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67.智紀、寮へ戻る

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 久しぶりに一緒に過ごして、家族とはいろいろ話をした。
 家にいた時より話したような気がする。
 ピー太の写真を見せて、本当だとみな納得してくれた。父さんは「よかったなぁ~」としみじみ言っていた。あの時のことを思い出したのだろう。
 料理をするのも好きだなって最近改めて思って、高校卒業後の話も少しはした。

「……そうねぇ。調理師免許が取れれば、仕事がないってことはないわよね」
「資格は大事だぞ」

 両親の反応も悪くはない。

「いい友達もできてよかったな」
「うん、楽しくてしかたないんだ」

 俺はとにかく恵まれてると思う。上海で暮らすって選択肢はないけど、そのうち旅行には行きたい。本場の中華料理を味わいたいな。満漢全席とか憧れる。(とても高くて食べられないと親には窘められた)
 家に寄ると言っていたから親戚によろしくとは言っておいた。お土産に月餅をもらったから(免税店で買ってきたらしい)みんなで食べようと思う。
 早くピー太に会いたかった。


 ……都心に出るのはとにかく時間がかかる。
 戻ってくるのもだ。

「……やっと戻ってきた」

 学校のある山の麓の町にようやく着いて、思わずそう呟いてしまった。昼のバスの時間には間に合わなかったから、コンビニでおにぎりを買って食べた。適当に町をぶらぶらし(つっても全然見る物もないんだが)、夕方のバスに乗ってやっと学校へ戻った。
 え? 下から歩けばよかったんじゃないかって? それもちょっと考えたんだけど麓の町っつっても実はけっこう遠いんだよ。って俺は誰に言い訳をしているのか。
 ようやくバス停で降りたけど誰も乗っていなかった。それこそ学校関係者ぐらいしか乗らないのに毎日三便動いてるってすごいことだよなと改めて思った。学校側でお金を出してたりするんだろうか。
 降りてうーんと伸びをする。この空気の冷たさ、山だよなぁ。
 ピピーッ、ピーッ!

「えっ?」

 すでに暗くなってきているのに、ピー太が飛んできて俺の頭に留まった。

「トモーノリー! オソーイ!」
「ピー太、そんな言葉も覚えたのかよ。ただいま~」

 腕に移ってもらい、寒いからと急いで寮に戻った。そのままピー太も寮へ一緒に入る。とても寒いし一日ぶりに会えたから見逃してほしい。

「あ、大林君おかえり~」

 寮の入口にいた嵐山さんに声をかけられた。おかえりって言われるのがなんかこそばゆい。

「ただいま戻りました」
「寄り道しないで部屋に連れて行ってね~」
「はい」

 お土産は後で渡しに来よう。俺はピー太を腕に留まらせたまま、急いで部屋に戻った。

「ただいまー」
「……おかえり」

 村西は部屋にいた。ピコーも一緒である。ピコーは相変わらず夜もここで過ごしている。寒い時期はそれでもいいよな。当然ながら藤沢先輩に頼まれたピースケもいる。朝はピーピーとみんなうるさい。それはそれで楽しいけど。

「ピー太が迎えに行ったのか」
「ああ、この寒い時期にあんまり表にいないでほしいんだけどなぁ」
「待ちたいんだからしょうがないだろう」
「わかってるんだけどさぁ~」

 もうすぐ夕飯の時間なので、稲村にも声をかけにいったりした。

「トモ君おかえりー!」

 稲村のルームメイトは帰省しているらしい。

「だからこっちの部屋に来てもいいからねー」

 なんて稲村が言っていた。でも俺はやっぱ自分の部屋がいいかなと思った。その夜は村西、稲村と少し話をした。


 休みってなんで過ぎるのが早いんだろうな?
 村西が帰省した。12月31日である。明日には帰ってくるようなことは言っていたが、「無理はするなよ~」と言っておいた。なんか予報では明日雪みたいなこと言ってたし。って、正月から雪か。

「トモ君、一緒に夜更かししよーねー」
「うーん、ピコーとピースケもいるからあんまり大きな声では話せないぞ?」
「そういえばそうだね。じゃあ、ベッドの中で適当に駄弁ろー」
「そうだな」

 俺はそれなりに鍛えているんだが、稲村は細っこいので一緒のベッドに寝ても平気だったりする。(夏に試した。ベッドのスペースはともかく暑かった)
 年越しということで、寮のごはんはなんだかちょっと豪勢だった。夜食に蕎麦も用意してくれるという。至れり尽くせりだなぁとジーンとした。

「つってもあんまり生徒も残ってないけどね~」

 嵐山さんが言う。そういえば嵐山さんて理事長なのに新年とかでなんかあったりしないんだろうか?
 そう聞いたら視線を明後日の方向にやった。

「うちの家族はみんな優秀だから、僕一人ぐらいいなくても大丈夫なのさっ!」

 そんなことを言っていたけど真偽は定かではない。思わずじっと見てしまった。嵐山さんは頑なに俺とは視線を合わせなかった。
 大晦日ということで、寒いからおいでとピー太とピーコも部屋に呼んだ。ピー太他インコが三羽もいるからちょっとたいへんだったけど、稲村も共にまったり過ごせた。
 そうして、大晦日の夜は更けていった。
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