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73.智紀、二年生になる

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 生物管理部の活動もそうだが、二年生の一学期には進路相談があった。
 一応親とも電話で話もしてくれたらしい。この学校に来るまで、未来なんてのは漠然としたものでしかなかった。
 笑われてしまうかもしれないけど、俺はピー太と一緒にいたいからその方法を考えることにした。つぶしがきく職業としては調理師だろうか。料理をするのは嫌いじゃない。実を言うと母さんはそれほど料理が得意ではなくて、たまに俺が飯を作ると感動されることもあった。
 ま、それで料理するようになったというのが正しい。だからできれば調理師学校かどこかに入って、調理師免許を取りたいと思っている。

「もし、大林がここに戻ってきた時ピー太君がなくなっていたらどうする?」

 担任には嫌なことを聞かれた。

「その時はその時です。俺が卒業する際にピー太がついてきてくれれば一番いいですが、おそらくついては来てくれないでしょう。ピー太は自由な生活に慣れてしまいました。もし、俺が離れている間になくなってしまったらそれはそれで受け入れるしかないと思います」

 本当は嫌だけど。
 担任はため息をついた。

「まぁ調理師だったら就職は困らないだろう。下の町に調理師学校があるから、理事長に聞いてみたらどうかな」
「えええっ!?」

 まだ学校の選定までは考えていなかったけど、もし麓の町に調理師学校があるならどうにかならないだろうかと考えてしまった。
 つーか、そんな都合のいい話があるんだな?

「ただし、学費はかなりするよ?」
「そ、そうですよね」
「見学は受け付けてると思うから見てきてもいいんじゃないかな。電話してアポとってさ」
「そうしてみます」

 学校の周囲なら電波が届くから、後で調べてみよう。この山の近くに調理師学校があるならちょうどいい。麓の町で下宿して調理師学校に通えば、休みの日はピー太に会いに来られるだろう。うちの学校、駐車場はそれなりに広いから車の免許を取れば自分で自由に来られるかもしれない。ただ麓の町でバイトとかできるかな? そのまた隣の町でもいいけど、とかいろいろ考えてしまった。
 進路相談は放課後だったので、珍しく一人で校舎を出た。
 ピピーッ! と鳴く声がして、ピー太がバサバサと飛んできた。いつも通りだ。

「ピー太、遅くなってごめんな。先生と話をしてたんだよ」
「トモーノリー、オソイー!」
「ごめんごめん」

 心配をかけてしまったみたいだ。
 腕に移ってもらい、先生と話した内容をピー太に話しながら寮に戻る。ピー太はそんな時いつも黙って聞いてくれる。こっちが言っていることはわかってないと思うんだけど、実は全部聞き取れてるんじゃないかって思うこともある。

「ピー太、俺ちょっと調べることがあるから学校に戻るんだ。ここで待っててくれる?」
「オッケー!」

 オッケーって、いつ聞いても笑ってしまう。そうして一度部屋へ戻った。
 二年になって、部屋替えがあった。三階の東側の角部屋になったんだけど、なんか広くて三人部屋になった。(真上の部屋が広くなったかんじだ)普通学年が上がると部屋の人数って減るんじゃないのか? とか思ってたんだけどそうではなかったらしい。
 なんと、村西はそのままで稲村もルームメイトになった。これでもう基本部屋替えはないらしいから、三年間結局変わらないんだなと苦笑した。

「やったー! 希望してみるもんだねっ!」
「お前の差し金か」

 呆れて稲村を軽くはたいた。

「トモ君、ぼーりょくはんたーい!」
「ま、いーんじゃねーの。ここならピー太たちも飛んできやすいだろうしな~」

 寮の側には細い木が何本か離れて生えているから、そこを中継地点にすればピー太たちも飛んで来られるはずだ。ひょろ長いだけの細い木だから、俺達が登ろうとしたら簡単に折れるようなことを嵐山さんから聞いたことがある。
 それはともかく調べ物だ。

「ただいま」

 部屋に戻ると村西と稲村から視線を向けられた。なんか慣れない。

「ちょっと調べ物があるから学校の側まで戻るわ」
「じゃあ僕も一緒に行くよー」

 すでに部屋着姿になっている稲村が立ち上がった。

「いいよ、調べたらすぐ戻ってくるし」
「僕も調べ物あるから、一緒いこー」
「……わかった」

 なんだかんだいってうちのルームメイトは過保護だと思う。ため息をついた。
 俺が着替えている間に村西も立ち上がった。

「……俺も行こう」
「ええ? そんなに調べることないだろー?」

 絶対コイツら過保護だ。
 そうは思ったけど付き合ってくれるのは素直に嬉しいと思えた。
 三人で表へ出るとピー太が飛んできた。

「トモーノリー、オソイー」
「ごめんごめん。待っててくれてありがとなー」

 三人で学校の側まで移動してぽちぽちとスマホを操作しているのが面白い。バス停に行けばベンチがあるからそこでやってもいいのだが、学校周りが一番電波がいいのだからこれでいいのだ。

「あ、ホントだ。調理師学校、下の町にある」
「え? そうなの~?」
「問題は下宿先とかバイトが見つかるかどうかだよなー」
「もう先を考えてるんだな」

 村西に意外そうに言われた。

「まーな。できるだけピー太の側にいたいしさ」
「そうか」
「そうだよね~」

 二人は笑わないでくれた。
 いい友達を持ったなとしみじみ思ったのだった。
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