36 / 77
35.智紀、鷹匠とタカに出会う
しおりを挟む
日曜日は嵐山さんに召集をかけられて、鷹匠の飛山さんとその相棒のタカであるユーリと会った。
飛山さんはまだ二十代後半の男性である。人懐っこい笑顔をしていた。
タカと一緒に暮らしたくてペット可物件を探していたけど、家賃などいろいろ折り合いがつかなかったのだという。それにタカも好きなように飛ばしてあげたいという気持ちもあり、できればこの山に住みたいという話だった。
タカが仕事する日も見たけど、面と向かって挨拶はしていなかったのだ。忙しいらしくて、こちらが休みの日に飛ばしてくれた時もバタバタと次の現場とかに向かわれたんだよな。
もしこの山に住めるのならば、今勤めている仕事は臨時に変えるらしい。そう考えると思い切った判断だと言えるだろう。
さすがに緊張してきた。
「こんにちは。改めまして、飛山と言います。こちらはユーリ、二歳のメスです。よろしくお願いします」
飛山さんは丁寧に、俺たちに頭を下げた。生徒会長も含め、部員全員でこちらも頭を下げる。ピー太に何やってんだとばかりに頭をつつかれた。頭の上にいたのだ。
ピピッ、ピーッ! とピー太が鳴く。
タカのユーリはじっとピー太を見つめた。
むむ、ここで上下関係が決まるのか?
「ユーリはピー太君が好きみたいですね」
「え」
ピー太は俺の腕に移った。ふんすという顔をしている。目つきも悪いしなかなかにふてぶてしい。でもそんなところもかわいい。(インコバカ全開)
ユーリが飛山さんを見た。
「他の鳥とかに危害を加えなければ、ちょっと飛ばしてもいいですか?」
「それが可能ならかまわないよ」
嵐山さんが言う。
ピー太とユーリは見つめ合っている。なんだろう、お見合い? なのかなとか思ってしまった。
飛山さんがユーリに合図をすると、ユーリは近くの木まで飛んだ。ピー太も同じ木まで飛び、ユーリより高いところに留まった。
ピー太の方が小さいのに堂々としている。ユーリはじっとピー太を見ていた。
「ああ、やっぱり」
飛山さんが呟いた。
「?」
みなで飛山さんを見る。
「ユーリはピー太君に惚れたみたいです」
「……は?」
ピー太のどこに惚れる要素があるのかわからないが、タカのユーリはピー太に付いて周りを飛んだ。ピー太が誘導しているように見えることから、飛山さんが言ったことは間違っていないのだろう。
惚れているかどうかまではわからないが、敵対しているかんじは全くない。
鳥ってわからないなと思ったけど、鳥たちが仲良くやっていけるならそれでいいかと思った。
だって本気でわかんないし。
稲村と村西を見たけど、二人にも首を振られた。俺達には理解できない何かがあるんだろうな。
「……カラスとか、それ以外の鳥を襲ったりしなければそれでいいかな……」
「うん、それは徹底させてもらうね。ありがとう」
飛山さんは終始にこにこしていた。
「よかったなぁ」
しみじみと呟いている。好きじゃなきゃ鷹匠とかできないよな。
ピー太とユーリはそのまましばらく飛び、満足したようにバサバサと戻ってきた。だからどうして頭に(以下略)。
わかるけど文句は言いたい。
「ピータ、トモーノリー、スキー!」
「え? うん、俺もピー太が大好きだぞ」
なんでいきなりと思ったが、どうやらピー太はユーリに向かって伝えたみたいだった。飛山さんが笑った。
「すごいね。ピー太君はとっても頭がいいんだな。こちらもしっかり躾けるから、これからよろしくお願いします」
というわけで、鷹匠の飛山さんは寮の四階に住むことになった。生徒ではないので移動はエレベーターを使ってもいいらしい。ちょっと羨ましい。
嵐山さんに聞いてみた。
「飛山さんて職員みたいな扱いになるんですか?」
「うん。僕の権限で森林管理部とか、山大好き部にも顔を出してもらうことにしたよ。サポーターみたいなかんじかなー」
「そういうのって自由にできるものなんですか?」
「僕が理事長なんだからそこらへんは自由だよ?」
嵐山さんは不思議そうに答えた。そういえば私立って、教員免許とかなくても上の人が許可すれば教師もやれるんだっけ? 飛山さんは教師じゃないからいいのか。
わからないことが多いけど考えてもしかたないので、ピー太の小屋を見に行ったり、カケスの小屋の作成の続きに戻ったりした。
カケス、一羽一羽がカラスぐらい大きいから作るのがたいへんなのだ。
おとなしく待っていてくれるのがありがたい。梅雨が始まる前までにできることをやらないとなと思う。
六月に入ってすぐに梅雨になるわけではないけど、家があるとないではえらい違いだろう。部員総出で作ったらどうにか形になってほっとした。あとは屋根の部分に防水スプレーをかけて、乾かせば完璧である。
ほーっとため息をつくと、嵐山さんから飲み物の差し入れがあった。ありがたいことだと思う。
これでみんな梅雨も比較的快適に過ごせそうだった。
飛山さんはまだ二十代後半の男性である。人懐っこい笑顔をしていた。
タカと一緒に暮らしたくてペット可物件を探していたけど、家賃などいろいろ折り合いがつかなかったのだという。それにタカも好きなように飛ばしてあげたいという気持ちもあり、できればこの山に住みたいという話だった。
タカが仕事する日も見たけど、面と向かって挨拶はしていなかったのだ。忙しいらしくて、こちらが休みの日に飛ばしてくれた時もバタバタと次の現場とかに向かわれたんだよな。
もしこの山に住めるのならば、今勤めている仕事は臨時に変えるらしい。そう考えると思い切った判断だと言えるだろう。
さすがに緊張してきた。
「こんにちは。改めまして、飛山と言います。こちらはユーリ、二歳のメスです。よろしくお願いします」
飛山さんは丁寧に、俺たちに頭を下げた。生徒会長も含め、部員全員でこちらも頭を下げる。ピー太に何やってんだとばかりに頭をつつかれた。頭の上にいたのだ。
ピピッ、ピーッ! とピー太が鳴く。
タカのユーリはじっとピー太を見つめた。
むむ、ここで上下関係が決まるのか?
