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四五、来龍去脈(顛末)
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やっと落ち着いて、侍女が淹れてくれたお茶を口に含む。ひどく喉が渇いていたことに明玲は気づいた。
「……ごめんなさい」
「明玲」
偉仁が明玲の手にそっと触れる。もう謝るなと言われているようだった。
「もう遅いので手短にお伝えします。詳細は後日でよろしいでしょうか」
「かまわないわ」
「では」
芳妃が呆れたように言う。許可を得て、偉仁は話し始めた。
皇帝はその好色により各地の豪族から恨みを買っていた。明妃だけでなく、少しでも気に入った女性ならば結婚しているしていないに関わらず召し上げたという。その為後宮の運営にかかる費用は年々増大し、増税まで検討するようにと言い出したことで、貴族や豪族が反発した。
そこで担ぎ出されたのが国境を守っている薊王である。皇都の北に位置する領地は広大だが、作物はあまり採れず、それだけでなくたびたび遊牧民に攻められている。皇帝と違い容色麗しく、時には自ら遊牧民を撃退すると言われる薊王は民衆からの受けもいい。
薊王もまた兄である皇帝を何度も諫めたが、皇帝は一切取り合わなかった。それどころかお前のところにも美女が集まっているだろう、一人ぐらいよこせなどという始末。老百姓(一般の民)に苦労はさせられないと、薊王が立ったという話だった。
そして皇帝は何も知らず明玲を迎える準備をしていた。そこへ薊王が蘇王の館を訪れたということを聞く。薊王に明玲を取られてはなるまいと、皇帝は聖旨まで出して明玲を無理矢理後宮に入れさせた。その間に準備を整えていた薊王率いる反乱軍が皇城を制圧。皇帝は捕らえられ、退位と引き換えに命を繋いだ。今後は離宮に幽閉されることになるという。
なんとも突っ込みどころの多い話だと明玲は微妙な顔をした。
「……悪くはない脚本だわ。それなら民に影響はないわね」
芳妃はやはり呆れたようにそう言った。
「はい、明玲を守ってくださりありがとうございました。本日はこれで失礼します」
「そうね。明玲も疲れたでしょう。またいらっしゃい」
「はい……芳妃娘娘、明妃娘娘ありがとうございました」
哥が明玲を抱いたまま立ち上がる。明妃は最後までにこにこして明玲たちを見送った。
哥は明日もここを訪れるのだろうと明玲は思う。その時明玲はもう付き添うことなく、館で待っていることになるのだろうとも思う。確かに皇帝が変わったとしても体制が変わらなければ民草にはほとんど影響はない。一部の貴族や豪族が騒ぐかもしれないが、残念ながら皇帝に人望はなかったようだ。薊王が即位することで国中が沸くだろう。それはよいことなのだと明玲は思った。
でも、とも思う。
芳妃は、明妃はどうなってしまうのだろう。
確か皇帝が崩御するとその妃たちは一部を除いて尼になるのではなかったか。今回の皇帝の妃への扱いはどうなるのか。それがとても心配でならなかった。
「哥、母たちは……」
「悪いようにはならぬはずだ。皇太子はそのままだし、まだ子を成していない女たちは帰されるだろう。私たちを信じてくれ」
「はい……」
それでもなんだか明玲はもやもやするものを感じた。明玲を皇帝が召し上げようとしていたこと。それを利用して反乱を起こしたこと。
明玲はだんだん腹が立ってくるのを感じた。
女をなんだと思っているのだ。
「哥、私とても疲れました」
「ああ、そうだろう。本当にすまなかった」
「ですからこの件が片付くまで、私のことは呼ばないでくださいませ」
「明玲?」
哥が戸惑うように明玲に声をかける。それに明玲はにっこりと笑むことで応えた。
「……ごめんなさい」
「明玲」
偉仁が明玲の手にそっと触れる。もう謝るなと言われているようだった。
「もう遅いので手短にお伝えします。詳細は後日でよろしいでしょうか」
「かまわないわ」
「では」
芳妃が呆れたように言う。許可を得て、偉仁は話し始めた。
皇帝はその好色により各地の豪族から恨みを買っていた。明妃だけでなく、少しでも気に入った女性ならば結婚しているしていないに関わらず召し上げたという。その為後宮の運営にかかる費用は年々増大し、増税まで検討するようにと言い出したことで、貴族や豪族が反発した。
そこで担ぎ出されたのが国境を守っている薊王である。皇都の北に位置する領地は広大だが、作物はあまり採れず、それだけでなくたびたび遊牧民に攻められている。皇帝と違い容色麗しく、時には自ら遊牧民を撃退すると言われる薊王は民衆からの受けもいい。
薊王もまた兄である皇帝を何度も諫めたが、皇帝は一切取り合わなかった。それどころかお前のところにも美女が集まっているだろう、一人ぐらいよこせなどという始末。老百姓(一般の民)に苦労はさせられないと、薊王が立ったという話だった。
そして皇帝は何も知らず明玲を迎える準備をしていた。そこへ薊王が蘇王の館を訪れたということを聞く。薊王に明玲を取られてはなるまいと、皇帝は聖旨まで出して明玲を無理矢理後宮に入れさせた。その間に準備を整えていた薊王率いる反乱軍が皇城を制圧。皇帝は捕らえられ、退位と引き換えに命を繋いだ。今後は離宮に幽閉されることになるという。
なんとも突っ込みどころの多い話だと明玲は微妙な顔をした。
「……悪くはない脚本だわ。それなら民に影響はないわね」
芳妃はやはり呆れたようにそう言った。
「はい、明玲を守ってくださりありがとうございました。本日はこれで失礼します」
「そうね。明玲も疲れたでしょう。またいらっしゃい」
「はい……芳妃娘娘、明妃娘娘ありがとうございました」
哥が明玲を抱いたまま立ち上がる。明妃は最後までにこにこして明玲たちを見送った。
哥は明日もここを訪れるのだろうと明玲は思う。その時明玲はもう付き添うことなく、館で待っていることになるのだろうとも思う。確かに皇帝が変わったとしても体制が変わらなければ民草にはほとんど影響はない。一部の貴族や豪族が騒ぐかもしれないが、残念ながら皇帝に人望はなかったようだ。薊王が即位することで国中が沸くだろう。それはよいことなのだと明玲は思った。
でも、とも思う。
芳妃は、明妃はどうなってしまうのだろう。
確か皇帝が崩御するとその妃たちは一部を除いて尼になるのではなかったか。今回の皇帝の妃への扱いはどうなるのか。それがとても心配でならなかった。
「哥、母たちは……」
「悪いようにはならぬはずだ。皇太子はそのままだし、まだ子を成していない女たちは帰されるだろう。私たちを信じてくれ」
「はい……」
それでもなんだか明玲はもやもやするものを感じた。明玲を皇帝が召し上げようとしていたこと。それを利用して反乱を起こしたこと。
明玲はだんだん腹が立ってくるのを感じた。
女をなんだと思っているのだ。
「哥、私とても疲れました」
「ああ、そうだろう。本当にすまなかった」
「ですからこの件が片付くまで、私のことは呼ばないでくださいませ」
「明玲?」
哥が戸惑うように明玲に声をかける。それに明玲はにっこりと笑むことで応えた。
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