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62.王妃にお茶会だからと呼ばれました
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ヴィクトーリア様は王妃の言に、きょとんとしたような表情をした。
「そうですね……確か結婚してすぐだったかと……。事業内容が公爵領に関わるものだったので、それまでの収益は王太子様分をお渡ししてから名義変更を行いました。それが何か?」
「そ、そう……利益はすでに分配していたのね……」
「はい」
「でも、王太子は知らないと言っていたわ。それはどういうことなの?」
ヴィクトーリア様は悲痛そうに胸を押さえた。
「それは……私も存じ上げませんでした。事業自体の確認を王太子様はしていらっしゃらなかったのでしょうか」
王妃がうっと詰まる。そうだよね。自分で把握していたら今頃聞いてくるとかありえないよね。
「す、全ての事業について王太子が自ら確認するはずがないでしょう!」
「そうですね」
ヴィクトーリア様がさらりと同意する。王妃はツンと顎を上げた。
「ですが……王太子様が管理していらっしゃらなかったのならば管理する者が他にいたはずです。その者は何故名義変更について王太子様に伝えていなかったのでしょうか……?」
「それもそうね……」
王妃の返事は尻つぼみとなった。
そこは王太子の侍従が勝手にしたことだと証拠が上がっているらしい。ちら、と王妃の周りを見るといつもの顔ぶれに変化があった。何人かが入れ替わっている気がする。
「ねえ、ヴィクトーリア」
「はい」
王妃が猫なで声を出した。ちょっと嫌なかんじである。
「貴女はいろいろなアイデアを持っていると聞いたわ。……この国を更に発展させるようないい案はないのかしら?」
「そうですね……それには庶民への教育が一番ではないかと私は思いますわ」
「教育?」
王妃は全くピンとこないようで、眉を寄せた。
「はい。国力を上げる為には国民の生活を向上させなければなりません。もちろん聡明な王妃様のことですからそれぐらいご存知でいらっしゃいますよね?」
「え、ええ……もちろんよ」
王妃、たじたじである。
「その為には庶民にもまずは小さくてかまいませんから学校を作り、教育を受けさせる必要があると思いますの」
「で、でもそれだと時間がかかるでしょう? もっと早くできそうな……」
「もちろん人の教育をするわけですから時間がかかるのはしかたないことです。ですがそこに投資した分は遅くとも二十年後には返ってきます。王妃様はもちろんご存知だとはわかっておりますが、陛下にも改めてよろしくお伝えくださいませ」
「……わかったわ。ああ、私しなければいけないことを思い出したわ!」
「ではおいとまさせていただきます」
「ええ、また声をかけるからよろしくね」
「はい、ありがとうございます」
そんなやりとりを経てヴィクトーリア様の部屋に戻ってきました。あれこそ立て板に水のごとく話すという表現が合っているだろう。王妃付きの侍女だの王妃だのにいちいち睨まれたけど少しすっきりした。
「ローゼ、ここにお掛けなさい」
「はい……」
ヴィクトーリア様に言われて、私はソファの隣に腰掛けた。最近は部屋付きの侍女に睨まれることもめっきり減った。でも油断はしないでおこうと思う。
「手を」
「はい」
言われるがままに手を差し出すと、ヴィクトーリア様にそっと握られた。
「……今はこれだけな」
「はい」
ヴィクトーリア様もそれなりにストレスを感じていたらしい。手をそっと握られながらお茶を飲んだら心がほっこりした。
いつのまにか、だけど私はヴィクトール様に恋をしているらしい。ドレスを着てヴィクトーリア様の姿になっている時も素敵だなって思う。私にはもうその幻術はきかないから、ヴィクトール様がドレスを着ている状態に見えるんだけど、美しいから全く違和感がない。
「……早く、結婚したいです」
こっそり呟いてみる。ヴィクトーリア様が音を聞こえないようにする魔法を使っていることはわかっているからできることだ。ヴィクトーリア様はにっこりと笑んだ。
「……私もだ」
どきどきしながら迎えたその日の夜。王太子が訪ねてきたので思わず殺ってしまうところでした。せっかくのヴィクトール様との時間が~~~。王太子、許すまじ。
もちろん、ヴィクトーリア様はいつも通り幻術をかけて王太子を部屋の隅に転がしました。全然わかってはいないだろうけど、もう来るのやめたら?
