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69.智紀、新年を迎えたけど

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 一日の夜はまた寒くなるからと、ピー太他インコたちを部屋に呼び戻した。
 雪が降っている間は不思議とそれほど寒くは感じられないんだけど(風がなければ)、止むと途端に冷えるのだ。ピー太たちが凍ってしまったら困る。
 ピー太とピーコも最初は小屋で過ごそうとしたみたいだけど、断念したみたいだった。さすがに寒すぎる。去年とかどうやって過ごしてたんだろう。
 ユーリは四階へ飛んでいった。飛山さんと暮らしているから、ユーリは一年中快適なんである。
 雪がちらちらと降り始めた頃に村西が戻ってきた。

「おー、おかえり」
「ただいま。……おめでとう」
「あ、そーだな。明けましておめでとう」
「明けましておめでとう~」

 稲村も一緒にいたので三人で言い合った。なんだか不思議なかんじがする。そうして三人で笑った。
 村西はインコたちを刺激しなように片付けを始めたが、ピコーは村西が戻ってきたことが嬉しいらしくさっそく村西の背に留まった。作業していたから背が丸まっていたわけで、そこにちょこんと留まった姿がかわいい。

「ピコー、村西が立ったら落ちるぞー」

 思わず声をかけてしまった。

「困った奴だな」

 そう言いながらも村西は嬉しそうだった。
 カラスが苦手なのは変わらないけれど、インコはかわいいなとぼそっと言っていたのにはにまにましてしまった。
 雪はしんしんと降り続いたらしく、朝起きたらまた窓の外が銀世界になっていた。それでもピー太は出かけるらしい。
 つんつんと窓をつっつくのは止めてほしい。

「いや、すっごく寒いからだめだって。今日は部屋の中で過ごしてくれよ~」

 朝食の後で寮の入口へ行って今日の気温を見てきたら、最低気温がマイナスだったのだ。最高気温だって一桁だ。勘弁してほしい。

「ピータッ、コヤー」

 どうやら小屋を見てきたいようだ。

「ほら、じゃあ俺も一緒に行くからちょっと待ってろ……」

 ピコーは部屋にいる気満々だが村西も付き合ってくれるという。一応稲村に声をかけた。

「寒いけど行くー」

 どうやらピーコも外に出ようとしていたみたいだ。もこもこの長いマフラーを首に巻き、その外側にピー太にははまってもらった。これなら寒くないだろう。ちょっと俺が首元を気にすればいいだけの話だ。
 その姿を見た嵐山さんが目を丸くしていた。

「愛だねー」
「ピー太への愛なら負けませんよ」
「誰も競ってないよー。気を付けていってきてね。一時間経っても戻らなかったから捜索隊を出すから」
「うええ……」

 そんな心配はないと思うのだが、雪もそれなりに積もっているから念の為なんだろう。気にかけてもらえるのはありがたいと思う。
 そうして林の方へ向かうと、かなり前方に人影のようなものが見えた。もしかしたら森林管理部の面々だろうかと思ったが、どうも様子が違う。

「……村西、なぁ、あれって……」

 三人ぐらいのもこもこが華奢な一人を木の陰に追い詰めているように見える。この寒いのに何やってんだよ。

「……見に行ってみるか?」
「うーん、嵐山さん呼びに行った方がいいかも」

 ピー太の頭を撫でて考える。

「ピー太に呼んできてもらえばいっか。ピー太、なんかおかしいから嵐山さん呼んできて。俺たちはここで見張っておくから」

 ピー太は無言で飛び立った。この寒い中悪いなと思ったけど、俺たちが直接止めに入ってどうにかなるとも考えづらかった。何せ足元が雪だし。
 ピー? と稲村のマフラーの中に入っているピーコが鳴いた。

「ピーコちゃん、静かにねー」

 稲村が小声で話しかける。俺たちは彼らにもう少し近づいてみた。何かあった時すぐに止められるようにである。

「おっまえ生意気なんだよっ!」

 空気が澄んでいるせいか声がよく届いた。こんなところじゃ娯楽もないし不満も溜まるのかもしれないが、人に当たるのは違うだろう。

「触るなっ!」

 悲鳴のような声が届く。なんかあれ、華奢な方は薄着じゃね?

「さむっ、止めろよっ!」
「……ピーコちゃん、カケスとかスズメにアイツらつつくの頼める~?」

 稲村が低い声を発した。何をやっているのかは見えないんだけど、どうもこの寒いのに服を脱がそうとしているみたいだ。ざけんなと思った。
 ピーコは稲村の意を汲んでか、寒いのに小屋の方へと飛んでいった。

「うおっ! あれインコじゃねーか?」
「まずいんじゃ……」

 まずいと思ってるならやるなよと呆れた。ピーコが呼びに行って少しも経たないうちに、ピー太が戻ってきて、更にカケスとスズメたちが向こうからたくさん飛んでくるのが見えた。うわあ、ちょっと怖い。あんなにいたっけ?
 バサバサと羽ばたく音が瞬く間に近づいてきて、三人に近づいた。

「うわっ、なんだー!?」
「わー!」
「今のうちに助けよう!」

 一人に難癖をつけていた三人が鳥たちにつつかれている間に近づき、華奢な少年を確保した。ピー太が率先してつついている。ま、まあほどほどにな……。

「ピー太君、早いよ~」

 嵐山さんだけでなく、他の先生たちも来た。よかったと胸を撫でおろしたのだった。
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