃない」

 別にインにだって抱かれたいわけではないのだ。どうして今日会ったばかりの人に俺が抱かれたいと思うんだろう。

「インさん、天使さまはすっごく真面目なんだよ。僕たちの感覚で言ったって通じないってば」
「そうか」

 何故か後ろからぎゅっと抱きしめられる。大きな腕に抱かれるのは嫌いじゃない。インは客が戻ってくるまでそうして俺を抱きしめていてくれた。とても愛されているようで俺は少しどきどきした。
 でもうぬぼれてはいけないとも思った。
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