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142.ベランダでまったりしていたい

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 昼飯を食べて、少しおなかが落ち着いたところでベランダに出た。

「太陽の光も浴びないとな」

 確かに全然浴びないでいたらくる病とかになりそうだ。ビタミンDが必要なんだっけ? よくわからない。
 服を着て、足元は靴下を履かせられてベランダのベンチでジャックの上に座らされる。絶対どっちかの膝の上というのが解せないが、外ならばなおのこと離れるのは不安だと言われてしまえば従わざるを得ない。

「俺さ……最近全く歩いてなくない?」

 天使になってからほぼほぼ自分の足で歩いていない気がする。だけど身体についた筋肉はそのままなんだよな。これが不思議でしょうがない。柔らかくなっているから脂肪がついたことは間違いないと思うんだが、腹の肉が増えたかんじもないし、これってやっぱり天使だからなんだろうか。質量保存の法則か?(意味が違う)

「そうだな。できれば歩かせたくないからな」
「なんで?」

 ジャックに即答され、ムッとして聞き返した。

「カイトがかわいすぎるからに決まっているだろう。それに、天使さまは大事にしまいこまれているのが当たり前だ。中には例外もいるようだが……カイトは俺たちが片時も放したくないのだからしかたない」
「……ううう……」

 知ってたけど、知ってたけど改めて言われるととても恥ずかしい。俺は両手で顔を覆った。顔が熱い。

「……例外って?」
「……ああ……すごく、筋肉質の木こりの天使さまが王都にいるらしくてな……」
「えええ」

 マッチョな天使って。なんでもありだなこの世界は。

「木こりしてんの? その人」
「昼間は王城の裏の森で働いているらしい」
「え、じゃあ……」

 俺は庭の向こうに見える森を見やった。

「カイトはだめだぞ。その天使さまが住んでいるのは王城だ。常に天使さまに隠れて回復魔法に長けた騎士が控えているそうだ」
「えええ」
「しかもその天使さまの側には常に4人が侍っているらしいぞ。他の者の相手をすることもあるそうだが、体力もそれなりにあるのだろうな」

 聞いてるだけでおなかいっぱいな情報量である。

「常に4人って……その4人と毎日、その……」
「毎日天使さまを抱く者が4人ということだな」
「えええええ」

 無理、そんなの無理、ありえない。
 あ、でも先輩は?

「ジャ、ジャック……先輩のところって……」

 おそるおそる聞くと、ジャックは指を折って数え始めた。

「毎日、ということなら4人じゃなかったか? それに確か護衛が2人いて、その2人は変則的だと聞いたような気がするが」
「ううう……」

 なんだか泣きたくなった。
 俺は二人相手でいっぱいいっぱいなのに先輩は4人も相手にしていて、更に護衛の2人とか。人と比べる必要はないってことぐらいわかっているけど、先輩の前で泣き言は絶対言えないなと思った。

「お、俺はジャックとジャンだけで精一杯だからなっ!」
「そうだな。カイトは感じやすいからな……」

 感じやすいって話をしたら天使はみんな敏感なんじゃないだろうか。でもそれを言ってまた何かされても困るのでそこはつっこまなかった。

「お茶ですよ」

 ティーセットとお茶菓子がジャンによって運ばれてきた。ジャックと二人きりでベランダにいたのだ。ジャンと共に竜族のロンドも姿を見せて端に控える。庭の向こうではレイドが見回りをしていた。ビットは俺の性奴隷なので基本は寝室にいる。今は居間で控えているようだ。

「ありがと」

 お茶菓子はクッキーだった。なんかこの固い食感のでかいクッキーが好きなんだよな。柔らかいのは俺の好みじゃない。
 ガリッガリッと音を立ててクッキーを食べる。

「うまい」
「カイトはこのクッキーが好きだな」
「うん、こういう方が好き。柔らかいのはなんか食べた気がしなくて……」
「そうか」

 ぎゅっと優しくジャックに抱きしめられてにまにましてしまう。ずっとこんな穏やかな状態だったらいいと思うのに、そんなことはありえないんだよな。
 紅茶もおいしかった。俺はそんなに味はわからない方だけど、おいしいってことはわかる。

「カイト」

 ジャンに声をかけられた。

「何?」
「ロンドのことは後で話そう」
「っ! う、うん……」

 危うくむせそうになった。
 確かに外で話すことではないだろう。いくら庭がそれなりに広くて、その向こうには聞こえないとしても。

「カイト……」

 耳元で甘く呼ばれてビクッとした。そろそろこの穏やかな時間も終わりのようだ。
 また、ただひたすらに甘く啼かされる時間がやってくる。そう思ったら尻穴がひくひくしてきた。俺も大概毒されてきたようだ。

「ま、まだ紅茶飲みたい……」
「……カイトはかわいいな」

 三十過ぎた男を捕まえてかわいいとはなんだ。まだジャンもジャックも二十代前半? なんだよな。三十過ぎた男の身体を抱くなんて酔狂もいいところだ。
 もう紅茶の味なんかよくわからなくなっていた。でも、少しでもこの穏やかな時間を伸ばしたくて……俺はゆっくり飲んだ。
 しびれを切らしたジャックにカップを奪われて、唇を荒々しく塞がれるまで。
 いいかげん、ジャックはマテ、を覚えた方がいいんじゃないかなと思う。
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