「そうですね……確か結婚してすぐだったかと……。事業内容が公爵領に関わるものだったので、それまでの収益は王太子様分をお渡ししてから名義変更を行いました。それが何か?」
「そ、そう……利益はすでに分配していたのね……」
「はい」
「でも、王太子は知らないと言っていたわ。それはどういうことなの?」
ヴィクトーリア様は悲痛そうに胸を押さえた。
「それは……私も存じ上げませんでした。事業自体の確認を王太子様はしていらっしゃらなかったのでしょうか」
王妃がうっと詰まる。そうだよね。自分で把握していたら今頃聞いてくるとかありえないよね。
「す、全ての事業について王太子が自ら確認するはずがないでしょう!」
「そうですね」
ヴィクトーリア様がさらりと同意する。王妃はツンと顎を上げた。
「ですが……王太子様が管理していらっしゃらなかったのならば管理する者が他にいたはずです。その者は何故名義変更について王太子様に伝えていなかったのでしょうか……?」
「それもそうね……」
王妃の返事は尻つぼみとなった。
そこは王太子の侍従が勝手にしたことだと証拠が上がっているらしい。ちら、と王妃の周りを見るといつもの顔ぶれに変化があった。何人かが入れ替わっている気がする。
「ねえ、ヴィクトーリア」
「はい」
王妃が猫なで声を出した。ちょっと嫌なかんじである。
「貴女はいろいろなアイデアを持っていると聞いたわ。……この国を更に発展させるようないい案はないのかしら?」
「そうですね……それには庶民への教育が一番ではないかと私は思いますわ」
「教育?」
王妃は全くピンとこないようで、眉を寄せた。
「はい。国力を上げる為には国民の生活を向上させなければなりません。もちろん聡明な王妃様のことですからそれぐらいご存知でいらっしゃいますよね?」
「え、ええ……もちろんよ」
王妃、たじたじである。
「その為には庶民にもまずは小さくてかまいませんから学校を作り、教育を受けさせる必要があると思いますの」
「で、でもそれだと時間がかかるでしょう? もっと早くできそうな……」
「もちろん人の教育をするわけですから時間がかかるのはしかたないことです。ですがそこに投資した分は遅くとも二十年後には返ってきます。王妃様はもちろんご存知だとはわかっておりますが、陛下にも改めてよろしくお伝えくださいませ」
「……わかったわ。ああ、私しなければいけないことを思い出したわ!」
「ではおいとまさせていただきます」
「ええ、また声をかけるからよろしくね」
「はい、ありがとうございます」
そんなやりとりを経てヴィクトーリア様の部屋に戻ってきました。あれこそ立て板に水のごとく話すという表現が合っているだろう。王妃付きの侍女だの王妃だのにいちいち睨まれたけど少しすっきりした。
「ローゼ、ここにお掛けなさい」
「はい……」
ヴィクトーリア様に言われて、私はソファの隣に腰掛けた。最近は部屋付きの侍女に睨まれることもめっきり減った。でも油断はしないでおこうと思う。
「手を」
「はい」
言われるがままに手を差し出すと、ヴィクトーリア様にそっと握られた。
「……今はこれだけな」
「はい」
ヴィクトーリア様もそれなりにストレスを感じていたらしい。手をそっと握られながらお茶を飲んだら心がほっこりした。
いつのまにか、だけど私はヴィクトール様に恋をしているらしい。ドレスを着てヴィクトーリア様の姿になっている時も素敵だなって思う。私にはもうその幻術はきかないから、ヴィクトール様がドレスを着ている状態に見えるんだけど、美しいから全く違和感がない。
「……早く、結婚したいです」
こっそり呟いてみる。ヴィクトーリア様が音を聞こえないようにする魔法を使っていることはわかっているからできることだ。ヴィクトーリア様はにっこりと笑んだ。
「……私もだ」
どきどきしながら迎えたその日の夜。王太子が訪ねてきたので思わず殺ってしまうところでした。せっかくのヴィクトール様との時間が~~~。王太子、許すまじ。
もちろん、ヴィクトーリア様はいつも通り幻術をかけて王太子を部屋の隅に転がしました。全然わかってはいないだろうけど、もう来るのやめたら?
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