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4.穏やかなはずがそうはいきませんでした(一旦おしまい)
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※強姦描写があります。ご注意ください※
そうして約三ヶ月が経った頃のことだった。
六月頃から夜や朝方に赤ん坊の泣いているような声が聞こえてくるようになった。これは猫の発情期かもしれない。朝方はさすがにうるさいな、困ったなと思っていた。
でもうちの猫ではなさそうだったので放置していた。
そんなある夜、いつものように自分の部屋で寝ていたらなんだか体に違和感を覚えて意識が浮上した。
びっくりしたなんてものじゃない。どういうわけか私の身体の上に誰かがのしかかっていた。
一瞬夢かと思ったが残念ながらそうではなかった。
「さや……さや……」
しかもその大きな人の影は私の名を知っていた。
恐怖で身じろぎすらできない私の身体を、その人は撫で回したり、舐めたりした。
「さや……もう我慢できぬ……」
そのだみ声はなんだか、どこかで聞いたことがあるような気がした。
私の身体は恐怖で指先一つ動かすことができなかった。強姦されるのが嫌なら全力で暴れればいいなんて無神経なことを言う奴がいるが、逆らったら殺されるかもしれないという状況でどうやって暴れろというのだ。
貞操か命かという瀬戸際で、冷静な判断ができる者がどれだけいるというのだろう。
「いたーいっ!! いたいいたいいたいっ!!」
その人が私の身体を無理矢理開いた時、思い切り叫んでしまった。
「すまない、さや……さや……わしのさや……」
謝りながらもその人は私を離そうとせず、結局私はヤられてしまった。
いったい自分に何が起きたのかわからなかった。あんなに叫んだのに何故猫は出てきてくれないのかとか、いろんな感情が生まれては消えていった。しかもその人はことが終っても離れようとしないで、ぺろぺろといろんなところを舐めた。
夢ならいいのに、と思いながら疲れ果てた私はそのまま眠りについた。
翌朝、私は何故か全裸で猫に埋もれていた。猫の表情はよくわからないと聞く。けれどどうしてか私には、猫が申し訳なさそうな顔をしているように見えた。大きな耳が水平に下がっている。それはへんにょりしているようにも映った。その金色の目を見て、私はあ、と気づいてしまった。
「……もしかして、昨夜のって……」
猫に更に抱え込まれる。私は目を据わらせた。
「茶々さん……私、すっごく怖かったんですよ? なんで人になれるって、なんで人の言葉がしゃべれるって教えてくれなかったんですか!?」
抱きこまれたままぺろぺろと舐められる。
「茶々さんっ!!」
ごまかしているのがわかって私は更に腹を立てた。
でもその怒りもあまり長くは続かなかった。
だって、もふもふに包まれるのはたまらなく気持ちよかった。
その後、人型をとった猫に説明してもらったところによると。
猫は精霊でも妖怪でもなく神様らしい。
嫁取りが必要になると縁結びの神様に頼んでこういった物件に住まわせてもらうのだという。
猫は私を見てすぐに気に入り、嫁にすることにしたのだとか。
「……そこに私の意思はないんですか?」
「ゆっくり時間をかけて口説こうと思っていたのだが、獣の性に引きずられてしまってな……」
どうやら最近の、近所の猫たちの発情期にあてられてしまったらしい。
「私、怒っているんですからね」
「さや、本当にすまない」
「もう……毎日いっぱいもふもふさせてくれないと許しませんからっ!」
「さや……では……」
人型をとった美形の猫は当分慣れそうもないが、大きな猫に埋もれるのは至福のひと時である。
元々猫が神様になったらしく、一日の大半を元の姿で過ごしているらしい。
「さや、そなたを幸せにしようぞ」
人語は人型を取らないとしゃべれないので、それから猫は人型もとるようにもなった。だけどやっぱり私は大きな猫の姿が好きである。
「じゃあ猫の姿に戻ってください!」
掃除はたいへんだけど、大学に入る為に物件を借りたらもふもふの恋人ができて今はとっても幸せです。
まだ両隣の部屋の神様は伴侶が見つかっていらっしゃらないようなので、貴方もこんな同居生活をしてみませんか?