「ユーリはピー太君が好きみたいですね」
「え」
ピー太は俺の腕に移った。ふんすという顔をしている。目つきも悪いしなかなかにふてぶてしい。でもそんなところもかわいい。(インコバカ全開)
ユーリが飛山さんを見た。
「他の鳥とかに危害を加えなければ、ちょっと飛ばしてもいいですか?」
「それが可能ならかまわないよ」
嵐山さんが言う。
ピー太とユーリは見つめ合っている。なんだろう、お見合い? なのかなとか思ってしまった。
飛山さんがユーリに合図をすると、ユーリは近くの木まで飛んだ。ピー太も同じ木まで飛び、ユーリより高いところに留まった。
ピー太の方が小さいのに堂々としている。ユーリはじっとピー太を見ていた。
「ああ、やっぱり」
飛山さんが呟いた。
「?」
みなで飛山さんを見る。
「ユーリはピー太君に惚れたみたいです」
「……は?」
ピー太のどこに惚れる要素があるのかわからないが、タカのユーリはピー太に付いて周りを飛んだ。ピー太が誘導しているように見えることから、飛山さんが言ったことは間違っていないのだろう。
惚れているかどうかまではわからないが、敵対しているかんじは全くない。
鳥ってわからないなと思ったけど、鳥たちが仲良くやっていけるならそれでいいかと思った。
だって本気でわかんないし。
稲村と村西を見たけど、二人にも首を振られた。俺達には理解できない何かがあるんだろうな。
「……カラスとか、それ以外の鳥を襲ったりしなければそれでいいかな……」
「うん、それは徹底させてもらうね。ありがとう」
飛山さんは終始にこにこしていた。
「よかったなぁ」
しみじみと呟いている。好きじゃなきゃ鷹匠とかできないよな。
ピー太とユーリはそのまましばらく飛び、満足したようにバサバサと戻ってきた。だからどうして頭に(以下略)。
わかるけど文句は言いたい。
「ピータ、トモーノリー、スキー!」
「え? うん、俺もピー太が大好きだぞ」
なんでいきなりと思ったが、どうやらピー太はユーリに向かって伝えたみたいだった。飛山さんが笑った。
「すごいね。ピー太君はとっても頭がいいんだな。こちらもしっかり躾けるから、これからよろしくお願いします」
というわけで、鷹匠の飛山さんは寮の四階に住むことになった。生徒ではないので移動はエレベーターを使ってもいいらしい。ちょっと羨ましい。
嵐山さんに聞いてみた。
「飛山さんて職員みたいな扱いになるんですか?」
「うん。僕の権限で森林管理部とか、山大好き部にも顔を出してもらうことにしたよ。サポーターみたいなかんじかなー」
「そういうのって自由にできるものなんですか?」
「僕が理事長なんだからそこらへんは自由だよ?」
嵐山さんは不思議そうに答えた。そういえば私立って、教員免許とかなくても上の人が許可すれば教師もやれるんだっけ? 飛山さんは教師じゃないからいいのか。
わからないことが多いけど考えてもしかたないので、ピー太の小屋を見に行ったり、カケスの小屋の作成の続きに戻ったりした。
カケス、一羽一羽がカラスぐらい大きいから作るのがたいへんなのだ。
おとなしく待っていてくれるのがありがたい。梅雨が始まる前までにできることをやらないとなと思う。
六月に入ってすぐに梅雨になるわけではないけど、家があるとないではえらい違いだろう。部員総出で作ったらどうにか形になってほっとした。あとは屋根の部分に防水スプレーをかけて、乾かせば完璧である。
ほーっとため息をつくと、嵐山さんから飲み物の差し入れがあった。ありがたいことだと思う。
これでみんな梅雨も比較的快適に過ごせそうだった。
51
お気に入りに追加
636
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる