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39.智紀、憤る
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健康診断では身長体重を測ったり、内科健診もあったりする。
尿検査に関してはもっと前に出した。あれ、出すのやだよなー。一年に一回とはいえやなかんじだ。
健康には全然問題ないと思っているからどうでもいいのだが、問題は身長だ。
俺はまだ成長期のはずである。さすがに村西を抜く、とまではいかないが稲村を抜くぐらいはしたい。
しかし俺は失念していた。
稲村もまた成長期であったのだ。
「トーモ君、どうだったー?」
「どうもこうもねえよ……」
後ろから肩を組んできた稲村の目線がわずかに上がっている気はしているのだがきっと気のせいだ。そう思おうとした。
最近とみに稲村のスキンシップが多い。暑くなってきているからちょっと勘弁してほしい。
稲村は俺が持っている紙を見た。
「身長はー……伸びてるじゃん」
「……1cmだけな……」
悔しいがこれが現実である。
「稲村はどうなんだよ?」
「僕? 5cm伸びたよー」
さすがに殺意が芽生えた。
「……あっち行け」
「やだっ!」
「くっつくなっつーのっ!」
「まだまだ伸びるよっ、大丈夫!」
そんなこんなでああでもないこうでもないとやっていたせいか、
「お前ら、じゃれてるヒマがあったら教室に戻りなさい」
担任に叱られた。なんとも理不尽である。
とりあえず教室に戻った。
「稲村なんか嫌いい~……」
「えー? 僕はトモ君のこと大好きだよー?」
「じゃれっぷりが激しすぎる。ホント、稲村の目線の位置がなんか違うな~」
緒方が稲村を見て言う。俺は世界を呪いたくなった。ギロリと緒方を睨む。
「まあまあ落ち着けって。俺も1cmしか伸びてないし」
「……緒方の身長は俺よりはるかに高いじゃねえか……」
そう、コイツはバスケ部に入るぐらいなので身長が元々175cmもあるのだ。それでもバスケ部では低い方らしい。確かにアメリカのNBAなんかだと身長2mとかごろごろいるイメージだもんな。バスケットゴールは高いところにあるわけだから背が高い方がどう考えても有利だろう。
「大林はこれぐらいがいいんだよー」
そう言って頭を撫でてきたからブチ切れた。手をパンッと払いのける。緒方の目が剣呑なそれになった。
「おい……」
「緒方、やめておけ。誰にでも地雷はあるだろ?」
山根がぼそっと呟く。緒方は両手を上げた。
「……悪い」
「……ああ」
そこで手打ちになった。俺も気にしすぎって自覚はあるけど、学校で一番背が低いってなるとなぁ。
「トモ君……」
稲村はぎゅうっと俺を抱きしめた。コイツやっぱスキンシップ多すぎなんだけど。もしかしてホームシックとか?
そういえば俺、ホームシックとかないなー。親も弟も直前はかなーりうるさかったせいかな。
ピー太がいるから問題ないし、毎日忙しいしなー。
「稲村、大林が好きなのはわかったからいいかげん放してやれ」
担任が苦笑して言う。
「ええ~」
稲村は不満そうな声を上げて、俺をパッと放した。
助かった、と思った。
放課後、昇降口を出たらいつも通りピー太がバサバサと飛んできた。もしかしたら俺の背が低いから頭の方が留まりやすいのかとか考えてしまう。なんかもう俺、自分が嫌かもしれない。
手を伸ばしてピー太には腕に移ってもらった。腕を俺の目の前に持ってくると、ピー太は俺をじっと見て、コキャコキャと首を動かした。
なんかいつもと様子が違うように見えるんだろうか。
「トモーノリー、ゲンキー? トモーノリー、スキー!」
泣きそうになってしまった。
「わわわっ!?」
バサバサと音がして、稲村の胸にピーコが留まった。
「ピーコちゃん、迎えに来てくれたのかー。ありがとー!」
「……ピー太、迎えに来てくれてありがとなー」
稲村がピーコに礼を言ったのを聞いてはっとした。俺も礼を言わなければ。
「ピータ、トモーノリー、スキー!」
「俺もピー太が好きだよ」
そう言って、身長のこと等をコトコトと話しながら寮に戻った。伸びないものはしかたない。また次の身体測定の時に伸びていればいいだけの話だ。村西は巻き込まれたくないのか聞かないフリをしている。
「稲村、次は覚えてろよ?」
「ふふ……負けないよ?」
朝の牛乳をしっかり飲まないとだな。筋トレもがんばらねば。