もちろん、相談には乗りますので。
一旦おしまい。
そうして約三ヶ月が経った頃のことだった。
六月頃から夜や朝方に赤ん坊の泣いているような声が聞こえてくるようになった。これは猫の発情期かもしれない。朝方はさすがにうるさいな、困ったなと思っていた。
でもうちの猫ではなさそうだったので放置していた。
そんなある夜、いつものように自分の部屋で寝ていたらなんだか体に違和感を覚えて意識が浮上した。
びっくりしたなんてものじゃない。どういうわけか私の身体の上に誰かがのしかかっていた。
一瞬夢かと思ったが残念ながらそうではなかった。
「さや……さや……」
しかもその大きな人の影は私の名を知っていた。
恐怖で身じろぎすらできない私の身体を、その人は撫で回したり、舐めたりした。
「さや……もう我慢できぬ……」
そのだみ声はなんだか、どこかで聞いたことがあるような気がした。
私の身体は恐怖で指先一つ動かすことができなかった。強姦されるのが嫌なら全力で暴れればいいなんて無神経なことを言う奴がいるが、逆らったら殺されるかもしれないという状況でどうやって暴れろというのだ。
貞操か命かという瀬戸際で、冷静な判断ができる者がどれだけいるというのだろう。
「いたーいっ!! いたいいたいいたいっ!!」
その人が私の身体を無理矢理開いた時、思い切り叫んでしまった。
「すまない、さや……さや……わしのさや……」
謝りながらもその人は私を離そうとせず、結局私はヤられてしまった。
いったい自分に何が起きたのかわからなかった。あんなに叫んだのに何故猫は出てきてくれないのかとか、いろんな感情が生まれては消えていった。しかもその人はことが終っても離れようとしないで、ぺろぺろといろんなところを舐めた。
夢ならいいのに、と思いながら疲れ果てた私はそのまま眠りについた。
翌朝、私は何故か全裸で猫に埋もれていた。猫の表情はよくわからないと聞く。けれどどうしてか私には、猫が申し訳なさそうな顔をしているように見えた。大きな耳が水平に下がっている。それはへんにょりしているようにも映った。その金色の目を見て、私はあ、と気づいてしまった。
「……もしかして、昨夜のって……」
猫に更に抱え込まれる。私は目を据わらせた。
「茶々さん……私、すっごく怖かったんですよ? なんで人になれるって、なんで人の言葉がしゃべれるって教えてくれなかったんですか!?」
抱きこまれたままぺろぺろと舐められる。
「茶々さんっ!!」
ごまかしているのがわかって私は更に腹を立てた。
でもその怒りもあまり長くは続かなかった。
だって、もふもふに包まれるのはたまらなく気持ちよかった。
その後、人型をとった猫に説明してもらったところによると。
猫は精霊でも妖怪でもなく神様らしい。
嫁取りが必要になると縁結びの神様に頼んでこういった物件に住まわせてもらうのだという。
猫は私を見てすぐに気に入り、嫁にすることにしたのだとか。
「……そこに私の意思はないんですか?」
「ゆっくり時間をかけて口説こうと思っていたのだが、獣の性に引きずられてしまってな……」
どうやら最近の、近所の猫たちの発情期にあてられてしまったらしい。
「私、怒っているんですからね」
「さや、本当にすまない」
「もう……毎日いっぱいもふもふさせてくれないと許しませんからっ!」
「さや……では……」
人型をとった美形の猫は当分慣れそうもないが、大きな猫に埋もれるのは至福のひと時である。
元々猫が神様になったらしく、一日の大半を元の姿で過ごしているらしい。
「さや、そなたを幸せにしようぞ」
人語は人型を取らないとしゃべれないので、それから猫は人型もとるようにもなった。だけどやっぱり私は大きな猫の姿が好きである。
「じゃあ猫の姿に戻ってください!」
掃除はたいへんだけど、大学に入る為に物件を借りたらもふもふの恋人ができて今はとっても幸せです。
まだ両隣の部屋の神様は伴侶が見つかっていらっしゃらないようなので、貴方もこんな同居生活をしてみませんか?
もちろん、相談には乗りますので。
一旦おしまい。
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