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35.智紀、鷹匠とタカに出会う

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 日曜日は嵐山さんに召集をかけられて、鷹匠の飛山さんとその相棒のタカであるユーリと会った。
 飛山さんはまだ二十代後半の男性である。人懐っこい笑顔をしていた。
 タカと一緒に暮らしたくてペット可物件を探していたけど、家賃などいろいろ折り合いがつかなかったのだという。それにタカも好きなように飛ばしてあげたいという気持ちもあり、できればこの山に住みたいという話だった。
 タカが仕事する日も見たけど、面と向かって挨拶はしていなかったのだ。忙しいらしくて、こちらが休みの日に飛ばしてくれた時もバタバタと次の現場とかに向かわれたんだよな。
 もしこの山に住めるのならば、今勤めている仕事は臨時に変えるらしい。そう考えると思い切った判断だと言えるだろう。
 さすがに緊張してきた。

「こんにちは。改めまして、飛山と言います。こちらはユーリ、二歳のメスです。よろしくお願いします」

 飛山さんは丁寧に、俺たちに頭を下げた。生徒会長も含め、部員全員でこちらも頭を下げる。ピー太に何やってんだとばかりに頭をつつかれた。頭の上にいたのだ。
 ピピッ、ピーッ! とピー太が鳴く。
 タカのユーリはじっとピー太を見つめた。
 むむ、ここで上下関係が決まるのか?

「ユーリはピー太君が好きみたいですね」
「え」

 ピー太は俺の腕に移った。ふんすという顔をしている。目つきも悪いしなかなかにふてぶてしい。でもそんなところもかわいい。(インコバカ全開)
 ユーリが飛山さんを見た。

「他の鳥とかに危害を加えなければ、ちょっと飛ばしてもいいですか?」
「それが可能ならかまわないよ」

 嵐山さんが言う。
 ピー太とユーリは見つめ合っている。なんだろう、お見合い? なのかなとか思ってしまった。
 飛山さんがユーリに合図をすると、ユーリは近くの木まで飛んだ。ピー太も同じ木まで飛び、ユーリより高いところに留まった。
 ピー太の方が小さいのに堂々としている。ユーリはじっとピー太を見ていた。

「ああ、やっぱり」

 飛山さんが呟いた。

「?」

 みなで飛山さんを見る。

「ユーリはピー太君に惚れたみたいです」
「……は?」

 ピー太のどこに惚れる要素があるのかわからないが、タカのユーリはピー太に付いて周りを飛んだ。ピー太が誘導しているように見えることから、飛山さんが言ったことは間違っていないのだろう。
 惚れているかどうかまではわからないが、敵対しているかんじは全くない。
 鳥ってわからないなと思ったけど、鳥たちが仲良くやっていけるならそれでいいかと思った。
 だって本気でわかんないし。
 稲村と村西を見たけど、二人にも首を振られた。俺達には理解できない何かがあるんだろうな。

「……カラスとか、それ以外の鳥を襲ったりしなければそれでいいかな……」
「うん、それは徹底させてもらうね。ありがとう」

 飛山さんは終始にこにこしていた。

「よかったなぁ」

 しみじみと呟いている。好きじゃなきゃ鷹匠とかできないよな。
 ピー太とユーリはそのまましばらく飛び、満足したようにバサバサと戻ってきた。だからどうして頭に(以下略)。
 わかるけど文句は言いたい。

「ピータ、トモーノリー、スキー!」
「え? うん、俺もピー太が大好きだぞ」

 なんでいきなりと思ったが、どうやらピー太はユーリに向かって伝えたみたいだった。飛山さんが笑った。

「すごいね。ピー太君はとっても頭がいいんだな。こちらもしっかり躾けるから、これからよろしくお願いします」

 というわけで、鷹匠の飛山さんは寮の四階に住むことになった。生徒ではないので移動はエレベーターを使ってもいいらしい。ちょっと羨ましい。
 嵐山さんに聞いてみた。

「飛山さんて職員みたいな扱いになるんですか?」
「うん。僕の権限で森林管理部とか、山大好き部にも顔を出してもらうことにしたよ。サポーターみたいなかんじかなー」
「そういうのって自由にできるものなんですか?」
「僕が理事長なんだからそこらへんは自由だよ?」

 嵐山さんは不思議そうに答えた。そういえば私立って、教員免許とかなくても上の人が許可すれば教師もやれるんだっけ? 飛山さんは教師じゃないからいいのか。
 わからないことが多いけど考えてもしかたないので、ピー太の小屋を見に行ったり、カケスの小屋の作成の続きに戻ったりした。
 カケス、一羽一羽がカラスぐらい大きいから作るのがたいへんなのだ。
 おとなしく待っていてくれるのがありがたい。梅雨が始まる前までにできることをやらないとなと思う。
 六月に入ってすぐに梅雨になるわけではないけど、家があるとないではえらい違いだろう。部員総出で作ったらどうにか形になってほっとした。あとは屋根の部分に防水スプレーをかけて、乾かせば完璧である。
 ほーっとため息をつくと、嵐山さんから飲み物の差し入れがあった。ありがたいことだと思う。
 これでみんな梅雨も比較的快適に過ごせそうだった。
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