今日はこの後部活で草むしりである。雨が降り出す前にしっかり抜いておかないといけないなと思ったのだった。
尿検査に関してはもっと前に出した。あれ、出すのやだよなー。一年に一回とはいえやなかんじだ。
健康には全然問題ないと思っているからどうでもいいのだが、問題は身長だ。
俺はまだ成長期のはずである。さすがに村西を抜く、とまではいかないが稲村を抜くぐらいはしたい。
しかし俺は失念していた。
稲村もまた成長期であったのだ。
「トーモ君、どうだったー?」
「どうもこうもねえよ……」
後ろから肩を組んできた稲村の目線がわずかに上がっている気はしているのだがきっと気のせいだ。そう思おうとした。
最近とみに稲村のスキンシップが多い。暑くなってきているからちょっと勘弁してほしい。
稲村は俺が持っている紙を見た。
「身長はー……伸びてるじゃん」
「……1cmだけな……」
悔しいがこれが現実である。
「稲村はどうなんだよ?」
「僕? 5cm伸びたよー」
さすがに殺意が芽生えた。
「……あっち行け」
「やだっ!」
「くっつくなっつーのっ!」
「まだまだ伸びるよっ、大丈夫!」
そんなこんなでああでもないこうでもないとやっていたせいか、
「お前ら、じゃれてるヒマがあったら教室に戻りなさい」
担任に叱られた。なんとも理不尽である。
とりあえず教室に戻った。
「稲村なんか嫌いい~……」
「えー? 僕はトモ君のこと大好きだよー?」
「じゃれっぷりが激しすぎる。ホント、稲村の目線の位置がなんか違うな~」
緒方が稲村を見て言う。俺は世界を呪いたくなった。ギロリと緒方を睨む。
「まあまあ落ち着けって。俺も1cmしか伸びてないし」
「……緒方の身長は俺よりはるかに高いじゃねえか……」
そう、コイツはバスケ部に入るぐらいなので身長が元々175cmもあるのだ。それでもバスケ部では低い方らしい。確かにアメリカのNBAなんかだと身長2mとかごろごろいるイメージだもんな。バスケットゴールは高いところにあるわけだから背が高い方がどう考えても有利だろう。
「大林はこれぐらいがいいんだよー」
そう言って頭を撫でてきたからブチ切れた。手をパンッと払いのける。緒方の目が剣呑なそれになった。
「おい……」
「緒方、やめておけ。誰にでも地雷はあるだろ?」
山根がぼそっと呟く。緒方は両手を上げた。
「……悪い」
「……ああ」
そこで手打ちになった。俺も気にしすぎって自覚はあるけど、学校で一番背が低いってなるとなぁ。
「トモ君……」
稲村はぎゅうっと俺を抱きしめた。コイツやっぱスキンシップ多すぎなんだけど。もしかしてホームシックとか?
そういえば俺、ホームシックとかないなー。親も弟も直前はかなーりうるさかったせいかな。
ピー太がいるから問題ないし、毎日忙しいしなー。
「稲村、大林が好きなのはわかったからいいかげん放してやれ」
担任が苦笑して言う。
「ええ~」
稲村は不満そうな声を上げて、俺をパッと放した。
助かった、と思った。
放課後、昇降口を出たらいつも通りピー太がバサバサと飛んできた。もしかしたら俺の背が低いから頭の方が留まりやすいのかとか考えてしまう。なんかもう俺、自分が嫌かもしれない。
手を伸ばしてピー太には腕に移ってもらった。腕を俺の目の前に持ってくると、ピー太は俺をじっと見て、コキャコキャと首を動かした。
なんかいつもと様子が違うように見えるんだろうか。
「トモーノリー、ゲンキー? トモーノリー、スキー!」
泣きそうになってしまった。
「わわわっ!?」
バサバサと音がして、稲村の胸にピーコが留まった。
「ピーコちゃん、迎えに来てくれたのかー。ありがとー!」
「……ピー太、迎えに来てくれてありがとなー」
稲村がピーコに礼を言ったのを聞いてはっとした。俺も礼を言わなければ。
「ピータ、トモーノリー、スキー!」
「俺もピー太が好きだよ」
そう言って、身長のこと等をコトコトと話しながら寮に戻った。伸びないものはしかたない。また次の身体測定の時に伸びていればいいだけの話だ。村西は巻き込まれたくないのか聞かないフリをしている。
「稲村、次は覚えてろよ?」
「ふふ……負けないよ?」
朝の牛乳をしっかり飲まないとだな。筋トレもがんばらねば。
今日はこの後部活で草むしりである。雨が降り出す前にしっかり抜いておかないといけないなと思ったのだった。
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